月刊地震予報160(2023年1月10日)2022年12月13日の琉球海溝震源帯琉球震源区TrPhRkM6.0,2023年1月の月刊地震予報

1.2022年12月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2022年12月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で11個0.115月分,千島海溝域で2個0.017月分,日本海溝域で3個0.041月分,伊豆・小笠原海溝域1個0.034月分,南海・琉球海溝域で5個0.264月分であった(2022年12月日本全図月別).
 2022年12月の総地震断層面積規模はΣM6.3で,最大地震は2022年12月13日に琉球海溝域琉球小円区深度37㎞で起こった琉球海溝震源帯琉球震源区TrPhRk のM6.0である.この他にM6.0以上の地震は無かった.
 2022年の年間CMT解は176個で,その平均規模はM5.9であった(図491).南海・琉球海溝域RykNnkは,M6級地震によって2022年1月から6月まで,Benioff曲線が階段状に増大している(月刊地震予報148月刊地震予報149月刊地震予報151月刊地震予報153月刊地震予報154).その間の3月16日に,日本海溝域Japanの前弧沖震源帯阿武隈震源区ofAcAbkで2022年最大のM7.4Pが起こり,新幹線が脱線した(月刊地震予報151).7月から静穏化した琉球海溝域では,9月18日に琉球海溝震源帯台湾震源区TrPhTwでM7.3が起き(月刊地震予報157),歪解放周期を更新した(月刊地震予報159).伊豆・小笠原海溝域OgsIzuでは,5月からM6級地震が琉球海溝域と同調するように起こり(月刊地震予報153月刊地震予報154),両海溝域の関連が注目される(月刊地震予報159).千島海溝域Chishimaは2020年3月25日の千島海溝震源帯Kamchatka震源区TrCKamcのM7.5(月刊地震予報127)以降静穏化している.

図491.2022年1月から2022年12月までの日本全域年間CMT解 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,開始(下2022年1月1日)から終了(上2022年12月31日)までの設定期間365日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間1.5day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計している.
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内右の数値[8.0] [7.6] [7.3] [7.3] [7.6]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震の地震断層面積として解放された場合の規模で,日本全域では毎年M8.0の地震1個に相当するPlate運動面積がある.上図右下端の(6.1step)は,等分期間1.5日以内にM6.1以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じる.
 日本海溝域Japanでは累積地震断層面積がPlate運動面積の1.556(右上のBenioff図上縁)倍とBenoff図枠を超過しているので,右隣の千島海溝域Chishimaの枠を右方に1年分ずらしてある.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は断層面積規模で,等分区間「1.5day」に前後区間を加えた4.5日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算(2002>速報36)した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型段彩は,逆断層型が赤色・横擦断層型が緑色・正断層型が黒色.
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2.2022年12月13日の琉球海溝震源帯琉球震源区TrPhRkM6.0

 2022年12月13日23時25分琉球海溝域琉球小円区徳之島沖深度37㎞で琉球海溝震源帯琉球震源区TrPhRkのM6.0tが起こった.奄美諸島で,本地震について最大震度4の震度分布が観測された(図492).

図492.2022年12月13日の琉球震源区TrPhRkm6.0の震度分布.
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 本地震は,琉球海溝域の海溝域解放期に予測されるM6級の地震である.主圧縮歪P軸が海溝側に傾斜しているので(図493中図(海溝距離断面図)の赤棒),Slab上面と島弧地殻の衝突境界に沿う剪断歪が解放された地震である.

図493.琉球海溝域琉球海溝震源帯TrPhの非双偶力nonDC成分比区分と主圧縮歪P軸・主引張歪T軸の方位.
 縦断面図(右図)のareaM曲線・Benioff曲線の非双偶力nonDC成分比彩段は,-12%以下が桃色・-12%から-5%が赤色・-5%から+5%が黄緑色・+5%から+12%が緑色・+12%以上が青色.
 震央地図(左図)・海溝距離断面(中図)の主圧縮歪P軸の色は,-12%以下が桃色・-12%から+12%までが赤色・+12%以上が橙色;主引張歪T軸の色は,-5%以下が黒色・-5%から+5%までが緑色・+5%以上が青色.
 数字とMは,2022年12月13日琉球海溝域琉球小円区徳之島沖深度37㎞琉球海溝震源帯琉球震源区TrPhRkのM6.0tと歪解放周期を更新した2022年9月18日M7.3-troの発生年月日と規模.
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3.2023年1月の月刊地震予報

 歪解放周期が更新されて海溝域解放期に入った琉球海溝沿いではM6.0以上の地震に警戒が必要である.琉球海溝域とPhilippine海Plateを共有する南海Trough域・相模Trough域・伊豆海溝域にも警戒が必要である.