東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。

大地震に伴う津波は、海難災害です。救命胴衣を着けていれば
犠牲者数を大幅に減らすことができます(月刊地震予報97)。
津波対策では何より先に救命胴衣の準備を。

月刊地震予報171)2023年11月19日・24日の伊豆海溝域MarianaM5.9とM6.9,2023年12月の月刊地震予報

1.2023年11月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年11月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で11 個0.682月分,千島海溝域で1個0.012月分,日本海溝域で3個0.290月分,伊豆・小笠原海溝域で3個4.132月分,南海・琉球海溝域で4個0.041月分であった(2023年11月日本全図月別).
 2023年11月の総地震断層面積規模はΣM7.0で,最大地震は,2023年11月24日MarianaのM6.9(7.5)で,M6.0以上の地震は2023年11月19日MarianaのM5.9(6.5)があった(括弧内は初動IM規模).
 2023年11月までの日本全域2年間のCMT解は361個で,その総地震断層面積規模はΣM7.8,Plate運動面積規模はM8.2,その比は0.317である(図534の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図534右図上左端のTotal/4).2023年9月から千島・伊豆・琉球海溝域のM6級の活動によってTotal/4のBenioff曲線の全体的傾斜が増大しており,M7級地震に警戒が必要である.
 

図534 .2023年11月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,2年間のM7.0以上のCMT解に加え2023年11月についてはM6.0以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年12月1日)から終了(上端2023年11月30日)までの730日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
 階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年11月19日の伊豆海溝域MarianaM5.9

 伊豆海溝域のMariana小円区の深度612㎞で,2023年11月19日13時01分M5.9prが起こった.破壊開始の初動規模はM6.4で,破壊開始震動が本破壊震動の10倍近く大きい.
 本地震の深度612㎞は下部Mantle上面660㎞から48㎞上で,下部Mantleにほぼ真下に垂れ下がる同心円状屈曲Slabの末端に位置する(図534).本震源域では2013年5月14日M6.8p深度620㎞と2010年3月8日M6.0p深度463㎞が在り,本地震は3個目で,同心円状屈曲Slabが下部Mantleにほぼ真下に垂れ下がる「伊豆和達δ震源帯WdtiPcD」の様相が明確になった.本震源域は,これまで海台小円区に分布する同心円状屈曲Slabが下部Manlte上面に載る「伊豆和達α震源帯WdtiPcAlf」の南方延長としていたが,「伊豆和達δ震源帯WdtiPcD」の「伊豆和達δMariana震源区WdtiPcDM」と呼ぶことにする(図535).
 「伊豆和達δMariana震源区WdtiPcDM」の3個のCMT解の発震機構は全て逆断層p型である(図535右下の主歪軸傾斜方位図).Slabには,Slab重による下方引張歪が予想されるが,Slab先端が下部Mantleに突入すれば下部Mantleからの浮力を受け,上方圧縮歪が集積する.今回の地震の逆断層型発震機構はSlab先端が下部Mantleに突入して浮力を受けていることを示唆する.

図535.伊豆和達δ震源帯WdtiPcDと伊豆和達α震源帯WdtiPcAlfの観測震源分布.
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)の数字とMは,「伊豆和達δ震源帯WdtiPcD」の観測震源発生年月日と規模.
 海溝距離断面図で観測震源発生年月日と規模を付けていない同心円状屈曲するSlab上面より下側に分布する震源が「伊豆和達α震源帯WdtiPcAlf(紺色)」である.「伊豆和達δ震源帯WdtiPcD(紫色)」の震源は,同心円状屈曲Slab上面を深度410㎞付近から離脱してほぼ垂直に垂れ下がる様に分布している.
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 「伊豆和達δ震源帯WdtiPcD」の震源区は,小笠原小円区の「伊豆和達δ小笠原震源区WdtiPcDog」のみであったが(月刊地震予報170),「伊豆和達δMariana震源区WdtiPcDM」が加わり,海台小円区の「伊豆和達α震源帯WdtiPcAlf」を間に挟んで南北に分離することになる(図536).
 「伊豆和達δ震源帯WdtiPcD」が分離して分布する小笠原小円区とMariana小円区の小円中心は,島弧側に位置し,「伊豆和達α震源帯WdtiPcAlf」が分布する海台小円区では海洋側に位置している.小円中心が島弧側に位置する小円区では,海溝に沿って沈込んだSlabの面積が沈込に伴って不足し,海洋側に位置する小円区では,過剰になる.下部Mantle上面付近に到達したSlab先端が垂直に垂れ下がって下部Mantleに突入するか同心円状屈曲したまま横たわるとSlab過不足との関連を示唆している.
 Mariana震源区と小笠原震源区に分離した「伊豆和達δ震源帯WdtiPcD」の観測地震の[節番号]・発生年月日・深度・規模・発震機構・(初動規模)は;
 Mariana 小笠原
[6] 2023年11月19日612㎞M5.9pr(6.5)
[5] 2018年2月6日490㎞M5.3np(5.6)
[4] 2015年10月20日325㎞M5.6np(5.8)
2015年6月15日390㎞M4.9P(5.5)
2015年6月3日695㎞M5.0-t(5.6)
2015年5月30日688㎞M7.9t(8.1)
[3] 2013年5月14日620㎞M6.8p(7.3)
[2] 2010年3月8日463㎞M6.0p(6.5)
[1] 2009年9月23日435㎞M5.2p(5.7)
2009年5月26日462㎞M4.7+np(5.0)
[0] 1993年3月20日366㎞(M4.7)
[-1] 1985年12月3日436㎞(M6.0)
[-2] 1970年5月20日350㎞(M7.1)
である.「伊豆和達δMariana震源区WdtiPcDM」の観測地震が2010年以降に限られているのは,観測限界外であったとも考えられるので2010年以前に起こっていなかったは不明であるが,小笠原震源区とMariana震源区の活動は同期していない.

