月刊地震予報81)琉球海溝域の地震・渡島半島南東部の地震・2016年7月の月刊地震予報
2016年7月8日 発行
1.2016年6月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年6月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で21個0.187月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.410月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で14個0.347月分であった(2016年6月日本全図月別).
2016年6月のM6以上の地震は,2016年6月24日与那国島近海のフィリッピン海プレート内M6.2te54kmのみである.
2016年6月の地震活動で注目されるのは,奄美大島沖の海溝外の連発地震と(2016年6月日本全図月別),1923年観測開始以降初の北海道渡島半島南東部地震である(2016年6月東日本IS月別).また,日本海溝外で6月10日M5.1To46km・6月30日M5.2npo43kmが起こっている(2016年6月東日本月別).
2.琉球海溝域における地震活動
2016年6月24日与那国島近海のフィリッピン海プレート内でM6.2te54kmが起こったが,先月同じ八重山小円区の石垣島北西沖で2016年5月31日M6.2tr230kmの大深度地震が起ったばかりである(月刊地震予報80).また,八重山小円区の北東隣の琉球小円区の奄美大島沖の琉球海溝外で2016年5月27日M5.6to64kmから開始し,6月15日まで正断層型M4.4~5.5深度55~72kmの地震7個が連発した.この震源域でのこれまでのCMT解は2014年7月3日M4.4-to54kmのみである.琉球小円区の琉球海溝外CMT解は,これまで17個あるが,正断層型が16個で引張横擦断層型が1個である.西隣の八重山小円区では16個の琉球海溝外CMT解があるが,引張横擦断層型10個・逆断層型4個・正断層型2個と異なるが,引張応力が主体を占めている(月刊地震予報80:図186).琉球海溝が前進させられるために引張り応力場に置かれているのは,台湾衝突によるフィリピン海プレートの衝上断層繰り返しに起因しており,フィリピン海プレートの沈込と台湾における衝突が進行していることを示している.
3.渡島半島南東部の地震
2016年6月16日14時21分に渡島半島南東部内浦湾でM5.3pr11kmが起こり(2016年6月CMT),同日19時58分にM3.3p11km・6月21日0時1分にM4.2p10kmが起こった(2016年6月IS).この地震で注目されるのは,気象庁が観測を開始した1923年以降この震源域で地震が観測されていなかったことである(図189).
震源域は渡島半島東部の活火山地域内に位置するため地殻内地震は起こらないと考えられてきた.北海道では知床半島や日高山地そして胆振支庁では活火山を避けて地殻内地震が起っていない.東北地方でも下北半島で起こっていない.
日本海溝外の太平洋プレートで2016年5月2日M4.7to43kmに続き6月10日M5.1To46kmと6月30日M5.2npo43kmが起こっていることは太平洋スラブの力学状態の変化を示唆している(2016年5月・6月東日本月別).
4.2016年7月の月刊地震予報
2016年6月の熊本地域の初動発震機構解の速報は10個,精査済は4個でCMT解は1個であり,4月の186個・17個と10個そして5月の33個・8個と0個から減少し終息に向かっている.
フィリピン海プレートの沈込が進行していることを示す琉球海溝域の海溝外地震が起こり,地震断層面積のプレート運動面積に対する比が今年に入って1.092まで増大したが,2010年からでは0.170と歪が殆ど解放されていな状態が続いている.西南日本から琉球域の巨大地震への警戒が必要である.
渡島半島南東部の震源域は,1923年の観測開始以来のみならず歴史記録においても地震空白域の中心にあった.本震源域は千島弧と東北日本弧の接合部の活火山域にある.東北日本弧と伊豆弧の接合部である関東地域の北西縁にも活火山が並び,地殻地震が起こっていないが,今回の地震によって直下型地震が襲うこともあることが示された.日光から浅間にかけての活火山域でも警戒が必要である.
このように全く地震記録の存在しない地域においてM5.4の地震が起こったことは,日本列島が太平洋スラブの下部マントルへの崩落(月刊地震予報68)など新たな地震活動期に入ったことを示唆しているかもしれない.