月刊地震予報

月刊地震予報110)与那国島沖連発地震M6.1・M6.3,前震における負のCMT-IS規模差,2018年11月の月刊地震予報

1.2018年10月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2018年10月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で25個0.244月分,千島海溝域で1個0.039月分,日本海溝域で16個0.216月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.079月分,南海・琉球海溝域で6個0.515月分であった(2018年10月日本全図月別).2割以下に低迷していた月間総地震断層面積比が,2018年8月に5割近くに増大し,9月には7割近くに達したが,10月には3割以下に低下した.
2018年10月の最大地震は2018年10月24日与那国島沖M6.3で,それに先行した2018年10月23日M6.1との連発地震となった.胆振地震活動は10月にも継続し,CMT解6個・IS解11個あり,範囲を東方の襟裳半島に広げた(東日本月別東日本IS月別).

2.与那国島沖連発地震M6.1・M6.3

 琉球海溝域では海溝外距離最遠記録の2018年7月25日M5.8,琉球海溝軸連発地震2018年9月15日M6.2(月刊地震予報109)が起こっていたが,2018年10月には,23日13時34分M6.1+p深度26(Slab上面深度+13)km・24日1時04分M6.3+np28(+14)kmの連発地震が与那国島沖で起こった.
東から西に伸びる琉球海溝軸が与那国島沖から北に屈曲して北上し,すぐ南下して台湾東海岸の花蓮に上陸し,海岸山脈の西側を通過する縦谷断層に接続する.この与那国屈曲の東西に与那国島と花蓮が位置し,沈込む琉球海溝と衝突する台湾の要になっている.花蓮では2018年2月7日M6.7+npo10kmが起こっている(月刊地震予報102;図294).

図294.Plateが沈込む琉球海溝と衝突している台湾の要となっている与那国屈曲とその東西の与那国島沖の2018年10月の連発地震と2018年2月の花蓮地震.

本連発地震の初動IS規模・深度はM6.1+p26kmとM6.3+np28kmであるがCMT規模・深度はM5.8+p28kmとM5.7+np29kmで,規模は小さくなり順番が入替り,深度は深くなっている.23日と24日で発震機構型が引張過剰逆断層型+pと引張過剰圧縮横擦断層型+npと異なるのは,どの主応力軸が最大傾斜を持つかによって発震機構型が決定されるためである.10月23日M6.1+pの主応力軸方位は[P178+16T286+46N74+40],10月24日M6.3+npは[P174+17T277+38N65+47]であり,23日はT軸傾斜の46°が最大なので逆断層型になるが,24日はN軸傾斜の47°が最大なので横擦断層型になる.
2018年2月7日花蓮地震M6.7の主応力軸方位[P169+34T57+28N298+43]を基準としたEuler回転軸方位傾斜[回転角]は,10月23日の地震が183+28[78.6]で24日が184+29[88.8]とほぼ同じ回転軸の回りに78.6°と88.8°回転しており,その差は10.2°のみで,ほぼ同じ主応力方位である.
この回転軸方位は小円方位基準であるが,震源域の小円方位はほぼ北であるのでP軸方位178・174°とほぼ一致し,与那国屈曲方位と平行している.南へのP軸傾斜が北傾斜のPlate沈込境界面と逆の南傾斜であることは,境界面に沿う剪断応力場で地震が起こったことを意味する.
回転軸がP軸方位に近く,回転角が90°に近いので,P軸に直交する花蓮地震のT軸とN軸が連発地震では入替る.T軸とN軸を入替えた花蓮地震のTexNに合致させる回転角は22.3°と20.2°で25°以内に収まる.
連発地震の震源域は,10月24日のM6.3からの震央距離50km以内に33個のCMT解密集域である(図295).花蓮地震基準の力場極性偏角区分はOrgn0/2TexN26PTexN1TPexN4で,今回のTexNが26個と主体を占めるが,逆応力場極性の地震も5個ある.

図295.与那国島沖の震源密集域.全CMT解の花蓮地震M6.7基準の応力場極性偏角区分.右中の時系列図右縁の数字は年数.
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震央距離50km以内の33個のCMT解は1999年9月21日集集地震M7.7+p0kmの1ケ月後の1999年10月21日M5.0+np39kmOrgnから始まり,最大の2001年12月18日M7.3Tr8kmTexNから,次大の2015年4月20日M6.8P22kmTexNまで続いた後途絶え,2017年10月30日M5.3+p25kmTexNから再開し,2018年2月7日花蓮地震を挟み2018年5月2日M5.5np18kmTexNの後,今回の2018年10月23日の連発地震になった(図296).

