東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

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2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。

大地震に伴う津波は、海難災害です。救命胴衣を着けていれば
犠牲者数を大幅に減らすことができます(月刊地震予報97)。
津波対策では何より先に救命胴衣の準備を。

月刊地震予報164)2023年5月の月刊地震予報

1.2023年4月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年4月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で5個0.025月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で3個0.027月分,伊豆・小笠原海溝域0個,南海・琉球海溝域で2個0.025月分であった(2023年4月日本全図月別).
 2023年4月の総地震断層面積規模はΣM5.5で,最大地震は,2023年4月27日の琉球海溝域琉球小円区深度26㎞のTrPhRk琉球海溝震源帯琉球震源区M5.3であり,M6.0以上の地震は無かった.
 2022年1月から2023年4月までの16ヶ月間のCMT解は209個で,その平均規模はm5.7であった(図499).2022年(月刊地震予報160,)に続く4ヶ月であるが,日本海溝域 B では新幹線が脱線した東北前弧沖震源帯阿武隈震源区ofAcAbkの2022年最大CMT解M7.4P(月刊地震予報151)以降,静穏化し,Plate運動面積に対する積算地震断層面積比は0.938にまで低下し,この1年の間にM7.4級のPlate運動歪が既に集積している.
 南海・琉球海溝域RykNnk D は,2022年9月18日琉球海溝震源帯台湾震源区TrPhTwのM7.3によって歪解放周期を更新して海溝域解放期に入ったが(月刊地震予報159),2023年に入ってから活動が少ない.
 伊豆・小笠原海溝域OgsIzu C のPlate運動面積に対する累積地震断層面積比は0.225と静穏化しているが,2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3+pがあったが,2023年4月の活動はなく静穏化した.
 千島海溝域Chishima A は2020年3月25日の千島海溝震源帯Kamchatka震源区TrCKamcのM7.5(月刊地震予報127)以降静穏化している中で,2023年2月にM6.1が起ったが,その後は活動を停止している.

図499.2022年1月から2023年4月までの日本全域16月間CMT解
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMはM6.0以上のCMT解の年月日と規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,開始(下2022年1月1日)から終了(上2023年4月31日)までの設定期間485日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間1.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内右の数値[8.1] [7.7] [7.4] [7.4] [7.7]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.1の地震1個に相当するPlate運動歪が集積することを意味している.上図右下端の(6.1step)は,等分期間1.9日以内にM6.1以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じることを示している.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は断層面積規模で,等分区間「1.9day」に前後区間を加えた5.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年5月の月刊地震予報

 先月の2023年3月28日M6.2は,日本海溝域では2022年3月16日の新幹線を脱線させたM7.3以降の最大地震であったが静穏化している.これまでの静穏化によってM7.4級のPlate運動歪が既に集積しているので,今後の活発化に警戒が必要である.
 伊豆海溝域では2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3があり,活発化も心配されたが,静穏化している.
 2023年4月は.全国的に静穏化しており,Plate運動歪が蓄積していることから,嵐の前の静けさと言えよう.

月刊地震予報163)日本海溝域のM6.2,2023年4月の月刊地震予報

1.2023年3月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年3月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.142月分,千島海溝域で1個0.005月分,日本海溝域で5個0.735月分,伊豆・小笠原海溝域2個0.119月分,南海・琉球海溝域で2個0.056月分であった(2023年3月日本全図月別).
 2023年2月の総地震断層面積規模はΣM6.4で,最大地震は,2023年3月28日の日本海溝域襟裳小円区深度30㎞のM6.2である.
 2022年1月から2023年3月までの15ヶ月間のCMT解は204個で,その平均規模はM5.8であった(図497).2022年(月刊地震予報160,)に続く3ヶ月であるが,日本海溝域 B では新幹線が脱線した東北前弧沖震源帯阿武隈震源区ofAcAbkの2022年最大CMT解M7.4P(月刊地震予報151)以降,静穏化し,Plate運動面積に対する積算地震断層面積比は0.998にまで低下し,この1年の間にM7.4級のPlate運動歪が既に集積している.
 南海・琉球海溝域RykNnk D は,2022年9月18日琉球海溝震源帯台湾震源区TrPhTwのM7.3によって歪解放周期を更新して海溝域解放期に入ったが(月刊地震予報159),2023年に入ってから活動が少ない.
 伊豆・小笠原海溝域OgsIzu C のPlate運動面積に対する累積地震断層面積比は0.240と静穏化しているが,今月2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3+pがあり,活発化の前兆とも考えられる.伊豆海溝域は,琉球海溝域と同調して活動するので(月刊地震予報159),琉球海溝域についても警戒が必要である.
 千島海溝域Chishima A は2020年3月25日の千島海溝震源帯Kamchatka震源区TrCKamcのM7.5(月刊地震予報127)以降静穏化している中で,2023年2月にM6.1が起ったが,今月の2023年3月には活動を停止している.

