東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

月刊地震予報101)地震活動表示の変更・下北半島沖地震・伊豆半島東方沖連発地震・銚子沖連発地震・択捉島沖連発地震・2018年2月の月刊地震予報

1.発震機構解の表示変更

 これまで月間・年間の地震活動を示すために気象庁から公表される発震機構解の震源位置図を掲載してきたが,地震活動の性質を示すため震源位置に主応力軸方位を表示することに変更する.逆断層型と圧縮横擦型については圧縮主応力軸方位,正断層型と引張横擦型については引張主応力軸方位を示す.
発震機構解には地震発生後直ちに公表される速報解と,精査後に公表される初動IS解およびCMT解がある.CMT解は海溝域を含む広域に起こった規模の大きい地震について公表される.陸域から沿岸域の地震については小さな規模の地震まで初動解が公表されている.
以前の速報は初動解のみであったが,近年,海外を含む広域のCMT解についても速報として公表されるようになった.速報解には地震を起こした応力場についての数値情報が含まれ,前震・本震の判定など地震予報に威力を発揮する(速報79月刊地震予報85特報4).従来は,東日本についてのみ速報解を表示してきたが,日本全域で速報解がどの程度公表されているかを示すため,表示範囲を日本全域に広げることにする.

2.2018年1月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2018年1月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で19個0.149月分,千島海溝域で3個0.021月分,日本海溝域で11個0.896月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.045月分,南海・琉球海溝域で4個0.006月分であった(2018年1月日本全図月別).
2018年1月の最大地震は1月24日の下北半島沖M6.3で,他にM6.0以上の地震はなかった.連発地震は伊豆半島東方沖,銚子沖,択捉島沖であった.

2.下北半島沖地震M6.3

 2018年1月24日19時51分M6.3P深度34[スラブ上面深度-4]kmが下北半島沖の太平洋スラブ上面より4km上で起こった.CMT解の発震機構(P101+23T310+64N196+11)と非双偶力成分比-6%から,やや圧縮過剰の逆断層P型である.圧縮主応力軸は海溝側に23°傾斜しているので,島弧マントルと太平洋スラブ上面との剪断応力による海溝型地震である.
 本連発地震の下北半島沖(oSmk)にはCMT解が50個(M6.9分),初動解が174個(M7.0分)公表されているが,応力場偏角が今回のCMT解から±25°以内にCMT解44個と初動解150個が入っており,ほぼ同じ応力場の地震が起きている.
 下北半島沖の最大地震は2001年8月14日5時11分M6.4p38[-0]kmで今回のCMTからの応力場偏角は8°と良く一致している.東日本大震災後に活発化したが今回と2001年の活動には及ばない(図269).これまで静穏化していたが2001年に匹敵する地震活動が開始されたとも考えられる.

図260. 下北半島沖2018年1月24日M6.3地震域のCMT解主応力方位.
左:震央地図.右上:海溝距離断面図.右中:縦断面図.右下:時系列図(右端数字は年数,左端は積算地震断層面積ベニオフ図,右端は2018年1月24日M6.3基準の応力場偏角).

3.伊豆半島東方沖連発地震M4.2-M5.2

 2018年1月6日4時37分M4.4+np12km・1月6日5時47分M4.5+np11km・1月15日3時12分M3.4np11kmの連発地震が伊豆半島東方沖で起こった.本連発地震域はこれまでもマグマ活動と関連する群発地震が起こっており,1998年5月3日M5.9np5km,2006年4月21日M5.8-np7km,2006年5月2日M5.1-nt15km,2009年12月17日M5.0+np4km,18日M5.1np5kmのCMT解7個(M6.2分)が公表されている(図261).初動解はM1.7-5.8の92個(M6.1分)がある.連発地震後の2018年1月23日9時59分に草津本白根が噴火し,蔵王でも火山活動が活発化している.

図261.2018年1月の伊豆半島東方沖連発地震域のCMT解主応力方位.
左:震央地図.右上:海溝距離断面図.右下左:積算地震断層面積ベニオフ図.右下右:2018年1月6日M4.5基準の応力場偏角.

