東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。

大地震に伴う津波は、海難災害です。救命胴衣を着けていれば
犠牲者数を大幅に減らすことができます(月刊地震予報97)。
津波対策では何より先に救命胴衣の準備を。

月刊地震予報169)2023年9月12日台湾のM6.4と2023年9月18日琉球のM6.3,2023年9月2日KamchatkaのM6.1と2023年9月29日択捉のM5.9,2023年10月の月刊地震予報

1.2023年9月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年9月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で22 個0.461月分,千島海溝域で2個0.299月分,日本海溝域で5個0.124月分,伊豆・小笠原海溝域で6個0.396月分,南海・琉球海溝域で9個0.758月分であった(2023年9月日本全図月別).
 2023年9月の総地震断層面積規模はΣM6.8で,最大地震は,2023年9月12日台湾のM6.4で,M5.9以上の地震は,2023年9月2日KamchatkaのM6.1と2023年9月18日琉球のM6.3および2023年9月29日択捉のM5.9であった(図515).
 2023年9月までの日本全域2年間のCMT解は341個で,その総地震断層面積規模はΣM7.8で,Plate運動面積規模はM8.2で,その比は0.292である(図515の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図515右図上左端のTotal/4).
 千島海溝域Aは,Plate運動との比が0.040と静穏化している中で,4ヶ月毎にM6.1以下の段差が生じていたが(図515右図右端),2023年9月2日千島弧沖震源帯oAcCのKamchatka震源区Kamc深度117㎞のM6.1Tが明瞭な段を形成し,2023年9月29日択捉震源区Etr深度46㎞のM5.9Pが加わり総地震断層面積規模ΣM6.3となり,2021年7月以降最大の段差を記録した.
 

図515 .2023年9月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,2年間のM7.0以上のCMT解に加え2023年9月についてはM5.9以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年10月1日)から終了(上端2023年9月30日)までの730日間で,右図右端の数字は年数である.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震j断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が集積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
 Clickすると拡大します.

2.2023年9月12日台湾のM6.4と2023年9月18日琉球のM6.3

 琉球海溝域で,2023年9月12日20時03分に台湾小円区深度29㎞の西南近海震源帯nShPh台湾震源区TwでM6.4+proと2023年9月18日22時21分八重山小円区深度190㎞の西南平面化震源帯uBdPh琉球震源区RkでM6.3-npが発生した(図515).
 琉球海溝軸は,台湾に上陸して衝突し,沈込めなくなり,台湾南方では沈込極性を逆転して西側からPhilippine海Plateに南華Plateが沈込んでいる.2023年9月の最大地震M6.4は,台湾南方深度29㎞で南華Plateに沈込まれている海洋Moho付近の西南近海震源帯nShPhで発生している(図515).
 2023年9月18日琉球の深度190㎞M6,3-npは,西南平面化震源帯琉球震源区uBdPhRkで発生し,震度分布が公開されている(図516).その最大震度は3で,琉球列島域を震度1以上で覆っているが,海溝外の南大東島でも震度1を記録し,沈込んだSla内で起こった震動が琉球海溝外にも伝わっていることを示している.

図516 .2023年9月18日琉球M6.3-np深度190㎞と2023年9月29日千島M5.9P深度46㎞の震度分布.
 Clickすると拡大します.

 琉球海溝域全体の時系列に沿って地震断層面積を累計するBemopff曲線はほぼ一定の傾斜で増大する(図517右端図).しかし,震源帯別のBenioff曲線には歪解放の活発な節が認められ,西Philippine海洋底が同心円状屈曲して沈込む西南海溝震源帯TrPh(図517右から2番目)に1999年9月の節,同心円状屈曲したSlabが平面化する西南平面化震源帯uBdPh(図517左から2番目)に2005年10月の節,背弧海盆拡大の西南裂開震源帯RifPH(図517左端)には2007年4月の節と,海溝から背弧側に節が順次移行し,再び最初の海溝TrPhに2010年2月の節が出現する.この周期が歪解放周期である(月刊地震予報139月刊地震予報147月刊地震予報149).CMT解では第「0」周期から第「2」周期までの3周期が認められていたが,2022年9月海溝震源帯のTrPhTwM7.3(月刊地震予報157)によって4つ目の第「3」周期が開始された(図517).
 2023年9月の最大地震2023年9月12日20時03分台湾小円区深度29㎞西南近海震源帯nShPh台湾震源区TwのM6.4+proは,第一節の西南海溝震源帯TrPhと関連した活動であり, 2023年9月18日uBdPhRk深度190㎞のM6.3-npは第二節の西南平面化震源帯で起こっていることから,第一節の西南海溝震源帯に続き,第「3」周期に到達しようとしていると考えられ,今後の経緯を見守る必要がある.

