東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

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2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。

大地震に伴う津波は、海難災害です。救命胴衣を着けていれば
犠牲者数を大幅に減らすことができます(月刊地震予報97)。
津波対策では何より先に救命胴衣の準備を。

月刊地震予報129)沖縄Trough拡大地震M6.2,2020年6月の月刊地震予報

1.2020年5月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2020年5月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で25個0.218月分,千島海溝域で2個0.048月分,日本海溝域で7個0.459月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.102月分,南海・琉球海溝域で12個0.342月分であった(2020年5月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比が2019年9月から1割前後の異常静穏化の後,2020年2月・3月に千島海溝域の活動によって1.5・3.1ヶ月分に活発化したが,2020年4月に6割,2020年5月に2割に減少した.
最大地震は2020年5月3日沖縄Trough拡大地震M6.2で,M6.0以上の地震は他にない.2020年4月22日から開始した飛騨連発地震および東北日本弧MantleとSlab衝突地震は継続している.

2.沖縄Trough拡大地震M6.2

 2020年5月3日20時54分薩摩半島沖の沖縄TroughでM6.2+nt/深度9kmが起こった(図365).T軸方位はPlate運動と一致しているが,Philippine海Plateと南華Plateが収束するPlate運動とは逆に拡大している.琉球海溝に沿う琉球列島のGPSによる宇宙測距が開始された時から琉球列島は中国大陸から離れるように運動している.Plate収束帯で背弧海盆が拡大することは,Plate Tectonics確立期からの謎であった.
南華Plateの下にPhilippine海の海底が沈込みSlabになるが,海底とともにPlate運動してきた海底面下のMantleはSlabに行く手を阻まれ,Slabの下端を潜り抜け,中国大陸のMantleと衝突し,中国と琉球海溝の間を拡大させる.この拡大が沖縄Troughの拡大である(月刊地震予報117).
沖縄Trough拡大地震のCMT解は132個あり,最大は本地震の南南西42km の2015年11月14日M7.1+nt/17kmである(速報74,図365).全CMTの発震機構型は正断層t型64個,引張横擦nt型27個,圧縮横擦np型10個と引張優勢で沖縄Troughの拡大を支持している.本地震も最大地震も引張横擦nt型で沖縄Troughの典型的な地震と言える.

図365.沖縄Trough拡大地震(Okw)のCMT解
数字とM:地震発生年月日と規模:本地震とCMT最大地震.
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1922年からの全観測地震241個中の最大地震は宮古島北方沖1938年6月10日M7.2/22kmで,今回の地震M6.2は規模15位になる.この最大地震もCMT最大地震も沖縄Trough中軸部の横擦断層型震源(空色)密集部に位置している(図356).
Slab下端を通過したManlteは上昇して沖縄Toughを拡大させる.この上昇力が静岩圧と釣合うと圧縮P軸と引張T軸が水平になりN軸が直立して横擦断層型になる.最大地震が横擦断層型震源密集域に位置していることは,Mantle上昇が沖縄Troughを拡大していることを支持している.

図366.沖縄Trough拡大(Okw)観測地震.
数字とM:地震発生年月日と規模:本地震と最大観測地震.
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3.2020年6月の月刊地震予報

CMT最大の沖縄Trough拡大地震2015年11月14日M7.1の震源から42km北北東で5月3日M6.2起こったが,CMT最大地震の半年後の2016年4月16日には熊本地震M7.3が起こっており(速報79),警戒が必要である.
2020年2月からの千島海溝域のM7.2・M7.5に続き4月の小笠原海溝域M6.8の後に,北上島弧Mantle・Slab境界地震M6.2と飛騨連発地震が起こり,2020年5月まで継続している.東北日本・関東・中部日本の地震活動活発化に警戒が必要である.

月刊地震予報128)小笠原沖垂直Slab内地震M6.8,気仙沼沖島弧Mantle・Slab境界地震M6.2,飛騨連発地震,歪伝搬速度,2020年5月の月刊地震予報

1.2020年4月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2020年4月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で18個0.612月分,千島海溝域で1個0.004月分,日本海溝域で5個0.738月分,伊豆・小笠原海溝域で2個2.951月分,南海・琉球海溝域で10個0.123月分であった(2020年4月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比が2019年9月から1割以下に急減し,1割前後の異常静穏化が5ヶ月継続したが(月刊地震予報125),2020年2月の千島海溝域の4ヶ月分によって停止し(月刊地震予報126),2020年3月の千島海溝域9ヶ月分によって更に3ヶ月分を越していたが(月刊地震予報127),2020年4月に6割に減少した.
 最大地震は2020年4月18日の小笠原海溝から沈込む垂直Slab内地震M6.8Pであった.M6.0以上の地震は,4月20日の北上沖島弧Mantle・Slab境界地震M6.2がある.飛騨では4月22日から連発地震が起っている.

