速報30)2012年9月の地震予報:千島海溝スラブ最深地震,三つ目の宮城県沖地震か

1.千島海溝スラブ最深地震

 2012年8月には23個の地震が起こった[2012年8月日本全図(月別)].注目されるのは,8月14日千島海溝スラブ先端の深度654kmで起こった逆断層p型地震M7.3である.1994年以降の千島海溝スラブ先端では,東日本巨大地震後の2011年5月25日,深度585kmで起こったM5.4の横ずれ断層np型が最大深度であったが,その深度を約70km更新した.この深度は本速報に掲載している[日本全図]の断面図に表示できないので,今回表示深度範囲を拡大した.この最深地震は,先月の得撫(ウルップ)島沖地震(速報29)による沈み込み障害除去との関連が予想される.
 千島海溝スラブ先端地震と呼応するかのように,伊豆海溝スラブ先端でも8月18日に深度543kmでM5.2の横ずれnp型地震が起こっている.この深度は1998年2月7日深度552kmで起こったM6.4の逆断層p型地震に次ぎ,千島海溝スラブ先端と伊豆小笠原海溝スラブ先端における,太平洋プレート縁の地震活動が活発化していることを示している.

2.三つ目の宮城県沖地震か

 日本海溝域では14個の地震が起こり[2012年8月東日本(月別)],8月の総地震個数の半数以上を占め,東日本巨大地震の影響が続いていることを示している.8月30日早朝未明,岩手・宮城・福島県の太平洋沿岸を震度5強の地震が襲った.この地震の深度は60km,M5.6の逆断層p型であった.
 この地震は[速報26:2012年6月の地震予報]で警戒を呼びかけた「三つ目の宮城県沖地震」と関連していることは確かである.しかし,警戒を呼びかけた「三つ目の宮城県沖地震」の予想マグニチュードが7以上であるのに対し,今回の地震のマグニチュードは5.6と小さすぎる.来たるべき「三つ目の宮城県沖地震」の前震であるとも考えられるので,引き続き警戒が必要である.
 日本海溝スラブでは,8月8日に最上小円区の日本海溝でM4.5の正断層t型地震が起こっており,太平洋プレートのスラブ引が優勢であることを示している.福島県いわき沿岸の日本海溝スラブ上部でも8月26日,深度90kmでM5.2正断層t型の地震が起き,スラブ引優勢が示されている.このスラブ引優勢は千島海溝スラブ先端と伊豆海溝スラブ先端の地震活動と関連しているであろう.襟裳スラブ過剰域では8月3日深度44kmでM5.0の逆断層p型地震が起こっている.
 [2012年8月東日本(月別)IS]では,浜通でM3.5-3.8の正断層t・tr型・横ずれ断層np型地震が7個起き,東日本巨大地震の余震活動の継続を示している.