図536.伊豆海溝域で裂けて沈込む太平洋Slab.
 震源帯名は上から同心円状屈曲を開始する「伊豆海溝TrPc」(黒色),屈曲Slabと島弧地殻・Mantleの衝突による「伊豆前弧fAcPc」(橙色),引き裂かれる前の「伊豆和達島弧WdtiPcAc」(青色),横臥状に同心円状屈曲したまま深度660㎞の下部Mantle上面に載る「伊豆和達αWdtiAlf」(紺色),垂直に下部Mantle上面を突き抜く「伊豆和達δWdtiPcD」(紫色),深度550㎞のγ相への相転移面で押し流される「伊豆和達γWdtiPcG」(緑色),深度410㎞のβ相への相転移面で押し流される「伊豆和達βWdtiPcB」(黄緑色).日本海溝から沈み込むSlabの「東北和達震源帯列WdtiJ」(薄紫色).引き裂かれたSlabの隙間からPlate運動に随行してきた太平洋底下のMantleが流出する.
 「伊豆和達δWdtiPcD」(紫色)の分布を小笠原小円区のみとしていたが(月刊地震予報131月刊地震予報170),2023年11月19日612㎞M5.9prに基づきMariana小円区にも分布していることが判明した.
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3.2023年11月24日の伊豆海溝域MarianaM6.9

 伊豆海溝域のMariana小円区で11月24日18時05分深度10㎞のM6.9Trが在った.破壊開始の初動規模はM7.5で,破壊開始震動が本破壊の10倍近く大きい.
 本地震は,太平洋Plateが伊豆・小笠原海溝に沿って同心円状屈曲Slabとして沈込む際に,Slab上面と接する島弧地殻・MantleとのPlate境界に沿う「伊豆前弧震源帯fAcPc」のMariana震源区fAcPcMの島弧地殻・Mantle側で起こった(図537).非双偶力成分比は+24%で,引張T歪が圧縮P歪の2.4倍の引張過剰である.引張歪軸傾斜方位は330+20°で,北緯20.4°の震源におけるPlate運動PC-PH方位303°から27°時計回り回転しており(図537右下図の主歪軸傾斜方位図の左下の青色△が紫色のSub折線の下方に位置している),Coliolis力を受けていることを支持する.
 Coriolis力によって,正断層型CMT解の引張T歪軸方位がPlate運動方位から緯度程度の時計回り回転することが千島海溝域と琉球海溝域の琉球裂開沖縄震源区で認められているが,伊豆海溝域では反時計回り回転が認められおり,伊豆弧の西南日本との衝突の影響が予想されていた(月刊地震予報170).本地震は,伊豆海溝域の最南端Marianaに位置し,西南日本との衝突の影響が及ばないことと大きな引張過剰であることから,Coliolis力による回転が認められたのであろう.
 「伊豆前弧沖Mariana震源区fAcPcM」のCMT解3個の[節番号]・発生年月日・深度・規模・発震機構・(初動規模)は:
[3] 2023年11月24日10㎞M6.9Tr(7.5)
[2] 2016年12月14日16㎞M6.1+nt(6.3)
[1] 2007年1月31日24㎞M6.7-np(7.1)
である.

図537.伊豆小笠原海溝域の「伊豆前弧震源帯fAcPc」の観測地震.
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)の数字とMは,発生年月日・規模.
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4.2023年12月の月刊地震予報

 千島海溝域は静穏化しているが,2023年9月にM6級の地震が2個起こった後,10月1個M5.3・11月1個M5.1と静穏化しているが,2-3月周期で活動していることから,得撫島域のM8級の巨大地震に警戒が必要である.
 伊豆海溝域は,11月にMarianaでM6.9・M5.9が発生したが,10月にも伊豆裂開震源帯RifIのM6.3が起こり,八丈島の津波と硫黄島の噴火があり,警戒が必要である.
 琉球海溝域では,11月にΣM5.6と静穏化しているが,2022年9月に歪解放周期第4節第1小節の西南海溝震源帯のM7.4が起き,2023年9月に第2小節の舞台となる西南平面化震源帯uBdPhでM6.3,2023年10月に第3小節の舞台となる西南裂開沖縄震源区RifPhOkwでM5.7が起こっており,第4節の第2小節への移行が予想される.第2小節では被害地震が少ないが,次の第3小節では前の第3節の第3小節で2016年4月の熊本地震M7.1が起こっている.また,第-1節の第3小節で最大地震M7.2が今回の震源域で起こっており津波も伴っていたことから,今後に経過を注意深く見守る必要がある.

月刊地震予報170)2023年10月6日伊豆海溝域M6.3の伊豆裂開地震,琉球海溝域2023年10月16日M5.7の沖縄海盆裂開地震,2023年11月の月刊地震予報

1.2023年10月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年10月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で29 個0.524月分,千島海溝域で1個0.020月分,日本海溝域で2個0.038月分,伊豆・小笠原海溝域で21個2.936月分,南海・琉球海溝域で5個0.187月分であった(2023年10月日本全図月別).
 2023年10月の総地震断層面積規模はΣM6.9で,最大地震は,2023年10月6日伊豆のM6.3で,M6.0以上の地震は,伊豆の2023年10月3日M6.0(M6.4),10月4日M6.0(M6.2),10月5日M6.1(M6.5),10月6日M6.3(M6.0)と琉球の10月16日M5.7(M6.0)であった(図522).今月の地震のCMT規模と初動IM規模の差が大きかったのでCMT規模の後の括弧内に初動IM規模を付けた.
 2023年10月までの日本全域2年間のCMT解は362個で,その総地震断層面積規模はΣM7.8,Plate運動面積規模はM8.2,その比は0.305である(図515の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図522右図上左端のTotal/4).

図522 .2023年10月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,2年間のM7.0以上のCMT解に加え2023年10月についてはM6.0以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年11月1日)から終了(上端2023年10月31日)までの730日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年10月6日伊豆海溝域M6.3の伊豆裂開震源帯地震

 伊豆海溝域の鳥島南西沖で,2023年10月3日20時38分深度10㎞のM6.0ntから10月8日14時36分深度10㎞のM5.2-tまで伊豆小円南区の伊豆裂開震源帯RifIで15個のCMT解が観測された.最大は,2023年10月6日10時31分深度10㎞のM6.3Tである(図522).この震源域では3ヶ月半前にも2023年6月25日M5.2-tが在った.
 最初の10月3日M6.0についてのみ震度分布が公表されており,小笠原で最大震度1が観測されている(図523右図).

図523 .2023年10月3日伊豆M6.0(M6.4)と2023年10月16日沖縄TroughM5.7(M6.0)
の震度分布.
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 今回のCMT解では,初動とCMTの規模差と標準偏差が0±0.3で,CMT解の1/3が0.3以上の規模差を有するが,平均すると相殺する.
 初動震源の破壊開始深度は島弧Mantle上部の12㎞から47kmであるが,主破壊のCMT震源深度は10㎞と15㎞で,その深度差は-19.2±11.5kmとなり,約20㎞上方への破壊進展を示している.

