月刊地震予報129)沖縄Trough拡大地震M6.2,2020年6月の月刊地震予報

1.2020年5月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2020年5月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で25個0.218月分,千島海溝域で2個0.048月分,日本海溝域で7個0.459月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.102月分,南海・琉球海溝域で12個0.342月分であった(2020年5月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比が2019年9月から1割前後の異常静穏化の後,2020年2月・3月に千島海溝域の活動によって1.5・3.1ヶ月分に活発化したが,2020年4月に6割,2020年5月に2割に減少した.
最大地震は2020年5月3日沖縄Trough拡大地震M6.2で,M6.0以上の地震は他にない.2020年4月22日から開始した飛騨連発地震および東北日本弧MantleとSlab衝突地震は継続している.

2.沖縄Trough拡大地震M6.2

 2020年5月3日20時54分薩摩半島沖の沖縄TroughでM6.2+nt/深度9kmが起こった(図365).T軸方位はPlate運動と一致しているが,Philippine海Plateと南華Plateが収束するPlate運動とは逆に拡大している.琉球海溝に沿う琉球列島のGPSによる宇宙測距が開始された時から琉球列島は中国大陸から離れるように運動している.Plate収束帯で背弧海盆が拡大することは,Plate Tectonics確立期からの謎であった.
南華Plateの下にPhilippine海の海底が沈込みSlabになるが,海底とともにPlate運動してきた海底面下のMantleはSlabに行く手を阻まれ,Slabの下端を潜り抜け,中国大陸のMantleと衝突し,中国と琉球海溝の間を拡大させる.この拡大が沖縄Troughの拡大である(月刊地震予報117).
沖縄Trough拡大地震のCMT解は132個あり,最大は本地震の南南西42km の2015年11月14日M7.1+nt/17kmである(速報74,図365).全CMTの発震機構型は正断層t型64個,引張横擦nt型27個,圧縮横擦np型10個と引張優勢で沖縄Troughの拡大を支持している.本地震も最大地震も引張横擦nt型で沖縄Troughの典型的な地震と言える.

図365.沖縄Trough拡大地震(Okw)のCMT解
数字とM:地震発生年月日と規模:本地震とCMT最大地震.
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1922年からの全観測地震241個中の最大地震は宮古島北方沖1938年6月10日M7.2/22kmで,今回の地震M6.2は規模15位になる.この最大地震もCMT最大地震も沖縄Trough中軸部の横擦断層型震源(空色)密集部に位置している(図356).
Slab下端を通過したManlteは上昇して沖縄Toughを拡大させる.この上昇力が静岩圧と釣合うと圧縮P軸と引張T軸が水平になりN軸が直立して横擦断層型になる.最大地震が横擦断層型震源密集域に位置していることは,Mantle上昇が沖縄Troughを拡大していることを支持している.

図366.沖縄Trough拡大(Okw)観測地震.
数字とM:地震発生年月日と規模:本地震と最大観測地震.
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3.2020年6月の月刊地震予報

CMT最大の沖縄Trough拡大地震2015年11月14日M7.1の震源から42km北北東で5月3日M6.2起こったが,CMT最大地震の半年後の2016年4月16日には熊本地震M7.3が起こっており(速報79),警戒が必要である.
2020年2月からの千島海溝域のM7.2・M7.5に続き4月の小笠原海溝域M6.8の後に,北上島弧Mantle・Slab境界地震M6.2と飛騨連発地震が起こり,2020年5月まで継続している.東北日本・関東・中部日本の地震活動活発化に警戒が必要である.