速報31)2012年10月の地震予報

1.宮城県沖地震と浜通地震

 福島県沖と宮城県沖では,東日本巨大地震の地震断層の西縁域で,9月11日・28日に正断層t型地震M4.7・M4.5(深度30・36km)が起きた[2012年9月東日本].

 一方,日本海溝外では正断層t型地震M4.4・M4.6が9月16日・28日に起こり,引き続き日本海溝スラブ引の優勢が示されている.スラブ引優勢は,三陸沖の襟裳小円スラブ過剰域の逆断層p型地震と宮城県沖の逆断層p型地震と関係する(速報26:三つ目の宮城県沖地震に警戒を).
 月が明けて,10月2日に三陸沖の襟裳小円スラブ過剰域で逆断層p型地震M6.3 ,10月3日には宮城県沖で逆断層p型地震M5.0(深度51km)が起こった.この地震は8月30日に起こった宮城県沖の地震M5.6(深度60km)(速報30:9月の地震予報)と類似しており,これらの地震は東日本巨大地震後に起きた2011年4月7日の一つ目の宮城県沖地震M7.2(深度66km)と同様に,スラブ上面より上で起こっている.

 自動発震機構解リストに掲載されている浜通の地震は,2012年6月に途絶えたたが,7月から再発し,9月にはM3.5-4.1の地震7個と活発化している[2012年9月東日本IS].一つ目の宮城県沖地震の起こった2011年4月7日の4日後に浜通地震M7.0が起き,両者の関連が予想されるので,三つ目の宮城県沖地震に引き続き警戒が必要である.

2.得撫島沖の地震

 9月11日・12日,得撫(ウルップ)島沖の千島スラブ上面付近のスラブ内で,二つの逆断層p型地震M5.7・M5.0が起こった[2012年9月日本全図].これらの震源は,7月7日から7月15日の得撫島沖連発地震の震源域内に位置する(速報29:千島海溝の地震).連発地震は7月15日に震源を根室沖に移して一旦収束したが,活動を再開したようである.
 連発地震最初の7月7日の地震の応力場と,9月11日の地震の応力場との比較回転角(速報29:CMT発震機構主応力軸方位の定量的解析)は,24.7°と連発地震の応力場変動角範囲を越えているが, 9月12日の地震の比較回転角は18.9°と,かろうじて変動角範囲に入っている.
 千島海溝スラブについては,8月14日にスラブ底部で震源深度654kmの最深地震M7.3(速報30:9月の地震予報)が起こっている.本速報の掲載図範囲を超えているが,自動発震機構解リストに掲載されている世界の主要地震によると,9月27日8時39分にアリューシャン海溝軸で正断層型地震M6.9(北緯51.2°西経178.2°深度20km)が起き,千島海溝からアリューシャン海溝にかけて,太平洋プレートを沈み込ませるスラブ引活動が活発化している.得撫島沖では1918年にM8.0の地震が起きているので,今後も警戒を要する.