月刊地震予報114)胆振のM5.8,沖縄TroughのM5.5,2019年3月の月刊地震予報

1.2019年2月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2019年2月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で16個0.094月分,千島海溝域で5個0.091月分,日本海溝域で5個0.272月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で6個0.068月分であった(2019年2月日本全図月別).2018年12月の2か月分近くまで増大したが低下し,2017年12月以来の1割以下に下がった.
最大地震は2019年2月21日胆振のM5.8Pr深度33kmで,次大は2月16日沖縄TroughのM5.5nt12kmである.また,得撫島沖では2月13日M5.3+p30km・M5.2p30kmの連発地震があった.

2.2019年2月21日胆振のM5.8

 2019年2月21日21時22分に胆振でM5.8Pr深度33kmがあった(図310).全道停電を起こした胆振地震(2018年9月6日M6.7)を基準にすると,震央距離8kmで応力場偏角32.2°とほぼ同じ位置と応力場で起こった地震である.本地震の後,2019年2月23日M3.9p30km,27日M3.5p31kmが続いたが,主応力場極性の逆転は起こっておらず,前震とも考えられる.

図310 2019年2月胆振の主応力場極性偏角Π.
沿岸震源帯nShのIS解44個の内,1個のみが襟裳半島に位置し,43個は胆振に集中している.クリックすると拡大します.

胆振地震は,20時間後M4.1の主応力場極性逆転によって本震であったことが確認され(月刊地震予報109),10月18日M4.1pr33kmまで余震が続き,10月20日M4.4pr29km で東方に移動した後(月刊地震予報110),11月・12月にM4.7pr32km・M4.0pr29km・M3.5nt31kmが散発し(月刊地震予報111月刊地震予報112),静穏化していた.これらの震源は,強度の最も大きい島弧Moho面付近に位置し(月刊地震予報86),日本海拡大時の巨大境界,北米Plateとの衝突境界部に当たり(月刊地震予報109),千島弧の地震などの影響によって,胆振地震を起こした応力の再蓄積が予想される.

3.2019年2月16日沖縄TroughのM5.5

2019年2月16日19時01分M5.5nt12kmが宮古島沖の沖縄Troughであった(図311).
沖縄Trough最大CMTは,北東部の2015年11月18日M7.1+nt17kmであり(月刊地震予報74),翌年の2016年4月16日に熊本地震M7.3が起こっている(月刊地震予報79).南西部の宮古島沖では次大のCMT2007年4月20日M6.7T21kmがあった(月刊地震予報74).

図311 2019年2月16日沖縄Trough地震M5.5の主応力場極性偏角Π.
 数字は年月日,Mは規模.クリックすると拡大します.

本地震の震源は,次大CMT2007年M6.7から南西46kmと近接しているが,応力場偏角は76.8と異なっている.一方,沖縄Trough北東部の最大CMTからは,南西713kmと離れているが,応力場偏角は28.4とほぼ同じ応力場で起こっている.本地震に先行した連発地震2019年1月24日M4.5nt9km・25日M4.6np7km(月刊地震予報113)は最大CMTから北北東方115kmで起こり,応力場偏角は23.4°と45.1°であった.
2015年の最大CMTの活動は2016年まで続くが,南西方に及んでおらず,2016年から2018年に逆応力場のCMTが全域で起こった後,中部から最大地震応力場の活動が南北に拡大して,現在に至っている.
沖縄Troughの地震活動は比海Plateの琉球海溝への沈込と台湾への衝突によるTrough拡大に伴って起こっている.本地震前の沖縄Trough北西部の連発地震には,1月3日熊本の地震M5.1-np10kmや1月8日種子島の地震M6.0P30kmが先行しており,琉球海溝に沿う比海Plate沈込との関連が指摘されていたが(月刊地震予報113),その応力場が沖縄Trough南西部にまで拡大したのが本地震と言える.

4.2019年3月の月刊地震予報

本震に至らない前震と考えられる連発地震が起こった択捉島・国後島・三重会合点・大阪府北部・島根県西部・琉球海溝・与那国島・台湾に(月刊地震予報113),胆振と沖縄Troughが加わり,全国的に一触即発の状況が続いている.