図524.伊豆裂開震源帯RifIのCMT解歪軸方位.
 左の震央地図にはPhilippine海Plateに対する太平洋PlateのEuler緯線を示す.その緯度と運動速度は右縁.歪軸方位がほぼEuler緯線に沿っている.
 右側震央地図の数字は,表示CMTの発生年.
 右の縦断面図の時系列図左縁の数値は節番号.
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 CMT発震機構は正断層型22個(図524Benioff図の黒色)・横擦断層型3個(同緑色)・逆断層型2個(同赤色)で正断層型が総地震断層面積の8割を占め優勢であり,主引張T歪軸方位(図524右下図の△印)は主歪軸傾斜方位図基準の海溝傾斜方位に沿うPlate運動方位(図524右下図の紫色折線Sub)より少し上に集中し,Plate運動方位から反時計回りに回転していることを示している.この回転角は西北西のPlate運動方位282°から反時計回りに-23±25°と算出される.2個の逆断層型(橙色)はEuler緯度+59°付近にのみ位置し,その非双偶力成分比は+16%・+26%でT/P=1.71・2.62と大幅な引張過剰である.横擦断層型のT軸方位もPlate運動方位に沿っており,震源が伊豆弧頂部に位置していることからPlate運動による弧間海盆裂開に関係していることを示している.
 正断層型CMT解の引張T軸方位のPlate運動方位からの偏り(時計回りを正,反時計回りを負)が平均緯度44.1±1.6°の千島海溝域で+54±35°と大きいことから地球自転によるCoriolis力(Coriolis,1835)の関与が示唆されている(月刊地震予報169).伊豆海溝域にも緯度程度の時計回り回転が期待されるが,伊豆海溝域の全ての正断層型CMT解の偏角は,-43±34°と反時計回転している(図525).この中に今回の伊豆裂開震源帯RifIの反時計回転も含むが,伊豆海溝域が他の時計回転をしている海溝域と異なっていることは確かである.

図525.伊豆海溝域の全CMT解歪軸方位.
 左の大震央地図:南東から西方への曲線はPlate運動PC-PHのEuler緯線.
 右の小震央地図:南東から北北西方への曲線はPlate運動PH-AMのEuler緯線.
 右下の主歪軸傾斜軸方位図の正断層型CMT解の主引張T軸(△印)が,図中央基準横線の海溝軸傾斜方位より上の反時計回転と下縁に揃っている.下縁は逆歪軸傾斜に対応する.
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 伊豆海溝域は太平洋Plateに沈み込まれるとともに,Phillipine海Plate北東縁 の伊豆弧が,Amur Plateの西南日本に衝突している特異な海溝域である.衝突は,北西302°のPlate運動方位PH-AMに圧縮P主歪(図525中図海溝距離断面図内の震央地図のEuler緯線方位)を与えており,それに直交する引張T主歪方位は南西212°になる.この引張歪は,Plate運動による西北西282°の弧間海盆拡大方位を反時計回転させる.
 他の海溝域では,海溝から沈込む海洋底は一連のSlabとなって沈込むが,伊豆海溝域では4か所で切り裂かれ,短冊状に沈込んでいる(図526:月刊地震予報119月刊地震予報147).この切り裂かれたSlabの同心円状屈曲の程度は,南側程深くまで保持されているので,南西方向に背弧側への隙間ができる.太平洋底とともにPlate運動して来た随行Mantleが同心円状屈曲によって行き場を失ってSlabの隙間から流出する.この南西方流出によって形成される引張歪も,引張歪方位を反時計回りに回転させる候補になる.
 

図526.伊豆海溝域に裂けて沈込む太平洋Slab(月刊地震予報131).
 震源帯名は上から同心円状屈曲を開始する「伊豆海溝TrPc」(黒色),屈曲Slabと島弧地殻・Mantleの衝突による「伊豆前弧fAcPc」(橙色),引き裂かれる前の「伊豆和達島弧WdtiPcAc」(青色),横臥状に同心円状屈曲したまま深度660㎞の下部Mantle上面に載る「伊豆和達αWdtiAlf」(紺色),垂直に下部Mantle上面を突き抜く「伊豆和達δWdtiPcD」(紫色),深度550㎞のγ相への相転移面で押し流される「伊豆和達γWdtiPcG」(緑色),深度410㎞のβ相への相転移面で押し流される「伊豆和達βWdtiPcB」(黄緑色).「東北和達震源帯列WdtiJ」(薄紫色)は日本海溝から沈み込むSlab.引き裂かれたSlabの南西方隙間からPlate運動に随行してきた太平洋底下のMantleが流出する.
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 伊豆裂開震源帯RifIには27個のCMT解あり,総地震断層面積はΣM7.0で,間欠的な5回の活動期がある(図524).Benioff曲線の傾斜が急になる歪解放期を「節Node」と名付け,[0]から[5]の節番号を付ける(図524右の縦断面時系列areaM左縁).最大CMT解2006年10月M6.4を含む2006年[2]と2018年[4]の間の間隔が広いので,その間に[3]を挿入する余裕を持たせ欠番とする.今回の[5節]は,個数・規模共に最大である.
 伊豆裂開震源帯RifIの[節]を構成するCMT解とその(小円区)は;
[5] 2023年10月3日-10月8日ΣM6.8(Izu),2023年6月25日M5.2-t(Izu)
[4] 2018年5月6日M5.3+pr(nIz),1月4日M5.6t(Izu),2017年11月18日M4.9t(nIz)
[2] 2006年10月29日M5.7-t(Izu),10月24日M6.4-t(Izu),2005年12月26日M5.7t(Pla)
[1] 2001年7月5日M5.6-t(nIz),7月5日M5.7T(nIz),M5.9t(nIz),7月4日M5.2T(nIz)
[0] 1996年9月5日M5.7+p(nIz)
 伊豆裂開震源帯RifIにはCMT以前にも観測地震が5個あり,1985年と1965年に間欠的に活動している(図527).節[番号]を拡張し,活火山島名を付すと:
「‐1] 1985年10月M4.6(Izu)西之島北方,1985年9月M5.1(Izu)西之島北方,1985年8月M5.2(Izu)西之島北方,1984年6月M5.9(nIz)須美寿島
[-2] 1965年11月M5.4(Izu)鳥島
 伊豆裂開震源帯RifIの震央は海溝距離200㎞から300㎞に収まっており,活火山列にほぼ一致している(図427の右震央地図).CMT深度(図524)は10㎞・15㎞と浅いが,破壊開始の初動震源深度(図427中央の海溝距離断面図の〇印)は12㎞から47kmと島弧地殻下底のMoho面以深が主体で,火山活動による地殻破壊ではない.
 太平洋Plateは伊豆・小笠原海溝に沿って同心円状屈曲Slabとして沈込む際に,Slab上面に接する島弧地殻・Mantleを下方へ引き摺り減圧する.減圧による引張歪が限界に達して破壊するのが伊豆裂開震源帯RifIである.島弧Mantleの減圧は,間欠的な破壊とともに常にSlab上面から水分を吸収し,深度100㎞付近で島弧Mantleを部分溶融させMagmaを生成し,活火山列を造ると考えられている(例えば,巽,1995).
  今回の地震活動終了15時間後の10月9日5時25分に八丈島で60cmを最大とする津波が西南日本太平洋岸で報告されている.通常M6.5以上の地震断層に伴う海底面の急速上下変動によって津波が起こされるが,この津波に関係する地震は観測されておらず,通常の津波ではない.八丈島沖の火山性崩壊が予想される.
 新聞報道によると硫黄島南数百m沖では,10月下旬から軽石噴火を開始し,頂部が海面上に達し島となったことが確認されている.

