東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

月刊地震予報102)2018年2月台湾花蓮沖地震・朝鮮半島東岸地震・2018年3月の月刊地震予報

1.2018年2月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2018年2月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で30個0.988月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で6個0.251月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.157月分,南海・琉球海溝域で20個2.553月分であった(2018年2月日本全図月別).
2018年2月の最大地震は台湾の花蓮東方沖2月7日M6.7-npoであった.M6.0以上の他の地震は,最大地震と同域で起った2月4日M6.5Po・2月7日M6.1Po・2月8日M6.2の計4個であった.その後,朝鮮半島東岸で2月11日M4.6Prが起こっている.

2.2018年2月台湾花蓮沖地震

 2018年2月4日~ 25日に台湾東岸の花蓮周辺で17個の地震が起こった(図264).最大地震は2018年2月7日0時50分M6.7-npo10kmで, 4棟の高層ビルが傾き,死者・不明17名,負傷者285名が新聞報道された.今回の地震活動の中で2018年2月4日22時56分M6.5・2月7日4時15分M5.9・2月8日0時21分の3個については速報解が公表されている.

図264.2018年2月の台湾花蓮周辺のCMT解主応力軸方位図.
 左:震央地図,右:海溝距離断面図.
 数字は最大地震.

 琉球海溝は,八重山諸島沖で八重山小円に沿って時計回りに曲がり,台湾東方沖で花蓮小円に沿って急激に反時計回りに屈曲し,台湾海岸山脈の西縁に接続している.花蓮はこの接続部に位置している.
 最大地震からの震央距離は2018年2月4日の最初の地震から2月8日までは17km以内に収まり,震源深度も14km以浅である.しかし,2月19日以降の地震の震央距離は50km以上で,深度も48km以深と,最大地震と異なる活動である(表29).
海洋底が海溝軸に沿って同心円状屈曲して沈込む際には,沈込方向の引張応力が表面に,圧縮応力が深部に働く.海溝軸の屈曲では,海溝軸に並行する圧縮あるいは引張の応力が予想される.海洋底が台湾との衝突で付加したのが海岸山脈であり,その西縁のプレート境界に沿う沈込は停止しており,花蓮周辺は圧縮応力場にあると考えられている.最大地震の発震機構解(P169+34T57+28N298+43)の圧縮主応力P軸方位169は海洋底沈込の圧縮応力,引張主応力T時方位57は海溝軸屈曲による引張応力に対応しているであろう.
2月8日までの地震の発震機構型は,最大地震と同じ圧縮横擦断層np型が3個,逆断層p型が10個,斜方正断層tr型が1個である(表29:「型」列末尾の「o」は海溝外,「e」は海溝距離が25km以内であり,「P」は非偶力成分比が-5%以下,「T」は+5%以上を表す).
非偶力成分比は引張応力強度と圧縮応力強度の比率を表し,負の場合は圧縮応力過剰,正の場合は引張応力過剰である.今回の地震の非偶力成分比は-19~+3%と圧縮過剰であり,最大地震はほぼ中間の-8%であり,花蓮が圧縮応力場にあることを支持している.
震源域の大きさや位置によって圧縮応力が増大しても,引張応力増大が追従しないと,応力場枠組みが同じでもT軸がN軸にTexN入替り逆断層P型に変換する(月刊地震予報87).従って,2月8日までの地震活動は同じ応力場枠組みを保持し,T軸方位の引張応力強度比率の変化によるT軸とN軸との入替で説明できる.
最大地震の発震機構を基準に主応力偏角と主応力軸入替を考慮した応力場極性角を算出すると,2月4日の最初の地震から2月8日の一連の活動では最大地震と同じ応力場極性を保持しているが,2月19日以降の地震では応力場極性角が90°以上と逆極性であり,異なった地震活動と言える(図265,表29).

図265.2018年2月の台湾花蓮周辺のCMT解応力場極性図.
 左:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図.
 Stress Polarity Π:応力場極性(右下図左端).
 基準は2018年2月7日花蓮最大地震M6.7.

表29.2018年2月花蓮周辺の地震.

