月刊地震予報82)マリアナの地震・朝鮮半島の地震・2016年8月の月刊地震予報

1.2016年7月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年7月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で23個5.613月分,千島海溝域で3個0.052月分,日本海溝域で11個0.199月分,伊豆・小笠原海溝域で2個34.246月分,南海・琉球海溝域で7個0.052月分であった(2016年7月日本全図月別).
2016年7月のM6以上の地震は,2016年7月30日マリアナの太平洋スラブ内M7.7T233kmのみである.
2016年7月の地震活動で注目されるのは,これまで殆ど報告されていなかった対馬海峡を越した朝鮮半島南東沖で起こった2016年7月5日のM4.9-nt深度37kmである.

2.マリアナの地震

 2016年7月30日マリアナ小円区の太平洋スラブ内でM7.7T233kmが起こった.今回の地震は,2013年5月14日M7.3p619kmの最大M記録(2013年日本全図年別)を更新するものであり,太平洋スラブの沈込がこれまで以上に活発化していることを示している.1994年9月1日からのCMT総地震断層面積のプレート運動面積に対する比は,本地震前には0.56と半分程度であったが,1.22倍に増加し,地震活動過剰になった.発震機構は引張過剰正断層型Tでスラブ沈込主導である.日本海溝域でも2016年5月から7月に正断層型3個と圧縮横擦断層型1個の海溝外地震が起こっており(2016年5月・6月・7月東日本月別),日本海溝からマリアナ海溝域まで太平洋プレートのスラブ沈込が優勢であることを示している.

3.朝鮮半島沖の地震

2016年7月5日に朝鮮半島南東沖でM4.9-nt深度37kmの地震が南海小円区北方延長部で起こった.本震源は,対馬海峡を越した南海小円区の海溝距離567kmに位置し,これまでの最遠記録である海溝距離364kmの1997年6月25日中国地方北西海岸付近M6.6-np深度8kmを大幅に更新して表示範囲外になった.南海小円区の海溝距離範囲北側の本地震は,日本全域図の鹿島小円区の海溝距離1108kmに表示される(2016年7月日本全域月別).朝鮮半島域のCMT解は,これまで朝鮮半島東方沖2004年5月29日M5.1+p43km海溝距離1092kmの1個が報告されているのみで(2004年日本全域年別),本地震が2個目になる.
本地震は,これまで地震活動が報告されていない空白域での地震であり,2016年6月の北海道渡島半島南東部内浦湾M5.3pr11km(月刊地震予報81)に続くものである.

4.2016年8月の月刊地震予報

熊本地域の地震は,2016年7月に初動発震機構解(速報値)が7個・精査済11個・CMT解1個であり,4月の186個・17個・10個から,5月の33個・8個と0個,6月の10個・4個・1個への減少傾向が弱まり,活動の長期化を示唆している(2016年4月・5月・6月・7月西南日本月別IS).
2016年7月30日のマリアナの地震M7.7で伊豆・小笠原・マリアナ域の1994年9月以降のCMT総地震断層面積のプレート運動面積比が1.502から1.651に地震活動過剰度を増大させた.しかし,フィリピン海プレートの沈込域の比は熊本地震が起こり0.484から0.506に増大したが約半分の状態が続いており,西南日本から琉球域の巨大地震への警戒が必要である.
2016年6月の渡島半島南東部の地震に続き,7月には地震空白域の地震が朝鮮半島沖で起こった.日本列島が太平洋スラブの下部マントルへの崩落(月刊地震予報68)など新たな地震活動期に入ったことを示唆している.