図527.伊豆裂開震源帯RifIの観測地震と活火山列.
 震央地図の数字は,CMT以前の観測地震発生年.
 〇印の中心:初動震源,-印:〇印の中心から伸びる線の先端がCMT震源
 右側震央地図の△印:活火山.
 右縦断面図の時系列図左縁の[数値]は節番号.
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  伊豆裂開震源帯RifIの[節]別火山活動年(2004年版理科年表と新聞報道)は;
伊豆大島:[5][4][2][1][0]1990,88,87,86,[-1]1974,71[-2],1956,55,54,53,51,38,12
三宅島:[5][4][2][1]2000,[0][-1]1983,[-2]1962,1940,1874
明神礁:[5][4][2][1][0][-1]1970,[-2]1960,55,54,52,46,34
須美寿島:[5][4][2][1][0][-1][-2]1916
鳥島:[5][4][2][1][0][-1][-2]1939,02
西之島:[5]2023,20,17[4]2015,14,13,[2][1][0][-1]1974,73[-2]1702
海徳海山:[5][4][2][1][0][-1]1984,[-2]1543
北硫黄島:[5]2021,[4][2][1][0][-1]1989,[-2]1945,30
硫黄島:2023[5][4][2][1]2001,[0][-1]1982,78,69,67,[-2]1957,35,22
南硫黄島:[5][4][2]2005,[1][0]1990,89,87,86,[-1]1980,79,78,77,75,74,73,[-2]1904

 [-2]節からの噴火活動は大島から南硫黄島までの全域であり,[-1]からは南北端の大島と南硫黄島のみになり,[0]から南北端の三宅島と硫黄島,[1]からは南硫黄島のみとなり,[2]から中央の西之島(速報48,)のみ,[4]以降は南端の北硫黄島のみとなっている.
 伊豆裂開震源帯RifI[-2]節の1965年M5.4の震源は,震源帯中央付近に位置し,最初の観測地震であることは,伊豆裂開震源帯RifIの引張歪がこの地震によって解放され,島弧地殻下のMagma溜を圧縮し,噴火を誘発したのであろう.
 伊豆裂開震源帯RifIの間欠的地震活動と伊豆海溝域の観測地震2196個との関係を検討する.全観測震源分布(図528)はCMT解分布(図525)とほぼ重複し,Slabの短冊状裂開(図526)もCMT解以前から存在していたことが分かる.伊豆海溝域最大地震は,2015年5月30日M7.9t(Oga)WdtiPcDog 688kmで(速報68),その深度が下部Mantle上面深度660㎞を有意に超えていることが注目される(図528).この発生は2017年11月M4.9tから2018年5月M5.3+prの伊豆裂開震源帯RifIの[4]節の3年前である.

図528.伊豆海溝域Iの観測地震.
 海溝距離断面図の数字とM:最大地震の発生年と規模.
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 伊豆海溝域全体の地震活動の趨勢は時系列のBenioff曲線(図528右)で知ることができる.規模Mが0.1大きいと地震断層面積は1.3倍になるので,総地震断層面積の趨勢はMが0.1でも大きな地震に支配される.個数の多い規模の小さい地震は趨勢への影響が小さいので,検討する地震の規模に下限を設定して解析を進めることにする.
 全観測地震におけるCMT解(図529の時系列Benioff図で赤・緑・黒に彩段してあるのが,発震機構が分かるCMT解で,判明していない1994年以前の観測地震については灰色に彩段してある)の全地震断層面積に対する割合は約半分であるが,CMTの期間長は全観測期間の3分の1なので,1994年以降の地震活動活発化が分かる.この活発化は,下限規模をM7.0に設定しても(図529のBenioff曲線)保たれる.
 M7.0以上の観測地震個数は全観測地震の約百分の1の23個に減少するが,ほぼ垂直になるまで同心円状屈曲したSlabが随行Mantleによって背弧側に押し流されて引き裂かれるとともに,下部Mantleにまで突入する主要な趨勢(図528)を保持している(図529).
 M7.0以上の地震には,伊豆裂開震源帯RifPhの節番号(図524・図527)に対応する7節とそれ以前の2つを加えた9節が認められる(図529右図中の時系列図左縁の[番号]).欠番にしていた第2節と第4節の間の第3節に伊豆海溝震源帯TrPcのM7.0以上のCMT解を補充した.
 M7.0以上の観測地震による節の年月・規模・発震機構・(小円区)・震源区・深度は;
[4] 2016年7月M7.7T(Mar)WdtiPcAcM 222km,2015年5月M7.9t(Oga)WdtiPcDog 688km
[3] 2010年12月M7.3To(Oga)TrPcOg 13km,2009年8月 M7.2P(sKa)WdtiPcBk 314km
[2]2007年10月M7.0Tr(Mar)WdtiPcAcM 198km,2007年9月M7.4+nt(Pla)WdtiPcAcPl 281km
[1] 2000年8月M7.3P(Izu)WdtiPcGi 422km,2000年3月M7.6(Pla)WdtiPcAcPl 151km,1998年8月M7.0P(Izu)WdtiPcGi 445km
[0] 1984年3月M7.6(Izu)WdtiPcGi 452km,1984年1月M7.0(sKa)WdtiPcBk 388km
[-1]1978年3月M7.2(nIz)WdtiPcGi 440km,1978年1月M7.0(sKa)PfcIK 1km,1974年11月M7.3(nIz)WdtiPcGi 454km,1972年12月M7.2(sKa)fAcPcK 54km,1972年2月M7.0(sKa)fAcPcK 22km,1970年5月M7.1(Oga)WdtiPcDog 350km,1968年10月M7.3(Pla)WdtiPcAlfPl 460km;
[-2] 1955年5月M7.5(Pla)WdtiPcAlfPl 600km,1953年11月M7.4(sKa)TrPcK 39km,1951年7月M7.2(Izu)WdtiPcGi 490km;
[-3] 1930年11月M7.3(Kas)PfcIK 1km
[-4]1923年9月M7.3(sKa)PfcIK 14km
 最初の[-4]は伊豆弧北端・西南日本衝突の1923年9月10日関東大正地震M7.9の翌日に伊豆太平洋岸震源帯PfcIで起っている.この太平洋岸震源帯PfcIは,海溝距離が大きく深度が浅い特徴がある(図529中図下の海溝距離断面図).[-3]の1930年M7.3と[-1]の1978年M7.0も伊豆太平洋岸震源帯PfcIで起こっており,伊豆弧北端の衝突が伊豆海溝域の地震活動の趨勢を支配している.