図497.2022年1月から2023年3月までの日本全域15月間CMT解
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMはM6.0以上のCMT解の年月日と規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,開始(下2022年1月1日)から終了(上2023年3月31日)までの設定期間455日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間1.8day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計している(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内右の数値[8.1] [7.7] [7.4] [7.3] [7.7]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震の地震断層面積として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.1の地震1個に相当するPlate運動面積が集積することを意味している.上図右下端の(6.1step)は,等分期間1.8日以内にM6.1以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じることを示している.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は断層面積規模で,等分区間「1.8day」に前後区間を加えた5.4日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年3月の日本海溝域のM6.2

 2023年3月28日18時18分に襟裳小円南区の深度30㎞(Slab深度‐1km)で,東北前弧沖震源帯下北震源区ofAcSmkのM6.2tが起こった.最大震度の4は東北日本太平洋岸からやや内陸部沿いにあり(図498),北海道東端から関東地方まで震度1以上が観測されている.

図498.2023年3月28日の東北前弧沖震源帯下北震源区ofAcJSmkのM6.2tの震度分布(気象庁HPより).
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 東北前弧沖震源帯ofAcJでは,日本海溝に沿って同心円状屈曲して沈込んだ海洋Slab上面が島弧最強の島弧Moho直下の上部Mantleと衝突して集積した歪が地震として解放されている.
 今回の発震機構は正断層型であり,その引張軸傾斜方位はPlate運動方位と合致しており,その傾斜角は51°とSlab傾斜角より大きい.島弧最強の上部Mantleが衝突しているSlab上面との間には,東北日本最大の摩擦抵抗が働き,剪断歪が蓄積する.剪断歪の引張軸傾斜角はPlate相対運動面のSlab上面傾斜より高角になっていることは,今回の地震がPlate境界面に沿う剪断歪の解放によることを示している.

3.2023年4月の月刊地震予報

 今月の最大地震2023年3月28日M6.2は,日本海溝域では2022年3月16日の新幹線を脱線させたM7.3以降の最大地震であり,これまでの静穏化によってM7.4級のPlate運動歪が集積しているので,今後の活発化に警戒が必要である.
 千島海溝域では先月の最大地震M6.1が起こったが,今月に入って活動を停止している.
 伊豆海溝域では2023年3月20日から25日にM4.7からM5.3があり,活発化も心配される.伊豆海溝域とPhilippine海Plateを共有する琉球海溝域・南海Trough域・相模Trough域の警戒も必要である.

月刊地震予報162)千島海溝域のM6.1,2023年3月の月刊地震予報

1.2023年2月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2023年2月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で8個0.117月分,千島海溝域で4個0.218月分,日本海溝域で1個0.010月分,伊豆・小笠原海溝域2個0.249月分,南海・琉球海溝域で1個0.012月分であった(2023年2月日本全図月別).
 2023年2月の総地震断層面積規模はΣM6.3で,最大地震は,2023年2月25日の千島海溝域襟裳小円北区深度61㎞のM6.1である.
 2022年1月から2023年2月までの14ヶ月間のCMT解は194個で,その平均規模はM5.9であった(図495).2022年(月刊地震予報160,)に続く2ヶ月であるが,日本海溝域 B では新幹線が脱線した東北前弧沖震源帯阿武隈震源区ofAcAbkの2022年最大CMT解M7.4P(月刊地震予報151)以降,静穏化し,Plate運動面積に対する積算地震断層面積比は1.017にまで低下し,この1年の間にM7.4級のPlate運動歪が既に集積している.
 南海・琉球海溝域RykNnk D は,2022年9月18日琉球海溝震源帯台湾震源区TrPhTwのM7.3によって歪解放周期を更新して海溝域解放期に入ったが(月刊地震予報159),2023年に入ってから活動が無い.
 伊豆・小笠原海溝域OgsIzu C のPlate運動面積に対する累積地震断層面積比は0.249と静穏化しているが,今月2023年2月5日と28日に伊豆海溝震源伊豆震源区TrPcIでM5.6PとM5.3+pがあり,活発化の前兆とも考えられるので警戒が必要である.伊豆海溝域は,琉球海溝域と同調して活動するので(月刊地震予報159),琉球海溝域についても警戒が必要である.
 千島海溝域Chishima A は2020年3月25日の千島海溝震源帯Kamchatka震源区TrCKamcのM7.5(月刊地震予報127)以降静穏化していたが,今月に最大地震M6.1が起ったので,今後の警戒が必要である.

