東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

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2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。

大地震に伴う津波は、海難災害です。救命胴衣を着けていれば
犠牲者数を大幅に減らすことができます(月刊地震予報97)。
津波対策では何より先に救命胴衣の準備を。

月刊地震予報140)2021年5月の月刊地震予報

1.2021年4月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年4月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.045月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で4個0.198月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.006月分,南海・琉球海溝域で5個0.045月分であった(2021年4月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比は2021年1月の0.1割以下から,2021年2月の1.8月分への急増の後,3月には7割以下に減じ,4月に0.1割以下に静穏化した.
 最大は日本海溝域の2021年4月18日北上前弧沖震源帯M5.8である.日本全域のCMT総地震断層面積規模はM6.0で,M6.0以上の地震は無かった.

2.2021年5月の月刊地震予報

 東北地方に最大震度6強の阿武隈前弧沖震源帯2021年2月13日M7.3(月刊地震予報138)に続き,2021年3月20日に北上前弧震源帯M6.9の最大震度5強が襲い(月刊地震予報139).4月18日にも北上前弧沖震源帯でM5.8が起っている.日本海溝域の初動IS解は,2021年1月に30個,2月に73個,3月に66個あったが, 4月にも1月より多い41個あった.今年の4月までのIS解総計は220個になり,昨年2020年の総計233個に迫る勢いであり,日本海溝域の地震活動に警戒が必要である.

月刊地震予報139)同心円状屈曲Slab平面化による北上前弧震源帯M6.9,琉球海溝平面化震源帯M6.2,2021年4月の月刊地震予報

1.2021年3月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年3月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で11個0.647月分,千島海溝域で2個0.088月分,日本海溝域で7個3.691月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.098月分,南海・琉球海溝域で1個0.220月分であった(2021年3月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比は2021年1月の0.1割以下から,2021年2月の1.8月分への急増の後,3月には7割以下に減じている.
 最大は日本海溝域の2021年3月20日北上前弧震源帯M6.9である.日本全域のCMT総地震断層面積規模はM7.0で,M6.0以上の地震は他に2021年3月27日琉球海溝平面化震源帯M6.2がある.

2.2021年3月20日北上前弧震源帯M6.9p

 2021年3月20日18時04分に日本海溝域の前弧震源帯北上震源域でM6.9p深度59km(Slab深度+3km)が発生した(図398).今回の地震M6.9は,前弧震源帯の最大CMT解2003年5月26日北上震源域M7.1P震度72(+13)km以来18年ぶりの大地震であり,地震断層面積規模移動平均曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff(図398左中時系列図左端)の2つの大きな峰と段差として示されている.
 今回の震源は最大CMT解の南方39kmに位置し,両CMTの圧縮P主歪軸方位は太平洋PlateのAmur Plateに対する相対運動Euler緯線(図398左震央地図の斜線)に並行するPlate運動方位と一致している.
 縦断面図(図398右上図)に赤色線で示した今回の震源付近のCMT深度は狭い範囲に収まっている.今回の震源付近のCMT解地震は2011年3月11日東北沖平成巨大地震(図398右中図横線)以後,時系列図(図398右中図)に6個縦に並んでおり,繰返し震源(松澤,2011)をなしている.その最大CMTが今回の地震である.

図398.日本海溝域の前弧震源帯CMT解の歪軸方位.
 左図:震央地図.斜め線は太平洋PlateのAmur Plateに対する相対運動Euler緯線.
 数字とM:地震発生年月と規模.

 今回の地震の最大震度は5+で,震度分布は北海道から伊豆諸島そして本州伊勢湾にまで及んでいる(図399).前弧震源帯最大のCMT解は2003年5月26日北上震源域M7.1であり,最大震度は6-で,震度分布は北海道から伊豆諸島そして伊勢湾までと本地震M6.9と変わらない(図400).