4.銚子沖連発地震M4.7-5.2

 銚子沖で2018年1月10日の7時20分M4.7-np34[+2]km・7時30分M5.2-tr32[0]kmの連発地震があった.この連発地震は房総三重会合点から北西方向に伸びるフィリピン海スラブ北西縁が太平洋スラブに接触している相模スラブ震源域Sgmで起こった(特報7).相模スラブ震源では東日本大震災まではCMT8個(M6.2分)しか起こっていなかったが,大震災以後2013年までは34個(M6.7分)と活発化し,その後静穏化して5個(M5.3分)起こったのみである.今回の連発地震の総地震断層面積は過去4年間分と同程度であり,新たな活動の開始を告げているのかもしれない(図262).

図262.2018年1月の銚子半島沖連発地震と相模スラブ震源(Sgm)のCMT解主応力方位.
左:震央地図.右上:海溝距離断面図.右中:十断面図.右下:時系列図(右端数字は年数,左端は積算地震断層面積ベニオフ図).

5.択捉島沖連発地震

2018年1月20日14時51分M5.1P30[-22]km・1月30日12時50分M4.7P30[-13]kmの連発地震が択捉島南東方沖の太平洋スラブ上面から13-22km上の千島弧マントル内で起こった.圧縮主応力軸が海溝側に傾斜しているので,太平洋スラブと島弧マントルとの剪断応力による地震である.最初の地震の半日前に2018年1月19日21時00分M4.7P81[+17]kmが根室沖の太平洋スラブ内で起こっている.この地震の圧縮主応力軸も海溝側傾斜であるので太平洋スラブに働く島弧マントルの剪断圧縮応力による地震である.
千島海溝に沿って太平洋スラブ上面に沿う剪断応力によるCMT解は,温祢古丹島から根室まで146個(M7.5分)が起こっているが,その圧縮主応力方位は太平洋プレートと北米プレートの相対運動(主応力方位図の中央付近の紫色直線およびその逆方位の上下枠付近)に沿っている(図263).1994年から2006年までは28個(総地震断層面積のプレート運動面積比0.014),2006年から2014年までは105個(0.081),2015年から2017年までは10個(0.015)と再び静穏化していたが,今回の連発地震が活性化を示していることも考えられる.

図263.2018年1月の択捉沖連発地震と千島下震源域(mCsm)のCMT解主応力方位.
左下:震央地図.左上:海溝距離断面図.右上:縦断面図.右中:時系列図(右端数字は年数,左端は積算地震断層面積ベニオフ図).右下:主応力方位図.

6.2018年2月の月刊地震予報

2018年1月のCMT面積比は,1997年の年間最低記録0.107に次ぐ低さの2017年の0.142(2017年日本全図年別)とほぼ等しい0.149であり,2017年1月からの静穏化が継続している.ただし,東日本大震災後の活性化後に静穏化していた千島・東北・関東地域で連発地震が起き,新たな活性化の前兆として警戒が必要である.

月刊地震予報100)鳥島南東沖連発地震・種子島東方沖連発地震・連発地震とオイラー緯度・2018年1月の月刊地震予報

1.2017年12月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2017年12月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で21個0.098月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.055月分,伊豆・小笠原海溝域で6個0.439月分,南海・琉球海溝域で8個0.053月分であった(2017年12月日本全図月別).
2017年12月の最大地震は12月21日の鳥島沖M6.0である.鳥島南東沖では最大地震M6.0を含む連発地震があり,種子島東方沖でも連発地震があった.
2017年の年間CMT解は192個で面積比が0.142と,最低記録であった1997年の0.107に次ぐ低さであった(2017年日本全図年別).

2.鳥島南東沖連発地震M4.6-M6.0

 2017年12月21日9時40分から12月23日8時10分にかけ鳥島南東方の伊豆海溝軸内側の太平洋スラブ内でM4.6からM6.0の連発地震が起こった(表27).発震機構は逆断層p型で最大地震を除き引張過剰+pである.沈込もうとしている太平洋スラブをフィリピン海プレートプレートが載上げて起こしたのであろう.最大地震M6.0の主応力軸方位(P97+20T308+67N191+11)を基準にすると,応力場極性区分は全て基準区分orgで,偏角は11°から34°に収まっており,応力場は最大地震後も変化せず保持されている.

表27.2017年12月鳥島南東沖連発地震.