発生 規模 震央 深度 距離 方位 主応力 応力軸 応力場 非偶力
M 北緯° 東経° km km °

°
入替

°


%
2018 2 25 1 59 4.9 nte 23.628 125.392 80 381 97 68 PexT 143 +3
2018 2 22 8 10 5.2 po 23.403 121.503 43 78 193 94 PTexN 128 -1
2018 2 19 23 47 4.7 +nt 24.562 121.620 55 53 354 98 TPexN 138 +14
2018 2 8 9 54 5.1 Po 23.942 121.615 6 17 201 65 TexN 46 -6
2018 2 8 0 21 6.2 po 24.047 121.763 4 10 117 91 TexN 27 -4
2018 2 7 22 6 5.1 Po 24.092 121.770 4 9 87 49 org 49 -6
2018 2 7 20 13 5.2 po 23.957 121.708 14 15 167 50 org 50 +1
2018 2 7 12 36 5.1 Po 24.050 121.718 0 6 134 68 TexN 37 -19
2018 2 7 11 18 5.2 Po 24.035 121.720 0 7 143 72 TexN 36 -14
2018 2 7 5 56 4.8 tro 24.062 121.690 2 3 154 20 org 20 +2
2018 2 7 4 15 6.1 Po 23.987 121.723 0 12 157 64 TexN 40 -10
2018 2 7 3 0 5.9 npo 24.083 121.700 1 2 99 56 PexN 50 +2
2018 2 7 0 50 6.7 -npo 24.087 121.677 10 0 0 0 基準 0 -8
2018 2 6 0 58 5.2 po 24.093 121.728 0 5 82 29 org 29 -0
2018 2 4 23 13 5.9 Pe 24.158 121.723 0 9 31 56 TexN 36 -11
2018 2 4 22 56 6.5 Po 24.117 121.703 10 4 39 63 TexN 29 -16
2018 2 4 22 12 5.4 -npe 24.147 121.702 10 7 20 29 org 29 -5

最大地震を基準にした2018年2月までの台湾域全CMT解の応力場極性では(図266),TexN基準応力場(青色)が海岸山脈北部の花蓮から琉球海溝に沿って並んでいる.同様の並びは北東方向の逆極性PTexN(緑色)の列が沖縄トラフ南西端部に認められる.これらの列の深度はいずれも浅く,同心円状屈曲して沈み込むスラブ深部ではTPexN(橙色)PexT(赤色)の逆極性CMTが散在している.

図266.台湾域の2018年2月までの全CMT解応力場極性図.
 左:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図.
 Stress Polarity Π:応力場極性(右下図左端).
 基準は2018年2月7日花蓮最大地震M6.7.

琉球海溝域の応力場極性でも,花蓮と沖縄トラフ南西部の列が明瞭であるが.それよりも顕著なのが九州東縁日向灘の南南西方向の列である(図267).これらの列は長期間に渡ってほぼ同一応力場による地震が発生していることを示しており,応力場構成や相互作用を知るための重要な手掛かりになることが期待される.

図267.琉球海溝域の2018年2月までの全CMT解応力場極性図
 左:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図.
 Stress Polarity Π:応力場極性(右下図左端).
 基準は2018年2月7日花蓮最大地震M6.7.
 数字は基準とした2018年2月7日花蓮最大地震M6.7と2018年2月11日朝鮮半島東岸地震M4.6.

3.2018年2月11日朝鮮半島東海岸M4.6

 朝鮮半島東岸の浦項で2018年2月11日M4.6Pr4kmが起こった(図267).朝鮮半島は地震が殆ど起こらない地域であったが,沖縄トラフ拡大の最大地震2015年11月14日M7.1の翌年2016年7月5日M4.9-nt37kmが起こり注目を集めた(月刊地震予報82).その後,2016年9月12日M5.8-nt36km(月刊地震予報84)・2017年11月15日M5.6p11km(月刊地震予報99)が起こった.今回は更に深度を減じて深度4kmになっている(表30).朝鮮半島の地震活動は上部マントルから下部地殻の深度で開始されたが,次第に上昇し,上部地殻そして今回は地表付近に達した(表30).

表30.朝鮮半島東岸地震.

