月刊地震予報164)2023年5月の月刊地震予報

1.2023年4月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年4月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で5個0.025月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で3個0.027月分,伊豆・小笠原海溝域0個,南海・琉球海溝域で2個0.025月分であった(2023年4月日本全図月別).
 2023年4月の総地震断層面積規模はΣM5.5で,最大地震は,2023年4月27日の琉球海溝域琉球小円区深度26㎞のTrPhRk琉球海溝震源帯琉球震源区M5.3であり,M6.0以上の地震は無かった.
 2022年1月から2023年4月までの16ヶ月間のCMT解は209個で,その平均規模はm5.7であった(図499).2022年(月刊地震予報160,)に続く4ヶ月であるが,日本海溝域 B では新幹線が脱線した東北前弧沖震源帯阿武隈震源区ofAcAbkの2022年最大CMT解M7.4P(月刊地震予報151)以降,静穏化し,Plate運動面積に対する積算地震断層面積比は0.938にまで低下し,この1年の間にM7.4級のPlate運動歪が既に集積している.
 南海・琉球海溝域RykNnk D は,2022年9月18日琉球海溝震源帯台湾震源区TrPhTwのM7.3によって歪解放周期を更新して海溝域解放期に入ったが(月刊地震予報159),2023年に入ってから活動が少ない.
 伊豆・小笠原海溝域OgsIzu C のPlate運動面積に対する累積地震断層面積比は0.225と静穏化しているが,2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3+pがあったが,2023年4月の活動はなく静穏化した.
 千島海溝域Chishima A は2020年3月25日の千島海溝震源帯Kamchatka震源区TrCKamcのM7.5(月刊地震予報127)以降静穏化している中で,2023年2月にM6.1が起ったが,その後は活動を停止している.

図499.2022年1月から2023年4月までの日本全域16月間CMT解
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMはM6.0以上のCMT解の年月日と規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,開始(下2022年1月1日)から終了(上2023年4月31日)までの設定期間485日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間1.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内右の数値[8.1] [7.7] [7.4] [7.4] [7.7]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.1の地震1個に相当するPlate運動歪が集積することを意味している.上図右下端の(6.1step)は,等分期間1.9日以内にM6.1以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じることを示している.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は断層面積規模で,等分区間「1.9day」に前後区間を加えた5.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年5月の月刊地震予報

 先月の2023年3月28日M6.2は,日本海溝域では2022年3月16日の新幹線を脱線させたM7.3以降の最大地震であったが静穏化している.これまでの静穏化によってM7.4級のPlate運動歪が既に集積しているので,今後の活発化に警戒が必要である.
 伊豆海溝域では2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3があり,活発化も心配されたが,静穏化している.
 2023年4月は.全国的に静穏化しており,Plate運動歪が蓄積していることから,嵐の前の静けさと言えよう.