図399.前弧震源帯の2021年3月20日北上隈震源域M6.9の震度分布(気象庁HPより).
赤色×印が震央.四角印中の数字(1から5+)が震度.
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図400.前弧震源帯の2003年5月26日北上隈震源域M7.1の震度分布(気象庁HPより).
赤色×印が震央.四角印中の数字(1から6-)が震度.
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 前弧震源帯は,太平洋Slabが日本海溝から同心円状屈曲して沈込む際に伸張したSlab上層が平面化の際に圧縮されて発生する震源帯で,東北日本の太平洋沿岸に沿って分布するため多数のIS解も公表されている(図401).IS解に今回の地震や最大CMT解地震をはじめM4以上の地震断層面積の大きな地震が重複しているのでareaM曲線・Benioff曲線はCMT解(図398の右中図)と大勢は変わらず2つの大きな峰と段差からなる(図401右中時系列図左端).

図401.日本海溝域の前弧震源帯IS解の歪軸方位.
 数字とM:地震発生年月と規模.

 縦断面図(図401右上図)の今回の震源(202103M6.9)赤色線下方延長の時系列図(図401右中図)にはCMT解の繰返し地震(図398)も示されている.そのすぐ右側に2016年から現在まで短間隔で震源が並んでいる.この繰返し地震は東北沖巨大地震前にも長い間隔で並んでいる.さらに右の最大地震(200305M7.1)の桃色線下方には,最大地震によって左右に幅を広げた余震が次第に幅を狭め左右に揺れつつ2016年まで続いている.
 これら前弧震源帯IS解歪軸方位を最大地震2003年5月M7.1を基準として歪軸入替解析(月刊地震予報87)を行うと,今回の地震の歪方位は最大地震と67.9°異なるが,最大地震の圧縮P軸・引張T軸・中間N軸を入替えた歪方位と比較すると,P軸とT軸を入替えた場合が28°と最小になった(図402凡例のPexT赤色表示).P軸とT軸の入替は歪を反転させることを意味し,今回の地震と最大地震の間には歪場が逆転する境界面が存在することを意味する.縦断面図(図402右上図)では,今回の地震域の深度は最大地震域より浅くくびれている.この震源分布のくびれは歪場の逆転境界面と対応しているであろう.今回の地震域の東北沖巨大地震以後の繰返し地震も逆転歪場で起っており,すぐ右側の短間隔繰返地震域まで逆転歪場である.最大地震域の地震は歪軸入替無しで25°以内(黒色表示)や25°以上でも歪軸入替無しの差が小さい(紫色表示)場合が主体をなすが,東北沖平成巨大地震後には逆転歪場の地震も認められる.

図402.日本海溝域の前弧震源帯の歪反転
基準歪方位(黒色表示):2003年5月最大地震M7.1.
数字とM:地震発生年月と規模.

3. 2021年3月27日琉球海溝平面化震源帯M6.2np

 2021年3月27日7時02分に琉球海溝域八重山小円区の琉球海溝平面化震源帯でM6.2np深度152kmが沖縄Trough下に沈込むPhilippine海Slab内(Slab深度+31km)で起った(図403).2021年に入ってから本震源の南西方85kmで2021年1月11日M4.9-np深度157(+57)km・南西方118kmで1月15日M4.5-np深度128(+54)kmが起っている(図403).

図403.琉球海溝域の琉球海溝平面化震源帯CMT解主歪軸方位.
 数字とM:発生年月日と規模.

 本地震では,八重山諸島から奄美大島までの琉球列島で震度1以上が観測されるとともに,琉球海溝外側の南大東島でも震度1が観測されている(図404).

図404.琉球海溝平面化震源帯の2021年3月27日M6.2の震度分布(気象庁HPより).
赤色×印が震央.四角印中の数字(1から2)が震度.
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 琉球海溝平面化震源帯の最大CMT解は2011年11月08日M7.0深度217km(+48km)であり,最大震度は4で震度1以上は琉球列島から四国に達している(図405).

図405.琉球海溝平面化震源帯の最大CMT解2011年11月08日M7.0の震度分布(気象庁HPより).
赤色×印が震央.四角印中の数字(1から4)が震度.
 震度1以上は琉球列島から四国まで分布している.
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 平面化するSlabが琉球海溝から同心円状屈曲して沈込む琉球海溝屈曲震源帯の最大CMT解は八重山小円区の2001年12月18日M7.3深度8(-6)kmであるが震度分布は震源近くの八重山諸島のみ限られる.琉球小円区の屈曲震源帯最大CMT解2010年2月27日M7.2では,震度分布が琉球列島から九州そして海溝外の南大東島にもおよんでいる(図406).

