月刊地震予報163)日本海溝域のM6.2,2023年4月の月刊地震予報

1.2023年3月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年3月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.142月分,千島海溝域で1個0.005月分,日本海溝域で5個0.735月分,伊豆・小笠原海溝域2個0.119月分,南海・琉球海溝域で2個0.056月分であった(2023年3月日本全図月別).
 2023年2月の総地震断層面積規模はΣM6.4で,最大地震は,2023年3月28日の日本海溝域襟裳小円区深度30㎞のM6.2である.
 2022年1月から2023年3月までの15ヶ月間のCMT解は204個で,その平均規模はM5.8であった(図497).2022年(月刊地震予報160,)に続く3ヶ月であるが,日本海溝域 B では新幹線が脱線した東北前弧沖震源帯阿武隈震源区ofAcAbkの2022年最大CMT解M7.4P(月刊地震予報151)以降,静穏化し,Plate運動面積に対する積算地震断層面積比は0.998にまで低下し,この1年の間にM7.4級のPlate運動歪が既に集積している.
 南海・琉球海溝域RykNnk D は,2022年9月18日琉球海溝震源帯台湾震源区TrPhTwのM7.3によって歪解放周期を更新して海溝域解放期に入ったが(月刊地震予報159),2023年に入ってから活動が少ない.
 伊豆・小笠原海溝域OgsIzu C のPlate運動面積に対する累積地震断層面積比は0.240と静穏化しているが,今月2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3+pがあり,活発化の前兆とも考えられる.伊豆海溝域は,琉球海溝域と同調して活動するので(月刊地震予報159),琉球海溝域についても警戒が必要である.
 千島海溝域Chishima A は2020年3月25日の千島海溝震源帯Kamchatka震源区TrCKamcのM7.5(月刊地震予報127)以降静穏化している中で,2023年2月にM6.1が起ったが,今月の2023年3月には活動を停止している.

図497.2022年1月から2023年3月までの日本全域15月間CMT解
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMはM6.0以上のCMT解の年月日と規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,開始(下2022年1月1日)から終了(上2023年3月31日)までの設定期間455日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間1.8day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内右の数値[8.1] [7.7] [7.4] [7.3] [7.7]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震の地震断層面積として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.1の地震1個に相当するPlate運動面積が集積することを意味している.上図右下端の(6.1step)は,等分期間1.8日以内にM6.1以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じることを示している.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は断層面積規模で,等分区間「1.8day」に前後区間を加えた5.4日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年3月の日本海溝域のM6.2

 2023年3月28日18時18分に襟裳小円南区の深度30㎞(Slab深度‐1km)で,東北前弧沖震源帯下北震源区ofAcSmkのM6.2tが起こった.最大震度の4は東北日本太平洋岸からやや内陸部沿いにあり(図498),北海道東端から関東地方まで震度1以上が観測されている.

図498.2023年3月28日の東北前弧沖震源帯下北震源区ofAcJSmkのM6.2tの震度分布(気象庁HPより).
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 東北前弧沖震源帯ofAcJでは,日本海溝に沿って同心円状屈曲して沈込んだ海洋Slab上面が島弧最強の島弧Moho直下の上部Mantleと衝突して集積した歪が地震として解放されている.
 今回の発震機構は正断層型であり,その引張軸傾斜方位はPlate運動方位と合致しており,その傾斜角は51°とSlab傾斜角より大きい.島弧最強の上部Mantleが衝突しているSlab上面との間には,東北日本最大の摩擦抵抗が働き,剪断歪が蓄積する.剪断歪の引張軸傾斜角はPlate相対運動面のSlab上面傾斜より高角になっていることは,今回の地震がPlate境界面に沿う剪断歪の解放によることを示している.

3.2023年4月の月刊地震予報

 今月の最大地震2023年3月28日M6.2は,日本海溝域では2022年3月16日の新幹線を脱線させたM7.3以降の最大地震であり,これまでの静穏化によってM7.4級のPlate運動歪が集積しているので,今後の活発化に警戒が必要である.
 千島海溝域では先月の最大地震M6.1が起こったが,今月に入って活動を停止している.
 伊豆海溝域では2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3があり,活発化も心配される.伊豆海溝域とPhilippine海Plateを共有する琉球海溝域・南海Trough域・相模Trough域の警戒も必要である.