月刊地震予報120)日本海溝域Slab地震活性化と2019年8月の前弧沖帯阿武隈M6.4・東北沖帯襟裳南M6.1,花蓮小円区の2019年8月8日M6.4,2019年9月の月刊地震予報

1.2019年8月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2019年8月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で15個0.403月分,千島海溝域で2個0.005月分,日本海溝域で8個1.700月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.011月分,南海・琉球海溝域で4個0.447月分であった(2019年8月日本全図月別).2019年6月から5割近くを保持している.
最大地震は2019年8月4日前弧沖帯阿武隈M6.4と8月8日台湾沖M6.4+ntであり,M6.0以上の地震はこれらに東北沖帯襟裳南8月29日M6.1Pを加えた3個であった.

2.日本海溝域Slab地震活性化と2019年8月の前弧沖帯阿武隈M6.4・東北沖帯襟裳南M6.1

2011年3月東北沖巨大地震後はM6.0以上がひと月に2個以上起っていたが,2013年1月以降ひと月に2個起ったのは2016年11月と2017年9月のみである.2013年には東北沖巨大地震による活動も収束し,巨大地震後の定常活動に移行したと考えられる.
日本海溝域で2019年8月4日19時23分前弧沖帯阿武隈震源域M6.4p45km,8月29日8時46分東北沖襟裳南域M6.1P21kmが起った.
今回の活発化は日本海溝域の全域に及び,8月4日・15日・24-29日に集中している(図348).

図348.2019年8月日本海溝域CMT解主応力方位図.
日本海溝域の全域に及び,8月4日・15日・24-29日に集中している.
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 3.花蓮小円区の2019年8月8日M6.4

 2019年8月8日に琉球海溝域台湾衝突境界の花蓮小円区でM6.4+nte38kmが起った(図349).琉球海溝域では2019年7月13日に奄美大島北西沖M6.0P深度256kmがPhilippine Sea Slab(以下、比海Slabとする) 最深記録250kmを更新し,7月27日にPhilippine北東沖M6.0-npo深度31kmが起っており(月刊地震予報119),Philippine Sea Plate(以下、比海Plateとする)の地震活動が拡大している.

図349.2019年8月琉球海溝域CMT解主応力方位図.
数字はM6.0以上のCMT解.2019年7月のM6.0以上のCMT解も加筆.
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 比海Plateによる地震活動が拡大したとはいえ,琉球海溝・南海Trough域のCMT解による総地震断層面積のPlate運動面積に対する比は0.43と5割以下で,歪蓄積による逆断層p型巨大地震の発生が危惧されている.M7.0以上の逆断層p型巨大地震は,1999年9月21日台湾集集M7.7,2002年3月26日八重山M7.0,2002年3月31日花蓮M7.0,2004年9月5日東海道沖M7.4・M7.1で,2004年以降起っていない.その後,2011年3月11日東北沖巨大地震が起り,中国地方のP軸方位が9°反時計回りに回転していることから,東北日本からの歪から解放されたことが予想されている(月刊地震予報117).

4.2019年9月の月刊地震予報

 2019年8月には日本海溝域と琉球海溝域の地震活動が活発化し,日本全域の活動をPlate運動面積の4割以上に押し上げている.琉球海溝域では2019年7月からの活発化が続いており,南海Trough域への影響が心配されるので警戒が必要である.