月刊地震予報111)Okhotsk海の千島深発震源面地震M6.1,国後島北方沖連発地震M6.3,紀伊水道の連発地震,2018年12月の月刊地震予報

1.2018年11月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2018年11月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で15個0.237月分,千島海溝域で3個0.580月分,日本海溝域で6個0.224月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.013月分,南海・琉球海溝域で4個0.033月分であった(2018年11月日本全図月別).2018年9月に7割近くに達した月間総地震断層面積比が,10月に3割以下に低下したままの状態が続いている.
2018年11月の最大地震は2018年11月5日国後島北方沖のM6.3で,M6.0以上はこれに先行した2018年11月2日のOkhotsk海に沈込む太平洋スラブ内のM6.1であった.2018年9月6日の胆振地震の活動(月刊地震予報109)は11月にも継続し,CMT解1個・IS解1個あった(東日本IS月別).紀伊水道ではIS解5個の連発地震があった(西南日本IS月別).

2.Okhotsk海の千島深発震源面地震M6.1

2018年11月2日20時1分Okhotsk海の深発震源面でM6.1pr深度487(Slab上面深度+133)kmが起こった.この深度は410kmの上部Mantle下底よりも深いMantle漸移帯に当たる(図299).

図299.千島小円区2018年10-11月のCMT解
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千島海溝域の太平洋Slab深発震源面のCMT解は2000年7月10日M5.5Pから30個報告されているが活動域が入替る(図300).2000年から2013年まではOkhotsk海域のみであったが,Kamchatska域で起った2013年5月24日M8.3Pの後,Okhotsk海域の活動は2013年9月1日M5.6-npで休止し,活動をKamchatska域に移した. その活動も2016年1月30日M7.2-npで停止していた.2018年7月2日M5.6-npと7月7日M4.7+pr524(+95)kmでOkhotsk海域の活動を再開し,本地震に至っている.

図300.千島海溝域太平洋Slab深発震源面地震CMT解
 +印:2018年11月2日M6.1震源,丸印:2018年11月2日M6.1から震央距離100km範囲円.
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3.国後島北方沖連発地震M6.3

 2018年11月5日4時26分M6.3p20(-163)kmが国後島北方沖の島弧地殻で起こった.国後島北方沖では2018年10月26日12時04分にも震央距離15kmでM5.5p20(-161)kmが起こっており(月刊地震予報110)連発地震となっている.(図299).
千島海溝域の島弧地殻地震には10個のCMT解が報告されている.東日本大震災本震後の2011年3月29日に択捉島北東沖M4.8nt0kmが最初で,Kamchatska域の2013年5月24日M8.3Pの後に国後島北方沖2013年6月27日M4.3P31kmと択捉島2013年12月13日M5.5+p11kmが起こった.その後は択捉島北方沖で2017年11月30日M5.4p16kmまでCMT6個が続き,国後島北方沖で今回の活動となった(図301).

図301.千島海溝域島弧地殻地震CMT解
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3.紀伊水道の地震

2018年2月の台湾花蓮地震から(月刊地震予報102)開始した琉球海溝の地震活動は2018年11月に九州南方まで北上したが,南海Trough域の紀伊水道ではSlab上面と島弧Mantle間で起こったIS解が5個あった(西南日本IS月別,).これらは島弧Moho下のMantleとSlabの衝突による圧縮横擦断層np型4個と横正断層t型1個である.最大は,2018年11月2日16時53分M5.4np44(+11)kmであり,全ての地震が最大地震から震央距離70km以内に収まっている.最大地震の主応力軸方位は[P329+43T237+2N145+47]で,応力場極性偏角区分の基準とすると今回のIS解4個が基準区分に収まっているが,最大地震に先行したSlab上面最深の2018年11月2日1時07分M3.3tr63(+3)kmのみが応力場偏角74°で逆応力場極性のPTexNであった.最後の2018年11月25日18時19分M4.1np42(-12)kmは基準応力場区分に留まっており,最大地震を起こした応力場は解消されず持続していると考えられる.
今回の最大震源から震央距離70km以内のSlabと島弧Manlteには196個のIS解が報告されており,発震機構型は逆断層p型13個,圧縮横擦断層np 型80個,引張横擦断層nt型30個,正断層t型73個と今回の発震機構解構成と類似している(図302).最大は1999年8月21日M5.6np66(+8)kmで,その後の総地震断層面積の増大(図302の右中図左縁のBenioff図)は少なかったが,2016年11月19日M5.4np51(+3)kmがあり,活発化して今回の連発地震に至っている.
2003年以降低迷している西南日本の活動の中で紀伊水道の活動が2016年11月から活発化していることは注目される.

4.2018年12月の月刊地震予報

2018年9月6日胆振地震M6.7から開始した地震活動(月刊地震予報109)が継続するとともに,国後島北方沖で連発地震があり,Okhotsk海の太平洋Slab内地震が起こった.地域的偏りの大きな千島海溝域の地震活動から,太平洋SlabとMantleの相互作用や島弧地殻の地震活動の力学的関係解明が期待されるが,太平洋Slabを通じて日本全域に影響が及ぶことにも警戒しなければならない.
2018年2月7日の台湾花蓮M6.7(月刊地震予報102)から2018年7月25日琉球海溝外最遠地震M5.3(月刊地震予報108),2018年9月15日琉球海溝軸部連発地震M6.2(月刊地震予報109),2018年10月24日与那国島沖M6.3(月刊地震予報110)に続き,2018年11月には琉球海溝域の地震活動が奄美沖と九州南方まで北上した.紀伊水道では地震活動が2016年11月から活発化していたが,11月に連発地震が起っている.これらの地震では応力場極性逆転が起こらずに,応力場は維持され,より大きな地震の前震である可能性がある.琉球海溝および南海Trough域での本震も考えられるので警戒が必要である.