月刊地震予報175)千島海溝域の巨大地震への警戒,2024年4月の月刊地震予報

1.2024年3月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2024年3月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10 個0.068月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で8個0.277月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.059月分,南海・琉球海溝域で1個で0.055月分であった(2024年3月日本全図月別).
 2024年3月の総地震断層面積規模はΣM6.1で,最大地震は,2024年3月15日琉球海溝震源帯TrPhRk深度19㎞のM5.7で,M6.0以上の地震はなかった.
 2024年3月までの日本全域2年間のCMT解は374個で,その総地震断層面積規模はΣM7.9,Plate運動面積規模はM8.3で,その比は0.355である(図560の中図上).Benioff曲線(図560右図上左端Total/4)には琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)と2024年1月1日能登半島M7.5(月刊地震予報173)の2つの大きな段が緩い傾斜の静穏期の中に認められる.
 千島海溝域A(図560右図右端)はPlate運動面積M7.9に対し総地震断層面積ΣM6.9で16分の1と小さいが,3₋4月毎に段が認められ,2023年12月の段から静穏期が3ヶ月以上続いており,次の段に警戒が必要である.
 

図560 .2024年3月までの日本全域2年間CMT解.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,2年間のM7.0以上のCMT解.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2022年4月1日)から終了(上端2024年3月31日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
 階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後区間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2024年4月の月刊地震予報

 千島海溝域の観測地震のBenioff曲線(図561)には,ほほ平坦な静穏期とPlate運動面積積算直線にほほ並行する活動期が交互に繰り返している.第1活動期は1952年11月M8.2から1971年12月M7.8で,第2活動期は1993年1月M7.5から2013年5月M8.3であり,その間の21年が静穏期になっている.今年2024年は第2活動期末の静穏期入から10年を経過し,数年内に第3活動期に入ることも予想される.2022年以降のCMT解のBenioff曲線には3₋4月毎に段が認められ(図560),2023年12月の段から静穏期が3ヶ月以上続いており,次の段で第3活動期に入ることも考えられる.得撫島等の千島列島中央部でM8級の巨大地震に警戒が必要である.

図561.千島海溝域全観測地震「断層長円表示」の活動期と静穏期の交代.
 震央地図(左)の左から右下方への曲線はPlate運動PC-NAのEuler緯線.下縁にPlate運動のEuler定数,右縁にEuler緯度(年間移動距離cm).
 海溝距離断面図下(中)の円凡例の「M9.0」と「8.0」は,規模M9.0の地震断層長を直径とする外円,その4分の1の直径の中円の規模がM8.0,16分の1の中心点の規模がM7.0(月刊地震予報173)で.震央地図(左)・海溝距離断面図(中)・縦断面図(右)で同寸.
 縦断面図(右)の時系列Benioff図(左端)の左下端から右上への斜線はPlate運動面積積算直線で,1952年11月M8.2から1971年12月M7.8の第1活動期と1993年1月M7.5から2013年5月M8.3の第2活動期にはBenioff曲線が並行しているが,その前後は殆ど増加しない静穏期になっている.
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 日本列島の大黒柱が破損した2024年1月1日能登半島地震M7.5(月刊地震予報173)の影響が出てくることが予想される.関東・東北日本・西南日本域の直下型地震に警戒が必要である.
 伊豆海溝域では,Plate運動の原動力となる小笠原海台小円区の随行Mantleに引き摺れたM6.1が起こったことから(月刊地震予報174),地震活動の活発化に警戒が必要である.
 琉球海溝域では,歪解放周期(月刊地震予報139)が2022年9月18日琉球海溝震源帯M7.3によって第3周期に更新されたが(月刊地震予報157),第2周期末の沖縄海盆震源帯の地震活動も続いており,続く流海溝平面化震源帯の活動に至っていない.2024年3月の最大CMTが琉球海溝M5.7であり,琉球海溝域のM7級の地震に警戒が必要である.