東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

月刊地震予報115)千島海溝外地震M6.2,東北沖震源帯茨城沖M6.0,脈震,2019年4月の月刊地震予報

1.2019年3月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2019年3月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で12個0.173月分,千島海溝域で2個0.245月分,日本海溝域で4個0.365月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で6個0.099月分であった(2019年3月日本全図月別).2018年12月に2か月分近くまで増大したが,2019年2月に1割以下まで低下して1割以上に戻った.
最大地震は2019年3月2日千島海溝外のM6.2で,次大は3月11日日本海溝域のM6.0で,M6.0以上はこの2個である.

2.2019年3月2日千島海溝外地震M6.2

 2019年3月2日12時22分に千島小円区と襟裳小円北区境界付近の千島海溝外24kmでM6.2nto深度51kmがあった.本震源から100km以内にCMT解のない稀発地震で,千島海溝域で初の海溝外地震である(図312).

図312 千島海溝域初の2,019年3月2日海溝外地震M6.2ntoと2019年2月13日得撫島沖脈震.クリックすると拡大します.

3.2019年3月11日の東北沖震源帯茨城沖M6.0

 2019年3月11日2時10分M6.0P18kmが最上小円区南西縁の茨城沖東北沖震源帯の島弧地殻と太平洋Slabの接触面であった.圧縮主押力P軸の傾斜が接触面傾斜と逆方向であるので,接触面における剪断応力による地震である.
 この14分後の2時24分にもM4.9P28kmがあった.初動震源位置は東南東(119°)に8kmしか離れておらず,応力場偏角も8.1°と同じでM6.0の応力場を保持しており,将来起こる大地震の前震であることが予想される.
 東北沖震源帯では,8年前の3月11日14時46分M9.0の東日本巨大地震と15時15分M7.6の茨城県沖が起こっており,M6.0以上のCMT解は62個ある(図313).

図313 東北沖震源帯のM6.0以上のCMT解.クリックすると拡大します.

 そのP軸方位はPlate運動方位(右下の方位図中央の紫色折線)から上下に180°離れた上下端の逆方位に集中しており,太平洋Slab上面に沿う剪断応力場による地震であることを示している.本震源域では南東(134°)に37kmの2008年12月20日M6.6P0kmと南南東(163°)に19kmの2008年12月21日M6.2T0kmがあるのみで,東日本巨大地震後には起こっていないので警戒が必要である.

4.2019年3月の脈震

 2019年3月には1日以内にほぼ同所でCMTが3月11日東北沖震源帯茨城沖および3月27日に日向灘,ISが3月7日前弧沖震源帯の志津川沖と30日浦河沖および27日に日向灘で発生した.月刊地震予報では24時間以内に同所で発生する地震を「脈震(pulsating shock)」と名付け,今後検討解析の対象とする.
 脈震は大地震本震後の余震に多いが,前震にも起こる.前震は本震域の歪の増大によって破壊強度の小さな箇所から順次進行する破壊であり,本破壊に到るまで応力場は変わらない.余震は,本震の本破壊によって震源域の歪が解放され,破壊域周辺の応力場が急変するために起こる.余震の中には本震の応力場と逆極性の地震も含まれるので前震と区別できる(特報4).
 前述の「2. 2019年3月2日千島海溝外地震M6.2」の17日前の2月13日にも北東548kmの得撫島沖の太平洋Slab上面剪断震源帯でM4.9p・M5.3+p・M5.2pの脈震が起こっている.最大のM5.3を基準にした応力場極性偏角は,M4.9が16.9°・M5.2が12.0°と応力場の変化は認められない.脈震による太平洋Slab上面の抵抗が減少し,Slabが沈込み,海溝外地震M6.2が起こったと考えられる(図312).
 また,「3. 2019年3月11日の東北沖震源帯茨城沖M6.0P18km」の14分後にM4.9P28kmが起こっているので,脈震である.