図296.2018年10月24日M6.3から震央距離50km以内のCMT解の可憐地震M6.7基準の応力場極性偏角区分.右中の時系列図右縁の数字は年数.
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逆極性地震は,最初で最大の2010年2月26日M5.7pr50kmTPexNから2013年7月15日M5.4pr58kmTPexNまで起こっている.この逆応力場地震の深度20-58kmは正応力場の地震の0-42kmよりも深い.
花蓮地震では逆極性応力場の余震が発生せず,地震を起こした歪が開放されるに到っていないが(月刊地震予報102),その歪が与那国の屈曲を越えて今回の与那国島連発地震を起したと言える.
今回の連発地震によっても応力場が変化していないので,より大きな地震の前震である可能性があり,今後の活動に警戒が必要である.特に心配されるのは,CMT規模のIS規模からの差が-0.3・-0.6と大きいことである.

3.前震における負のCMT-IS規模差

 本月刊地震予報ではCMT解に記載されている2つの規模を初動IS規模とCMT規模と呼んでいたが,IS規模は気象庁規模MjでCMT規模はMw(Moment規模)である.
 CMT解のMwのMjからの差の系統的解析によると,東日本大震災の本震源から半径60km以内に2011年2月16日から開始した前震のMwが-0.4より小さい負の異常が認められる(図297の空色).

図297.2011年3月11日の東日本大震災本震M9.0の前震に認められるMwのMjからの差の負異常.本震源と震央距離100kmの円.右中の時系列図右縁の数字は2011年の月数.
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 同様の負の異常は2016年4月14日から15日にかけて起こった熊本地震の前震において認められ,4月16日の本震以後は-0.1以上が主体となっている(図298).本月刊地震予報では応力場極性偏角区分の逆極性地震の発生をもって本震到来を判定してきたが,今後は負のMw-Mj差も前震の特徴として,本震襲来前の判定に使用する.

図298.熊本地震の前震に認められるMwのMjからの差の負異常.右中の時系列図右縁の数字は2016年4月の日数.
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今回の与那国島沖連発地震とともに2018年9月の琉球海溝軸地震の地震でも,逆転応力場の地震が起こっていないことと負の規模異常から前震である可能性が大きく,これらの震源域を包含する広域震源域の巨大本震への警戒が必要である.

4.2018年11月の月刊地震予報

2018年9月6日胆振地震M6.7から開始した地震活動は継続し,南東に拡大している.島弧の海陸境界に重要な役割を持つMoho面付近の地震の継続と拡大は千島海溝域の巨大地震や日本列島の今後の反応に予断を許さない.国後島付近でも地震があり(日本全図月別),警戒が必要である.
琉球海溝軸部で連発地震が起こったが応力場極性は逆転しておらず,応力場は維持されており,より大きな地震の前震である可能性もある.琉球海溝全域も含む本震も考えられるので警戒が必要である.

月刊地震予報109)北海道胆振東部地震M6.7の破壊進展に伴う主応力軸入替,琉球海溝連発地震M6.2・M6.0,相模Slabの地震活動, 2018年10月の月刊地震予報

1.2018年9月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2018年9月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で39個0.687月分,千島海溝域で2個0.080月分,日本海溝域で23個2.775月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.107月分,南海・琉球海溝域で13個0.640月分であった(2018年9月日本全図月別). 2017年10月以来の月間総地震断層面積比2割以下の静穏期を2018年8月に5割近い面積比で脱し活動期に移行したが,2018年9月には面積比を7割に近くまで増大させた.
2018年9月の最大地震は2018年9月6日北海道の胆振地震M6.7で,M6.0以上の地震には琉球海溝の2018年9月15日M6.2・16日M6.0の連発地震がある.2018年7月7日M6.0のあった房総半島沖では,相模Slabの地震活動が活発化している.

