速報42)2013年5月のマリアナスラブ先端の伸張と太平洋プレート屈曲沈み込み・2013年6月の地震予報

1.2013年5月のマリアナスラブ先端の伸張と太平洋プレート屈曲沈み込み

2013年5月には,日本全域で27個の地震があり(2013年5月日本全国月別),地震面積比は2.29とプレート相対運動の2倍以上であった.この大きな地震面積比は,2013年5月14日に伊豆小笠原域のマリアナ海溝スラブで起ったM7.3がほぼ1年分の地震面積を持っていたことによる.他の区域の地震面積比は,千島海溝域で0.03月分,日本海溝域でも0.56月分,琉球南海域で0.10月分と極めて少なく,2013年4月の日本全域活発化(速報41)から静穏化し,奇数月の静穏化を継続している.

マリアナ海溝スラブのM7.3の深度は619kmと,1994年9月以来のマリアナ海溝域地震の最深記録であった2007年10月31日M7.1の216kmを大幅に更新したばかりでなく,2002年6月3日M6.1の小笠原海溝域最深記録521kmも100km近く更新した.そのため,本速報の日本全域の震央震源図の表示枠組を変更した.

このような震央震源図表示枠組の変更は,千島海溝域で2011年5月25日M5.4の深度585kmが2004年11月7日M6.0の最深記録507kmを更新した後,2012年8月14日M7.3の654km(速報30)が大幅更新した時に次ぐもので,東日本大震災以後,太平洋スラブの深発地震面の先端がマントル深部に伸張していることを示している.

2013年5月の日本海溝域では,地震面積比が半月分であったが,東日本大震災以降に現われた太平洋プレートの屈曲沈み込みを示す地震(特報1)―海洋プレート深層の押広正断層-t型(紫色)・海洋プレート浅層の引裂正断層T型(紺色)・海溝軸から島弧側の移動調整nt型(空色)―が起り,現在も太平洋プレートが沈み込んでいることを示している.また,宮城・福島県沖では屈曲したスラブが平面化する際の地震―引剥逆断層+p型―が起っている(2013年5月東日本月別).

日本海溝・伊豆海溝・相模トラフが交わる海溝・海溝・海溝型プレート三重会合点付近で衝突逆断層P型(ピンク色)の海溝外地震が起っており,太平洋プレートの押力に対してスラブ過剰のためにスラブ引力が小さくなっていることが分かる.最上小円区北縁のスラブ中層で正断層t型(黒色)が起っているが,その引張主応力軸方位は49°であり,スラブ不足の最上小円区におけるスラブが沈み込むための裂開と考えられる.

浜通域では2013年1月31日のM4.7以来,5月13日・15日にM4.5・M4.4の正断層t型地震が起った.M4.0以下の地震も採録している自動発震機構解(2013年5月東日本IS月別)では7個の地震を採録している.

2.2013年6月の地震予報

太平洋プレートは日本海溝に沿って沈み込みを継続していることから,再来が予想される3つ目の宮城県沖地震への警戒が必要である.また,浜通地震も活発化していることから,その後に予想される宮城県北部地震にも注意が必要である.

マリアナ海溝の最深地震の発生と房総沖の三重会合点付近の地震は,フィリッピン海プレートに異変が現われているとも考えられるので,関東から西南日本・琉球海溝・台湾の地震活動の活発化に警戒が必要である.