月刊地震予報177)2024年6月の月刊地震予報

1.2024年5月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2024年5月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10 個0.084月分,千島海溝域で2個0.006月分,日本海溝域で1個0.012月分,伊豆・小笠原海溝域で3個0.143月分,南海・琉球海溝域で4個で0.156月分であった(2024年5月日本全図月別).
 2024年5月の総地震断層面積規模はΣM6.2で,最大地震は,2024年5月10日花蓮小円区深度12㎞のM5.8で,M6.0以上の地震はなかった.
 2024年5月までの日本全域2年間のCMT解は385個で,その総地震断層面積規模はΣM8.0,Plate運動面積規模はM8.3で,その比は0.493である(図572の中図上).Benioff曲線(図572右図上左端Total/4)には琉球海溝域の歪解放周期更新の2022年9月M7.0(月刊地震予報157)と2024年1月1日能登半島M7.5(月刊地震予報173)の2つ目の大きな段に続き,2024年4月3日の台湾海溝震源帯のM7.4が3つ目の段として加わった.台湾の段に伊豆海溝域C・日本海溝域Bも呼応している.千島海溝域AのareaM曲線(図572右下図)も呼応しているが,規模が小さくBenioff曲線に現れていない.千島海溝域では,2023年12月の段から5ヶ月以上静穏期が続く過去2年間の最長記録を更新しており,次の段に警戒が必要である(月刊地震予報175).
 

図572 .2024年5月までの日本全域2年間CMT解の地震断層長円表示図.
 震源断層長円の直径は16倍(ΔM+2.0)に拡大してある.
 左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.数字とMは,2年間のM7.0以上のCMT解年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間の開始(下端2022年6月1日)から終了(上端2024年5月31日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
 階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積のPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型(月刊地震予報173)を橙色・剪断逆断層型を赤色・横擦断層型を緑色・正断層型を黒色.
 Clickすると拡大します.2024年6月19日更新

5.2024年6月の月刊地震予報

 千島海溝域では,過去2年間のBeioff曲線において2023年12月の段から5ヶ月以上の静穏期が続いており,次活動期のM8級巨大地震に警戒が必要である(月刊地震予報175).
 日本列島の土台骨の上が破損した2024年1月1日能登半島地震M7.5(月刊地震予報173)の影響が出てくることが予想される.関東・東北日本・西南日本域の直下型地震に警戒が必要である.
 琉球海溝域では,歪解放周期(月刊地震予報139)が2022年9月18日琉球海溝震源帯M7.3によって更新された第3周期(月刊地震予報157,)の海溝解放期において2024年4月3日M7.4が起こり(月刊地震予報176),2024年5月10日の押引逆方位M5.8Proによって主歪の解放が確認され,第3海溝解放期から第3平面化解放期への移行が開始すると予報できる.