M 北緯° 東経° 深度
(km)
Slab
(km)
距離
(km)
方位° 番号 応力場
2017 12 23 8 10 5.2 +pe 29.365 142.578 39 +29 15 295 CMT org11.1
2017 12 21 12 0 6.0 pe 29.308 142.717 53 +44 0 基準 CMT 基準
2017 12 21 10 56 5.4 +p 29.295 142.460 49 +37 25 267 CMT org28.6
2017 12 21 9 42 4.6 +p 29.295 142.277 55 +40 43 268 CMT org34.3
2017 12 21 9 40 4.6 +p 29.265 142.397 51 +38 31 261 CMT org25.9
2017 7 28 8 58 5.2 -t 29.262 142.542 47 +36 18 253 CMT PexT140.5
2017 4 11 5 42 5.0 +pe 29.642 142.465 48 +38 44 327 CMT org48.4
2016 5 26 8 1 4.9 Pe 29.355 142.582 48 +38 14 292 CMT org14.6
2014 1 18 14 0 5.6 P 28.973 142.480 30 +16 44 211 CMT org17.6
2013 2 21 23 5 5.3 Po 29.420 142.858 31 +24 18 48 CMT org11.5
2013 2 4 8 4 5.1 P 29.285 142.298 23 +8 41 266 CMT org7.5
2013 2 4 7 56 5.4 p 29.342 142.378 52 +39 33 277 CMT org14.5
2013 2 3 3 31 5.4 P 29.438 142.502 37 +26 25 305 CMT org25.7
2010 9 14 2 44 4.6 +pe 29.282 142.607 55 +45 11 255 CMT org17.7

 今回の連発地震の震央は基準から全て西方に15-43kmの範囲にある.震央距離50km以内に初動解や歴史地震はないが,2010年9月から2017年7月にM4.6-5.6のCMT解が9個ある(表27,図257).これらの応力場極性区分は,逆極性区分PexTの2017年4月M5.2を除き,基準区分orgであり,その偏角も8°から48°と連発地震の偏角と同程度である.

図257.2017年12月の鳥島南東沖連発地震のCMT主応力軸方位.
 左図:震央地図(円は基準地震から震央距離50km)・海溝距離断面図,右上:縦断面図(伊豆小円南区),右中:時系列図(右端数字:年数),右中図左端(Benioff:積算地震断層面積のBenoff図),右下:主応力軸方位図.

 2017年4月の逆極性区分M5.2の震源位置は,基準からの震央距離18kmと近く,連続地震の震源分布内にあることから,2017年4月に応力場に異変があったのであろう.

3.種子島東方沖連発地震M4.2-M5.2

 種子島東方沖の琉球海溝内スラブで2017年12月19日から12月21日にかけてM4.2-M5.2の連発地震が起こった(表28).発震機構は全て圧縮過剰正断層-t型であり,フィリッピン海プレートの九州-パラオ海嶺が九州の下に沈込みを開始するため同心円屈曲して体積過剰とになったスラブ上部で起こっている.2017年12月20日22時40分の最大地震M5.2の主応力軸方位(P218+72T97+10N4+15)と震源を基準にすると連発地震の応力場極性区分は全て基準区分orgに属し,偏角は21°から51°で応力場の逆転が認められず,連発地震を起こした応力場が保持されたまま終息している.連発地震の震源は基準からの震央距離10km以内に収まっている.

表28.2017年12月種子島東方沖連発地震.

M 北緯° 東経° 深度
(km)
Slab
(km)
距離
(km)
方位° 番号 応力場
2017 12 21 12 40 4.4 -t 30.663 132.082 56 +45 6 9 CMT org51.6
2017 12 21 0 39 4.2 -t 30.637 132.102 53 +43 4 42 CMT org21.2
2017 12 20 23 45 4.5 -t 30.697 132.090 54 +43 10 10 CMT org42.3
2017 12 20 22 40 5.2 -t 30.608 132.072 61 +50 0 0 基準 0
2017 12 19 8 28 4.7 -t 30.600 132.175 51 +42 10 95 CMT org42.9
2015 8 4 13 39 4.7 +p 30.647 131.605 38 +20 45 276 CMT PexT163.6
2015 8 2 6 51 4.4 P 30.612 131.583 41 +23 47 271 CMT PexT163.6
2014 11 19 23 34 4.7 p 30.607 131.570 38 +20 48 270 CMT PexT153.3
2014 6 2 0 27 4.1 t 30.443 131.813 45 +32 31 233 CMT org39.5
2010 8 30 13 25 4.4 Te 30.728 132.295 54 +45 25 58 CMT org22.2
2002 7 16 20 57 5.2 To 30.777 132.495 61 +54 45 65 CMT org26.9