5.2019年4月の月刊地震予報

 千島海溝域では太平洋Slab沈込歪増大に対応する前震が択捉島・国後島・得撫島で起っていたが,3月2日にCMT初の海溝外地震M6.2が起こり,択捉島沖の巨大地震に警戒が必要である.
 東北沖震源帯茨城沖でM6.0脈震が起こったが,東日本巨大地震後には起こっていないので警戒が必要である.
 日向灘では3月27日にCMTの脈震が起こったが,2013年3月11日の初脈震から起っていなかった.これまでの大阪府北部・島根県西部・琉球海溝・与那国島・台湾の地震は本震に到らない前震段階にあり,警戒を呼び掛けていたがこれに日向灘の脈震が加わり,更なる警戒が必要である.

月刊地震予報114)胆振のM5.8,沖縄TroughのM5.5,2019年3月の月刊地震予報

1.2019年2月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2019年2月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で16個0.094月分,千島海溝域で5個0.091月分,日本海溝域で5個0.272月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で6個0.068月分であった(2019年2月日本全図月別).2018年12月の2か月分近くまで増大したが低下し,2017年12月以来の1割以下に下がった.
最大地震は2019年2月21日胆振のM5.8Pr深度33kmで,次大は2月16日沖縄TroughのM5.5nt12kmである.また,得撫島沖では2月13日M5.3+p30km・M5.2p30kmの連発地震があった.

2.2019年2月21日胆振のM5.8

 2019年2月21日21時22分に胆振でM5.8Pr深度33kmがあった(図310).全道停電を起こした胆振地震(2018年9月6日M6.7)を基準にすると,震央距離8kmで応力場偏角32.2°とほぼ同じ位置と応力場で起こった地震である.本地震の後,2019年2月23日M3.9p30km,27日M3.5p31kmが続いたが,主応力場極性の逆転は起こっておらず,前震とも考えられる.

図310 2019年2月胆振の主応力場極性偏角Π.
沿岸震源帯nShのIS解44個の内,1個のみが襟裳半島に位置し,43個は胆振に集中している.クリックすると拡大します.

胆振地震は,20時間後M4.1の主応力場極性逆転によって本震であったことが確認され(月刊地震予報109),10月18日M4.1pr33kmまで余震が続き,10月20日M4.4pr29km で東方に移動した後(月刊地震予報110),11月・12月にM4.7pr32km・M4.0pr29km・M3.5nt31kmが散発し(月刊地震予報111月刊地震予報112),静穏化していた.これらの震源は,強度の最も大きい島弧Moho面付近に位置し(月刊地震予報86),日本海拡大時の巨大境界,北米Plateとの衝突境界部に当たり(月刊地震予報109),千島弧の地震などの影響によって,胆振地震を起こした応力の再蓄積が予想される.

3.2019年2月16日沖縄TroughのM5.5

2019年2月16日19時01分M5.5nt12kmが宮古島沖の沖縄Troughであった(図311).
沖縄Trough最大CMTは,北東部の2015年11月18日M7.1+nt17kmであり(月刊地震予報74),翌年の2016年4月16日に熊本地震M7.3が起こっている(月刊地震予報79).南西部の宮古島沖では次大のCMT2007年4月20日M6.7T21kmがあった(月刊地震予報74).

図311 2019年2月16日沖縄Trough地震M5.5の主応力場極性偏角Π.
 数字は年月日,Mは規模.クリックすると拡大します.

本地震の震源は,次大CMT2007年M6.7から南西46kmと近接しているが,応力場偏角は76.8と異なっている.一方,沖縄Trough北東部の最大CMTからは,南西713kmと離れているが,応力場偏角は28.4とほぼ同じ応力場で起こっている.本地震に先行した連発地震2019年1月24日M4.5nt9km・25日M4.6np7km(月刊地震予報113)は最大CMTから北北東方115kmで起こり,応力場偏角は23.4°と45.1°であった.
2015年の最大CMTの活動は2016年まで続くが,南西方に及んでおらず,2016年から2018年に逆応力場のCMTが全域で起こった後,中部から最大地震応力場の活動が南北に拡大して,現在に至っている.
沖縄Troughの地震活動は比海Plateの琉球海溝への沈込と台湾への衝突によるTrough拡大に伴って起こっている.本地震前の沖縄Trough北西部の連発地震には,1月3日熊本の地震M5.1-np10kmや1月8日種子島の地震M6.0P30kmが先行しており,琉球海溝に沿う比海Plate沈込との関連が指摘されていたが(月刊地震予報113),その応力場が沖縄Trough南西部にまで拡大したのが本地震と言える.

