速報62)長野県神城地震と襟裳岬南方沖地震・2014年12月の地震予報「十勝沖地震への警戒」

1.2014年11月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2014年11月の地震個数と,プレート運動面積に対する総地震断層面積の比(速報36)は,日本全域で17個0.459月分,千島海溝域で1個0.050月分,日本海溝域で7個0.166月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.017月分,南海・琉球海溝域で8個0.931月分であった(2014年11月日本全図月別).
 日本全域の地震断層面積比は,2014年7月の1.225月分を除き数分の1月分以下の状態を保ってきたが,11月は0.459と半月分に増えた.この増加は台湾周辺M4.5-5.5および種子島周辺M4.7の起こった琉球南海域の0.931月分に因っている.
 2014年に入ってからの地震断層面積比は0.289で,最も小さい1997年の0.114に次いで小さい2001年の0.393の間を維持している(2014年11月日本全図年別).

2.2014年11月のM6.0以上の神城地震

 2014年11月のM6.0以上の地震は,2014年11月22日22時8分,足柄小円西区に位置する長野県北部の糸魚川-静岡構造線沿いの深度5kmで起こったM6.7圧縮過剰逆断層P型地震1個である(2014年11月東日本CMT月別).
 この地震のCMT発震機構解の圧縮主応力P軸方位129°は,フィリピン海スラブ傾斜方位333°と太平洋スラブ傾斜方位294°の逆方位(153°・114°)の中間にある.国土地理院の観測では断層西側の白馬村観測点が南東に29cm移動し,12cm沈降する反時計回り横ずれ成分を持つ逆断層と新聞報道されており,北北東方位で東傾斜の神城断層が東南東のP軸方位の圧縮力によって変位した場合と合致する.最初に起こった本地震から28日まで,M3.5~4.3の余震7個が発震機構解(速報値)として公表され(2014年11月月別),初動発震機構解(精査後)としてM3.0~4.4の余震10個(2014年11月西南日本月別),CMT発震機構解(精査後)としてM4.4の余震1個が公表されている(2014年11月東日本CMT月別).

図144.神城地震M6.7の震央.  神城地震(20141122M6.7)は中部地方北部フォッサマグマ北東縁で起こった.フォッサマグナ西側の乗鞍岳西方には,東日本大震災前震と交互に起こった飛騨の地震(20110227M5.5)が位置する.東日本大震災本震翌日には,北部フォッサマグナ北東縁で2個の地震(20110312M5.9・M6.7)が起こった.百万分の1地質図(地質調査所,1982).

図144.神城地震M6.7の震央.
 神城地震(20141122M6.7)は中部地方北部フォッサマグマ北東縁で起こった.フォッサマグナ西側の乗鞍岳西方には,東日本大震災前震と交互に起こった飛騨の地震(20110227M5.5)が位置する.東日本大震災本震翌日には,北部フォッサマグナ北東縁で2個の地震(20110312M5.9・M6.7)が起こった.百万分の1地質図(地質調査所,1982).

 神城地震が位置する足柄小円西区の飛騨では,東日本大震災の前震と交互してM5以上の地震が起き,東日本大震災への日本列島地殻における歪蓄積過程を示唆している(速報55).今回の神城地震の震源から飛騨の地震の震源は,南南西71kmの位置にある(図144).2014年10月の襟裳岬南方沖の地震の震源から東日本大震災本震も南南西方に318kmであり(速報61),神城地震と襟裳岬沖の地震についても,日本列島の歪蓄積と関係していることが予想される.
 東日本大震災本震と飛騨の地震の場合には,震央距離が525kmで,飛騨地震の発震機構の中間主応力方位234°に東日本大震災本震震源への逆方位247°がほぼ一致していた(速報61).神城地震と襟裳岬南方沖地震場合は,震源間距離は661kmで,中間主応力方位35°と襟裳岬南方沖地震への震源方位43°ともほぼ合致している.

3.2014年12月の地震予報:神城地震によって高まった十勝沖地震への警戒を

 2014年11月に起こった神城地震M6.7は,東日本大震災の前震と相補的に起こった飛騨の地震の北北東に位置し,1968年十勝沖地震M8.1の震央域で2014年10月に起こった襟裳岬南方沖の地震M6.1も,東日本大震災本震の北北東に位置している.神城地震も飛騨の地震のように,太平洋プレートの沈み込みを阻止する日本列島側の歪が限界に達して起こったとすれば,十勝沖地震の再来に警戒しなければならない.