速報32)2012年11月の地震予報:活発化する宮城県沖地震域と浜通・マリアナの最遠海溝外地震

1.宮城県沖地震

宮城県沖地震域では,10月3日にM5.0,10月25日にM5.6と逆断層p型有感地震が起こった.10月22日にも横ずれ断層np型M4.5,24日逆断層p型M4.5,26日逆断層p型M4.7と,地震活動が活発化している [2012年10月東日本].

これらの宮城県沖地震に先立ち,襟裳小円区のスラブ過剰域(速報28:東日本巨大地震が変えた地震活動様相)のスラブ上面付近で ,10月2日に逆断層p型M6.3・M5.0・M4.7の連発地震,10月19日逆断層p型M4.7,10月23日逆断層p型M4.8の地震が起こっていた.襟裳スラブ過剰域の地震が宮城県沖地震に先行すれば,再来が心配される三つ目の宮城県沖地震を警戒するための目安になるであろう.

また,日本海溝外では10月14日に正断層t型地震M5.4が起こっており,宮城県沖地震域の地震活動の活発化と,太平洋スラブ沈み込みが関係していることを示唆している.

2.福島県浜通地震

自動発震機構解リストに掲載されている浜通の地震は,2012年6月に途絶えたが,7月から再発して活発化している.9月の地震は7個であったが,10月にはM3.5-4.4の地震が12個と増加している [2012年10月東日本IS].震央域が北方に拡大し,引張主応力T軸方位が海溝軸直交方向から45°以上ずれた正断層tr型(青色)になっている(図68).

図68.2012年10月の自動発震機構解リストによる浜通域の主応力方位.震央位置が北方に拡大し,引張主応力T軸が海溝軸直交方向から外れている.

CMT解リストに掲載された浜通域の地震は,本年に入って2月19日M5.2と7月6日M4.5に続き,10月17日の正断層tr型M4.5が起きている [2012年10月東日本CMT].

3.マリアナ海溝外地震

マリアナ小円区と小笠原海台小円区の境界付近に位置するマリアナ海溝から189km外側で,正断層t型海溝外地震M6.1が起こった[2012年10月日本全図].この地震の引張主応力T軸方位は海溝軸に直交している.この地震は,太平洋スラブの引張応力が,海溝から150km以上離れた太平洋プレートまでも引き裂くことが可能であることを示している.

CMT解リストに掲載されている1994年9月以後の全ての地震は,海溝外150kmまでの震源断面図に表示できたが,今回の地震は表示できず,今回から震源断面図の表示範囲を海溝外200kmに拡大した.このような震源断面図の表示範囲拡大は,2012年8月14日の千島スラブ底地震の最深記録更新(速報30:千島海溝スラブ最深地震)に続き2回目である.表示範囲を超える地震の発生は,太平洋プレートの沈み込み様相が,東日本巨大地震によって大きく変ったからであろう.

4.まとめ

  • 地震活動:2012年10月は,宮城県沖と福島県浜通で地震活動が活発化した.CMT解掲載の地震数は,2012年9月に日本全域地震数20,東日本地震数13と今年に入って最も少なかったが,10月には日本全域地震数が35で今年の平均数34を越した.東日本の地震数も22と全域の半数以上を占め活発化しており,三つ目の宮城県沖地震への警戒が必要である.
  • 地震発生域の拡大:1994年からのCMT解リストに掲載されている地震発生範囲を超える地震が,マリアナ海溝外で起こった.千島海溝でも7月と9月に得撫(ウルップ)島沖で連発地震が起こり(速報31:得撫島沖の地震),10月14日に北東端のカムチャツカ半島近くで逆断層pr型M5.7が起こっている [2012年10月日本全図].東日本巨大地震は,千島海溝と小笠原海溝の地震の後に,1994年から地震の起こっていない空白域で起こった.マリアナ海溝と千島海溝での太平洋プレートの沈み込み様相の変化には,充分注意する必要がある.