速報50)2013年の地震活動・関東沖正逆周期・2014年1月の地震予報
2014年1月20日 発行
1.2013年12月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2013年12月の地震個数と,プレート運動面積に対する総地震断層面積の比は,日本全域で24個0.618月分,千島海溝域で4個0.841月分,日本海溝域で15個0.671月分,伊豆・小笠原海溝域で3個2.017月分,南海・琉球海溝域で2個0.006月分であった(2013年12月日本全図月別).
日本全域で0.618月分の地震断層面積比は,10月の1.419に次ぐ今年4番目に高い活動度であった.以下,海溝域別に見てみると,
1)日本海溝域では,東日本大震災直前の2010年11月以後,最大の地震活動を維持してきた最上小円区が12月に無地震になった.この無地震を補って活動したのが,鹿島小円北区に属する第一鹿島海山の日本海溝への衝突による地震(図118),関東沖の同心円状屈曲スラブ上面付近の地震,および福島県浜通域の地震である(2013年12月東日本月別).
2)沖縄南海域の地震活動は,今年,静穏であったが,12月の0.006月分は11月の0.014月分を下回る今年最低の活動度である.
3)12月の地震活動で注目される地震の月日・マグニチュード・発震機構(震源震央分布図の解説[cmt_2])・深度は;
①国後島沖地震: 12月9日M6.4 -t 30km,12月13日M5.5 +p 11km.
②第一鹿島海山域の海溝域地震: 12月23日18時11分M5.5 P 59km・15時56分M5.9 p 42km(図118)
③関東のスラブ上面地震:11月に逆断層型地震が起こり注目されたが(速報49),12月には逆断層型地震とともに正断層型地震も起こった.ただし,起こる時期を異にしている.
④浜通域地震:12月31日M5.4 T 7km.
⑤伊豆・小笠原海溝域地震:マリアナ小円区の12月18日M6.6 -t 0km海溝外地震,小笠原海台小円区の12月10日M5.6 +nt 138km,伊豆小円南区の12月18日M5.3 p 452km
2.2013年の地震活動を振り返る
2013年のCMT解の地震個数とプレート運動面積に対する総地震断層面積の比は,日本全域で318個0.677年分であり,震災前(1994-2010年)の比0.915年分よりも少ない.日本海溝域の205個1.156年分は,震災前の1.359年分を下回った.南海・琉球海溝域の58個0.219年分は,これまでの0.487年分の半分以下である(2013年日本全図年別).
2013年のM7.0以上の地震は,得撫島沖4月19日M7.0 T 125km,マリアナ屈曲スラブ5月14日M7.3 p 619km,日本海溝外10月26日M7.1 -t 56kmであった(図119).
以下に海溝域別に見ると,
1)襟裳小円北区の宗谷海峡・礼文島地域では,410km以浅のスラブ内で正断層型地震2個と横ずれ断層型地震が2個起こった.これと類似した地震は,東日本大震災後の2011年8月20日に起こり,2012年に2個が起こっている.東日本大震災前には,正断層型地震のみが,2010年7月・8月と2003年2月に起こっている(図120).
2)日本海溝域では,海溝域地震が継続的に起こっており,太平洋プレートの同心円状屈曲沈み込が東日本大震災以来継続していることを示している.日本海溝外でM7.1が起こった10月には,ウラジオストックのスラブ末端を含むスラブ全域で地震が起こっている(速報47,特報3,図119).その後,最上小円区では12月に月間無地震になった.最上小円区の月間無地震は2013年3月に次いで2回目である.無地震であった2013年3月の3ヶ月前の2012年12月には,太平洋プレートの屈曲沈み込みによる海溝域地震が33月分以上起こっていた.今月12月の無地震の2ヶ月前,2013年10月も17ヶ月分の海溝外地震が起こっている.海溝域で地震が起って沈み込むと,歪が解消され,2-3ヶ月後には無地震になるようである(図121).
12月に鹿島小円北区のスラブ上面付近で正断層型地震と逆断層型地震が交互に起こったが,この現象は東日本大震災後から認められる.2013年に正断層型地震が起こっていたのは,1月末から2月初・4月初・6月初・8月末から9月・12月初・12月末である(図121).CMT発震機構解が公表された浜通の地震が起こったのは,関東沖スラブ上面で正断層型地震が起こる時期に当たっている.日本海溝の第一鹿島海山衝突域で12月23日に起こったM5.5・M5.9の地震は逆断層型地震周期に当たっている.この現象を「関東沖正逆周期」と名付け,今後注目していきたい.
3)小笠原海溝域の深発地震の震源域は急に深度を増している.1998年2月7日M6.4 +p 552kmが小笠原海台小円区で起こったが,マリアナ小円区の最深部でも5月14日M7.3 p 619kmが起こった.これらの地震は,小笠原スラブが同心円状屈曲したまま上部マントル下底まで沈み込んでいることを示している(図120).
4)伊豆小円区の410km付近で逆断層型地震が7月以後活発化し,同心円状に屈曲して沈み込む小笠原スラブと平面化して沈み込む伊豆スラブの境界部で,11月20日に西之島が噴火した(速報48,図119).
5)琉球海溝域では,琉球小円区が活発な時期に八重山小円区は静穏であり,琉球小円区が静穏な時期に八重山小円区は活発となり,地震活動が交互に活発化している.活動域は4月に琉球小円区から八重山小円区へ,9月に八重山小円区から琉球小円区に移行している.八重山小円区が活発な時期に,海溝域で横ずれ断層型地震が起こっている.紀南小円区の淡路島で4月13日M6.3 +p 15kmが起こったのは(速報41),琉球小円区から八重山小円区への活動域移行期である(図122).
6)南海トラフ琉球海溝域の地震断層面積比は異常に小さく,極端に低い活動度である.南海トラフ域の四国南方の南海小円区では1994年以後全く地震が起こっておらず,南海地震の再来が心配される(図123).
3.地震予報
南海トラフ・琉球海溝域は異常に地震活動が少ないが,四国南方の南海トラフ域では1994年以来地震が起こっておらず,南海地震の再来が心配され,警戒が必要である.
日本海溝域の最上小円区では,太平洋プレートの屈曲沈み込みによる2013年10月の海溝外地震M7.1によって歪が解放され,12月にCMT地震が起こらなかった.今後,屈曲スラブが平面化する地震の発生が予想されるので,三つ目の宮城県沖地震の再来に警戒が必要である.
「関東沖正逆周期」は年末に正断層周期に入り,浜通の地震活動,更に宮城県北部地震の再来も心配されるので警戒が必要である.