2.小笠原海溝から沈込む垂直Slab内地震M6.8P

 2020年4月18日17時25分小笠原沖でM6.8P/深度477kmが,垂直に沈込むSlab内で起こった(図362).この地震のCMT解の圧縮P歪軸傾斜は57°とSlab同様に垂直に近い.垂直Slabの下部では2015年5月30日M8.1t/682km・6月3日MM5.6-t/695kmが深度660kmの下部Mantle上面以深で起こっており(速報69),下部Mantleより密度の小さいSlabには,自重と下部Mantleからの浮力に挟まれて圧縮歪が蓄積すると考えられる.今回の地震はこの圧縮歪が限界に達して解放されたのであろう.

図362.2020年4月18日小笠原沖の垂直沈込Slab内地震M6.8P/477km.
△:活火山.
数字とM:地震発生年月日と規模:本地震と下部Mantle上面以深の地震.
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 2020年2月13日択捉沖で千島海溝に沿う同心円状屈曲Slabの平面化地震M7.2(月刊地震予報126)が起こって太平洋Plateの沈込障害が除かれ,Kamchatka沖の千島海溝軸で3月25日M7.5が起こっている(月刊地震予報127).これらの地震は,千島海溝に沿う太平洋Slabを沈込ませ,小笠原海溝における太平洋Slabの沈込を促進させ,Slab上部からの歪を増大させ,今回の地震が起こったと考えられる.

3.気仙沼沖の北上島弧Mantle・Slab境界地震M6.2p

 2020年4月20日5時39分宮城県気仙沼沖でM6.2p/46kmが,同心円状屈曲して沈込むSlab上面からの深度(Slab深度)+2kmで起こった(図363).この地震は,島弧で最大の力学的強度を持つ上部Mantleと沈込Slab上面との境界で起こった.この境界面の摩擦はSlab沈込障害になると共に,Slab上面に摩擦力で固着した島弧に圧縮歪を蓄積する.

図363.2020年4月20日気仙沼沖の北上島弧Mantle・Slab衝突地震M6.2/46km.
△:活火山.
数字とM:地震発生年月日:本地震・飛騨連発地震.
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 今年2020年の2月と3月には千島海溝域でSlab沈込が進行し,4月18日には小笠原海溝でもSlab下部の地震M6.8によって沈込が進行した.日本海溝における沈込は両脇の千島海溝と小笠原海溝で進行したSlabの沈込によって促進され,摩擦力が限界に達して今回の地震になったと考えられる.
 今回の地震のCMT解の圧縮P軸の方位は海溝傾斜方位(図363右下の主歪方位図の中軸線TrDp及び上下縁)よりもやや下方の右寄りでPlate運動方位(図363右下の主歪方位図中軸部の紫色折線)に沿っており,傾斜が海溝側に傾斜していることは(図363中の海溝距離断面図),島弧側に傾斜する島弧MantleとSlabの境界面に沿う滑りの圧縮歪に加え,摩擦による境界面に直交する抗力による歪が合成されていること示している.
 4月18日小笠原沖M6.8がSlab沈込を促進し,36時間14分後に気仙沼沖M6.2を起こしたとすると,両震源間の距離が1325kmであることから,歪伝達速度を時速36.6km以上と算出できる.

4.飛騨連発地震

 2020年4月22日2時26分M3.8np/4kmから開始した飛騨連発地震は東北日本と伊豆の活火山弧が交叉する焼岳の北東方で起こった(図363).本連発地震についてはCMT解4個(図363)・IS解12個(図364)の計13個の地震解が報告されている(表43).
 IS解には地震開始の初動の発生時刻・震央・深度・発震機構,CMT解には初動と複数の主動の重心(Centroid)についての発生時刻・震央・深度および主動の発震機構と非双偶力成分比がある.M4.7からM5.2のCMT解発震機構は全て圧縮横擦np型で,M3.2からM5.5のIS解の発震機構は圧縮横擦np型11個と正断層型1個である.