図529.M7.0以上の伊豆海溝域観測地震.
 左震央図と中海溝距離断面図のMと数字は規模と[節番号].
 右縦断面図の時系列図左縁の[数値]は節番号.
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 海溝域における各震源帯のareaM・Benioff曲線を配列した図を「震源譜 Seismic Score」と名付け(図530・図531),比較検討に使用する.上段右端「Total」が全地震で,その左の「Total M>7」がM7.0以上の地震で,M7.0以上の地震でも全地震の趨勢を保っていることを確認できる.節設定に使用したM7.0以上の地震を節代表地震として所属震源帯の時系列図にも鈎括弧で表示する.
 島弧地殻・Mantleの震源帯には,伊豆裂開震源帯RifI・伊豆太平洋岸震源区PfcI・伊豆近海震源帯nShIがある(図530・531上段左端のRifI・PfcI・nShI).伊豆裂開震源帯RifIのCMT解の節は(図524・図527),伊豆太平洋岸震源帯PfcIおよび伊豆近海震源帯nShIの節と対応させることができ,PfcIがRifIに先行している.nShIの唯一のCMT解を第1節とするとPfcIに先行させることができる(図530).
 海洋底が島弧地殻・Mantle下に沈込んで同心円状屈曲Slabになる伊豆海溝震源帯TrPc(図530上段右から3列目)のCMT解最初の節を第1節に対応させると,伊豆海溝震源帯TrPcが第1節から第5節まで順次遅延する島弧地殻・Mantleの節の先頭に位置付けられ,Slab沈込から島弧地殻・Mantleの歪を順次解放する道筋を描くことを可能にする.

図530.伊豆海溝域CMT解の震源譜.
 左図:震源帯別震央地図.西から南東への曲線はPlate運動PC-PHのEuler緯線.Euler緯度と年間移動距離cm/yearは右上端の震央地図の右縁.Euler要素は左上端の震央地図上縁.
 右図:別地震断層面積移動平均規模曲線areaM・地震断層面積積算曲線Benioffによる震源帯別時系列図.時系列図左縁の数値は節番号,[数値]はM7.0以上の節番号設定に用いられた節番号.縦軸は年数.
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 全観測地震では(図531),伊豆太平洋岸震源帯PfcIにM7.0以上の節[-1]・[-3]・[-4]があり,その間に‐2節を設けると,伊豆裂開震源帯RifIの節に先行させることができる.
 伊豆海溝震源帯TrPc(図530・図531の右上行の左から3列目)には,[-2]および[3]を代表するM7.0以上の地震が在る.[3]の代表地震は,伊豆海溝域と同じ太平洋底が沈込む日本海溝域の2011年3月11日東北弧沖震源帯oAcJ M9.0の前年末に起こっている(速報28).[-2]の代表地震以降,Slab沈込に関係する伊豆前弧震源帯fAcPc・伊豆和達震源帯列WdtiPcがM7.0以上の代表地震を独占する(図530・図531の中行下右から2列目).[-2]は1951年から1955年で,西南日本の「安政-昭和の大地動乱」終末の1944年昭和東南海M7.9・1946年昭和南海M8.0(新妻,2023)に対応し,[-2]以前に伊豆海溝域の地震活動の支配が伊豆弧の衝突から沈込Slabへ移行している.
 伊豆弧衝突支配から脱し,[-2]節代表を握ったのは,衝突境界から最も離れているSlab深部の伊豆和達α震源帯WdtiAlfと伊豆和達γ震源帯WdtiG(図531下行左列)である.また,今回の地震の背弧海盆拡大の伊豆裂開震源帯RifIも活動を開始している.
 [-1]節代表は,伊豆和達α震源帯WdtiAlfと伊豆和達γ震源帯WdtiGが握り続け,伊豆和達δWdtiDも加わると共にSlabj最上部の伊豆前弧震源帯fAcPcが加わる.
 [0]節代表には,伊豆和達γ震源帯WdtiGが留まり,衝突境界に近い伊豆和達β震源帯WdtiBが登場する.
 [1]節代表には,主席を担ってきた伊豆和達γ震源帯WdtiGの最後となり,短冊状に裂く切れ目より上の切断してないSlabに位置する伊豆和達島弧震源帯WdtiPcAcが以後の主席を担う.
 [2]節代表には,伊豆和達島弧震源帯WdtiPcAcのみが留まる.
 [3]節代表には.東北弧沖巨大地震M9.0と関連する日本伊豆海溝震源帯TrPcと東北日本に最大異常震域を持つ伊豆和達β震源帯WdtiPcB(月刊地震予報119月刊地震予報159)がなる.
 [4]節代表は,伊豆和達δ震源帯の伊豆海溝域最大地震M7.9t深度688㎞である.この震源は660㎞の下部Mantle上面を突き抜いたSlab内で発生していることは,Slabが下部Mantle上面ははるか以前に貫通し,下部Manlteの浮力によってSlabが沈込めなかったが[3]節直後の日本海溝域の東北弧沖巨大地震M9.0の太平洋Slab沈込により,Slab先端が浮力を脱して沈込んだことを示唆し,今後の動静に警戒が必要である.

