速報52)2014年3月の地震予報

1.2014年2月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2014年2月の地震個数と,プレート運動面積に対する総地震断層面積の比は,日本全域で14個0.071月分,千島海溝域で1個0.070月分,日本海溝域で8個0.153月分,伊豆・小笠原海溝域で3個0.132月分,南海・琉球海溝域で2個0.017月分であった(2014年2月日本全図月別).

日本全域での地震面積比0.071月分は,1月の0.084月分より少ない.このように2ヶ月連続で0.1月分を下回ったのは,2009年11月(0.004月分)・12月(0.017月分)以来である.日本海溝域でも,2014年1月の0.168月分に続いて0.153月分に低下した.このように2ヶ月続いてプレート運動の5分の1以下になったのは,東日本大震災前の2011年1月以来であり,地震活動が東日本大震災前の水準まで戻ったことを示している.

2月の地震活動で注目されるのは;

①日本海溝域では,
・2月8日M5.0 +p 深度48km最上小円区
・2月8日M4.8 +p 深度51km鹿島小円区
・2月11日M4.6 +p 深度72km襟裳小円区
と全ての小円区に渡って屈曲スラブの平面化に伴う引張過剰逆断層+p型地震が起こった.太平洋プレートは,屈曲沈み込みによって2013年10月26日M7.1を起こしたが(速報47),その屈曲沈み込みスラブが平面化することによってこれらの地震が起こっている(速報38).

②伊豆海溝域ではスラブ内地震
・2月2日M5.1 np 深度491km
・2月10日M5.2 np 深度421km
・2月11日M5.3 np 深度91km
が起こっている.深度400km以深の圧縮横ずれ断層型地震が小笠原小円区との境界で起こっており,震災後に起こった,小笠原屈曲スラブとの裂け目付近で起こる地震である(速報48).

③南海トラフ・琉球海溝域では,台湾南方のマニラ海溝において2月3日M5.0-t地震が起こっている.この海溝では,南シナプレートがフィリッピン海プレートの下に西側から沈み込んでいる.

2.2014年3月の地震予報

2014年2月に入って屈曲スラブの平面化による地震が,日本海溝域全域で起こった.三つ目の宮城県沖地震のような大きな地震には到らなかった.太平洋プレートの屈曲沈み込みによる2013年10月の海溝外地震のマグニチュードはM7.1であり,2月の屈曲スラブの平面化地震はM5である.M7の地震断層面積は,M5の地震断層面積の250倍となるので,これらの地震が起こっても,M7級の三つ目の宮城県沖地震に警戒が必要である.

南海トラフ・琉球海溝域での地震活動が極めて少ないが,琉球海溝の南端の台湾ではフィリッピン海プレートと南シナプレートが衝突しており,その南側ではフィリッピン海プレートの下に南シナプレートがルソン海溝に沿って沈み込んでいる.そのルソン海溝で地震が起こったことは,琉球海溝に沿う南シナプレートへのフィリッピン海プレート沈み込み停止が,限界に達した結果とも考えられるので,沈み込みの急な再開に警戒が必要である.

図124.東南アジアの縁海とプレート境界(「プレートダイナミクス入門」新妻,2010).  フィリッピン海プレートの西縁境界は、琉球海溝の南で台湾で衝突し、その南で南シナ海が沈み込むマニラ海溝に移り、更にフィリッピンの東側のフィリッピン海溝へ移る.

図124.東南アジアの縁海とプレート境界(「プレートダイナミクス入門」新妻,2010).
 フィリッピン海プレートの西縁境界は、琉球海溝の南で台湾で衝突し、その南で南シナ海が沈み込むマニラ海溝に移り、更にフィリッピンの東側のフィリッピン海溝へ移る.