 本連発地震の基準地震から震央距離50km以内には初動解や歴史地震はないが,2002年7月16日から2015年8月4日までにM4.1-M5.2のCMT解6個が報告されている(表28,図258).これらの応力場極性区分は2002年7月から2014年6月までは基準区分orgに属し,偏角も22°から39°と今回の連発地震よりも小さい.しかし,2014年11月から2015年8月まではP軸方位とT軸方位が入替るPexTの逆応力場で,偏角が153°から164°と基準の逆応力場偏角180°から16°から27°しか偏っていない.震源位置を比較すると,震央方位が西方の270-276で基準震源から38-41kmに位置し,スラブ深度が20-23kmと浅く,発震機構が逆断層型であることが異なっている.

図258.2017年12月の種子島東方沖連発地震のCMT主応力軸方位.
 左図:震央地図(円は基準地震から震央距離50km),中:最上小円区海溝距離断面図,右上:縦断面図,右中:時系列図(右端数字:年数),右中図左端(Benioff:積算震断層面積のBenioff図),右下:主応力軸方位図.

 琉球海溝軸付近のスラブ深度が30km以上の基準地震と,西方に海溝軸から離れたスラブ深度が30km以下の震源の間には応力場の逆転が存在しており,海溝軸付近ではスラブ同心円状屈曲に伴う正断層型地震が起こるが,西方で沈込スラブ上面が島弧地殻との接触によって剪断応力による逆断層型地震を起こすため,応力場が逆転したと考えられる.

4.連発地震とオイラー緯度

2017年12月の同時期に鳥島南東沖連発地震(表27)と種子島東方沖連発地震(表28)が起こり,その関係が注目される.両連発地震はフィリピン海プレートが載り上げる太平洋スラブ内とアムールプレートの下に沈込むスラブ内で起こっている.この連発地震にフィリピン海プレートと太平洋プレートのプレート相対運動の関係が予想される.太平洋プレート・フィリピン海プレート相対運動のオイラー極はパラオ海溝とアユ海盆の間(1.2N134.2E)とされており,両連発地震の基準震源のオイラー緯度を算出すると(新妻,2007),60.7°・60.5°と殆ど一致する.
種子島東方沖連発地震は,フィリピン海プレートとアムールプレートとの相互作用によって起こっているが,アムールプレートのホットスポット系に対する回転速度は百万年間に0.07°と,太平洋プレートの0.98°・フィリピン海プレートの1.14°に比較し桁違いに小さいことから,種子島東方沖に影響を与えるのはフィリピン海プレートの運動であり,アムールプレートとはプレート境界の物理状態が影響を与えるに留まるであろう.フィリピン海プレート運動は太平洋プレートとの相互作用に支配されており,相対運動はオイラー極の周りの回転運動で記述される.オイラー極の回りの回転運動では,オイラー極から等角距離の等オイラー緯度に沿って同じ回転運動をすることが予想される.今回の等オイラー緯度における連発地震の同時発生は,太平洋プレート・フィリピン海プレート間の回転運動に関係していること示している.
従来,プレート運動とプレート境界の状態を区別できなかったため,プレート境界の状態のみを重視する「アスぺリティー仮説」などが提唱されてきたが(特別報告2),プレート運動も断続的であればプレート相対運動の等オイラー緯度の地震活動を比較することによって,プレート運動の変動を分離して検討することができる.

5.2018年1月の月刊地震予報

2017年12月の日本全域CMT解個数は21個と多かったが,地震断層面積のプレート運動面積に対する比は0.098と1割以下で,2017年の年間CMT解は192個で面積比が0.142と,1997年の最低記録0.107に次ぐ低さで,嵐の前の静けさは続いている(図259).

図259.1994年9月から2017年12月までのCMT解の地震断層面積.
上図:積算地震断層面積のBenioff図,灰色斜線はプレート運動積算面積,上の数字は地震断層面積のプレート運動面積に対する比,下の数字は総地震断層面積相当規模.
下図:170.4日間の移動平均の対数曲線,発震機構型による彩色は線形分配,上の数字は総地震断層面積.
Total:日本全域,RykNnk:琉球海溝・南海トラフ域,OgsIz:小笠原・伊豆海溝域,Jpn:日本海溝域,Chishima:千島海溝域.