図517 .琉球海溝域の震源帯別CMT解比較と歪解放周期.
 右端から,全CMT解 Total・第1節の西南海溝震源帯TrPh・第2節の西南平面化震源帯uBdPh・第3節の西南裂開震源帯RipPh.
 上図:震央地図.北西から南東の曲線は南華Plateに対するPhilippine海Plateの相対運動のEuler緯線.数値とMは2023年9月のM5.9以上のCMT発生年月日・規模.
 下図:時系列に沿う地震断層移動平均極線areaMと地震断層面積累積Benioff曲線.移動平均と累積の算出間隔は42.5日.左端の0-3の数値は歪解放周期番号.震源帯によってBenioff曲線の節となる歪解放期が異なり,第1節の海溝から第3節の背弧海盆に向けて遅くなる.
  Clickすると拡大します.

3.2023年9月2日KamchatkaのM6.1と2023年9月29日択捉のM5.9

 千島海溝域の千島弧沖震源帯oAcCで,2023年9月2日5時50分Kamchatka震源区Kamc深度117㎞のM6.1Tと2023年9月29日2時40分択捉震源区Etr深度46㎞のM5.9Pが発生した(図515).
 2023年9月29日M5.9Pについては震度分布が公表されている(図516右).最大震度2が覆う北海道太平洋岸に加え,東北弧北部にも震度1が分布し,千島海溝域の太平洋Slabが日本海溝域まで連続していることを示している.
 千島海溝域CMT解のBenioff曲線(図518右中図)には,2007年と2013年に明瞭な段が認められるが,2013年以降静穏化が続いている.
 CMT解の発震機構(図518)は,圧縮過剰逆断層P型(桃色)が201個,逆断層p型(赤色)が116個,引張過剰逆断層+p型(橙色)が73個,引張過剰正断層型T(青色)が50個ある.主歪軸傾斜方位図(図518右下図)の中央線は海溝軸における海溝傾斜方位で,中央付近の右側の少し下方から左側の少し上方に向かう紫色線はPlate運動方位である.紫色線が図中央付近に位置することは,海洋底沈込む海溝軸方位がPlate沈込方位に沿っていることを示している.
 逆断層型の主圧縮P歪軸傾斜方位(図518右下図〇印)は傾斜方位図の上下縁と中央付近に集中している.中央付近に集中するのは島弧側に傾斜するSlabに働くPlate運動方位に沿う歪であり,上下端に集中するのはPlate運動方位に沿うが180°逆の海洋側に傾斜する剪断歪である(図519).島弧側に傾斜する摩擦のあるPlate境界面で衝突が起これば,Plate境界面に直交する抗力が働き,Plate運動方位に沿って擦れ違うPlate運動に抗力が合成されて主圧縮P歪軸傾斜が海溝側に回転し,剪断歪となり歪軸傾斜方位図の上下縁に作図される(月刊地震予報107,月刊地震予報136).2023年9月29日M5.9PのP軸傾斜方位は118°でPlate運動方位300°から182°異なっているので,Plate境界面に沿う剪断歪が解放された地震と言える.
 正断層型の主引張T歪軸傾斜方位(図518右下図の△印)は,紫色のPlate運動方位から下方(時計回り)に偏っている.Plate運動方位からの偏角は時計回りに54°とT軸傾斜方位の標準偏差±35より有意に大きい.日本海溝域の東北平面化震源帯uBdJ・東北和達震源帯WdtiJについては27±40,琉球海溝域で16±42と,T軸方位の標準偏差は同程度であるのに低緯度程,偏角が小さいことは,地球自転によるCoriolis力の関与を示唆する.2023年9月2日M6.1TのT軸傾斜方位331°もPlate運動方位305°から25°時計回りに偏っている.

