東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。

大地震に伴う津波は、海難災害です。救命胴衣を着けていれば
犠牲者数を大幅に減らすことができます(月刊地震予報97)。
津波対策では何より先に救命胴衣の準備を。

月刊地震予報168)2023年8月11日ofAcJSmk M6.1t,2023年8月25日oAcJKj M5.9p, 2023年9月の月刊地震予報

1.2023年8月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年8月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で14 個0.132月分,千島海溝域で1個0.002月分,日本海溝域で9個0.777月分,伊豆・小笠原海溝域0個,南海・琉球海溝域で4個0.065月分であった(2023年8月日本全図月別).
 2023年8月の総地震断層面積規模はΣM6.4で,最大地震は,2023年8月11日襟裳小円南区深度36㎞の東北前弧沖震源帯ofAcJ下北震源区SmkのM6.1tで,次大は2023年8月25日襟裳小円南区深度15㎞の東北弧沖震源帯oAcJ久慈震源区KjのM5.9pであった.
 2023年8月までの日本全域2年間CMT解は332個で,その総地震断層面積規模はΣM7.8で,Plate運動面積規模はM8.2,その比は0.282である(図512の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段差が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図512右図左端のTotal/4).
 千島海溝域Aは,Plate運動との比が0.041と静穏化しているが,4ヶ月毎にM6.1以下であるが段差が生じており,2023年6月にもM5.6があり(図512右図右端),2023年10月まで警戒が必要である.
 日本海溝域 B では,横幅を総地震断層面積に合せているので目立たないが上端に,2023年の5月と6月の2個のM6.2段差に8月のM6.1とM5.9が加わっている.
 

図512 .2023年8月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,M7.0以上と2023年8月のM5.9以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年9月1日)から終了(上端2023年8月31日)までの730日間で,右図右端の数字は年数である.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下角から右上角に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震j断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が集積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型線形比例内部段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年8月11日9時11分東北前弧沖震源帯下北震源区ofAcJSmkM6.1t

 2023年8月11日9時11分に襟裳小円南区深度36㎞で東北前弧沖震源帯ofAcJ下北震源区SmkのM6.1が発生した.
 前弧沖震源帯は,海溝から同心円状屈曲して沈込んだ太平洋Slab上面と島弧最強のMoho直下のMantlとの衝突域である.観測地震は2485個で,総地震断層面積規模はM8.5に達し,Plate運動面積規模M9.0に対する比は0.242である.最大地震は鹿島小円北区のCMT深度35㎞の勿来震源区Nksの2011年3月11日15時15分のM7.7pである.次大は最上小円区初動深度40㎞の金華山震源区Kksの1978年6月12日M7.4の宮城県沖地震と,最上小円区初動深度61㎞の金華山震源区Kksの1936年11月3日M7.4である.
 本地震の下北震源区ofAcJSmkの最大観測地震は,初動深度60㎞の1945年2月10日M7.1と初動深度24㎞の1943年6月13日M7.1で,最大CMTは,深度41㎞の2018年1月24日M6.4Pである.
 本地震の震度分布は,東北地方脊梁に沿って最大の震度4で,北海道から関東地方まで震度1を記録している(図513).
 本地震のCMT解の破壊開始の初動IM震源から本破壊のCMT震源震央は1㎞西と殆ど変化ないが,深度はSlab上面1㎞上から7㎞下に8㎞増大している.この両震源と主歪面に直交する主中間N歪軸が載る断層面の走向傾斜は,N44W83Sで北西‐南東方向に直立する正断層である.
 本地震には破壊開始の初動IM解(P82+13T287+76N173+6)と本破壊のCMT解(P116+35T309+55N210+6)が報告されている.歪軸方位はPlate境界のSlab上面とSlab上部で時計回りに40.8°回転している.Plate運動方位は西北西で,CMT解の主圧縮P軸傾斜方位116と逆方位であることは,本地震の本破壊がSlab上面に沿うPlate運動による剪断歪であることを示している.本地震は,Slab上面の局地的歪によって破壊を開始し,Plate運動によるSlab上部の剪断歪を解放したことが分かる.

図513 .2023年8月11日9時11分ofAcJSmkM6.1tの震度分布.