発生 規模 震央 深度 距離 方位 主応力 応力軸 応力場 非偶力
M 北緯° 東経° km km °

°
入替

°


%
2018 2 11 5 3 4.6 Pr 36.098 129.457 4 0 基準 88 TPexN 137 -9
2017 11 15 14 29 5.6 p 36.195 129.393 11 12 332 97 PTexN 142 +2
2016 9 12 20 32 5.8 -nt 35.797 129.272 36 37 206 102 TPexN 124 -7
2016 9 12 19 44 5.3 nt 35.820 129.262 40 36 209 102 PTexN 120 -1
2016 7 5 20 33 4.9 -nt 35.613 129.873 37 66 145 95 PexT 143 -6
2004 5 29 19 14 5.1 +p 36.723 130.158 43 93 41 107 TPexN 147 +8

今回地震の起こった浦項は,4億年前から海水面下に没することのなかった朝鮮半島が,唯一,1500万年前の日本海拡大時に海水面下になった地域である.日本海拡大時には,台湾でも大変動が起き,中央山脈の形成が開始されている.2018年2月7日の台湾花蓮沖地震直後の2018年2月11日に浦項で地震が起こったことは,日本海拡大時に活動した断層系が現在の地震活動とも関係していることを示している.日本海を含めた日本列島全域における応力場変動が日本海拡大時の断層系にも地震活動を誘発していることは,地震予報のための貴重な情報となる.

4.2018年3月の月刊地震予報

2018年2月の日本全域CMT解個数は30個,プレート運動面積に対する地震断層面積の比は0.988に急増した.2016年12月から2018年1月までの14カ月間は,総地震断層面積がプレート運動面積の半分以下と静穏であった.この静穏記録は.1997年1月から16カ月の最長記録に次ぎ,2003年3月からと2005年12月からの10ヶ月を抜き,第2位である.
1997年の最長静穏期を終了させたのは,琉球海溝域最大CMT解1998年5月4日八重山沖M7.7-ntoである.そして1999年9月21日に台湾域最大CMT解となった集集地震M7.7+pが起こっていたので警戒を呼び掛けていたが(月刊地震予報101),2018年2月7日に花蓮沖地震M6.7が起こった.1997年の静穏期後に比較し,地震規模はまだ小さいので,台湾・琉球海溝・南海トラフ域におけるM8級の巨大地震に厳重な警戒が必要である.特に,津波避難のための救命胴衣(月刊地震予報97)を早急に準備することが望まれる.

月刊地震予報101)地震活動表示の変更・下北半島沖地震・伊豆半島東方沖連発地震・銚子沖連発地震・択捉島沖連発地震・2018年2月の月刊地震予報

1.発震機構解の表示変更

 これまで月間・年間の地震活動を示すために気象庁から公表される発震機構解の震源位置図を掲載してきたが,地震活動の性質を示すため震源位置に主応力軸方位を表示することに変更する.逆断層型と圧縮横擦型については圧縮主応力軸方位,正断層型と引張横擦型については引張主応力軸方位を示す.
発震機構解には地震発生後直ちに公表される速報解と,精査後に公表される初動IS解およびCMT解がある.CMT解は海溝域を含む広域に起こった規模の大きい地震について公表される.陸域から沿岸域の地震については小さな規模の地震まで初動解が公表されている.
以前の速報は初動解のみであったが,近年,海外を含む広域のCMT解についても速報として公表されるようになった.速報解には地震を起こした応力場についての数値情報が含まれ,前震・本震の判定など地震予報に威力を発揮する(速報79月刊地震予報85特報4).従来は,東日本についてのみ速報解を表示してきたが,日本全域で速報解がどの程度公表されているかを示すため,表示範囲を日本全域に広げることにする.

2.2018年1月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2018年1月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で19個0.149月分,千島海溝域で3個0.021月分,日本海溝域で11個0.896月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.045月分,南海・琉球海溝域で4個0.006月分であった(2018年1月日本全図月別).
2018年1月の最大地震は1月24日の下北半島沖M6.3で,他にM6.0以上の地震はなかった.連発地震は伊豆半島東方沖,銚子沖,択捉島沖であった.

2.下北半島沖地震M6.3

 2018年1月24日19時51分M6.3P深度34[スラブ上面深度-4]kmが下北半島沖の太平洋スラブ上面より4km上で起こった.CMT解の発震機構(P101+23T310+64N196+11)と非双偶力成分比-6%から,やや圧縮過剰の逆断層P型である.圧縮主応力軸は海溝側に23°傾斜しているので,島弧マントルと太平洋スラブ上面との剪断応力による海溝型地震である.
 本連発地震の下北半島沖(oSmk)にはCMT解が50個(M6.9分),初動解が174個(M7.0分)公表されているが,応力場偏角が今回のCMT解から±25°以内にCMT解44個と初動解150個が入っており,ほぼ同じ応力場の地震が起きている.
 下北半島沖の最大地震は2001年8月14日5時11分M6.4p38[-0]kmで今回のCMTからの応力場偏角は8°と良く一致している.東日本大震災後に活発化したが今回と2001年の活動には及ばない(図269).これまで静穏化していたが2001年に匹敵する地震活動が開始されたとも考えられる.