図364.2020年4月の飛騨連発地震のIS解主歪軸方位.
△:活火山.
数字とM:地震発生年月日(規模):飛騨連発地震・犬山と伊勢湾奥の地震.
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 3個のCMT解地震はIS解も兼備する地震(月刊地震予報109)である.最大地震は2020年4月23日13時44分の最初の兼備地震で,初動M5.5np/3km・主動M5.2np/10kmである.連発地震全ての震央は最大地震震央の3km以内に収まり,初動深度は3-6km,主動深度は10kmと集中している.
 発震機構の主歪軸方位は,西北西-東南東のP軸と北北東-南南西のT軸そして垂直に近いN軸を持ち,P軸とT軸が載りN軸に直交する主歪面はほぼ水平である.地下岩石に分布する歪は方位によって変化し,圧縮歪が最大となる方位をP軸方位とし,引張歪が最大となる方位をT軸方位とする.P軸方位における圧縮歪の大きさを負,T軸方位の引張歪の大きさを正とする一連の値で表す.P軸方位とT軸方位の載る主歪面に直交する方位を中間N軸方位とし,これらの軸が互いに直交しているとして算出されるのが主歪軸方位である.N主歪軸方位の歪の大きさは負のPと正のTとの中間の値を持つが,0になるのは地下岩石に働く応力が双偶力の場合であり,現実には多少ずれる.CMT解ではこのずれを非双偶力nonDC成分比として算出している.
 主歪軸方位を変化させない一様な引張歪を地下岩石に与えると,TとNの値は増大し,Pの値は減少し,非双偶力成分比は引張過剰の正になる.一様引張歪がP歪を相殺するまで増大させると,非双偶力成分比は最大の+50%に達する.一様な圧縮歪を与えれば非双偶力成分比は負になり,T歪を相殺するまで増大させると最小非双偶力成分比-50%に達する.一様な圧縮歪の増減は,震源深度に対応する静岩圧の増減と対応する.
 直交3主歪軸は,正から負への歪の順にT・N・P軸と名付けられる.N軸歪の値のみが変化し,P軸の圧縮歪の値より小さい圧縮過剰になると,自動的にP軸とN軸は入替わる.このような入替はP軸圧縮歪とN軸圧縮歪との差の小さい引張過剰の正非双偶力成分比に起こり易い.
 地表は歪を伝達しない大気に覆われているため引張応力場にあり,Plate運動等で地表に並行な圧縮応力が懸かれば東北日本のように水平な圧縮歪と垂直な引張歪の逆断層型歪が蓄積する.地下深部の温度が上昇すると地下岩石が次第に部分溶解し,歪を伝達できず地震も起せなくなる.歪を伝達できなくなる境界面には圧縮P歪軸と引張T歪軸が載り,歪主面となる.歪主面が水平であれば歪主面に直交するN歪軸は垂直になり,そこで起こる地震の発震機構は中国地方や中部地方のように横擦型になる.
 今回の飛騨連発地震が横擦型であることは地下に部分溶融した歪主面が存在することを示唆し,震央南西に活火山の焼岳が存在するとともに(図364),世界で最も新しい第四紀の滝川花崗岩等が地表に露出していること(原山,2006)が地質学的根拠を与えている.
 本震源西方の白山連峰の毘沙門岳からは,Slab溶融によるMagnaを特徴付けるadakiteが噴出している(石渡,2006).adakiteの噴出は中国地方の大山にも知られており(佐々木,2009),1500万年前に拡大直後で高温の四国海盆北縁が日本海拡大に伴って西南日本に載り上げられ(高橋,1986),700万年前から沈込で深度100km付近の西南日本北縁に達しadakaite Magmaを供給していると考えられている.中部地方と中国地方では下部地殻から上部Mantleで地震が発生せず,上部地殻の地震が横擦型であることが高温Slabの存在を支持している.
 飛騨の地震は,2011年3月11日東北沖巨大地震M9.0の前震と交互して2011年2月27日にM5.0とM5.5が起こったことで注目されている(速報55速報56).東北沖巨大地震後も2011年10月5日にM5.4・M5.2が起こり静穏化した後,2017年6月25日M5.6が起こって3年後に今回の活動が起こった.
 今回の活動は,2020年4月20日5時39分北上島弧Mantle・Slab衝突地震M6.2の42時間40分後から開始している.これらの地震が歪の伝搬によって関係しているとすると両震源間距離490kmから,歪伝搬速度は時速11.5km以上と算出される.Slab上面摩擦による東北日本弧の圧縮歪は4月20日M6.2によって解放され,Slabが沈込み,周辺のSlab上面の摩擦力は増大して東北日本弧の圧縮歪は増大する.この圧縮歪の増大が飛騨にも及んだと考えられる.
 最大地震は4月23日13時44分の最初の兼備地震で,初動M5.5np深度3kmの発震機構は[P323+0T53+15N233+75],主動重心M5.3np/10km非双偶力成分比-4%の発震機構は[P134+18T40+13N276+67]である.以後の歪方位偏角の算出には最大主動の発震機構を基準とする.最大地震の初動の偏角は20.1°と算出される.13分後の2つ目の兼備地震は,初動M5.0/5km偏角10.1°・主動重心M4.7/10km-6%偏角3.9°と殆ど変化していない.これらのCMT解以前のIS解の震央は最大地震の震央の南側で起こっているが,以後は北西側で起こっている.

