月刊地震予報161)2023年2月の月刊地震予報

1.2023年1月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年1月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.061月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.117月分,伊豆・小笠原海溝域2個0.296月分,南海・琉球海溝域で1個0.002月分であった(2023年1月日本全図月別).
 2023年1月の総地震断層面積規模はΣM6.1で,最大地震は,2023年1月16日に伊豆海溝域伊豆小円区深度422㎞で起こった伊豆深発翼震源帯伊豆γ震源区WdtiWingIGiのM5.9である.
 2022年1月から2023年1月までの13ヶ月間のCMT解は186個で,その平均規模はM5.9であった(図494).2022年(月刊地震予報160,)に続く1ヶ月であるが,日本海溝域 B では新幹線が脱線した前弧沖震源帯阿武隈震源区ofAcAbkの2022年最大のM7.4P(月刊地震予報151)による歪解放はここ13ヶ月のPlate運動面積の1.443倍あり,地震活動は静穏化している.
 南海・琉球海溝域RykNnk D は,9月18日琉球海溝震源帯台湾震源区TrPhTwのM7.3によって歪解放周期を更新し(月刊地震予報159),解放域解放期に入ったので警戒が必要であり,次の平面化域解放期の活動を待つ状態である.
 伊豆・小笠原海溝域OgsIzu C では,琉球海溝域と同調するように活動し両海溝域の関連が注目される(月刊地震予報159).今月に和達深発伊豆翼震源帯の伊豆γ震源区WdtiWingIGiでM5.4pと最大地震M5.9pとの連発地震があったが,後続地震が無く,最大地震で歪が解消されたようである.
 千島海溝域Chishima A は2020年3月25日の千島海溝震源帯Kamchatka震源区TrCKamcのM7.5(月刊地震予報127)以降静穏化している.

図494.2022年1月から2023年1月までの日本全域13月間CMT解
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,開始(下2022年1月1日)から終了(上2023年1月31日)までの設定期間396日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間1.5day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計している.
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内右の数値[8.0] [7.7] [7.3] [7.3] [7.6]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震の地震断層面積として解放された場合の規模で,日本全域ではM8.0の地震1個に相当するPlate運動面積がある.上図右下端の(6.0step)は,等分期間1.6日以内にM6.0以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じる.
 B 日本海溝域Japan では累積地震断層面積がPlate運動面積の1.443(右上のBenioff図上縁)倍とBenoff図枠を超過しているので,右枠を右方に1年分 C 千島海溝域Chishima側にずらしてある.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は断層面積規模で,等分区間「1.6day」に前後区間を加えた4.8日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算(2002>速報36)した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型段彩は,逆断層型が赤色・横擦断層型が緑色・正断層型が黒色.
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2.2023年2月の月刊地震予報

 歪解放周期が更新されて海溝域解放期に入った琉球海溝沿いではM6.0以上の地震に警戒が必要である.琉球海溝域とPhilippine海Plateを共有する南海Trough域・相模Trough域・伊豆海溝域にも警戒が必要である.
 千島海溝域では長い静穏期が続いており,歪集積が巨大地震として開放されることが心配され,その前兆に注意が必要である.