図260. 下北半島沖2018年1月24日M6.3地震域のCMT解主応力方位.
左:震央地図.右上:海溝距離断面図.右中:縦断面図.右下:時系列図(右端数字は年数,左端は積算地震断層面積ベニオフ図,右端は2018年1月24日M6.3基準の応力場偏角).

3.伊豆半島東方沖連発地震M4.2-M5.2

 2018年1月6日4時37分M4.4+np12km・1月6日5時47分M4.5+np11km・1月15日3時12分M3.4np11kmの連発地震が伊豆半島東方沖で起こった.本連発地震域はこれまでもマグマ活動と関連する群発地震が起こっており,1998年5月3日M5.9np5km,2006年4月21日M5.8-np7km,2006年5月2日M5.1-nt15km,2009年12月17日M5.0+np4km,18日M5.1np5kmのCMT解7個(M6.2分)が公表されている(図261).初動解はM1.7-5.8の92個(M6.1分)がある.連発地震後の2018年1月23日9時59分に草津本白根が噴火し,蔵王でも火山活動が活発化している.

図261.2018年1月の伊豆半島東方沖連発地震域のCMT解主応力方位.
左:震央地図.右上:海溝距離断面図.右下左:積算地震断層面積ベニオフ図.右下右:2018年1月6日M4.5基準の応力場偏角.

4.銚子沖連発地震M4.7-5.2

 銚子沖で2018年1月10日の7時20分M4.7-np34[+2]km・7時30分M5.2-tr32[0]kmの連発地震があった.この連発地震は房総三重会合点から北西方向に伸びるフィリピン海スラブ北西縁が太平洋スラブに接触している相模スラブ震源域Sgmで起こった(特報7).相模スラブ震源では東日本大震災まではCMT8個(M6.2分)しか起こっていなかったが,大震災以後2013年までは34個(M6.7分)と活発化し,その後静穏化して5個(M5.3分)起こったのみである.今回の連発地震の総地震断層面積は過去4年間分と同程度であり,新たな活動の開始を告げているのかもしれない(図262).

図262.2018年1月の銚子半島沖連発地震と相模スラブ震源(Sgm)のCMT解主応力方位.
左:震央地図.右上:海溝距離断面図.右中:十断面図.右下:時系列図(右端数字は年数,左端は積算地震断層面積ベニオフ図).

5.択捉島沖連発地震

2018年1月20日14時51分M5.1P30[-22]km・1月30日12時50分M4.7P30[-13]kmの連発地震が択捉島南東方沖の太平洋スラブ上面から13-22km上の千島弧マントル内で起こった.圧縮主応力軸が海溝側に傾斜しているので,太平洋スラブと島弧マントルとの剪断応力による地震である.最初の地震の半日前に2018年1月19日21時00分M4.7P81[+17]kmが根室沖の太平洋スラブ内で起こっている.この地震の圧縮主応力軸も海溝側傾斜であるので太平洋スラブに働く島弧マントルの剪断圧縮応力による地震である.
千島海溝に沿って太平洋スラブ上面に沿う剪断応力によるCMT解は,温祢古丹島から根室まで146個(M7.5分)が起こっているが,その圧縮主応力方位は太平洋プレートと北米プレートの相対運動(主応力方位図の中央付近の紫色直線およびその逆方位の上下枠付近)に沿っている(図263).1994年から2006年までは28個(総地震断層面積のプレート運動面積比0.014),2006年から2014年までは105個(0.081),2015年から2017年までは10個(0.015)と再び静穏化していたが,今回の連発地震が活性化を示していることも考えられる.

図263.2018年1月の択捉沖連発地震と千島下震源域(mCsm)のCMT解主応力方位.
左下:震央地図.左上:海溝距離断面図.右上:縦断面図.右中:時系列図(右端数字は年数,左端は積算地震断層面積ベニオフ図).右下:主応力方位図.

6.2018年2月の月刊地震予報

2018年1月のCMT面積比は,1997年の年間最低記録0.107に次ぐ低さの2017年の0.142(2017年日本全図年別)とほぼ等しい0.149であり,2017年1月からの静穏化が継続している.ただし,東日本大震災後の活性化後に静穏化していた千島・東北・関東地域で連発地震が起き,新たな活性化の前兆として警戒が必要である.