図531.伊豆海溝域全観測地震の震源譜.
 左図:震源帯別震央地図.西から南東への曲線はPlate運動PC-PHのEuler緯線.Euler緯度と年間移動距離cm/yearは右上端の震央地図の右縁.Euler要素は左上端の震央地図上縁.
 右図:別地震断層面積移動平均規模曲線areaM・地震断層面積積算曲線Benioffによる震源帯別時系列図.時系列図左縁の数値は節番号,[数値]はM7.0以上の節番号設定に用いられた節番号.縦軸は年数.
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3.琉球海溝域2023年10月16日M5.7の西南裂開震源帯地震

 琉球海溝域八重山小円区Yaeの深度17㎞で2023年10月16日19時42分に西南裂開震源帯沖縄震源区RifPhOkwのM5.7-trが発生した(図532).CMT規模はM6.0以下であるが,初動規模がM6.0であるので取り上げる.本地震の震度分布は,震源近くの宮古島で最大震度4を記録している(図523左図).
 本地震の非双偶力成分比は-27%でT/P=0.36と圧縮P主歪173+69が引張T主歪44+14の2倍の圧縮過剰である.引張T歪軸方位は,Plate運動方位PH-SCの304°に対し+100°時計回りで極めて異常である.下から押し上げる圧縮主歪によるものであろう.
 西南裂開震源帯RifPhのCMT解198個の発震機構型は,正断層型tが29個・引張過剰正断層型Tが46個・圧縮過剰正断層型が10個・引張横擦断層型ntが95個・圧縮横擦断層型npが18個で,引張歪優勢であることは,沖縄海盆拡大との関係を示している.
 引張主歪軸方位(図532右下図主歪軸傾斜方位図の△印)が海溝軸傾斜方位[TrDip]基準の主歪軸傾斜方位図における基準軸付近のPlate運動方位線(紫色折線Sub)の下側およびそれと180異なる上下両端に分布していることは,時計回りに回転していることを示している.180異なるのは同一方位で逆傾斜を意味する.
 この引張T主歪軸方位の回転は,Plate運動PH-SC方位307°に対して+29±21°と算出される.この回転角は平均緯度29.5±2.7°と同じである.
 平均緯度44.1±1.6°の千島海溝域正断層型CMTの引張T主歪軸方位がPlate運動方位に対して+54±35°回転していることから地球自転によるCoriolis力(Coriolis,1835)の関与が予測されているが(月刊地震予報169),西南裂開震源帯RifPhの緯度程度の時計回り回転によって確認できた.

図532.2023年10月16日M5.7-trと西南裂開震源帯RifPHのCMT解主歪方位.
 左図:震央地図.北西-南東方向の曲線はPlate運動PH-SCのEuler緯線,右縁の数値はEuler緯度と括弧内が年間速度cm/年.Mと数値は規模と[節番号].
 中図:海溝距離断面図.Mと数値は規模と[節番号].
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 本震源域は.沖縄海盆の最深域の北東縁に位置している.西南裂開震源帯RifPhの全観測地震のBenioff曲線に段差を与える節代表地震は八重山小円区と九州小円区の南北両端に分離している(図533).北の九州には3節・1節・‐1節と奇数節,南の宮古島北西沖には2節・0節・‐2節と偶数節の代表震源が位置し,交互している.2016年4月熊本地震M7.0(速報79)は3節であり,第4節の先頭を切る第1小節の西南海溝震源帯TrPhで2022年9月M7.4tro(月刊地震予報157)に続いて第2小節の西南平面化震源帯uBdPhで2023年9月M6.3(月刊地震予報169)も起こっいる.第3節の第3小節の西南裂開震源帯RifPhは2020年5月3日M6.0+ntまで起こっていたが(月刊地震予報129),今回の地震が第4節に予想される八重山小円区で起こっていることは,第3小節の開始を示唆している.

図533.2023年10月16日M5.7-trと西南裂開震源帯RifPHの全観測震源と節区分.
 左図:震央地図.Mと数値は規模と[節番号].
 中図:海溝距離断面図.Mと数値は規模と[節番号].
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 南西裂開震源帯RifPh(第3小節)のM6.0以上の観測地震の発生年月日・規模・(小円区)と節区分は;
節 西南裂開震源帯
[4] 2023年10月16日M5.7-tr(Yae)
[3] 2020年5月3日M6.0+nt(Ryu),2016年4月16日M7.0+nt(Kyu),15日M6.0-nt(Kyu),14日M6.2+nt(Kyu),2015年11月14日M6.7+nt(Ryu)  
[2] 2007年8月7日M6.0+nt(Ryu),4月20日M6.0+nt(Yae),M6.4T(Yae),M6.3T (Yae)
[1] 1997年5月13日M6.2+nt(Kyu),3月26日M6.1+nt(Kyu),1995年12月30日M6.1(Yae)
[0] 1980年3月9日M6.3(Ryu),3月3日M6.7(Ryu),1975年1月23日M6.1(Kyu)
[-1] 1942年3月22日M6.5(Ryu)
[-2] 1938年6月10日M7.2(Yae),4月22日M6.0(Ryu)
[-3] 1928年6月3日M6.6(Ryu),1925年3月16日M6.0(Kyu),1922年12月8日M6.5(Kyu),M6.9(Kyu),9月15日M7.0(Hau)
 今回の震源域は,西南裂開震源帯で最大の1938年6月M7.2が‐2節に起き,その10分後に1.5mの津波が報告されていることから(宇佐美,2003),津波への警戒も必要である.第3節・第2節で最大地震より規模の小さい地震と連発していることから,今回の地震に続いてM7級の本震が起こることも予想される.

4.2023年11月の月刊地震予報

 千島海溝域は今月CMT解1個M5.3ntと静穏化しているが,2023年9月にはM6級の地震が2個起こっており,得撫島域のM8級の巨大地震に警戒が必要である.
 伊豆海溝域は,下部Manlteの浮力によってSlabが沈込めなかったが[3]節直後の日本海溝域の東北弧沖巨大地震M9.0の太平洋Slab沈込により,Slab先端が浮力を脱して沈込み,そこで[4]節が起こったことが示唆され,今後の動静に警戒が必要である.今回の伊豆裂開震源帯RifIの活動に続き八丈島の津波と硫黄島の噴火があり,火山活動にも警戒が必要である.
 琉球海溝域では,歪解放周期第3節の第1小節が西南海溝震源帯TrPhで2022年9月に開始されたが(月刊地震予報157),西南平面化震源帯uBdPhで2023年9月18日M6.3が起こったことから第2小節への移行が予想される.第2小節では被害地震が少ないが,次の第3小節では前の歪解放周期の第2節の第3小節で2016年4月の熊本地震M7.1が起こっている.また,第-1節の第3小節で最大地震M7.2が今回の震源域で起こっており津波も伴っていたことから,今後に経過を注意深く見守る必要がある.