図518.千島海溝域の全CMT解591個.
 数値とMは,全期間のM7.5以上のCMT解と2023年9月のM5.9以上のCMT解の発生年月日と規模.
  Clickすると拡大します.

図519.Plate境界面に沿う剪断歪.
 島弧側に傾斜する摩擦のあるPlate境界面での衝突では,Plate境界面に直交する抗力が働くため,島弧側に傾斜するPlate運動方位に抗力が合成され剪断歪になり,主圧縮P歪軸傾斜が回転して海溝側に反転する(,月刊地震予報136).

 1922年以降の全観測地震のBenioff曲線(図520右中図)には,1923-1924年・1950-1971年・1993-2013年の活動期が3つの段として認められ,その間が静穏期になっている.現在は,2013年以降の静穏期にあり,M8級の来襲が警戒されている(月刊地震予報161).
 Benioff曲線による1993-2013年の活動期の2012年8月M7.7と2013年5月M8.3の深度が610㎞と632㎞で,660㎞の下部Mantle上面直上であることが注目される.この活動期が東北弧沖震源帯平成震源区oAcJHs M9.0の2011年3月より後なので,M9.0に誘導されたのであろう.これらの発震機構型は逆断層型(赤色と桃色)であり,主圧縮歪軸方位はPlate運動方位と一致していることから,低温のSlab先端が下部Mantle上面で相転移できず浮力を受け,沈込めず集積した圧縮歪によって破断したと考えられる.下部Mantleに突入したSlab先端は次第に加熱され相転移を起こして浮力を失い,Slabを引き降ろして千島海溝沿いの巨大地震を誘発することから警戒が必要である.

図520.千島海溝域の全観測震源.
 数値とMは,M7.5以上の発生年と規模.
  Clickすると拡大します.

 M7.5以上の観測震源数は18個と全震源数2000個の百分の1以下であるが(図521),全観測震源の時系列Benioff曲線の特性(図520右中図)を保持しており,地震活動の大枠を担っていることが確認できる.M7.5以上の観測地震の中で発震機構が求められているのは1994年9月以降のCMT解で,逆断層型4個と正断層型1個の5個である.この主圧縮P歪軸と主引張T歪軸方位は何れもPlate運動方位(図520右下図中央の〇印と△印)に揃っている.これらの大地震は,同心円状屈曲Slab深部,下部Mantleに突入したSlab先端,Slabと島弧地殻の衝突によって起こっている.Slab沈込を阻止す島弧地殻との衝突による歪が限界を越して破断解放され,Slab末端が下部Manlteに押し込まれる様子が読み取れる.
 2000年以前は,千島海溝軸東西両端のKamchatkaと択捉Etrの島弧地殻と上部Manlte内のSlabで大地震が起こっていたが,2000年以降は中央部の松輪Mtwと得撫Urpで起こっており,深度は下部Mantle上面付近まで拡大している(図520右中図).100年間の観測記録では,地震活動の繰返が認められず,2013年以降の静穏期からの進展を推定することは困難であるが,下部Mantleに突入している低温のSlabが相転移できず浮力でSlabを支えているのであれば,日本海溝域の地震活動を参考にできる.東北弧沖平成巨大地震M9.0が海洋側に凸の最上小円区の中央で起こったように,海洋側に凸の千島弧を2分する千島小円区・Kamchatka小円区の境界でM9級の巨大地震に警戒が必要である.

図521.千島海溝域のM7.5以上の観測震源.
 数値とMは,発生年と規模.
  Clickすると拡大します.

4.2023年10月の月刊地震予報

 琉球海溝域では,歪解放周期第3節の第1小節が西南海溝震源帯Trphで2022年9月に開始されたが,第2小節の西南平面化震源帯uBdPhで2023年9月18日M6.3が起こったことから第3節への移行が予想される.第2小節では被害地震が少ないが,次の第3小節では前の歪解放周期第2節で2016年4月の熊本地震M7.0が起こっていることから,今後に経過を注意深く見守る必要がある[2023年11月26日,歪解放周期についての節・小節の用法改訂].
 千島海溝域は,2013年5月24日M8.3の千島和達深発震源帯Kamchatka震源区WdtiCKamc以降静穏化しているが,2023年9月にはM6級の地震が2個起こっており,得撫島域のM8級の巨大地震に警戒が必要である.
 