月刊地震予報100)鳥島南東沖連発地震・種子島東方沖連発地震・連発地震とオイラー緯度・2018年1月の月刊地震予報

1.2017年12月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2017年12月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で21個0.098月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.055月分,伊豆・小笠原海溝域で6個0.439月分,南海・琉球海溝域で8個0.053月分であった(2017年12月日本全図月別).
2017年12月の最大地震は12月21日の鳥島沖M6.0である.鳥島南東沖では最大地震M6.0を含む連発地震があり,種子島東方沖でも連発地震があった.
2017年の年間CMT解は192個で面積比が0.142と,最低記録であった1997年の0.107に次ぐ低さであった(2017年日本全図年別).

2.鳥島南東沖連発地震M4.6-M6.0

 2017年12月21日9時40分から12月23日8時10分にかけ鳥島南東方の伊豆海溝軸内側の太平洋スラブ内でM4.6からM6.0の連発地震が起こった(表27).発震機構は逆断層p型で最大地震を除き引張過剰+pである.沈込もうとしている太平洋スラブをフィリピン海プレートプレートが載上げて起こしたのであろう.最大地震M6.0の主応力軸方位(P97+20T308+67N191+11)を基準にすると,応力場極性区分は全て基準区分orgで,偏角は11°から34°に収まっており,応力場は最大地震後も変化せず保持されている.

表27.2017年12月鳥島南東沖連発地震.

M 北緯° 東経° 深度
(km)
Slab
(km)
距離
(km)
方位° 番号 応力場
2017 12 23 8 10 5.2 +pe 29.365 142.578 39 +29 15 295 CMT org11.1
2017 12 21 12 0 6.0 pe 29.308 142.717 53 +44 0 基準 CMT 基準
2017 12 21 10 56 5.4 +p 29.295 142.460 49 +37 25 267 CMT org28.6
2017 12 21 9 42 4.6 +p 29.295 142.277 55 +40 43 268 CMT org34.3
2017 12 21 9 40 4.6 +p 29.265 142.397 51 +38 31 261 CMT org25.9
2017 7 28 8 58 5.2 -t 29.262 142.542 47 +36 18 253 CMT PexT140.5
2017 4 11 5 42 5.0 +pe 29.642 142.465 48 +38 44 327 CMT org48.4
2016 5 26 8 1 4.9 Pe 29.355 142.582 48 +38 14 292 CMT org14.6
2014 1 18 14 0 5.6 P 28.973 142.480 30 +16 44 211 CMT org17.6
2013 2 21 23 5 5.3 Po 29.420 142.858 31 +24 18 48 CMT org11.5
2013 2 4 8 4 5.1 P 29.285 142.298 23 +8 41 266 CMT org7.5
2013 2 4 7 56 5.4 p 29.342 142.378 52 +39 33 277 CMT org14.5
2013 2 3 3 31 5.4 P 29.438 142.502 37 +26 25 305 CMT org25.7
2010 9 14 2 44 4.6 +pe 29.282 142.607 55 +45 11 255 CMT org17.7

 今回の連発地震の震央は基準から全て西方に15-43kmの範囲にある.震央距離50km以内に初動解や歴史地震はないが,2010年9月から2017年7月にM4.6-5.6のCMT解が9個ある(表27,図257).これらの応力場極性区分は,逆極性区分PexTの2017年4月M5.2を除き,基準区分orgであり,その偏角も8°から48°と連発地震の偏角と同程度である.

図257.2017年12月の鳥島南東沖連発地震のCMT主応力軸方位.
 左図:震央地図(円は基準地震から震央距離50km)・海溝距離断面図,右上:縦断面図(伊豆小円南区),右中:時系列図(右端数字:年数),右中図左端(Benioff:積算地震断層面積のBenoff図),右下:主応力軸方位図.

 2017年4月の逆極性区分M5.2の震源位置は,基準からの震央距離18kmと近く,連続地震の震源分布内にあることから,2017年4月に応力場に異変があったのであろう.