引用文献

 新妻信明(2023)西南日本の地震活動の地震帯区分と南海Trough巨大地震.地質学会2023年講演会,T5-O-14.
 巽 好幸(1995)沈み込み帯のマグマ学.東京大学出版会,186p.
 宇佐美龍夫(2003)日本被害地震総覧.東京大学出版会(東京),605p.

月刊地震予報169)2023年9月12日台湾のM6.4と2023年9月18日琉球のM6.3,2023年9月2日KamchatkaのM6.1と2023年9月29日択捉のM5.9,2023年10月の月刊地震予報

1.2023年9月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年9月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で22 個0.461月分,千島海溝域で2個0.299月分,日本海溝域で5個0.124月分,伊豆・小笠原海溝域で6個0.396月分,南海・琉球海溝域で9個0.758月分であった(2023年9月日本全図月別).
 2023年9月の総地震断層面積規模はΣM6.8で,最大地震は,2023年9月12日台湾のM6.4で,M5.9以上の地震は,2023年9月2日KamchatkaのM6.1と2023年9月18日琉球のM6.3および2023年9月29日択捉のM5.9であった(図515).
 2023年9月までの日本全域2年間のCMT解は341個で,その総地震断層面積規模はΣM7.8で,Plate運動面積規模はM8.2で,その比は0.292である(図515の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図515右図上左端のTotal/4).
 千島海溝域Aは,Plate運動との比が0.040と静穏化している中で,4ヶ月毎にM6.1以下の段差が生じていたが(図515右図右端),2023年9月2日千島弧沖震源帯oAcCのKamchatka震源区Kamc深度117㎞のM6.1Tが明瞭な段を形成し,2023年9月29日択捉震源区Etr深度46㎞のM5.9Pが加わり総地震断層面積規模ΣM6.3となり,2021年7月以降最大の段差を記録した.
 

図515 .2023年9月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,2年間のM7.0以上のCMT解に加え2023年9月についてはM5.9以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年10月1日)から終了(上端2023年9月30日)までの730日間で,右図右端の数字は年数である.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震j断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が集積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年9月12日台湾のM6.4と2023年9月18日琉球のM6.3

 琉球海溝域で,2023年9月12日20時03分に台湾小円区深度29㎞の西南近海震源帯nShPh台湾震源区TwでM6.4+proと2023年9月18日22時21分八重山小円区深度190㎞の西南平面化震源帯uBdPh琉球震源区RkでM6.3-npが発生した(図515).
 琉球海溝軸は,台湾に上陸して衝突し,沈込めなくなり,台湾南方では沈込極性を逆転して西側からPhilippine海Plateに南華Plateが沈込んでいる.2023年9月の最大地震M6.4は,台湾南方深度29㎞で南華Plateに沈込まれている海洋Moho付近の西南近海震源帯nShPhで発生している(図515).
 2023年9月18日琉球の深度190㎞M6,3-npは,西南平面化震源帯琉球震源区uBdPhRkで発生し,震度分布が公開されている(図516).その最大震度は3で,琉球列島域を震度1以上で覆っているが,海溝外の南大東島でも震度1を記録し,沈込んだSla内で起こった震動が琉球海溝外にも伝わっていることを示している.

図516 .2023年9月18日琉球M6.3-np深度190㎞と2023年9月29日千島M5.9P深度46㎞の震度分布.
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 琉球海溝域全体の時系列に沿って地震断層面積を累計するBemopff曲線はほぼ一定の傾斜で増大する(図517右端図).しかし,震源帯別のBenioff曲線には歪解放の活発な節が認められ,西Philippine海洋底が同心円状屈曲して沈込む西南海溝震源帯TrPh(図517右から2番目)に1999年9月の節,同心円状屈曲したSlabが平面化する西南平面化震源帯uBdPh(図517左から2番目)に2005年10月の節,背弧海盆拡大の西南裂開震源帯RifPH(図517左端)には2007年4月の節と,海溝から背弧側に節が順次移行し,再び最初の海溝TrPhに2010年2月の節が出現する.この周期が歪解放周期である(月刊地震予報139月刊地震予報147月刊地震予報149).CMT解では第「0」周期から第「2」周期までの3周期が認められていたが,2022年9月海溝震源帯のTrPhTwM7.3(月刊地震予報157)によって4つ目の第「3」周期が開始された(図517).
 2023年9月の最大地震2023年9月12日20時03分台湾小円区深度29㎞西南近海震源帯nShPh台湾震源区TwのM6.4+proは,第一節の西南海溝震源帯TrPhと関連した活動であり, 2023年9月18日uBdPhRk深度190㎞のM6.3-npは第二節の西南平面化震源帯で起こっていることから,第一節の西南海溝震源帯に続き,第「3」周期に到達しようとしていると考えられ,今後の経緯を見守る必要がある.

図517 .琉球海溝域の震源帯別CMT解比較と歪解放周期.
 右端から,全CMT解 Total・第1節の西南海溝震源帯TrPh・第2節の西南平面化震源帯uBdPh・第3節の西南裂開震源帯RipPh.
 上図:震央地図.北西から南東の曲線は南華Plateに対するPhilippine海Plateの相対運動のEuler緯線.数値とMは2023年9月のM5.9以上のCMT発生年月日・規模.
 下図:時系列に沿う地震断層移動平均極線areaMと地震断層面積累積Benioff曲線.移動平均と累積の算出間隔は42.5日.左端の0-3の数値は歪解放周期番号.震源帯によってBenioff曲線の節となる歪解放期が異なり,第1節の海溝から第3節の背弧海盆に向けて遅くなる.
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3.2023年9月2日KamchatkaのM6.1と2023年9月29日択捉のM5.9