3.2023年8月25日東北弧沖震源帯久慈震源区oAcJKjのM5.9p

 2023年8月25日7時48分に襟裳小円南区深度15㎞の東北弧沖震源帯oAcJ久慈震源区KjでM5.9pが発生した.本地震の震度分布は,仙台から盛岡の東北本線に沿う北上低地帯を最大震度3とし,東北地方を震度1以上で覆っている(図514).
 東北弧沖震源帯は,日本海溝に沿って沈込む太平洋lSlab上面と島弧下部地殻とのPlate衝突境界域である.東北弧沖震源帯oAcJの観測地震は1145個あり,その総地震断層面積規模はM9.1で,Plate運動面積規模M9.0に対する比は1.294倍で,日本海溝に沿うPlate運動面積を超過している.
 最大地震は最上小円区深度10㎞の平成震源区Hs2011年3月11日M9.0であり,次大は襟裳小円南区初動深度54㎞の十勝震源区Tk1952年3月4日M8.2である.最大地震のM9.0を除いても総地震断層面積はΣM8.7で,Plate運動面積に対する比は0.415と日本海溝域で最大歪解放率を保持している.
 本地震破壊開始の初動IM震源から本破壊のCMT震源はSlab上面から2㎞の深度を変化させず北北西に4㎞移動している.両震源と主歪面に直交する主中間N歪軸が載る地震断層は走向傾斜が北北西で西緩傾斜N16W6Wの衝上断層である.
 CMT解(P110+38T297+51N203+4)の主圧縮P歪軸傾斜方位が西北西のPlate運動と逆方位であることは,本地震がPlate境界のSlab上面に沿う剪断歪を解放したことを示している.

図514 .2023年8月25日7時48分oAcJKjM5.9pの震度分布.

4.2023年9月の月刊地震予報

 日本海溝に沿って沈込む太平洋Slab上面に沿う剪断歪が2023年8月15日M6.1と8月25日M5.9によって解放されたことから,千島海溝域の地震活動の活発化に警戒が必要である.千島海溝域は,2013年5月24日M8.3の千島和達深発震源帯Kamchatka震源区WdtiCKamc以降静穏化しており,大地震が襲来する第一の候補域である.M6.1以下であるが,昨年7月から4ケ月毎に地震が起こっており,2023年6月23日にもM5.6があり,4ヶ月後の2023年10月には警戒が必要である.
 

月刊地震予報167)2023年8月の月刊地震予報

1.2023年7月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年7月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で14 個0.052月分,千島海溝域で2個0.005月分,日本海溝域で6個0.079月分,伊豆・小笠原海溝域3個0.088月分,南海・琉球海溝域で3個0.071月分であった(2023年7月日本全図月別).
 2023年7月の総地震断層面積規模はΣM6.0で,最大地震は,2023年7月9日の台湾深度10㎞の琉球海溝近海震源帯nShPh台湾震源区Tw M5.7troであった.
  2022年8月から2023年7月までの2年間のCMT解330個の総地震断層面積規模はΣM7.8で,Plate運動面積規模はM8.2,その比は0.282である(図511の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段差が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図511右図左端のTotal/4).
 千島海溝域Aは,Plate運動との比が0.041と静穏化しているが,4ヶ月毎にM6.1以下であるが段差が生じており,2023年6月にもM5.6があり(図511右図右端),2023年10月まで警戒が必要である.
 日本海溝域 B では,横幅を総地震断層面積に合せているので目立たないが上端に,2023年の5月と6月の2個のM6.2段差が加わっている.

図511.2023年7月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,M7.0以上と2023年7月の最大CMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2021年8月1日)から終了(上端2023年7月31日)までの730日間で,右図右端の数字は年数である.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下角から右上角に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震j断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が集積する.上図右下端の(M6.2step)は,等分期間2.9日以内にM6.2以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型線形比例内部段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年8月の月刊地震予報

 千島海溝域は,2013年5月24日M8.3の千島和達深発震源帯Kamchatka震源区WdtiCKamc以降静穏化しており,大地震が襲来する第一の候補域である.M6.1以下であるが,昨年7月から4ケ月毎に地震が起こっており,2023年6月23日にもM5.6があり,4ヶ月後の2023年10月には警戒が必要である.