図406.琉球小円区の琉球海溝屈曲震源帯の最大CMT2010年2月27日M7.2の震度分布(気象庁HPより).
赤色×印が震央.四角印中の数字(1-5-)が震度.
 震度分布は琉球列島から九州に達し,海溝外の南大東島でも震度4である.
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 琉球海溝域のCMT解は814個あり,総地震断層面積規模はM8.4に達する(図407).発震機構はBenioff図(図402右中図左端)において逆断層型(赤色)・横擦断層型(緑色)・正断層型(灰色)で1999年9月2日台湾震源帯の集集地震M7.7+p以降活発化し,直線的にその幅を増している.この直線的増大は,Plate運動によって増大する歪を海溝域全域で相補的に解放していることを示している.

図407. 琉球海溝域のCMT発震機構主歪軸方位図.

 広域の歪状態を表わす非双偶力成分比(図408)も-12%の圧縮過剰(桃色)から+12%の引張過剰(青色)まで広範におよぶが,時系列図のBenioff図(図408右中図左端)の±12%と±5%の区分境界線が直線的に右上を向いており,いずれの非双偶力成分比の地震断層面積も1999年以降,均等に増大していることを示しており,広域歪もPlate運動による歪を解放していることを示している.非双偶力成分が正の場合(青色)は引張T軸方位,負の場合(桃色)は圧縮P軸方位で線の長さは非双偶力成分比に比例し,非双偶力成分方位はEuler緯度線に沿っており(図408左震央地図),歪方位図(図408右下図)の中央横直線付近のPlate運動方位線(紫色折線Sub)に沿うものと,方位が180°異なり逆傾斜の方位図上下端に集中している.

図408. 琉球海溝域のCMT解非双偶力成分方位図.
 震央地図(左図):斜曲線はPhilippine海Plateの南華Plateに対する相対運動方向に沿うEuler緯度線.
 

 1999年以降,Plate運動による歪が相補的一様に総地震断層面積M8.4によって解放されている琉球海溝域内には,CMT219個・地震断層面積規模M7.3の琉球海溝屈曲震源帯,42個・M7.3の琉球海溝平面化震源帯,154個・M7.1の沖縄海盆震源帯の3つの主要震源帯がある.この3主要震源帯にはM7級地震による大きな段差がBenioff図に示されており,地震面積が一律に増大していないことは明らかである(図409左3列).これら3震源帯をまとめた時系列図(図409左から4列目)ではM7級地震が交互に起っているために琉球海溝域全域(図409左端)と類似した地震断層面積の一律な増大となっている.各震源帯のM7級地震はそれぞれ2回あり,琉球海溝屈曲震源から琉球海溝平面化震源帯そして沖縄海盆震源帯へ移行している.
 沖縄海溝域は,時間とともに増大する歪をSlabの沈込と背弧海盆拡大を一つの系として歪を循環させながら地震として解放していると言える.この系の南には衝突境界としての台湾,北には九州そして本州が接している.

図409..琉球海溝域CMT解の発震機構別時系列比較.
 右端:琉球海溝域全域のほぼ一律に増大する地震断層面積(図403の右中図左端)
 左3列:沖縄海盆震源帯・琉球海溝平面化震源帯・琉球海溝屈曲震源帯.
 左から4列目:沖縄海盆震源帯・琉球海溝平面化震源帯・琉球海溝屈曲震源帯の総計.