2.胆振地震M6.7の破壊進展に伴う主応力軸入替

青森県の下北半島沖では,2018年7月2日から16日に島弧上部MantleとSlabの境界部で3個のM4.9地震に続き,太平洋Slabと島弧Mohoとの接触部で2018年8月23日M4.9p・8月24日M5.1pの連発地震が起こっていた(月刊地震予報108).
この様な状況で,札幌市内のホテル宿泊中の2018年9月6日3時7分に北海道胆振東部地震M6.7が起こり,震動継続時間を51秒と数えることができた.経験則から継続時間が1分ならM7で,Mが1つ減る毎に半分になるので,M7より少し小さいが震源が海域であれば津波が心配されるM6.5より大きいと推定した.札幌のホテルでは停電と回線切断のため気象庁のHome Pageを検討できなかったが,帰仙後,5日間保持される速報発震機構解とともに精査後の初動IS解・CMT解を解析した.精査前のIS解とCMT解は,海外地震も含め速報解として公表されている.
9月6日3時07分の最大地震についての速報(CMT)解M6.7pr深度40kmと精査後のCMT解の応力場偏角は,19.8°と良く一致している(図287).その後の速報解の応力場偏角は,同日5時20分のM3.9p40km(IS)で51.4°,6時11分M5.4pr40km(CMT)で29.4°と最大地震の応力場を保持していた.しかし,深夜23時43分のM4.1p40km(IS)では84.5°と大きく外れ,応力場極性逆転入替TPexNによって79.4°に減少することから,最大地震を起こした応力場解放の開始が示された.続く9月7日1時41分M4.2nt30km(IS)も90.8°と,応力場極性逆転入替TPexNによって52.1°に減少することから,最初の最大地震M6.7が本破壊による本震であると判定できた.

図287.2018年9月胆振地震M6.7PrCMT解主応力方位基準の速報解応力場極性偏角区分.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右図上:縦断面図,右中図:時系列図(右端の数字は2018年9月の日数,左縁は応力場極性偏角Π),右下図:主応力軸方位図.
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2018年9月末までに,胆振地震についての速報解72個,精査後のIS解27個,CMT解13個が公表された.最大規模はIS解のM6.7pr37kmで,同地震のCMT解はM6.6Pr33kmとされている.IS解は破壊開始の位置と応力場,CMT解は主破壊の重心(Centroid)位置と応力場を表す.本破壊が震源域の広域応力場を代表すると考えられるので最大地震のCMT震源とCMT発震機構主応力方位(P67+17T274+71N160+8)を基準として解析する.
基準震央からの震央距離は,速報解震央が16km以内,IS解震央が19km以内,CMT解震央が17km以内に収まっている.また,震源深度は速報解が20-40km,IS解が13-43km,CMT解が13-41kmと,島弧地殻底のMoho深度付近に当たっている(図287).
日本海溝域のMoho付近の地震は,太平洋岸に沿って起こっていることから「沿岸震源帯nSh」と呼ぶことにする.沿岸震源帯には北から襟裳・三陸・双葉の震源区があり,今回の胆振地震は,海溝距離幅の最も広い襟裳震源区の西縁で起こった(図288).今回の胆振地震M6.7pr37kmの規模は,沿岸震源帯において三陸震源区の2012年3月27日M6.6pr33kmを凌ぎIS解最大地震となった.

図288.日本海溝域の島弧Moho面付近を震源とする沿岸震源帯のIS解主応力軸方位.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右図上:縦断面図,右中図:時系列図(右端の数字は年数,左縁は51.1日間の地震断層面積規模[彩色は発震機構型比率]と,積算地震断層面積のBenioff図),右下図:主応力軸方位図.
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2018年9月30日までのIS解27個・CMT解13個の応力場偏角の平均方位は5.4・12.7°と最大CMT解にほぼ一致し,基準としたCMT解応力場が今回の地震活動の応力場を代表していると言える(図289).

図289.2018年9月胆振地震の最大地震CMT解主応力軸方位基準のIS解とCMTcmt解の応力場極性偏角区分.
 左図:IS解震央地図,中上図:CMTcmt解海溝距離断面図,中下図:IS解海溝距離断面図,右上図:IS解縦断面図,右中図:IS解時系列図(右端の数字は2018年9月の日数,左縁は応力場極性区分偏角で左がCMTcmt解,右がIS解),右下図:主応力軸方位図.
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これらの発震機構解の中にはIS解とCMT解を兼備する10個の地震がある.破壊開始の応力場と主破壊の応力場偏角の差δは,最大地震の9月6日M6.6Prで55.1°と,9月14日9時48分M4.2の56.4°に次いで大きい(表34).

表34. 2018年9月の胆振震源域のIS解・CMT解兼備地震の応力場極性偏角ε・区分Π(最大CMT基準・最大IS基準).