月刊地震予報166)2023年6月の襟裳半島M6.2,2023年7月の月刊地震予報

1.2023年6月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年6月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で18個0.218月分,千島海溝域で4個0.122月分,日本海溝域で8個1.082月分,伊豆・小笠原海溝域2個0.056月分,南海・琉球海溝域で4個0.052月分であった(2023年6月日本全図月別).
 2023年6月の総地震断層面積規模はΣM6.5で,最大地震は,2023年6月11日の北海道襟裳半島深度129㎞の東北平面化震源帯uBdJ襟裳震源区Erm M6.2Tであった.
 2023年6月11日の襟裳M6.2Tの震度分布は,震央の襟裳半島を最大震度5弱,北海道と東北本州の太平洋側を震度2以上,関東域を震度1で覆っている(図506).太平洋底が島弧側に凸の千島海溝と日本海溝の接合部から沈込むと,Slab過剰になり襞が形成される.今回の地震はその襞で起こり,襟裳岬の南西海岸に沿って最大震度の5弱が並び,襞の縮小に応じて震度1以上の分布幅が東北本州で縮小している.

図506.2023年6月11日襟裳深度129㎞のM6.2Tの震度分布(最大震度5弱).
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 2022年1月から2023年6月までの18ヶ月間のCMT解254個の総地震断層面積規模はΣM7.7で,Plate運動面積規模はM8.1,その比は0.314である(図507の中図上).Benioff曲線には東北前弧沖震源帯ofAcJの2022年3月M7.3(月刊地震予報151)と琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)の2つの大きな段差が緩い傾斜の静穏期の中に認められる(図507右図左端のTotal/4).
 千島海溝域Aは,Plate運動との比が0.035と静穏化しているが,4ヶ月毎にM6.1以下であるが段差が生じており,2023年6月にもM5.6があり(図507右図右端),2023年7月に何が起こるか警戒が必要である.
 日本海溝域 B では,横幅を総地震断層面積に合せているので目立たないが上端に,2023年の5月と6月の2個のM6.2段差が加わっている.
 

図507.2022年1月から2023年6月までの日本全域18月間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,M7.0以上と2023年6月のM6.0以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2022年1月1日)から終了(上端2023年6月30日)までの546日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間2.2day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.
 階段状のBenioff曲線は,左下角から右上角に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震j断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.1] [7.8] [7.5] [7.4] [7.8]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.1の地震1個に相当するPlate運動歪が集積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.2日以内にM6.1以上の地震がBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分区間「2.2day」に前後区間を加えた6.6日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型線形比例段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年6月11日東北平面化震源帯uBdJ襟裳区Erm深度129㎞のM6.2P

 2023年6月11日18時54分襟裳小円南区の深度129㎞で東北平面化震源帯uBdJ襟裳震源区ErmのCMT解M6.2Tがあった.
 東北平面化震源帯uBdJは,北海道の釧路沖から本州東北部を経て関東までの太平洋Slab深層に分布し,1922年以降の観測記録では,総地震断層面積規模がΣM7.9で,最大は襟裳震源区Erm 1993年1月15日釧路沖地震M7.5である.この最大地震以前はM6.3以上の地震が12個あり,Benioff曲線が増大していたが,最大地震以降静穏化して平坦化した.ただし,2011年3月の東北弧沖平成巨大地震M9.0の前の2008年7月24日M6.8と後の2013年2月2日M6.9の2個の段差が認められる(図508).

図508.1922年以降の東北日本平面化震源帯uBdJの地震記録.
 日本海溝域の1922年以降の東北平面化震源帯 uBdJの観測地震515個・1994年以降のCMT解49個の震央地図(左図).NA北米Plateに対するPC太平洋PlateのEuler緯線を1°毎に記入.右縁の数字がEuler緯度で括弧内が年間移動距離(cm).
 日本海溝からの海溝距離断面図(中図).
 縦断面図(右上図)・時系列図(右中図)・CMT解主歪軸傾斜方位図(右下図).縦断面図・時系列図・主歪軸傾斜方位図(右図).横軸はEuler緯度.
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 今回のM6.2があった襟裳震源区Ermは東北平面化震源帯uBdJの北端に位置し,総地震断層面積規模はΣM7.8で震源帯uBdJの4分の3を占め(図509),最大地震は1993年1月15日M7.5で,次大が1962年4月23日M7.1,そして2013年2月2日と1981年1月23日のM6.9が続く.
 襟裳震源区Ermは震源帯uBdJの主体を占め,震源帯uBdJを代表しており,Benioff曲線は震源帯uBdJ(図508)とほとんど変わらない(図509).