4.2021年4月の月刊地震予報

 東北地方に最大震度6強の阿武隈前弧沖震源帯2021年2月13日M7.3に続き,2021年3月20日に北上前弧震源帯M6.9の最大震度5強が襲った.2月の前弧沖震源帯では東北日本弧の筋金に当るMoho面直下のMantleと太平洋Slabが衝突しているのに対し,3月の前弧震源帯では太平洋Slabが接しているMantleでは地震が起っておらず,地震動も伝達し難いのであろう.前弧震源帯最大の2003年5月M7.1でも最大震度はM6弱であった.
 気象庁の発表ではこれらの地震を単に福島県沖や宮城県沖としているが,歪を蓄積させる太平洋Slabとの関係を考慮した区分のもとに発表されることが望まれる.これらの区分が地震予報や対策に必要である.また,同じ前弧震源帯の中にも歪の逆転する境界面の存在が判明した.この境界面が東北沖平成巨大地震などとどのように変動したかは地震予報を実現するための基礎となるであろう.
 琉球海溝域では地震断層面積がほぼ一定の速度で開放されているように見えるが,沈込Slabや背弧海盆で相互に歪を伝達させて開放していることが判明した.歪の伝達と大地震の兆候を検知できれば地震予報に貢献するであろう.

引用文献

松澤 暢(2011) なぜ東北日本沈み込み帯でM9の地震が発生しえたのか?―われわれはどこで間違えたのか?―.科学,81,1020-1026.

月刊地震予報138)2つの歪蓄積の鍵を握る阿武隈前弧沖震源帯M7.3,2021年3月の月刊地震予報

1.2021年2月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年2月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で16個1.786月分,千島海溝域で2個0.018月分,日本海溝域で6個12.210月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.047月分,南海・琉球海溝域で7個0.097月分であった(2021年2月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比は2020年11月の0.5割から2020年12月に2割に増大し2021年1月に0.1割以下に減少したが,2021年2月に1.8月分に急増した.
最大は2020年2月13日阿武隈前弧沖震源帯M7.3で,日本全域のCMT総地震断層面積規模もM7.3とM6.0以上の地震は他にない.

2.2つの歪蓄積の鍵を握る2021年2月13日阿武隈前弧沖震源帯M7.3p

 日本海溝に並行し東北日本太平洋沿岸沖に分布する前弧沖震源帯の阿武隈震源域北端で2021年2月13日23時07分にM7.3深度55km(Slab上面深度+12km)が発生した.その揺れは,北海道,本州,伊豆・小笠原に及んだ(図395).前弧沖震源帯の震源は日本海溝から同心円状屈曲して沈込む太平洋Slab上面と東北日本弧で破壊強度の最も大きなMoho面下の最上部Mantleとの境界に沿って分布している(月刊地震予報136).本地震の揺れは東北日本弧最強の最上部Mantleに沿って伝わり,各地に被害をもたらし,東北新幹線も10日間停止した.
 日本海溝域の2020年1月から2021年2月末までのCMT解のPlate運動面積に対する総地震断層面積比は0.98とPlate運動面積とほぼ等しく,本地震の圧縮主歪P軸方位もPlate運動方位と一致しており(2021年2月東日本月別)ことが,本地震によって開放された歪は2020年1月以降のPlate運動の蓄積で説明できる.

図395.前弧沖震源帯の2021年2月13日阿武隈震源域北端M7.3の震度分布(気象庁HPより).
赤色×印が震央.四角印中の数字(1から6+)が震度.
 震度1以上は北海道から本州と伊豆・小笠原にも分布している.
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 前弧沖震源帯には釧路・浦河・下北(月刊地震予報136)・久慈・北上・阿武隈の6つの震源域がある(図397左図,右下図).これらの震源域の最大規模はM7.0からM7.9で最大のM7.9は阿武隈震源域南端で2011年3月11日の東北沖平成巨大地震M9.0の25分後に起った誘発地震である.その震度分布は震源位置の差に応じて今回の地震M7.3より北海道・本州・四国へと南下しているが小笠原で揺れていない(図396).この差は平成巨大地震前年末の小笠原海溝域M7.1・M7.8によって(速報18)歪が解消されていたのか,最近の太平洋Slab沈込活発化(月刊地震予報137)に関係しているのであろう.