3.種子島東方沖連発地震M4.2-M5.2

 種子島東方沖の琉球海溝内スラブで2017年12月19日から12月21日にかけてM4.2-M5.2の連発地震が起こった(表28).発震機構は全て圧縮過剰正断層-t型であり,フィリッピン海プレートの九州-パラオ海嶺が九州の下に沈込みを開始するため同心円屈曲して体積過剰とになったスラブ上部で起こっている.2017年12月20日22時40分の最大地震M5.2の主応力軸方位(P218+72T97+10N4+15)と震源を基準にすると連発地震の応力場極性区分は全て基準区分orgに属し,偏角は21°から51°で応力場の逆転が認められず,連発地震を起こした応力場が保持されたまま終息している.連発地震の震源は基準からの震央距離10km以内に収まっている.

表28.2017年12月種子島東方沖連発地震.

M 北緯° 東経° 深度
(km)
Slab
(km)
距離
(km)
方位° 番号 応力場
2017 12 21 12 40 4.4 -t 30.663 132.082 56 +45 6 9 CMT org51.6
2017 12 21 0 39 4.2 -t 30.637 132.102 53 +43 4 42 CMT org21.2
2017 12 20 23 45 4.5 -t 30.697 132.090 54 +43 10 10 CMT org42.3
2017 12 20 22 40 5.2 -t 30.608 132.072 61 +50 0 0 基準 0
2017 12 19 8 28 4.7 -t 30.600 132.175 51 +42 10 95 CMT org42.9
2015 8 4 13 39 4.7 +p 30.647 131.605 38 +20 45 276 CMT PexT163.6
2015 8 2 6 51 4.4 P 30.612 131.583 41 +23 47 271 CMT PexT163.6
2014 11 19 23 34 4.7 p 30.607 131.570 38 +20 48 270 CMT PexT153.3
2014 6 2 0 27 4.1 t 30.443 131.813 45 +32 31 233 CMT org39.5
2010 8 30 13 25 4.4 Te 30.728 132.295 54 +45 25 58 CMT org22.2
2002 7 16 20 57 5.2 To 30.777 132.495 61 +54 45 65 CMT org26.9

 本連発地震の基準地震から震央距離50km以内には初動解や歴史地震はないが,2002年7月16日から2015年8月4日までにM4.1-M5.2のCMT解6個が報告されている(表28,図258).これらの応力場極性区分は2002年7月から2014年6月までは基準区分orgに属し,偏角も22°から39°と今回の連発地震よりも小さい.しかし,2014年11月から2015年8月まではP軸方位とT軸方位が入替るPexTの逆応力場で,偏角が153°から164°と基準の逆応力場偏角180°から16°から27°しか偏っていない.震源位置を比較すると,震央方位が西方の270-276で基準震源から38-41kmに位置し,スラブ深度が20-23kmと浅く,発震機構が逆断層型であることが異なっている.

図258.2017年12月の種子島東方沖連発地震のCMT主応力軸方位.
 左図:震央地図(円は基準地震から震央距離50km),中:最上小円区海溝距離断面図,右上:縦断面図,右中:時系列図(右端数字:年数),右中図左端(Benioff:積算震断層面積のBenioff図),右下:主応力軸方位図.

 琉球海溝軸付近のスラブ深度が30km以上の基準地震と,西方に海溝軸から離れたスラブ深度が30km以下の震源の間には応力場の逆転が存在しており,海溝軸付近ではスラブ同心円状屈曲に伴う正断層型地震が起こるが,西方で沈込スラブ上面が島弧地殻との接触によって剪断応力による逆断層型地震を起こすため,応力場が逆転したと考えられる.

4.連発地震とオイラー緯度

2017年12月の同時期に鳥島南東沖連発地震(表27)と種子島東方沖連発地震(表28)が起こり,その関係が注目される.両連発地震はフィリピン海プレートが載り上げる太平洋スラブ内とアムールプレートの下に沈込むスラブ内で起こっている.この連発地震にフィリピン海プレートと太平洋プレートのプレート相対運動の関係が予想される.太平洋プレート・フィリピン海プレート相対運動のオイラー極はパラオ海溝とアユ海盆の間(1.2N134.2E)とされており,両連発地震の基準震源のオイラー緯度を算出すると(新妻,2007),60.7°・60.5°と殆ど一致する.
種子島東方沖連発地震は,フィリピン海プレートとアムールプレートとの相互作用によって起こっているが,アムールプレートのホットスポット系に対する回転速度は百万年間に0.07°と,太平洋プレートの0.98°・フィリピン海プレートの1.14°に比較し桁違いに小さいことから,種子島東方沖に影響を与えるのはフィリピン海プレートの運動であり,アムールプレートとはプレート境界の物理状態が影響を与えるに留まるであろう.フィリピン海プレート運動は太平洋プレートとの相互作用に支配されており,相対運動はオイラー極の周りの回転運動で記述される.オイラー極の回りの回転運動では,オイラー極から等角距離の等オイラー緯度に沿って同じ回転運動をすることが予想される.今回の等オイラー緯度における連発地震の同時発生は,太平洋プレート・フィリピン海プレート間の回転運動に関係していること示している.
従来,プレート運動とプレート境界の状態を区別できなかったため,プレート境界の状態のみを重視する「アスぺリティー仮説」などが提唱されてきたが(特別報告2),プレート運動も断続的であればプレート相対運動の等オイラー緯度の地震活動を比較することによって,プレート運動の変動を分離して検討することができる.