規模型 深度 non DC% 偏角δ CMT ε CMT Π IS ε IS Π
2018 9 24 18 17 6.1 M4.3T 41 16 18.9 73.1 tn53.5
5.8 M4.3pr 41 11.2 23.6 72.9 tpn117.4
2018 9 17 2 51 32.1 M4.5T 28 25 94.9 tpn128 97.1 tpn145.4
31.6 M4.6t 28 41.8 59.0 107.4 tpn162.0
2018 9 14 9 48 32.4 M4.2pr 36 -1 29.3 75.3 tpn126.7
32.0 M4.3t 36 56.4 43.6 59.7
2018 9 14 6 54 22.8 M4.6-t 27 -16 27.0 80.6 tn40.2
22.3 M4.6nt 27 26.6 33.1 85.3 tpn134.8
2018 9 12 18 24 52.2 M4.4+p 33 5 30.1 67.8 tn24.6
51.8 M4.5pr 33 24.3 27.8 51.3 tn46.7
2018 9 11 12 54 50.5 M4.2+p 13 13 36.0 37.3
50.2 M4.3p 13 45.4 56.4 54.1
2018 9 9 22 55 16.2 M4.9-t 34 -16 8.4 57.5 tn49.2
13.7 M4.9pr 34 27.1 25.5 73.7 tpn120.2
2018 9 7 22 43 46.3 M4.4T 36 21 55.1 92.9 tpn150.2
45.9 M4.4p 36 24.7 40.4 90.0 tpn145.8
2018 9 6 6 11 34.4 M5.4pr 35 -2 18.7 50.4
29.7 M5.4pr 35 8.5 25.8 55.2 tn49.3
2018 9 6 3 8 10.2 M6.6Pr 33 -18 0.0 基準 55.1 tn52.9
7 59.3 M6.7pr 37 55.1 55.1 tn52.9 0.0 基準
個数 CMT平均ε IS平均ε
兼CMT 10 20.9 ±36.9 49.3 ±53.9
兼IS 10 6.0 ±43.0 65.0 ±29.1

最大地震のIS解(P231+9T129+52N328+36)とCMT解の応力場偏角差55.1°は,引張T軸と中間N軸の入替TexNによって52.9°と減少することから,T軸N軸入替途上にある.非双偶力成分比は-18%とT主応力とN主応力の差が圧縮P主応力とN主応力の差の半分以下でTexN入替が起こり易くなっている.IS震源深度37kmがCMT震源深度33kmより深いことは,深所から開始した破壊がて上方に進展したことを示している.深度が大きければ静岩圧が引張応力を相殺するため,破壊の上方進展に伴う静岩圧減少によって引張応力の垂直成分が増大する.深所でT軸より引張応力が小さかったN軸が浅所でT軸より大きくなれば,自動的にN軸がT軸に入替られる.IS解で52°のT軸傾斜がCMT解で72°に増大し,CMT解のT軸方位がIS解のT軸方位129°よりもN軸方位328°に近い274°であることは,IS解とCMT解の差55.1°が破壊の上方進展による引張応力垂直成分の増加によって説明できる.
IS解・CMT解兼備地震10個のIS解深度は9月24日の地震が41kmと9月6日の最大地震の37kmよりも深いが,24日の地震の応力場偏角は,最大地震CMT解基準でIS解が28.6°・CMT解が18.9°とほぼ一致するのに対し,最大地震のIS解を基準にすると72.9・73.1と異なる.最大地震の破壊を開始させた深度37kmの応力場は,9月24日の深度40kmで最大地震の浅部の主破壊応力場に変化してしまったのであろう.
胆振地震の起こった沿岸震源帯(襟裳震源区)西縁(海溝距離280km以上)ではこれまで11個の地震が起こっている(図290).震源深度は12-30kmで,最も深い2015年1月1日M4.5pr30km・2014年11月3日M4.6pr29kmの応力場偏角を最大地震のCMT解基準にすると58.6・55.5°と異なるのに対し,IS解基準にすると21.5・28.3°と一致する.今回の最大地震の深度37kmのIS解と同様の応力場が2014年の深度29kmと2015年の深度30kmにも働いていたことが確認される(表35).

図290.胆振地震前の沿岸震源帯襟裳震源区西縁(海溝距離280km以上)のIS解.
 左図:IS解震央地図,中図:海溝距離断面図,右上図:縦断面図,右中図:時系列図(右端の数字は年数,左縁は応力場極性区分偏角Πと積算地震断層面積のBenioff図),右下図:主応力軸方位図.
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表35. 沿岸震源帯襟裳震源区西縁(海溝距離280km以上)のIS解CMT解の応力場極性偏角ε・区分Π(最大CMT基準・最大IS基準).