月刊地震予報168)2023年8月11日ofAcJSmk M6.1t,2023年8月25日oAcJKj M5.9p, 2023年9月の月刊地震予報

1.2023年8月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年8月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で14 個0.132月分,千島海溝域で1個0.002月分,日本海溝域で9個0.777月分,伊豆・小笠原海溝域0個,南海・琉球海溝域で4個0.065月分であった(2023年8月日本全図月別).
 2023年8月の総地震断層面積規模はΣM6.4で,最大地震は,2023年8月11日襟裳小円南区深度36㎞の東北前弧沖震源帯ofAcJ下北震源区SmkのM6.1tで,次大は2023年8月25日襟裳小円南区深度15㎞の東北弧沖震源帯oAcJ久慈震源区KjのM5.9pであった.
 2023年8月までの日本全域2年間CMT解は332個で,その総地震断層面積規模はΣM7.8で,Plate運動面積規模はM8.2,その比は0.282である(図512の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段差が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図512右図左端のTotal/4).
 千島海溝域Aは,Plate運動との比が0.041と静穏化しているが,4ヶ月毎にM6.1以下であるが段差が生じており,2023年6月にもM5.6があり(図512右図右端),2023年10月まで警戒が必要である.
 日本海溝域 B では,横幅を総地震断層面積に合せているので目立たないが上端に,2023年の5月と6月の2個のM6.2段差に8月のM6.1とM5.9が加わっている.
 

図512 .2023年8月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,M7.0以上と2023年8月のM5.9以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年9月1日)から終了(上端2023年8月31日)までの730日間で,右図右端の数字は年数である.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下角から右上角に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震j断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が集積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型線形比例内部段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
 Clickすると拡大します.

2.2023年8月11日9時11分東北前弧沖震源帯下北震源区ofAcJSmkM6.1t

 2023年8月11日9時11分に襟裳小円南区深度36㎞で東北前弧沖震源帯ofAcJ下北震源区SmkのM6.1が発生した.
 前弧沖震源帯は,海溝から同心円状屈曲して沈込んだ太平洋Slab上面と島弧最強のMoho直下のMantlとの衝突域である.観測地震は2485個で,総地震断層面積規模はM8.5に達し,Plate運動面積規模M9.0に対する比は0.242である.最大地震は鹿島小円北区のCMT深度35㎞の勿来震源区Nksの2011年3月11日15時15分のM7.7pである.次大は最上小円区初動深度40㎞の金華山震源区Kksの1978年6月12日M7.4の宮城県沖地震と,最上小円区初動深度61㎞の金華山震源区Kksの1936年11月3日M7.4である.
 本地震の下北震源区ofAcJSmkの最大観測地震は,初動深度60㎞の1945年2月10日M7.1と初動深度24㎞の1943年6月13日M7.1で,最大CMTは,深度41㎞の2018年1月24日M6.4Pである.
 本地震の震度分布は,東北地方脊梁に沿って最大の震度4で,北海道から関東地方まで震度1を記録している(図513).
 本地震のCMT解の破壊開始の初動IM震源から本破壊のCMT震源震央は1㎞西と殆ど変化ないが,深度はSlab上面1㎞上から7㎞下に8㎞増大している.この両震源と主歪面に直交する主中間N歪軸が載る断層面の走向傾斜は,N44W83Sで北西‐南東方向に直立する正断層である.
 本地震には破壊開始の初動IM解(P82+13T287+76N173+6)と本破壊のCMT解(P116+35T309+55N210+6)が報告されている.歪軸方位はPlate境界のSlab上面とSlab上部で時計回りに40.8°回転している.Plate運動方位は西北西で,CMT解の主圧縮P軸傾斜方位116と逆方位であることは,本地震の本破壊がSlab上面に沿うPlate運動による剪断歪であることを示している.本地震は,Slab上面の局地的歪によって破壊を開始し,Plate運動によるSlab上部の剪断歪を解放したことが分かる.

図513 .2023年8月11日9時11分ofAcJSmkM6.1tの震度分布.