図495.2022年1月から2023年2月までの日本全域14月間CMT解
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,開始(下2022年1月1日)から終了(上2023年2月28日)までの設定期間424日間で,右図右端の数字は月数である.設定期間の250等分期間1.7day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計している(速報36特報5).
 地震断層面積累積図(右上図Benioff)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内右の数値[8.1] [7.7] [7.4] [7.3] [7.7]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震の地震断層面積として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.1の地震1個に相当するPlate運動面積が集積することを意味している.上図右下端の(6.0step)は,等分期間1.7日以内にM6.0以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じることを示している.
 B 日本海溝域Japan では累積地震断層面積がPlate運動面積の1.349(右上のBenioff図上縁)倍とBenoff図枠を超過しているので,右枠を右方に1年分 C 千島海溝域Chishima側にずらしてある.
 地震断層面積移動平均規模図(右下図areaM)の横軸は断層面積規模で,等分区間「1.7day」に前後区間を加えた5.1日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型段彩は,逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
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2.2023年2月の千島海溝域のM6.1

 2023年2月25日22時27分に襟裳小円北区の深度61㎞(Slab深度+37km)で,千島平面化震源帯釧路震源区uBdCKsrのM6.1Pが起こった.最大震度は北海道東部の5弱で,東北日本太平洋岸に沿って関東まで震度1以上であった(図496). 
 千島平面化震源帯uBdCでは,千島海溝に沿って同心円状屈曲して沈込んだ後に海洋底Slab深部が平面化する際に伸長して集積した歪が地震として解放される.

図496.2023年2月25日の千島平面化震源帯釧路震源区uBdCKsrのM6.1Pの震度分布(気象庁HPより).
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 千島平面化震源帯uBdCには181個の観測震源があり,その最大は,1995年12月20日に今回と同じ釧路震源区uBdCKsr深度10㎞のM7.4である.
 CMT解には破壊開始点に対応する初動震源と共に主破壊重心に対応するCMT震源が付いている.CMT解の発震機構には主破壊についての歪軸方位と非双偶力成分比がある.気象庁はCMT解とは別に初動発震機構IM解も報告している.今回の地震についてはCMT解と共にIM解もある.破壊開始点の初動震源の深度は,CMT震源より深い63㎞(Slab深度+40㎞)で,規模も0.1小さくM6.0tで,発震機構は正断層型で屈曲Slab平面化による伸長歪に対応している.しかし,CMT解の発震機構は圧縮過剰の逆断層型Pであり(2023年2月東北日本月別),圧縮P軸傾斜方位が海溝側を向くSlab上面に沿う剪断歪で初動発震機構と異なっている.今回の地震は,引張歪が集積した深度の大きなIM震源から破壊を開始し,Slab上面に沿う剪断歪の集積しているSlab浅部に伸展したのであろう.
 千島海溝域のここ14ヶ月のCMT解の地震断層面積移動平均曲線AreaM(図495右下図の右端)の中で2023年2月の活動は2022年の8月と11月の活発化程度である.今回の活発化によって活動期に入ることも考えられるので警戒が必要である.

3.2023年3月の月刊地震予報

 千島海溝域では長い静穏期が続いており,歪集積が巨大地震として開放されることが心配されているが,今回の最大地震M6.1がその前兆とも考えられるので警戒が必要である.
 伊豆海溝域ではM5.6とM5.3があり,活発化も心配される.伊豆海溝域とPhilippine海Plateを共有する琉球海溝域・南海Trough域・相模Trough域の警戒も必要である.