月刊地震予報98)海溝外太平洋スラブ地震・秋田県仙北連発地震・2017年11月の月刊地震予報

1.2017年10月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2017年10月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で12個0.193月分,千島海溝域で2個0.007月分,日本海溝域で7個1.111月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で3個0.070月分であった(2017年10月日本全図月別).
2017年10月の最大地震は10月6日の日本海溝の海溝外のM6.3で,M6以上の地震は他になかった.
今年に入ってからのCMT解は159個で面積比が0.142と1割代に留まっている(2017年10月日本全図年別).
先月2017年9月8日M5.2np・9月13日M3.2ntの連発地震のあった秋田県仙北で,2017年10月6日にもM3.4npがあった(2017年10月東日本IS月別).

2.海溝外の太平洋スラブ地震M6.3

 2017年10月6日16時59分に最上小円区の中心軸付近の日本海溝外でM6.3To深度57(+51)kmがあった.
 日本海溝外の震源域は,東日本大震災本震の当日に2011年3月11日15時25分M7.5-toがあり,従来,「東余震Eaf」と呼んできたが,日本列島全域の震源域を系統的に整理する段階でこれまで曖昧に用いられてきた「余震」の使用を本震地震断層域に限定することにした.本震域外の東方で起こったこの地震は,停止させられていた太平洋スラブ沈込が本震によって再開して起った地震であることから(速報28特報1特報2),「東誘発地震」と呼び,この震源域を「東誘発震源域Eind」と呼ぶことにする.
 東誘発震源域最大の地震である東日本大震災本震当日の2011年3月11日15時25分M7.5-toの主応力軸方位(P354+81T103+3N194+9)を基準にした今回の2017年10月6日M6.3Toの応力場極性区分偏角は基準区分org=14.7とほぼ一致し,先月2017年9月21日M6.3to(月刊地震予報96)もorg=18.7で変わりない.東誘発震源域EafのCMT解は358個あるが,その平均地震断層面積規模はM5.9であることから,今月と先月のM6.3の地震は大きい方に属し,M6.3以上のCMT解は10個に過ぎない(図251).

図251.M6.3以上の東誘導震源域EafのCMT解主応力軸方位.
 左図:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右中:時系列図,右中図左端(logArea):総地震断層面積の169.2日移動平均の対数曲線で彩色は発震機構型による線形内部配分,右下:主応力軸方位図.

大震災前は,2005年11月15日M7.2toの1個で,東日本大震災後急増していることは明かである.今月と先月のように一か月間に2個起こったのは,大震災直後の2011年3月11日M7.5-to・3月22日M6.7toと2012年12月7日M7.3Te・M6.6Te(速報35)の2回のみで,東日本大震災によって再開した太平洋スラブ沈込の再興を示唆している.
 

3.秋田県仙北の連発地震

 秋田県仙北地域,田沢湖南西方の横手盆地北部大曲付近で2017年10月6日20時09分M3.4np深度10(-92)kmが起こった(2017年10月東日本IS月別).この地震は先月2017年9月8日22時23分M5.2np深度9(-93)kmと9月13日4時00分M3.2nt深度10(-92)kmの連発地震(月刊地震予報96)に続く地震である.最初に起こった9月8日のM5.2npを基準にすると,今回の震源は北北東(16.1°)へ2kmで深度差も+1kmの同所地震であり,応力場偏角も基準応力区分org=31.8°である.この応力場偏角は9月13日M3.2ntの20.3°より大きいが,基準地震を起こした応力場は保持されていることを示しており,今後の応力蓄積によって更に大きな地震が起こることが心配されるので警戒の必要がある.

4.2017年11月の月刊地震予報

2017年10月の日本全域CMT個数は12個と先月14個より減少し,地震断層面積のプレート運動面積に対する比も先月の0.380から0.193に減少している.今年に入ってからのCMT解は159個で比が0.142の1割に留まり,1997年の最小比0.107と2014年の次席比0.280の間に位置する静穏さである.嵐の前の静けさは続いている.
今月のM6.0以上の地震と連発地震の活動は,先月と同様に太平洋スラブ沈込増大と関係している.太平洋スラブの下部マントルへの崩落(速報69)も考慮し,巨大海溝外地震・巨大海溝内地震・内陸地震に警戒が必要である.