4.2019年3月の月刊地震予報

本震に至らない前震と考えられる連発地震が起こった択捉島・国後島・三重会合点・大阪府北部・島根県西部・琉球海溝・与那国島・台湾に(月刊地震予報113),胆振と沖縄Troughが加わり,全国的に一触即発の状況が続いている.

月刊地震予報113)種子島のM6.0,小笠原海溝外地震M5.9,2019年2月の月刊地震予報

1.2019年1月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2019年1月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で14個0.145月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.254月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.243月分,南海・琉球海溝域で5個0.203月分であった(2019年1月日本全図月別).2018年12月21日の千島海溝北東端のKamchatka半島沖のM7.3(月刊地震予報112)によって2か月分近くまで増大したが,2割以下に戻った.
最大地震は2019年1月8日種子島のM6.0P深度30(Slab深度+3)kmである.次大は1月6日小笠原沖のM5.9-tro0(-6)kmである.沖縄Troughでは連発地震があった.与那国島・熊本の地震は続いている.房総三重会合点連発地震域の西側で1月15日M4.6p54(+28)kmが起こっている.

2.2019年1月8日の種子島のM6.0

 2019年1月8日21時39分に種子島の琉球Slab上でM6.0P30(+3)kmがあった(図308).本地震に先立ち1月3日に熊本でM5.1-np10km,本地震の後,沖縄Troughで1月24日M4.5nt9km・1月25日M4.6np7kmがあった.

図308 種子島の地震M6.0
 2019年1月の地震と20151114M7.1沖縄最大地震,20160416M7.3熊本地震.クリックすると拡大します.

 熊本地震2016年4月16日M7.3+nt12kmも沖縄Troughの最大地震2015年11月14日M7.1+nt17kmの後に起こっており,沖縄Trough拡大が熊本地震の契機となったと考えられていたが(月刊地震予報79),本地震は更にこれらが琉球海溝に沿う比海Plate沈込と関連していることを示しており,比海Plate沈込による巨大地震に警戒が必要である.

3.2019年1月6日の小笠原海溝外地震M5.9

2019年1月6日7時54分M5.9-tro0(-6)kmは,小笠原海台小円区と小笠原小円区の境界線上の小笠原海溝外-146kmであった(図309).海溝外最遠記録は-189kmのMariana小円区北西縁境界2012年10月1日M6.1-to0(-6)kmであるが,それに次ぐ記録である.最大海溝外地震は小笠原小円区南縁の2010年12月22日M7.8To8(+2)kmで海溝外距離は-56㎞である.この地震は東日本大震災の前年末に起こっており,契機となったと考えられるので警戒が必要である.

図309 小笠原海溝外地震M5.9
 2019年1月の地震と20101222M7.8海溝外最大地震,20121001M6.1海溝外最遠地震. クリックすると拡大します.

4.2019年2月の月刊地震予報

種子島の地震M6.0の後沖縄Troughでは連発地震があり.与那国島・熊本の地震も続いている.房総三重会合点連発地震域(月刊地震予報112)の西側でM4.6p54(+28)kmが起こっている.
本震に至らない前震と考えられる連発地震が択捉島(月刊地震予報101)・国後島( 月刊地震予報111)・三重会合点(本号)・大阪府北部(月刊地震予報106)・島根県西部(月刊地震予報104)・琉球海溝(月刊地震予報109・本号)・与那国島(月刊地震予報110)・台湾(月刊地震予報102)と全国的に起こっており,一触即発の状況は続いている.