月刊地震予報105)2018年5月18日釧路沖の地震M5.8・2018年6月の月刊地震予報
2018年6月21日 発行
1.2018年5月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2018年5月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で19個0.103月分,千島海溝域で2個0.099月分,日本海溝域で8個0.177月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.136月分,南海・琉球海溝域で8個0.061月分であった(2018年5月日本全図月別).
2018年5月の最大地震は2018年5月18日釧路沖M5.8で,M6.0以上の地震はなかった.
2.2018年5月18日釧路沖の地震M5.8
2018年5月18日3時42分に釧路沖でM5.8P深度47(スラブ深度30)kmが起こった.その半日後の5月18日17時50分に得撫島沖M5.0+p深度30(-32)kmが起こっている.また,2018年5月31日6時15分にも釧路沖M4.1nt53(+20)km(IS発震機構解)があった(図273).
千島海溝域の地震については,これまで速報29・速報30・速報41・速報58・速報74・速報76・地震予報80・地震予報101・地震予報103に取り上げてきた.千島海溝域の1994年9月以降のCMT解総地震断層面積のプレート運動面積(斜直線)に対する比は0.96で,ほぼプレート運動面積と等しい地震活動が起こっている.
千島海溝域では488個のCMT解が報告されているが,その68%が逆断層p・pr型で,その圧縮P軸方位は(赤色丸印)は方位図の上縁と下縁および中央線付近に分布している(図274右下図).方位図の中央線は千島海溝から沈込む太平洋プレートの傾斜方位(TrDip)である.中央線付近のP軸傾斜はプレート傾斜方向であり,上下縁のP軸傾斜は海溝方向である.中央線付近の紫色線(Sub)は太平洋プレート運動方向で,中央線のプレート傾斜方向と多少異なり,右下方にずれている(図273・図274).P軸方位もプレート運動方向に沿って右下方にずれている.
千島海溝域で起こっている地震の地震断層面積がプレート運動面積にほぼ等しいことと,P軸方位が太平洋プレートの運動方向に沿っていることは,千島海溝域の地震が太平洋プレート運動と関係していることを明確に示している.
積算地震断層面積のBenioff曲線ではその間に,2007年と2013年に大きな段がある(図274).これらの段には2006年11月15日M7.9P30(+8)km・2007年1月13日M8.2Te30(+17)kmおよび2013年5月24日カムチャツカのスラブM8.3P609(+87)kmの地震が対応している.2013年5月の最後の段から現在までの5年間の総地震断層面積はプレート運動面積の0.16と静穏を保っている.2007年1月から2013年5月までの中段の静穏期は6年4か月,1994年9月から2006年11月までの最初の静穏期は12年2か月続いた.これらの静穏期の長さを参考にすると,千島海溝域では2年ないし数年以内にM8以上の地震が起こると考えられるので警戒が必要である.
3.2018年6月の月刊地震予報
2018年4月9日に島根県西部M6.1が起こったが,4月28日のM3.6でも応力場変化が認められなかったことから,M7級の地震への警戒を呼び掛けていたが(地震予報104),大阪府北部で2018年6月18日7時58分にM5.9(速報発震機構)が起こった.これらの地震は,2015年11月14日沖縄トラフ最大地震M7.1の後の2016年4月16日熊本地震M7.3から開始された一連の西南日本内陸域地震と考えられるので,西南日本域では今後も警戒が必要である.