図509.1922年以降の東北平面化震源帯uBdJ襟裳源区Ermの地震記録.
 日本海溝域の襟裳小円南・北区の東北平面化震源帯uBdJの襟裳源区Ermの震央地図(左図)・NA北米Plateに対するPC太平洋PlateのEuler緯線を1°毎に表示.右縁の数字がEuler緯度で括弧内が年間移動距離(cm).
 日本海溝からの海溝距離断面図(中図).
 縦断面時系列図(右図中)・CMT解の主歪軸傾斜方位図(右下図).横軸はEuler緯度.
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 東北平面化震源帯uBdJは,NA北米Plateに対するPC太平洋Plateの運動によって日本海溝から同心円状屈曲して沈込んだ太平洋Slabが,東北日本弧Mantle深部に達して平面化する際に伸長歪を解放する震源帯である.Slabが屈曲すれば,Slab表層が伸長し,Slab深部は収縮する.平面化には逆に,Slab表層が圧縮し,Slab深部が伸長する.この伸長に対応するのが,東北平面化震源帯uBdJである.
 震源帯uBdJのCMT解49個中,正断層型が28個,引張横擦型が9個で,9個の逆断層型を圧倒しており,平面化Slab深部で伸長歪優勢であることが確認される(図510左下凡例).
 震源帯uBdJのCMT解主歪軸方位は全般的に,PC-NAの西北西向Eler緯線に沿い(図510左震央地図),主引張T歪軸傾斜方位が海溝軸傾斜方位(TrDip)付近の紫色折線(Sub)のPlate運動方位に沿って分布しており(図510中海溝距離断面図青線・図510右下図△印),太平洋SlabのPlate運動に関係する平面化であることを示している.
 ただし,今回のM6.2Tの震源帯uBdJ北端の襟裳震源区Ermでは,主引張T軸方位が北北西でEuler緯線方位から時計回りに回転している.この回転は,沈込Slab過剰による襞形成と関係していよう(図510左図・右下図).
 襟裳震源区uBdJErmの最大CMT解は襟裳小円北区2013年2月2日M6.9Tで,次大は襟裳小円南区2008年7月24日M6.8-tで,次が今回のM6.2Tある.
 今回のM6.2Tは,PC-NAのEuler緯度-7.8°で年間8.7cmのPlate運動をしている太平洋Slab内で発生した.Slab上面深度43㎞の初動震源で規模M6.2の破壊を開始し,上方に破壊伸展してSlab上面深度37㎞のCMT震源で規模M6.2の主破壊に至った.初動震源・CMT震源そして主中間N歪軸78+19の載る地震断層は,東西走向(265°)で北急斜(70°)の正断層である.非双偶力成分比は+11%で,引張歪Tが圧縮歪Pの1.42倍の引張過剰である.

図510.東北平面化震源帯uBdJのCMT解主歪軸方位.
 日本海溝域の東北平面化震源帯uBdJの震央地図(左図)・NA北米Plateに対するPC太平洋PlateのEuler緯線を1°毎に表示.右縁の数字がEuler緯度で括弧内が年間移動距離(cm).
 日本海溝からの海溝距離断面図(中図).
 縦断面時系列図(右図中)・CMT解の主歪軸傾斜方位図(右下図).横軸はEuler緯度.
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3.2023年7月の月刊地震予報

 千島海溝域は,2013年5月24日M8.3の千島和達深発震源帯Kamchatka震源区WdtiCKamc以降静穏化しており,大地震が襲来する第一の候補域である.M6.1以下であるが,昨年7月から4ケ月毎に地震が起こっており,2023年6月23日にもM5.6があり,4ヶ月後の2023年7月には警戒が必要である.