図396.前弧沖震源帯震源域最大の2011年3月11日阿武隈震源域南端M7.9の震度分布(気象庁HPより).
赤色×印が震央.四角印中の数字(1から6+)が震度.
北海道から本州・伊豆・四国と震度1以上であるが,小笠原に及んでいない.
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 前弧沖震源帯の日本海溝側には東北沖震源帯と日本海溝震源帯があり,M8.0以上の巨大地震が発生している.1600年以降の総地震断層面積のPlate運動面積に対する比は,前弧沖震源帯10%と東北沖・日本海溝震源帯44%である(図397右上図).日本海溝域全体の比は77%なので,これらの震源帯の地震が全体の7割を占め,日本海溝域の地震活動を代表している.図397の右下図はM6.5以上の81個の前弧沖震源帯の地震によるもので,Plate運動に対する比は7%に減じているが全震源3070個についての右上図左側と大差はないことからM6.5以上の地震でも全体活動動向判別は可能である.

図397.前弧沖震源帯地震と東北沖・日本海溝震源帯巨大地震の比較.
 左図:M6.5以上前弧沖震源帯震源の震央地図.2つの長方形枠は2011年3月11日東北沖平成巨大地震に伴う東北日本弧のGPS変位から算出された地震断層面(速報1速報33).
中図:M6.5以上前弧沖震源帯震源の海溝距離断面図.
右上図:前弧沖震源帯震源と東北沖・日本海溝震源帯震源の地震断層面積規模移動平均曲線areaMと地震断層面積積算曲線Benioffの比較.漢字は年号.
右下図:M6.5以上前弧沖震源帯地震の海溝縦断面に沿う時系列図.
塗潰丸印:東北沖・日本海溝震源帯M8.0以上の震源,漢字は年号,Mは規模.
丸印:前弧沖震源帯M6.5以上の震源.数字とMは発生年・月・日と規模.
丸印の中心が初動震源で,中心から出ている短線の先端がCMT震源.
灰色:西暦1921年以前は被害歴史地震(宇佐美,2003),1922年以後は観測地震.
彩色:CMT発震機構解.
前弧沖震源帯地震には延宝から明治の間に東北沖・日本海溝震源帯の巨大地震と対応しない活動が認められる.
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 前弧沖震源帯と東北沖・日本海溝震源帯のBenioff曲線を比較すると(図397右上図),1611年慶長地震M8.1と1677年延宝地震M8.0では東北沖・日本海溝震源帯の巨大地震の後に前弧沖震源帯が起っている.
 1896年明治地震M8.5では前弧沖震源帯が先行し,その後に前弧沖震源帯の釧路から阿武隈の全地震域で地震活動が起る.前弧沖震源帯の地震断層面積は1900年から減少し,1915年頃から1923年大正関東地震まで増大して減少したところで1933年昭和地震M8.1が起る,1938年まで急増し,その後地震断層面積はほぼ一定の速度で増大し,2011年平成M9.0に至る.
 前弧沖震源帯のBenioff曲線には1896年明治M8.6・2011年平成M9.0に対応する段差が認められ,東北沖・日本海溝震源帯の段差が後続する(図397右上図).この対応は,前弧沖震源帯と東北沖・日本海溝震源帯の歪開放が対応していることを示しており,1611年慶長M8.1と1677年延宝M8.0にも認められる.しかし,1677年延宝から1896年明治の間に認められない.日本海溝震源帯1790年寛政M8.4には対応する前弧沖震源帯の活動が認められず,前弧沖震源帯1717年M7.5,1763年M7.9,1835年M7.0,1855年M7.3に対応する東北沖・日本海溝震源帯の地震はない,慶長から明治の間には,東北沖・日本海溝震源帯のM8.0以上地震3個に対し前弧沖震源帯のM7.0以上の地震6個で,平均間隔の95年と48年は大地震の歪蓄積程長年月を要することと対応している.
 1896年1月9日阿武隈震源域南端M7.0から開始した前弧沖震源帯の活動に続き,1896年6月15日明治M8.5が起き,釧路震源域から阿武隈震源域までの前弧沖震源帯全域に渡る現在の活動が開始された.明治以前の前弧沖震源帯の活動は,1710年9月15日阿武隈震源域中部M6.5を除くと,久慈震源域と北上震源域に限られる.前弧沖震源帯と東北沖・日本海溝震源帯の活動は,1677年延宝M8.0を過ぎてから同期せず,1896年明治M8.5直前から前弧沖震源帯の震源域が現在のように拡大した.
 東北沖・日本海溝震源帯の現在までの累積地震断層面積(図397右上図右端Benioff図最上部)は,赤色の2011年平成M9.0を主体とする1994年以降のCMT解が右半分を占め,灰色の歴史被害地震(宇佐美,2003)と1922年以降の震度観測地震(月刊地震予報124)が左半分を占め,M9.0二個分の地震が1600年以降起っている.Benioff図左下端から右上に伸びる灰色斜線はPlate運動面積累積直線で,右端に至る1600年から現在までの44%の期間にM9.0二個分の歪が蓄積すること示している.このPlate運動による歪が全て東北沖・日本海溝震源帯の地震で解放されたとしても,寛政以前からの蓄積が必要である.
 明治から平成までは日本海溝域全体でPlate運動と釣合う通常地震活動があり(月刊地震予報116),平成M9.0巨大地震のための歪は慶長から蓄積を開始していなければならないことから,Plate運動の歪を蓄積して通常地震活動として開放する通常歪とは別に巨大地震の歪を蓄積する巨大歪の存在が必要である(月刊地震予報116月刊地震予報122).
 通常歪をM7規模の前弧沖震源帯,巨大歪をM8規模の東北沖・日本海溝震源帯に対応させれば,1677年延宝以降開始された巨大歪の蓄積が通常歪との関係を変化させ,両歪の開放が同期しない1790年寛政M8.4が起り,巨大歪の蓄積が限界に達して1896年明治M8.5と通常歪開放の広域化が起ったことが予想される.
 通常歪対応の前弧沖震源帯ではSlab同心円状屈曲・平面化によって歪が蓄積・解放され,巨大歪対応の東北沖・日本海溝震源帯の歪は日本海溝外に広がる太平洋底に蓄積されるであろう.
両歪の完全な開放が1611年慶長M8.1と2011年平成M9.0とすれば,2011年平成M9.0の前後で地震活動が最も異なることになるので,今後,発震機構を詳細に比較検討する予定である.