規模型 深度 non DC% 偏角δ CMT ε CMT Π IS ε IS Π
2017 11 21 16 29 M3.8nt 27 60.6 tn31.0 81.7 tn36.0
10 21 1 44 M3.4p 27 57.5 87.5 tpn137.9
7 16 7 59 M3.3p 25 48.3 84.2 tpn129.4
7 14 17 54 M3.9p 26 40.7 86.4 tn39.2
7 3 6 15 M3.2p 26 51.9 92.2 tpn143.9
7 1 23 45 M5.0P 29 -8 35.1 78.8 tn46.4
M5.1p 27 19.0 52.0 86.3 tn55.8
2015 1 1 22 57 M4.4+pr 30 2 58.6 tn39.8 20.2
M4.5pr 30 9.9 51.2 tn48.7 21.5
2014 11 3 11 28 M4.6pr 29 55.5 tn52.0 28.3
2009 10 5 9 35 M4.7pr 20 13.5 61.3 tn3.9
5 25 1 6 M3.9nt 28 87.5 tn9.2 49.0
2002 10 11 2 22 M3.5p 12 63.0 48.7
個数 CMT平均ε IS平均ε
全IS 11 4.3 ±58.0 42.3 ±59.1

胆振地震域西方の渡島半島の島弧地殻上部では,2014年7月8日M5.4P10kmと2016年6月16日M5.2pr11km(4656月刊地震予報81)が起こっている.この活動は,胆振震源域の2014年11月から2015年1月,と2017年7月から11月の活動に先行している.この中で,2016年6月の地震は,気象庁の1923年からの観測記録にない稀発地震活動として注目された(4656月刊地震予報81).稀発地震は以後,朝鮮半島(月刊地震予報82月刊地震予報84月刊地震予報99月刊地震予報102),群馬でも起こった.これらの稀発地震は,1500万年前の日本海拡大境界域で起こっていることが注目される(月刊地震予報106,).

図291.稀発地震と日本海拡大.
 左図:現在の震央地図,右図:1500万年前(15Ma)の日本海拡大直前の震央地図.
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胆振地震は日本海拡大時に大規模左横擦運動のあった北海道中軸部と東北日本の境界で起こっている(図291).この境界はその後,北米Plateと欧亜Plateの衝突境界となり,馬追丘陵の衝突断層褶曲構造を形成している.ほぼ南北方向のこの左横擦境界に,胆振地震IS解のP軸方位231°の応力が働けば右横擦を起こし,日本海は閉塞する.日本海の閉塞は,日本海底の日本列島下へ沈込として1983年日本海中部地震M7.7や1993年北海道南西沖地震M7.8を起こしている.Vladivostokや小笠原の太平洋Slabの下部Mantle深度の地震から予想される太平洋Slabの下部Mantleへの崩落は日本海の閉塞をもたらすことから(速報68速報69,),胆振地震もその変動の現れと見ることもできる.

3.琉球海溝連発地震M6.2・M6.0

 琉球海溝域では2018年7月25日M5.8の海溝外距離-152kmが2010年5月26日M6.4の最遠記録-88kmを大幅に更新し(5542月刊地震予報107),2018年8月14日M4.9が連発していた(5591月刊地震予報108).その後,琉球海溝軸で2018年9月15日M6.2・16日M6.0を含むCMT解10個の連発地震が起こった(表36).CMT解には初動の震源・規模とCMTの震源・規模およびCMT発震機構が公表されている. CMT解についてはその初動震源・規模を月刊地震予報106まで表示・解析してきたが,今後,CMT震源・規模も明記して解析に使用する.本震源域についてIS解は公表されていない.

図292.2018年9月の琉球海溝の連発地震と最遠海溝外地震.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右上図:縦断面図,右中図:時系列図(右端の数字は2018年の月数,左縁は応力場極性区分偏角Πと積算地震断層面積のBenoff図),右下図:主応力軸方位図.
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表36.琉球海溝連発地震.

発生時刻 規模型 深度km 海溝距離 応力場極性偏角
IS CMT non DC% IS CMT IS CMT ε Π
2018 9 22 19 58 M5.6 M5.4te -3 48 10 8 -5 31.6
9 17 11 32 M4.6 M4.8Te 14 53 10 5 -6 31.1
9 16 1 24 M6.0 M5.6Te 5 43 10 9 4 8.5
0 38 M5.1 M5.3te 1 53 11 9 -4 35.4
9 15 22 53 M4.8 M4.9Te 13 47 11 7 -3 9.6
17 32 M4.9 M4.8Te 19 45 10 9 -3 39.8
17 5 M6.2 M5.7Te 8 34 12 6 6 基準
13 40 M5.9 M5.9Te 1 55 11 8 4 6.6
13 14 M4.9 M4.9Te 7 44 10 8 -6 25.2
9 8 M5.6 M5.6te 0 44 12 8 -4 14.3
2018 8 14 18 22 M4.9 M4.8nto 4 39 10 -145 -139 78.1 tpn117.2
7 25 13 20 M5.8 M5.3+nto 13 33 10 -145 -152 82.0 ptn117.8
2010 5 26 17 53 M6.4 M6.4To -14 48 10 -86 -88 55.8