表43 2020年4月飛騨連発地震の(主動/)初動.
基準は2020年4月23日13時44分M5.2の主動[P134+18T40+13N276+67].

発生 規模M 発震 機構型 深度km 非双偶力 偏差
時:分 成分% 距離km 方位° 深度km 歪偏角°
4 30 21:11 3.3 np 4 3 317 -6 12.5
4 27 4.7 -np 10 -23 13 347 0 26.6
4 27 11:32 4.8 10 3 288 0
4 26 8:56 3.5 np 5 3 292 -5 28.5
4 26 5:00 3.2 t 5 3 285 -5 63.7
4 26 4.8 +np 10 +14 5 331 0 11.6
4 26 2:22 5.0 np 6 3 300 -4 38.1
4 26 1:16 2.8 p 16 154 207 +6 104.2
4 24 21:12 3.4 np 5 2 287 -5 47.3
4 24 19:57 3.4 np 5 2 280 -5 52.4
4 24 6:31 3.3 np 3 4 251 -7 47.0
4 23 21:03 4.3 np 6 2 296 -4 36.5
4 23 20:47 3.6 nt 47 109 206 +37 39.6
4 23 4.7 -np 10 -6 1 305 0 3.9
4 23 13:57 5.0 np 5 1 242 -5 10.1
4 23 5.2 np 10 -4 基準 基準 基準 基準
4 23 13:44 5.5 np 3 2 180 -7 20.1
4 22 2:47 3.6 np 4 2 191 -6 11.7
4 22 2:26 3.8 np 4 1 188 -6 15.7

 2つ目の兼備地震の6時間50分後の4月23日20時47分に南南西114kmの犬山付近でM3.6nt/47km偏角39.6°が起こった(図364).この地震が2つ目の兼備地震による歪解放と関係していれば歪伝達速度は時速16.7kmと算出される.飛騨連発地震初動偏角は10.1-20.1と小さかったが,犬山の地震後には36.5-52.4°に増大する.
 4月26日1時16分には飛騨から南南西154kmの伊勢湾奥でM2.8p/16km偏角104.2°が起こり(図364),1時間6分後の4月26日2時22分に3つ目の兼備地震の初動M5.0np/6km偏角38.1°・主動M4.8+np/10km 非双偶力成分比+14%偏角11.6°が起こった.その2時間48分後の4月26日5時00分にIS解唯一の正断層型M3.2t/5km偏角63.7°が起こった.この正断層型地震は,圧縮歪の減少による垂直なN軸と水平なP軸の入替によるであろう.正断層型地震以後4月30日までに,IS解2個とCMT解1個あるが,偏角は12.5-28.5°と基準に近付き,非双偶力成分比も-23%と圧縮過剰に変化し,引張歪の解放を示している.
 これらの経過をまとめると,4月20日の北上島弧Mantle・Slab境界地震M6.2によって東北日本弧の圧縮歪が増大し,4月22日から横擦型の飛騨連発地震が南端から開始された.4月23日には最大のM5.5とM5.0によって圧縮歪が解放され,歪方位が変化し震央も北西方に移り,南南西方の犬山でM3.6が起きた.4月26日には伊勢湾奥のM2.8に続き飛騨で引張過剰のM5.0の後に正断層型M3.2が起きた後,引張歪が解放され開始時の歪方位に戻った.

5.2020年5月の月刊地震予報

 千島海溝域の2020年2月Slab平面化地震M7.2と3月の海溝軸部地震M7.5に続き今月4月の小笠原海溝域でSlab内地震M6.8が起こった後に,日本海溝域で北上島弧Mantle・Slab境界地震M6.2が起こり,飛騨連発地震が続いた.日本海溝域と飛騨・関東域の地震活動の活発化に警戒が必要である.
 飛騨は地震観測網の中央に位置し,M3.0以下の地震についても発震機構解が報告され,日本列島地殻の歪変化を監視するための重要な地域である.飛騨の地震が歪の伝搬と解放によってどの様に支配されているかが明らかになれば,地震予報に大きな役割を担うであろう.