4.2021年3月の月刊地震予報

 2011年3月11日東日本大震災から開始した本地震予報も10周年になる.震災当時は,1896年明治三陸地震M8.5後の地震活動と対応させて注意を呼びかけていた(速報5).その中で3つの宮城県沖地震の内の2個はすぐ起きたが2011年内に3個目は起らなかった(速報21速報26).今回の2月13日M7.3が3個目に当るとも考えられるが,東北沖平成巨大地震の後続活動は低下していることから,2020年1月からの通常歪を開放する前弧沖震源帯の新たな活動と捉えることができる.
 しかし,新聞報道によると今回の地震も東日本大震災の余震としている.その余震域は東北沖巨大地震の誘導地震の起った日本海溝外から東北日本太平洋沿岸域までの広い範囲とし,そこで起った全ての地震を余震としている.過去1年間のM4以上の地震を208個として,2001年から2010年までの10年間の年間平均が138回と少ないことから,大震災の余震が続いている根拠としている.
 過去1年間のCMT46個(Plate運動に対する地震断層面積比0.00995)と,2001年から2010年までの年平均CMT解22個(0.00971)を比較すると確かに多いが,2003年5月から2010年までの6.7年間の年間平均CMT解25.1個(0.1225)と比較すると減少している.この相違は,2000年から2003年4月までの年間平均CMT解12個(0.0121)と地震断層面積比が1桁小さく静穏であったからである.
 日本海溝域のPlate運動の歪を蓄積する通常歪と巨大歪が東北沖平成巨大地震によって開放されたと考えれば,巨大歪満杯状態でPlate運動歪を通常歪が開放していた1896年明治M8.5以後に比較すれば,巨大歪に歪が蓄積するので地震活動の静穏化が予想されるが,活動様相が変化することが予想されるので注意深く見守る必要がある.

引用文献

宇佐美龍夫(2003)日本被害地震総覧.東京大学出版会,605p.