5.2018年1月の月刊地震予報

2017年12月の日本全域CMT解個数は21個と多かったが,地震断層面積のプレート運動面積に対する比は0.098と1割以下で,2017年の年間CMT解は192個で面積比が0.142と,1997年の最低記録0.107に次ぐ低さで,嵐の前の静けさは続いている(図259).

図259.1994年9月から2017年12月までのCMT解の地震断層面積.
上図:積算地震断層面積のBenioff図,灰色斜線はプレート運動積算面積,上の数字は地震断層面積のプレート運動面積に対する比,下の数字は総地震断層面積相当規模.
下図:170.4日間の移動平均の対数曲線,発震機構型による彩色は線形分配,上の数字は総地震断層面積.
Total:日本全域,RykNnk:琉球海溝・南海トラフ域,OgsIz:小笠原・伊豆海溝域,Jpn:日本海溝域,Chishima:千島海溝域.

CMT解の地震断層面積のプレート運動面積に対する比は,日本全域(Total)で1.76と大きく超過しているが,これは2011年の東日本大震災本震による日本海溝域(Jpn)の6.96が大きく関与している.
千島海溝域(Chishima)では比が0.97と地震断層面積がほぼプレート運動面積(灰色斜直線)と一致するとともに2013年5月24日カムチャツカ沖M8.3Pと2007年1月13日千島海溝M8.2Teの2つの大きな段があり,その間の6年半を再来周期と仮定すれば,2020年にM8.2以上の地震が予想できる.
小笠原・伊豆海溝域(OgsIzu)の比は1.47と地震活動がプレート運動に比較して過剰であるが,ほぼプレート運動に沿う地震活動が続いている.
琉球海溝・南海トラフ域(RykNnk)の比は0.49と地震活動がプレート運動の半分以下である.しかし,1994年から2001年までの比は0.74とプレート運動(灰色斜直線)にほぼ沿っていたが,2002年以後の比は0.37と地震活動が半減している.2002年以後の発震機構型比は,2001年以前に比較して逆断層型(赤色)を主体とし,横擦断層型(緑色)が減少している.ただし,2015年末からは,2015年11月14日沖縄トラフ最大CMT解M7.1+nt(速報74)・2016年4月16日熊本地震M7.3(速報79)・2016年10月21日鳥取県中部地震M6.6+np(月刊地震予報85)が続き横擦断層型が主体を占めるようになって現在に到っており,Benioff図(特別報告5)に明確に表れていないが,地震活動活発化が窺われる.
日本全域CMT解の地震断層面積のプレート運動面積に対する比の年間最低記録となった1997年には,琉球海溝・南海トラフ域の発震機構型比率が現在と同様横擦断層型優勢であり,翌1998年5月4日琉球海溝域最大CMT解八重山沖M7.7-nto,2年後1999年9月21日台湾域最大CMT解集集地震M7.7+pが起こっている.2018年・2019年には台湾・琉球海溝・南海トラフ域におけるM8級の巨大地震に警戒が必要である.
フィリピン海プレート・太平洋プレート相対運動の等オイラー緯度に位置する鳥島南東沖と種子島東方沖でほぼ同時に連発地震が起こったことは,この連発地震が太平洋プレートに対するフィリピン海プレートの運動に支配されていることを示している.南海トラフ巨大地震襲来前の予報が急務とされる現在,琉球海溝・南海トラフ域の地震活動を伊豆海溝の地震活動と比較することによってフィリピン海プレート運動の変動を解析する道が拓かれたことから,今後の発展が期待される.

引用文献

新妻信明(2007)プレートテクトニクス―その新展開と日本列島―.共立出版,292p.