規模の最大は2018年9月15日17時05分の初動規模M6.2Teで9月16日1時24分の初動規模M6.0Teが次いでいるが,これらのCMT規模はM5.7・M5.6と小さくなっている.初動深度は34-55kmで,CMT深度は10-12kmと一様に浅いが,いずれにしろ琉球海溝に沈込むPhilippine海 Slab内で起こっている.最大規模地震M6.2の初動深度は34kmと最も浅く,それに次ぐM6.0の初動深度43kmが次いでいる.初動最大地震の主応力軸方位[P165+77T308+10N39+8]の引張主応力T軸方位は南China PlateとPhilippine海Plateの相対運動方位と一致している.この主応力軸を基準とした応力場極性偏角εは6.6-39.8°の範囲に収まり,応力場極性の逆転は起きておらず,今回の連発地震でも応力は維持されており,連発地震がより大きな地震の前震である可能性もあるので今後の活動に警戒が必要である(図292).
 

4.相模Slabの地震活動

2018年6月12日から27日までの房総半島東方の上総Slab上部の地震活動は,太平洋Slabとの境界域の最大地震7月7日M6.0で峠を越したが(月刊地震予報107),8月14日M4.7まで継続した後,9月10日M4.7と9月15日M3.2が房総半島南東沖の相模Slabで起こった.
1915年11月16日の房総南部の地震M6.0は,関東大震災について東京市民を巻き込んだ大森・今村論争を加熱させたが,その8年後,1923年9月1日に関東大正地震M7.9が相模Slabで起こっている(上山,2018).上総SlabによってPlate運動を阻害されていた相模Slabが活動を開始したとも考えられるので警戒が必要である(図293).

図293.2018年7月7日上総SlabM6.0基準の2018年9月の房総半島沖相模Slab地震IS解の応力場極性偏角区分.
 左図:IS解震央地図,中図:海溝距離断面図,右上図:縦断面図,右中図:時系列図(右縁の数字は2018年の月数,左縁は応力場極性偏角区分Π),左下図:主応力軸方位図,×:1915年11月16日M6.0と1923年9月1年M7.9の震央.
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5.2018年10月の月刊地震予報

日本海溝域のMoho付近の地震は太平洋岸に沿う沿岸地震帯で起こっているが,その最北部の襟裳震源区で2018年9月6日胆振地震M6.7が起こった.震源域は日本海拡大の大横擦境界であり,北米Plateと欧亜Plateの衝突境界でもあった.Moho面直下のMantleは島弧下で最も強度の大きな深度域と考えられている.そこで起こる地震が沿岸に位置していることは,島弧の海陸境界に重要な役割を持っている可能性もある.この重要な支柱に破壊が起こったことから,千島海溝域の得撫島沖の巨大地震が心配されるとともに日本列島が今後,どのような反応を示すか予断を許さず警戒が必要である.
琉球海溝域の海溝外地震の最遠記録大幅更新に続き,琉球海溝軸部で連発地震が起こったが応力場極性の逆転は起きておらず,今回の連発地震でも応力は維持されている.連発地震がより大きな地震の前震である可能性もあるとともに,南海Trough・琉球海溝全域の応力場変動に対応しているとも考えられるので今後の活動に特に警戒が必要である.
相模Slabの地震活動が活発化している.相模Slabでは1923年の大正関東地震を起こったがその直前の1915年に2018年6月・7月の上総Slabの地震活動域でM6.0の地震が起こり,東京市民を巻き込んだ大森・今村大論争が行われた.長岡半太郎に批判された誕生期の地震学は現在までどの位発展したのであろうか.いずれにしろ警戒が必要である.

千島から琉球まで全域にわたり,これまで見られなかった特異な地震活動が起こっているが,解消しきれない歪の蓄積が進行していることは確実である.今後の警戒が必要とされる.

引用文献

上山明博(2018)地震学をつくった男・大森房吉.青土社,東京,269p.

月刊地震予報108)小笠原海台区の最大地震M6.6,千島列島東端温祢のM6.4Tと下北半島沖連発地震,駿河湾連発地震,琉球海溝外連発地震,2018年9月の月刊地震予報

1.2018年8月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2018年8月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で16個0.488月分,千島海溝域で2個0.472月分,日本海溝域で9個0.220月分,伊豆・小笠原海溝域で3個1.838月分,南海・琉球海溝域で2個0.008月分であった(2018年8月日本全図月別).2018年5月の0.103月分から0.1月分台を保持してきた月間総地震断層面積比が2018年8月に入り0.488月分に急増した.これまでの静穏を脱し,活動期に移行したことを示している.
2018年8月の最大地震は2018年8月17日小笠原海台小円区のM6.6Pで,この他にM6.0以上の地震は2018年8月11日千島小円区東端の温祢M6.4Tがあった.
連発地震は,襟裳小円区の下北沖と駿河小円区であった.また,琉球海溝域では海溝外地震活動が続いている.

