速報57)硫黄島の地震・2014年7月の地震予報

1.2014年6月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2014年6月の地震個数と,プレート運動面積に対する総地震断層面積の比(速報36)は,日本全域で23個0.283月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で15個0.466月分,伊豆・小笠原海溝域で5個1.236月分,南海・琉球海溝域で3個0.020月分であった(2014年6月日本全図月別).
 日本全域の地震断層面積比0.283月分は,先月5月の0.171月分より増加した.2014年に入ってからの地震断層面積比も先月5月までの0.140から0.171に増加したが,1997年の0.114に次いで小さいままである(図127.日本全国年別).
 気象庁が公開している初動発震機構解(精査後)では, 2014年5月3日から5月16日まで連発した飛騨の地震は(速報55),6月30日にM3.4が1個起こったのみで終息したようである(西南日本IS月別).

図127.日本全域月別CMT解地震断層面積のプレート相対運動面積に対する比変動.  グラフ枠上の数値:枠より大きな2007年1月と東日本大震災の2011年3月の値.  赤線:硫黄島域の地震(全国の地震活動が静穏な時期に起こっている)

図127.日本全域月別CMT解地震断層面積のプレート相対運動面積に対する比変動.
 グラフ枠上の数値:枠より大きな2007年1月と東日本大震災の2011年3月の値.
 赤線:硫黄島域の地震(全国の地震活動が静穏な時期に起こっている)

2.硫黄島の地震

 2014年6月のM6.0以上の地震は,6月29日小笠原海台小円区硫黄島近海深度139kmで発生した圧縮過剰引張横ずれ-nt型地震M6.4のみであった.小笠原海台小円区では南北の境界付近と中部に震源域があり,今回の地震は北緯25°付近の中部の震源域であり,引張横ずれnt型地震を主体とする地震が2004年10月14日(M5.6深度181km)以降に起こっている.また,引張過剰逆断層+p型地震も1998年2月7日(M6.4深度552km),屈曲スラブ下部と2012年4月19日(M5.1深度10km),海溝軸部で起っている.今回の地震は屈曲したまま上部マントル底に沈み込むスラブ底で起こった1998年の震源(速報45 ) 直上の深度139kmで起こっている.これらの地震の引張主応力T軸方位はスラブの屈曲に沿っている(図128).

図128.硫黄島域の地震の引張主応力T軸方位.  屈曲したまま深度660kmの上部マントル底に達するスラブに沿っている.

図128.硫黄島域の地震の引張主応力T軸方位.
 屈曲したまま深度660kmの上部マントル底に達するスラブに沿っている.

 硫黄島域では合計10個の地震が起こっているが,起こった月の全国の地震断層面積比を括弧内に示すと, 1998年2月(0.181)・2004年10月(1.226)・2006年2月(0.431)・2010年9月(0.171)・11月(1.377)・2011年2月(0.242)・2012年4月(0.364)・5月(0.680)・2014年6月(0.283)と日本全国の地震活動が静穏な時期に起こっている.特に注目されるのは,東日本大震災の前月2011年2月にも起こっていることである(図127).

2.2014年7月の地震予報

 2014年6月の日本全域地震断層面積比は0.283と,4月の0.044月分から次第に増加しているが,プレート運動面積の3分の1以下で,1997年の東日本大震災以前最低の0.114に次いで異常に低い状態が続いている(図127).7月にこの静穏を破る活発な地震活動が再開することが心配される. 東日本大震災の引き金になったと考えられる飛騨の連発地震は終息したが,硫黄島の地震が起こり,日本海溝域の地震活動の活発化に警戒が必要である.