CMT解の地震断層面積のプレート運動面積に対する比は,日本全域(Total)で1.76と大きく超過しているが,これは2011年の東日本大震災本震による日本海溝域(Jpn)の6.96が大きく関与している.
千島海溝域(Chishima)では比が0.97と地震断層面積がほぼプレート運動面積(灰色斜直線)と一致するとともに2013年5月24日カムチャツカ沖M8.3Pと2007年1月13日千島海溝M8.2Teの2つの大きな段があり,その間の6年半を再来周期と仮定すれば,2020年にM8.2以上の地震が予想できる.
小笠原・伊豆海溝域(OgsIzu)の比は1.47と地震活動がプレート運動に比較して過剰であるが,ほぼプレート運動に沿う地震活動が続いている.
琉球海溝・南海トラフ域(RykNnk)の比は0.49と地震活動がプレート運動の半分以下である.しかし,1994年から2001年までの比は0.74とプレート運動(灰色斜直線)にほぼ沿っていたが,2002年以後の比は0.37と地震活動が半減している.2002年以後の発震機構型比は,2001年以前に比較して逆断層型(赤色)を主体とし,横擦断層型(緑色)が減少している.ただし,2015年末からは,2015年11月14日沖縄トラフ最大CMT解M7.1+nt(速報74)・2016年4月16日熊本地震M7.3(速報79)・2016年10月21日鳥取県中部地震M6.6+np(月刊地震予報85)が続き横擦断層型が主体を占めるようになって現在に到っており,Benioff図(特別報告5)に明確に表れていないが,地震活動活発化が窺われる.
日本全域CMT解の地震断層面積のプレート運動面積に対する比の年間最低記録となった1997年には,琉球海溝・南海トラフ域の発震機構型比率が現在と同様横擦断層型優勢であり,翌1998年5月4日琉球海溝域最大CMT解八重山沖M7.7-nto,2年後1999年9月21日台湾域最大CMT解集集地震M7.7+pが起こっている.2018年・2019年には台湾・琉球海溝・南海トラフ域におけるM8級の巨大地震に警戒が必要である.
フィリピン海プレート・太平洋プレート相対運動の等オイラー緯度に位置する鳥島南東沖と種子島東方沖でほぼ同時に連発地震が起こったことは,この連発地震が太平洋プレートに対するフィリピン海プレートの運動に支配されていることを示している.南海トラフ巨大地震襲来前の予報が急務とされる現在,琉球海溝・南海トラフ域の地震活動を伊豆海溝の地震活動と比較することによってフィリピン海プレート運動の変動を解析する道が拓かれたことから,今後の発展が期待される.

引用文献

新妻信明(2007)プレートテクトニクス―その新展開と日本列島―.共立出版,292p.

月刊地震予報99)海溝外太平洋スラブ地震・八丈島連発地震・韓半島稀発地震・関東平野丹沢スラブ連発地震・台湾のCMT解・2017年12月の月刊地震予報

1.2017年11月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2017年11月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で11個0.179月分,千島海溝域で2個0.041月分,日本海溝域で4個0.379月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.614月分,南海・琉球海溝域で1個0.028月分であった(2017年11月日本全図月別).
2017年11月の最大地震は11月13日の日本海溝の海溝外M6.0で,M6以上の地震はこの他に11月16日の八丈島M6.0がある.韓半島では稀発地震,関東平野では丹沢スラブで連発地震があった.
今年に入ってからのCMT解は171個で面積比が0.170と1割代に留まっている(2017年11月日本全図年別).

2.海溝外太平洋スラブの東誘導震源域地震M6.0

 2017年11月13日7時24分M6.0to深度56(スラブ深度+50)kmが日本海溝外の東誘導震源域Eind(月刊地震予報98の略称Eafを変更)であった.東日本大震災前にはEind震源域で,CMT解が6個しかなかったが,大震災後323個に急増している.大震災により総地震断層面積も急増したが,地震断層面積の対数移動平均曲線(logArea)が2016年まで直線的に減少しており,等比級数的に減少したことが分かる(図252).

図252.東誘導震源域Eind連発地震のCMT主応力軸方位.
 左図:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右中:時系列図(右端数字:年数),右中図左端(logArea):総地震断層面積の169.8日移動平均の対数曲線で彩色は発震機構型による線形内部配分,右下:主応力軸方位図.

