速報72)伊豆海溝地震,2015年10月の地震予報
2015年10月24日 発行
1.2015年9月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2015年9月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で28個0.165月分,千島海溝域で1個0.018月分,日本海溝域で13個0.262月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.475月分,南海・琉球海溝域で10個0.119月分であった(2015年9月日本全図月別).日本全域の面積比が0.165と数分の1月分以下の地震しか起こっていない.
M6.0以上の地震は,2015年9月2日伊豆海溝M6.1pe深度57kmが1個起こったのみである(図168).
2.伊豆海溝域地震
2015年9月2日M6.1pe深度57kmが鳥島近海の伊豆海溝域で起こった.ほぼ同位置で9月6日M5.2+pe深度42kmも起こっている.これらの発震機構のオイラー回転角(速報29)は13.9°とほぼ一致している.その間に9月4日M4.7+p深度107kmが八丈島北方の屈曲スラブ内で起こり,その後に9月21日M4.5p深度347kmが伊勢湾の伊豆スラブ内で起こっている.9月2日の海溝域地震M6.1とこれら2つのスラブ内地震の発震機構とのオイラー回転角は73.5°と74.9°で,P軸とT軸が交代している.これらの地震は伊豆スラブの下部マントルへの崩落の影響と考えられる.
鳥島近海では2015年1月・4-5月にも地震が多発していたが,5月30日小笠原沖の下部マントル地震M8.1(速報68)以降静穏化し,9月に入って活動を再開した.この震源域の地震は太平洋スラブの下部マントルへの崩落を監視するために重要である.
3.2015年10月の地震予報
2015年5月30日の下部マントル地震によって伊豆スラブ南端の崩落が進行している中で地震活動は静穏であったが,鳥島近海そしてその北方のスラブ内で地震が起き,影響が日本列島南岸沿いにまで及んできた.今後関東平野部利根川沿いの九十九里スラブと太平洋スラブの接触部でどのような地震活動が起こるか警戒が必要である.