2.小笠原海台区の最大地震M6.6

2018年8月17日3時23分に小笠原海台小円区の同心円状屈曲する太平洋スラブ下部で2018年8月の最大地震M6.6P深度93kmが起こった(図287).翌日の8月18日7時06分にも震央距離28kmでM5.8p深度114kmが起こり,連発地震となった.最大地震のCMT解主応力軸方位[P80+37T255+52N348+3]を基準に連発地震の応力場極性偏角を算出すると14.9°と小さく,最大地震によって応力場が変化しておらず,歪は解消されていない.これから起こる大地震の前震とも考えられる.

図287.小笠原海台の2018年8月最大地震M6.6と震央距離100km以内のCMT解発震機構型・主応力軸方位.
 左図:震央地図・海溝距離断面図.
 右上図:縦断面図.
 右中図:時系列図(右縁の数字:年数,左端図:地震断層面積規模).
 右下図:主応力軸方位図.

本最大地震から震央距離100km以内に2009年以降のCMT解が8個ある(図287).本最大地震に次ぐ規模のCMT解は2017年9月12日2時35分M5.9-tr深度0kmである.
太平洋Slabでは,2018年7月2日の千島海溝から伊豆海溝に到るマントル遷移帯で地震が起こり,伊豆海溝域でも7月2日M3.9np372(+80)kmのIS解があった(月刊地震予報107).2018年7月28日9時50分鳥島沖のM4.7P深度46kmに続き,2018年8月3日22時07分に伊豆海溝の太平洋SlabでM5.0-np深度536kmが起こり(図287),太平洋SlabのMantle遷移帯における活動が継続している.
伊豆・小笠原海溝域で最大の出来事は,小笠原小円区の西之島北方で2015年5月30日M8.1t深度682km・6月3日M5.6-t深度695kmがほぼ垂直に垂れ下がり下部Mantleまで達した太平洋Slab内で起こったことである(速報68速報69).西之島より南方の小笠原・Mariana海溝から沈込む太平洋Slabは同心円状屈曲したまま深度660kmの下部Mantle上面にまで達しており(図287),北方に伊豆海溝から垂直に沈込むSlabの間に切れ目が存在する.本最大地震同心円状屈曲して海溝から沈込始めた太平洋Slabと島弧地殻で起こっている.

3.千島小円区東端温祢のM6.4Tと得撫島沖・下北半島沖連発地震

2018年8月11日3時12分千島列島最東端の温祢(オンネ)震源域mCsmOneでM6.4T30kmが起こった(図288の+および×印).引張主応力T軸方位124°は太平洋Plate相対運動の逆方位とほぼ一致している(図288右下図の黒色三角印).
本震源域ではCMT解が2006年11月以降17個報告されているが,本地震が最大地震であり,本地震以外は全て逆断層型でその圧縮主応力P軸方位は138±19°と太平洋Plate相対運動の逆方位と一致している(図288右下図丸印).

図288.2018年8月11日M6.4と温祢震源区CMT解のM6.4主応力軸方位基準応力場極性偏角区分.
 左図:海溝断面図・震央地図.
右上図:縦断面図.
右中図:時系列図(右縁の数字:年数,右端:応力場極性・地震断層面積Benioff図)
右下図:主応力軸方位図.
One:温祢(オンネ)震源区,Sms:新知(シムシル)震源区,Urp:得撫(ウルップ)震源区,oSmk:下北沖震源区.