 しかし,2017年9月3日18時01分M4.7-te深度50(+42)km(月刊地震予報96)以後,2017年10月6日16時58分M6.3深度57(+51)km(月刊地震予報98),そして本M6.0とM6.0以上のCMT解が3個連発している(図253).M6.0以上のCMT解は大震災前に2005年11月15日6時38分M7.2toのみであったが,大震災後に15個に急増した.その内の12個が2013年までで,2014年から2016年には起こっておらず,残りの3個が今回起こった.2017年9月以降に起こったM6.0以上の地震の中で,2017年10月6日M6.3以外の震央は,大震災本震直後の最大地震20110311M7.5や大震災前唯一の20051115M7.2とほぼ一致している.

図253.2017年9月から11月の東誘導震源域EindのCMT主応力軸方位.
 左図:震央地図,中:最上小円区海溝距離断面図,右上:縦断面図,右中:時系列図(右端数字:2017年の月数),右中図左端(logArea:総地震断層面積の移動平均の対数曲線),右下:主応力軸方位図.

東誘導震源区の地震は太平洋プレートが日本海溝に沿って沈込む際に同心円状屈曲し,プレート表層が伸長するために起こる正断層型地震であり,引張T軸方位は西北西のプレート相対運動(図252右下の主応力軸方位図中央付近の紫色折れ線)と一致している.このような機構で起こる総地震断層面積は日本海溝を通過して太平洋スラブになる太平洋プレートの面積に比例するであろう.2017年9月から11月までの最上小円区への太平洋プレート沈込面積に対する東誘導震源域の総地震断層面積の比は0.51で,大震災前の0.04の12倍以上であり,大震災前に太平洋スラブ沈込停止状態であったことを示している.東日本大震災によって沈込障害が除去され,沈込再開によってこれまでの停止分を取戻す勢であった東誘導地震も,2016年までにその勢を失った後に今回の活動が起こっている.
この活性化に関連する地震として,2016年1月2日13時22分M5.7P681(+77)kmの下部マントル地震(速報76)と2017年7月13日4時48分M6.3-np603(+92)kmの平面化スラブ震源域VladE地震がある(月刊地震予報94).
沈込阻止のない太平洋スラブ沈込は観測されておらず,未知の状態にあるが,2017年から開始された活性化が,定常的な太平洋スラブ沈込によるものか,昭和三陸地震のような海溝外巨大地震の前兆であるか,2009年4月に開始された太平洋スラブの下部マントルへの崩落(速報69)に関係しているのか,現時点で予想することは困難であり,今後の動静が注目される.

3.八丈島連発地震

 伊豆小円北区の八丈島南東沖で2017年11月16日18時43分M6.0p46(+2)kmが太平洋スラブ上面で起った(図254).本地震前に八丈島東方沖の伊豆海溝付近の島弧地殻上部で11月9日16時42分M5.9p10(-9)kmと11月10日3時45分M5.2p11(-9)kmが起き,本地震後に八丈島南方沖の島弧マントルで11月18日18時00分にM4.8t30(-93)kmが起こっている.これらの規模はM4.8~M6.0で平均M5.7である.10日以内に八丈島付近の島弧地殻内・太平洋スラブそして島弧マントル内の地震が4個起こったことは珍しい.最大地震の太平洋スラブ上面M6.0pの発震機構(P292+29T61+48N186+27)を基準に応力場極性区分(月刊地震予報87)を比較すると,逆応力場極性のPexT・TPexNであり,応力場はスラブ上面と島弧マントルの間で逆転している(図254).

図254.2017年11月の八丈島連発地震のCMT主応力軸方位(上)・応力場極性区分偏角(下).
 左図:震央地図,中:伊豆小円区海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図(右端数字:2017年11月の日数),右上図下左端(Benioff:積算地震断層面積のベニオフ曲線),右下図左端(Stress Polarity Π:最大地震2017年11月16日M6.0基準の応力場極性区分偏角).

スラブ上面から島弧マントル・地殻にかけての地震は,2015年5月3日から6月3日に伊豆小円南北区境界付近の須美寿島沖でも起こっている(月刊地震予報).規模はM4.5~M6.3で平均M5.9と今回と類似している.この期間末の2015年5月30日と6月3日に太平洋スラブで深度660km以上の下部マントル上面以深の地震が起こっており(速報68速報69),今後の地震活動に警戒が必要である.

