速報56)2014年6月の地震予報
2014年6月11日 発行
1.2014年5月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2014年5月の地震個数と,プレート運動面積に対する総地震断層面積の比(速報36)は,日本全域で18個0.171月分,千島海溝域で1個0.016月分,日本海溝域で9個0.429月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.404月分,南海・琉球海溝域で4個0.059月分であった(2014年5月日本全図月別).
日本全域の地震断層面積比0.171月分は,先月4月の0.044月分より増加したが,2014年に入ってからの地震断層面積比は0.140と1997年の0.114に次いで小さい.
M6.0以上の地震は;
①5月3日に小笠原海台小円区とマリアナ小円区境界付近の深度107kmで発生した引張横ずれnt型地震M6.0.
②5月5日鹿島小円区の房総半島北部海岸付近の深度162kmで発生,屈曲により短縮した太平洋スラブ下部が平面化によって伸張する引張過剰の正断層T型地震M6.0,
の2個が起こった.
気象庁が公開している初動発震機構解(精査後)では,飛騨の地震が注目される.飛騨では,2014年5月3日から5月16日に14個の地震M3.2~3.9が起こっている(西南日本IS月別).この飛騨の地震は,震央位置に差がないために図上では重なって見える.飛騨の月別地震個数の最大は1998年8月の17個,第2位が2011年2月の15個,第3位が東日本大震災の2011年3月の14個で,2014年5月の飛騨の地震個数14は同数第3位になる
2.2014年6月の地震予報
2014年5月の日本全域地震断層面積比は0.171と,プレート運動面積の数分の1以下で,先月の10分に1以下を脱したが,東日本大震災以前と比較しても異常であり,6月にこの静穏を破る活発な地震活動が再開することが心配される.
海洋プレートは島弧地殻と衝突して下方に屈曲しながら沈み込む.海洋プレート沈み込みによって島弧地殻と海洋プレートの双方に歪を蓄積する.その歪が周期的に解放されるのが「海溝型地震」である.飛騨の地震の月間地震数第1位の1998年8月の4ヶ月前には,琉球海溝域で1994年9月以降最大の海溝外地震M7.7が起こっている.第2位の2011年2月の飛騨の地震は,東日本大震災の前震に先行し,相補的に起こっていることから,飛騨の地震が東日本大震災の引き金を引いたと考えられる(速報55).
飛騨の地震の月間個数が東日本大震災の2011年3月と同じであったことは,日本列島の地殻に異変が起こっていることを示しており,警戒が必要である.