 千島海溝域の千島弧沖震源帯oAcCで,2023年9月2日5時50分Kamchatka震源区Kamc深度117㎞のM6.1Tと2023年9月29日2時40分択捉震源区Etr深度46㎞のM5.9Pが発生した(図515).
 2023年9月29日M5.9Pについては震度分布が公表されている(図516右).最大震度2が覆う北海道太平洋岸に加え,東北弧北部にも震度1が分布し,千島海溝域の太平洋Slabが日本海溝域まで連続していることを示している.
 千島海溝域CMT解のBenioff曲線(図518右中図)には,2007年と2013年に明瞭な段が認められるが,2013年以降静穏化が続いている.
 CMT解の発震機構(図518)は,圧縮過剰逆断層P型(桃色)が201個,逆断層p型(赤色)が116個,引張過剰逆断層+p型(橙色)が73個,引張過剰正断層型T(青色)が50個ある.主歪軸傾斜方位図(図518右下図)の中央線は海溝軸における海溝傾斜方位で,中央付近の右側の少し下方から左側の少し上方に向かう紫色線はPlate運動方位である.紫色線が図中央付近に位置することは,海洋底沈込む海溝軸方位がPlate沈込方位に沿っていることを示している.
 逆断層型の主圧縮P歪軸傾斜方位(図518右下図〇印)は傾斜方位図の上下縁と中央付近に集中している.中央付近に集中するのは島弧側に傾斜するSlabに働くPlate運動方位に沿う歪であり,上下端に集中するのはPlate運動方位に沿うが180°逆の海洋側に傾斜する剪断歪である(図519).島弧側に傾斜する摩擦のあるPlate境界面で衝突が起これば,Plate境界面に直交する抗力が働き,Plate運動方位に沿って擦れ違うPlate運動に抗力が合成されて主圧縮P歪軸傾斜が海溝側に回転し,剪断歪となり歪軸傾斜方位図の上下縁に作図される(月刊地震予報107,月刊地震予報136).2023年9月29日M5.9PのP軸傾斜方位は118°でPlate運動方位300°から182°異なっているので,Plate境界面に沿う剪断歪が解放された地震と言える.
 正断層型の主引張T歪軸傾斜方位(図518右下図の△印)は,紫色のPlate運動方位から下方(時計回り)に偏っている.Plate運動方位からの偏角は時計回りに54°とT軸傾斜方位の標準偏差±35より有意に大きい.日本海溝域の東北平面化震源帯uBdJ・東北和達震源帯WdtiJについては27±40,琉球海溝域で16±42と,T軸方位の標準偏差は同程度であるのに低緯度程,偏角が小さいことは,地球自転によるCoriolis力の関与を示唆する.2023年9月2日M6.1TのT軸傾斜方位331°もPlate運動方位305°から25°時計回りに偏っている.

図518.千島海溝域の全CMT解591個.
 数値とMは,全期間のM7.5以上のCMT解と2023年9月のM5.9以上のCMT解の発生年月日と規模.
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図519.Plate境界面に沿う剪断歪.
 島弧側に傾斜する摩擦のあるPlate境界面での衝突では,Plate境界面に直交する抗力が働くため,島弧側に傾斜するPlate運動方位に抗力が合成され剪断歪になり,主圧縮P歪軸傾斜が回転して海溝側に反転する(,月刊地震予報136).

 1922年以降の全観測地震のBenioff曲線(図520右中図)には,1923-1924年・1950-1971年・1993-2013年の活動期が3つの段として認められ,その間が静穏期になっている.現在は,2013年以降の静穏期にあり,M8級の来襲が警戒されている(月刊地震予報161).
 Benioff曲線による1993-2013年の活動期の2012年8月M7.7と2013年5月M8.3の深度が610㎞と632㎞で,660㎞の下部Mantle上面直上であることが注目される.この活動期が東北弧沖震源帯平成震源区oAcJHs M9.0の2011年3月より後なので,M9.0に誘導されたのであろう.これらの発震機構型は逆断層型(赤色と桃色)であり,主圧縮歪軸方位はPlate運動方位と一致していることから,低温のSlab先端が下部Mantle上面で相転移できず浮力を受け,沈込めず集積した圧縮歪によって破断したと考えられる.下部Mantleに突入したSlab先端は次第に加熱され相転移を起こして浮力を失い,Slabを引き降ろして千島海溝沿いの巨大地震を誘発することから警戒が必要である.

図520.千島海溝域の全観測震源.
 数値とMは,M7.5以上の発生年と規模.
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 M7.5以上の観測震源数は18個と全震源数2000個の百分の1以下であるが(図521),全観測震源の時系列Benioff曲線の特性(図520右中図)を保持しており,地震活動の大枠を担っていることが確認できる.M7.5以上の観測地震の中で発震機構が求められているのは1994年9月以降のCMT解で,逆断層型4個と正断層型1個の5個である.この主圧縮P歪軸と主引張T歪軸方位は何れもPlate運動方位(図520右下図中央の〇印と△印)に揃っている.これらの大地震は,同心円状屈曲Slab深部,下部Mantleに突入したSlab先端,Slabと島弧地殻の衝突によって起こっている.Slab沈込を阻止す島弧地殻との衝突による歪が限界を越して破断解放され,Slab末端が下部Manlteに押し込まれる様子が読み取れる.
 2000年以前は,千島海溝軸東西両端のKamchatkaと択捉Etrの島弧地殻と上部Manlte内のSlabで大地震が起こっていたが,2000年以降は中央部の松輪Mtwと得撫Urpで起こっており,深度は下部Mantle上面付近まで拡大している(図520右中図).100年間の観測記録では,地震活動の繰返が認められず,2013年以降の静穏期からの進展を推定することは困難であるが,下部Mantleに突入している低温のSlabが相転移できず浮力でSlabを支えているのであれば,日本海溝域の地震活動を参考にできる.東北弧沖平成巨大地震M9.0が海洋側に凸の最上小円区の中央で起こったように,海洋側に凸の千島弧を2分する千島小円区・Kamchatka小円区の境界でM9級の巨大地震に警戒が必要である.

図521.千島海溝域のM7.5以上の観測震源.
 数値とMは,発生年と規模.
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4.2023年10月の月刊地震予報

 琉球海溝域では,歪解放周期第3節の第1小節が西南海溝震源帯Trphで2022年9月に開始されたが,第2小節の西南平面化震源帯uBdPhで2023年9月18日M6.3が起こったことから第3節への移行が予想される.第2小節では被害地震が少ないが,次の第3小節では前の歪解放周期第2節で2016年4月の熊本地震M7.0が起こっていることから,今後に経過を注意深く見守る必要がある[2023年11月26日,歪解放周期についての節・小節の用法改訂].
 千島海溝域は,2013年5月24日M8.3の千島和達深発震源帯Kamchatka震源区WdtiCKamc以降静穏化しているが,2023年9月にはM6級の地震が2個起こっており,得撫島域のM8級の巨大地震に警戒が必要である.