引用文献

原山 智(2006)爺ケ岳転倒コールドロン―横倒しのカルデラ火山岩類.地方地質誌「中部地方」,朝倉書店(東京),326-327.
石渡 明(2006)中部地方の火成岩.地方地質誌「中部地方」,朝倉書店(東京),83-88.
木村純一(2009)第四紀の火山岩.地方地質誌「中部地方」,朝倉書店(東京),354-361.
高橋正樹(1986)日本海拡大前後の“島弧”マグマ活動.科学,56,103-111.

更新

2020年6月7日: 「表43」挿入.

月刊地震予報127)Kamchatka沖千島海溝の同心円状屈曲地震M7.5,2020年4月の月刊地震予報

1.2020年3月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2020年3月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で9個3.117月分,千島海溝域で2個8.786月分,日本海溝域で3個0.047月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.009月分,南海・琉球海溝域で3個0.074月分であった(2020年3月日本全図月別).日本全域総地震断層比が2019年9月から1割以下へ急減し,1割前後の異常静穏化が5ヶ月継続したが(月刊地震予報125),2020年2月の千島海溝域の4ヶ月分によって停止した(月刊地震予報126).2020年3月は千島海溝域の9ヶ月分によって更に3ヶ月分を越した.ただし,千島海溝域以外では1割以下の異常静穏化が継続している.
最大地震は2020年3月25日のKamchatka沖の千島海溝M7.5Pで,他にM6.0以上の地震は無かった.

2.Kamchatka沖千島海溝の同心円状屈曲地震M7.5

 2020年3月25日11時49分, Kamchatka沖千島海溝軸部の深度77km(Slab深度+43)M7.5Pが起った.圧縮主歪P軸方位(丸印)はPlate運動方位(方位図中央付近の紫色斜線Sub)とほぼ一致しており,太平洋Plate運動による同心円状屈曲に対応している(図361).

図361.千島海溝域の2020年1月から3月までのCMT解.
 左:海溝距離断面図・震央地図.右上:縦断面図,右中:時系列図,右下:主歪軸方位図. 英数字:月日・規模・発震機構型.Clickすると拡大します.

千島海溝域のM7.0以上の地震は,7年ぶりに先月2020年2月13日択捉島沖で正断層型地震M7.2tが深度155(Slab深度+79)kmで起った(月刊地震予報126).今月2020年3月7日にもM7.2の震源から南西(236°)方106kmの択捉島沖深度151(+73)kmでM4.7Tの正断層型地震が起っている.この2つの正断層型地震の主歪軸偏位角(速報29)は23°と小さく,海溝に沿う同心円状屈曲に伴い圧縮した太平洋Slab深部が平面化によって伸張していることを示している.
平面化による正断層型地震は,先々月の2020年1月15日に根室沖深度91(+66)kmでM4.8tが起こっており,次いで2020年1月28日に根室沖深度96(+30)kmで逆断層型地震M5.5pが起っている(図361).逆断層型のSlab深度が30kmと,正断層型の66kmよりも浅い.同心円状屈曲に伴いSlab深部は圧縮され,平面化によって伸張するが,Slab表層は逆に同心円状屈曲に伴い伸張して平面化によって圧縮することSlab深度の差が良く対応している.従って,同心円状屈曲と平面化に伴う圧縮と伸張の境界Slab深度は30kmと66kmの間に位置するのであろう.
今回のKamchatka 沖のM7.5のSlab深度40kmは境界Slab深度付近であり,Slab深部の同心円状屈曲に伴う逆断層型なのか,太平洋Plate押がSlab引張りを上回っての逆断層型である.2020年1月以降の平面化地震の発生は平面化の進行を示しており,平面化はSlab沈込の障害を減少させて海溝軸付近のSlabに引張力を及ぼすと考えられるので,今回のM7.5の逆断層型はSlab深層の同心円状屈曲による圧縮によるであろう.
東日本巨大地震の際に,日本海溝域ではSlabが50m沈込むと共に平面化も起ったが,千島海溝域の海溝軸付近の沈込や平面化が進行しなかったので,今年に入り平面化と海溝軸部の沈込が進行しているのであろう.

3.2020年4月の月刊地震予報

 千島海溝域で2020年2月に平面化の最大地震M7.2の翌月にM7.5の海溝軸部地震が起ったことは,M8.0以上の巨大地震の発生も予想され,警戒が必要である(月刊地震予報126).不明な点の多い異常静穏化を継続している千島海溝域以外との力学的関係の構築を目指し,今後の地震活動を注意深く監視することにする.