4.韓半島稀発地震

 2017年11月15日14時29分韓半島東縁でM5.6p深度11kmが起こった(図255).CMTの記録が全くなかったこの震源域JpsKで2016年7月5日M4.9-nt深度37kmと2016年9月12日M5.8-nt深度36km・M5.2nt深度40kmが起こり希発地震域として注目された(月刊地震予報82).この震源域に最も近いCMT解は韓半島東方沖の2004年5月29日M5.1+pr深度43kmのみである.

図255.韓半島稀発地震のCMT主応力軸方位.
 左図:震央地図,中:南海小円区海溝距離断面図,右上:縦断面図,右中:時系列図(右端数字:年数,左端のBenioff:積算地震断層面積のベニオフ曲線で彩色は発震機構型による線形内部配分),右下:主応力軸方位図.

 これまでの地震の深度が36~43kmと大陸下部地殻・マントル深度であったのに対し,今回の深度は11kmと上部地殻深度である.韓半島は地震の起きない大陸地殻で,韓半島の東縁に沿って日本海が拡大した1500万年前に局部的に海水に覆われた記録が存在するのみであった.しかし,2016年7月に開始された地震活動が1年以上後に再開し,その深度も上部地殻に及んでいることから,日本海拡大に相当する大変動に進展することも考えられる.

5.関東平野の丹沢スラブ連発地震

 CMT解の報告はないが,初動解が2017年11月4日15時51分M3.2p42(-4)kmから11月10日0時37分M3.7p49(-2)kmまで丹沢スラブ五霞・下妻・下館震源密集域(特報7)で5個の連発地震が起こった(図256).

図256.2017年11月の丹沢スラブ連発地震のIS主応力軸方位.
左図:震央地図,中:石堂小円区海溝距離断面図,右上:縦断面図,右中:時系列図(右端数字:2017年11月の日数,左端のBenioff:積算地震断層面積のベニオフ曲線),右下:主応力軸方位図.

 規模はM3.2~M4.0で,平均規模がM3.7である.同震源密集域では20日後の2017年11月30日22時02分M3.9p42(-5)kmも起こっている.最初の発震機構方位(P145+32T292+53N45+16)を基準にした主応力場極性偏角(月刊地震予報87)は,いずれも基準極性区分orgの12.2~29.3と変わらなかった.震源は石堂小円区の相模スラブ上面やや上に位置している.
この震源密集域では2017年7月から8月にも連発地震が起きている(月刊地震予報95).

6.台湾のCMT解

 本月刊地震予報に使用している気象庁のCMT解は,台湾の地震計記録も含めた一元化処理によって算出していると言われている.しかし,2017年11月下旬に台湾を訪問した際に台湾西部の地震M5.2が報道されていたが,CMT解として掲載されなかった(2017年11月日本全図月別).台湾小円区の最小規模最新CMT解は2015年5月26日M4.5-tr0(-10)kmである.

7.2017年12月の月刊地震予報

2017年11月の日本全域CMT個数は12個と先月12個と変わらず,地震断層面積のプレート運動面積に対する比は先月の0.193から0.170に減少している.今年に入ってからのCMT解は171個で比が0.146の1割に留まり,1997年の最小比0.107と2014年の次席比0.280の間に位置する静穏さである.嵐の前の静けさは続いている.
2017年9月から日本海溝の太平洋スラブで海溝外地震が連発している.この連発は,2016年に東日本大震災によって沈込障害を解除された太平洋スラブの沈込再開活動が終息した後に起こっている.標準となるべき沈込障害のない太平洋スラブの沈込についての観測がないため,今後の地震活動については,現段階で困難であるが,2017年の連発地震と太平洋スラブ深部の地震活動との関連が予想されることから,太平洋スラブ沈込様相が変化しており,警戒が必要なことは確かである.
八丈島の連発地震は太平洋スラブ様相の変化や太平洋スラブの下部マントルへの崩落との関連も考慮する必要がある.韓半島の地震は,日本列島と韓半島を含む広域応力場がこれまで観測されたことのない変動を蒙っていることを示している.関東平野の連発地震もこれらの変動と関係しているか注目される.
気象庁の発震機構解の公開は,地震警戒宣言発令から解除に充分使える段階に到達しているが(月刊地震予報97),西南日本の地震活動と密接な関係にある台湾で起こったM5.2の地震について発震機構解が公表されていない.的確な地震予報確立のために早急な改善が望まれる.