本地震のCMT解主応力軸方位[P328+66T124+23N218+9]を基準にしたこれまでのCMT解の応力場極性偏角区分(月刊地震予報87)はOrg1/3PTexN10TPexN3と逆極性が76%を占めている.地震活動が活発化したのは東日本大震災前の2009年2月4日M5.1P30kmからで,2014年1月11日M5.5p30kmの正極性への変換から静穏化していた(図288右中図左のBenioff図).
千島小円区の温祢震源域西隣の新知(シムシル)震源域Smsでは2007年1月13日に千島海溝域最大のM8.2Te30kmが太平洋Slab内で起こっており,2006年11月15日M7.9P30kmと2009年1月16日にM7.4Peも起こり,温祢震源域の地震活動の活発化と関連している(図288Sms).
太平洋SlabのMantle漸移帯の広域地震(月刊地震予報107)は千島小円区の2018年7月2日5時45分M5.6-np488kmから開始され,7月7日14時42分にもM4.7+pr524kmが起こっている(図288Sms).また,千島列島得(ウルップ)撫震源区Urpでは2018年7月29日17時12分M4.9P38(+10)kmと7月29日22時00分M5.1P31(-8)kmの連発地震(月刊地震予報107),千島海溝西端に当たる下北沖震源区oSmkで,2018年8月24日23時15分M5.1p深度32km・8月23日0時06分M4.9p深度35kmの連発地震が起こった(図288Urp・oSmk).
下北半島沖の連発地震は太平洋Slabと島弧Mohoの接触部で起こっているが,2018年7月2日20時53分にもM5.0p深度39kmが起こっている.また,島弧Moho以深のSlabでも2018年7月2日2時27分M4.9p深度64km・7月10日13時55分M4.9p深度68km・8月5日17時44分M4.2P62kmが起こっている.(図289).

図289.2018年7月・8月の下北沖震源区連発地震の発震機構型.
oSmk:下北沖震源区
左上図:震央地図.
左下図:海溝距離断面図:
右上図:縦断面図:
右中図:時系列図(右縁数字:月数,左端:地震断層面積規模・Benioff図)

千島海溝域では静穏期の後のM8級地震が予想される状況(月刊地震予報105)の下,2018年9月7日に胆振東部地震M6.7が起こった.この詳細については次号の月間地震予報109で報告する.

4.駿河湾連発地震

2018年8月10日駿河湾で21時18分M4.4Pr22kmのCMT解・IS解の後,22時03分M2.6nt22km・22時28分M2.5pr21kmのIS解が報告された.CMT解M4.4の主応力軸方位[P14+4T280+50N108+40]基準のIS解の応力場極性偏角はM4.4prが37.9,M2.6ntが23.9,M2.5prが33.4°と殆ど変化していない.M4.4による歪解消によっても応力場が変化していないことは,この地震活動が前震である可能性を示唆する(図290).

図290.2018年8月の駿河湾連発地震のT軸方位
 左図:CMT解の海溝距離断面図・震央地図.
 中図:IS解の海溝距離断面図・震央地図.
 右上図:IS解の縦断面図.
 右中図:時系列図(右縁の数字:年数,右端:地震断層面積規模・Benioff図)
 右下図:主応力軸方位図(紫色右下がり線Sub:Plate運動方位)

 駿河小円区の東南海Philippine海Slab震源区tnkPhでは2009年から5個のCMT解(図290右上下図)と1997年から269個のIS解(図290中・右図)が報告されているが,最大は2009年8月11日M6.3+nte18km(CMT解)・M6.5pre23km(IS解)で,その引張主応力T軸方位は291(CMT解)・285(IS解)とほぼPlate相対運動方位に沿い,今回と共通している.IS解全てのT軸方位はPlate相対運動方位(図290右下のT軸方位図左縁のSubからの右下がり紫色線)とその逆方位(図290右下のT軸方位図の上下端)に集中している.

5.琉球海溝外連発地震

琉球海溝域で起こった海溝外地震2018年7月25日13時20分M5.3+nto10(+4)kmの海溝距離は152kmと2010年5月26日M6.4To10(+4)kmの最遠記録88kmを大幅に更新したが(月刊地震予報107),2018年8月14日18時22分に同所でM4.9nto39kmが起こり,連発地震となった(図291).

図291.琉球海溝外連発地震のT軸方位.
 左図:震央地図.
 中図:海溝距離断面図.
 右上図:縦断面図.
 右中図:時系列図(右縁の数字:年数,左端:地震断層面積規模・Benioff図)

これらの地震は正断層型・引張横擦断層型であり,琉球海溝外のPhilippine海Plateに異常な引張応力が働いていることを示している.2009年から2010年の間に大きな変化があるが,駿河湾域の変化(図290)と対応している.

6.2018年9月の月刊地震予報

2割以下の月間地震断層面積のPlate運動面積に対する比を持つ静穏化も2018年7月で終了し,2,018年8月には5割近くに急増し,静けさも終了して嵐の到来である.
太平洋SlabのMantle遷移帯深度における地震が,2018年7月にオホーツク海,伊豆海溝域と同期して起こったが,8月には千島海溝域と小笠原海溝域でM6以上の地震が起こった.これらの地震は,東日本大震災前の状況と類似していることから警戒が必要である.
この異常は太平洋Slab沈込域のみならずPhilippine海Slab沈込域の駿河湾や琉球海溝域にも大地震前の異常が進行していることを示しており,警戒が必要である.