3.2023年8月25日東北弧沖震源帯久慈震源区oAcJKjのM5.9p

 2023年8月25日7時48分に襟裳小円南区深度15㎞の東北弧沖震源帯oAcJ久慈震源区KjでM5.9pが発生した.本地震の震度分布は,仙台から盛岡の東北本線に沿う北上低地帯を最大震度3とし,東北地方を震度1以上で覆っている(図514).
 東北弧沖震源帯は,日本海溝に沿って沈込む太平洋lSlab上面と島弧下部地殻とのPlate衝突境界域である.東北弧沖震源帯oAcJの観測地震は1145個あり,その総地震断層面積規模はM9.1で,Plate運動面積規模M9.0に対する比は1.294倍で,日本海溝に沿うPlate運動面積を超過している.
 最大地震は最上小円区深度10㎞の平成震源区Hs2011年3月11日M9.0であり,次大は襟裳小円南区初動深度54㎞の十勝震源区Tk1952年3月4日M8.2である.最大地震のM9.0を除いても総地震断層面積はΣM8.7で,Plate運動面積に対する比は0.415と日本海溝域で最大歪解放率を保持している.
 本地震破壊開始の初動IM震源から本破壊のCMT震源はSlab上面から2㎞の深度を変化させず北北西に4㎞移動している.両震源と主歪面に直交する主中間N歪軸が載る地震断層は走向傾斜が北北西で西緩傾斜N16W6Wの衝上断層である.
 CMT解(P110+38T297+51N203+4)の主圧縮P歪軸傾斜方位が西北西のPlate運動と逆方位であることは,本地震がPlate境界のSlab上面に沿う剪断歪を解放したことを示している.

図514 .2023年8月25日7時48分oAcJKjM5.9pの震度分布.

4.2023年9月の月刊地震予報

 日本海溝に沿って沈込む太平洋Slab上面に沿う剪断歪が2023年8月15日M6.1と8月25日M5.9によって解放されたことから,千島海溝域の地震活動の活発化に警戒が必要である.千島海溝域は,2013年5月24日M8.3の千島和達深発震源帯Kamchatka震源区WdtiCKamc以降静穏化しており,大地震が襲来する第一の候補域である.M6.1以下であるが,昨年7月から4ケ月毎に地震が起こっており,2023年6月23日にもM5.6があり,4ヶ月後の2023年10月には警戒が必要である.
 

月刊地震予報167)2023年8月の月刊地震予報

1.2023年7月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年7月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で14 個0.052月分,千島海溝域で2個0.005月分,日本海溝域で6個0.079月分,伊豆・小笠原海溝域3個0.088月分,南海・琉球海溝域で3個0.071月分であった(2023年7月日本全図月別).
 2023年7月の総地震断層面積規模はΣM6.0で,最大地震は,2023年7月9日の台湾深度10㎞の琉球海溝近海震源帯nShPh台湾震源区Tw M5.7troであった.
  2022年8月から2023年7月までの2年間のCMT解330個の総地震断層面積規模はΣM7.8で,Plate運動面積規模はM8.2,その比は0.282である(図511の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段差が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図511右図左端のTotal/4).
 千島海溝域Aは,Plate運動との比が0.041と静穏化しているが,4ヶ月毎にM6.1以下であるが段差が生じており,2023年6月にもM5.6があり(図511右図右端),2023年10月まで警戒が必要である.
 日本海溝域 B では,横幅を総地震断層面積に合せているので目立たないが上端に,2023年の5月と6月の2個のM6.2段差が加わっている.

図511.2023年7月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,M7.0以上と2023年7月の最大CMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年8月1日)から終了(上端2023年7月31日)までの730日間で,右図右端の数字は年数である.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下角から右上角に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震j断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が集積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型線形比例内部段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
 Clickすると拡大します.

 

2.2023年8月の月刊地震予報

 千島海溝域は,2013年5月24日M8.3の千島和達深発震源帯Kamchatka震源区WdtiCKamc以降静穏化しており,大地震が襲来する第一の候補域である.M6.1以下であるが,昨年7月から4ケ月毎に地震が起こっており,2023年6月23日にもM5.6があり,4ヶ月後の2023年10月には警戒が必要である.