東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

月刊地震予報82)マリアナの地震・朝鮮半島の地震・2016年8月の月刊地震予報

1.2016年7月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年7月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で23個5.613月分,千島海溝域で3個0.052月分,日本海溝域で11個0.199月分,伊豆・小笠原海溝域で2個34.246月分,南海・琉球海溝域で7個0.052月分であった(2016年7月日本全図月別).
2016年7月のM6以上の地震は,2016年7月30日マリアナの太平洋スラブ内M7.7T233kmのみである.
2016年7月の地震活動で注目されるのは,これまで殆ど報告されていなかった対馬海峡を越した朝鮮半島南東沖で起こった2016年7月5日のM4.9-nt深度37kmである.

2.マリアナの地震

 2016年7月30日マリアナ小円区の太平洋スラブ内でM7.7T233kmが起こった.今回の地震は,2013年5月14日M7.3p619kmの最大M記録(2013年日本全図年別)を更新するものであり,太平洋スラブの沈込がこれまで以上に活発化していることを示している.1994年9月1日からのCMT総地震断層面積のプレート運動面積に対する比は,本地震前には0.56と半分程度であったが,1.22倍に増加し,地震活動過剰になった.発震機構は引張過剰正断層型Tでスラブ沈込主導である.日本海溝域でも2016年5月から7月に正断層型3個と圧縮横擦断層型1個の海溝外地震が起こっており(2016年5月・6月・7月東日本月別),日本海溝からマリアナ海溝域まで太平洋プレートのスラブ沈込が優勢であることを示している.

3.朝鮮半島沖の地震

2016年7月5日に朝鮮半島南東沖でM4.9-nt深度37kmの地震が南海小円区北方延長部で起こった.本震源は,対馬海峡を越した南海小円区の海溝距離567kmに位置し,これまでの最遠記録である海溝距離364kmの1997年6月25日中国地方北西海岸付近M6.6-np深度8kmを大幅に更新して表示範囲外になった.南海小円区の海溝距離範囲北側の本地震は,日本全域図の鹿島小円区の海溝距離1108kmに表示される(2016年7月日本全域月別).朝鮮半島域のCMT解は,これまで朝鮮半島東方沖2004年5月29日M5.1+p43km海溝距離1092kmの1個が報告されているのみで(2004年日本全域年別),本地震が2個目になる.
本地震は,これまで地震活動が報告されていない空白域での地震であり,2016年6月の北海道渡島半島南東部内浦湾M5.3pr11km(月刊地震予報81)に続くものである.

4.2016年8月の月刊地震予報

熊本地域の地震は,2016年7月に初動発震機構解(速報値)が7個・精査済11個・CMT解1個であり,4月の186個・17個・10個から,5月の33個・8個と0個,6月の10個・4個・1個への減少傾向が弱まり,活動の長期化を示唆している(2016年4月・5月・6月・7月西南日本月別IS).
2016年7月30日のマリアナの地震M7.7で伊豆・小笠原・マリアナ域の1994年9月以降のCMT総地震断層面積のプレート運動面積比が1.502から1.651に地震活動過剰度を増大させた.しかし,フィリピン海プレートの沈込域の比は熊本地震が起こり0.484から0.506に増大したが約半分の状態が続いており,西南日本から琉球域の巨大地震への警戒が必要である.
2016年6月の渡島半島南東部の地震に続き,7月には地震空白域の地震が朝鮮半島沖で起こった.日本列島が太平洋スラブの下部マントルへの崩落(月刊地震予報68)など新たな地震活動期に入ったことを示唆している.

月刊地震予報81)琉球海溝域の地震・渡島半島南東部の地震・2016年7月の月刊地震予報

1.2016年6月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年6月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で21個0.187月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.410月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で14個0.347月分であった(2016年6月日本全図月別).
2016年6月のM6以上の地震は,2016年6月24日与那国島近海のフィリッピン海プレート内M6.2te54kmのみである.
2016年6月の地震活動で注目されるのは,奄美大島沖の海溝外の連発地震と(2016年6月日本全図月別),1923年観測開始以降初の北海道渡島半島南東部地震である(2016年6月東日本IS月別).また,日本海溝外で6月10日M5.1To46km・6月30日M5.2npo43kmが起こっている(2016年6月東日本月別).

2.琉球海溝域における地震活動

 2016年6月24日与那国島近海のフィリッピン海プレート内でM6.2te54kmが起こったが,先月同じ八重山小円区の石垣島北西沖で2016年5月31日M6.2tr230kmの大深度地震が起ったばかりである(月刊地震予報80).また,八重山小円区の北東隣の琉球小円区の奄美大島沖の琉球海溝外で2016年5月27日M5.6to64kmから開始し,6月15日まで正断層型M4.4~5.5深度55~72kmの地震7個が連発した.この震源域でのこれまでのCMT解は2014年7月3日M4.4-to54kmのみである.琉球小円区の琉球海溝外CMT解は,これまで17個あるが,正断層型が16個で引張横擦断層型が1個である.西隣の八重山小円区では16個の琉球海溝外CMT解があるが,引張横擦断層型10個・逆断層型4個・正断層型2個と異なるが,引張応力が主体を占めている(月刊地震予報80:図186).琉球海溝が前進させられるために引張り応力場に置かれているのは,台湾衝突によるフィリピン海プレートの衝上断層繰り返しに起因しており,フィリピン海プレートの沈込と台湾における衝突が進行していることを示している.

3.渡島半島南東部の地震

2016年6月16日14時21分に渡島半島南東部内浦湾でM5.3pr11kmが起こり(2016年6月CMT),同日19時58分にM3.3p11km・6月21日0時1分にM4.2p10kmが起こった(2016年6月IS).この地震で注目されるのは,気象庁が観測を開始した1923年以降この震源域で地震が観測されていなかったことである(図189).

図189.渡島半島南東部の地震.  地殻内地震の初動発震機構解(精査済)の主応力方位図に本地震(20160616-21)を示した.本震源域は,2016年6月16日以前には,1923年の観測以来のみならず歴史記録においても地震空白域の中心であった.  灰色+印:活火山.地殻内地震は活火山を避けて分布しているが,本震源域は駒ヶ岳・横津岳・恵山の活火山が並んでいる.

図189.渡島半島南東部の地震.
 地殻内地震の初動発震機構解(精査済)の主応力方位図に本地震(20160616-21)を示した.本震源域は,2016年6月16日以前には,1923年の観測以来のみならず歴史記録においても地震空白域の中心であった.
灰色+印:活火山.地殻内地震は活火山を避けて分布しているが,本震源域は駒ヶ岳・横津岳・恵山の活火山が並んでいる.

震源域は渡島半島東部の活火山地域内に位置するため地殻内地震は起こらないと考えられてきた.北海道では知床半島や日高山地そして胆振支庁では活火山を避けて地殻内地震が起っていない.東北地方でも下北半島で起こっていない.
日本海溝外の太平洋プレートで2016年5月2日M4.7to43kmに続き6月10日M5.1To46kmと6月30日M5.2npo43kmが起こっていることは太平洋スラブの力学状態の変化を示唆している(2016年5月・6月東日本月別).

4.2016年7月の月刊地震予報

2016年6月の熊本地域の初動発震機構解の速報は10個,精査済は4個でCMT解は1個であり,4月の186個・17個と10個そして5月の33個・8個と0個から減少し終息に向かっている.
フィリピン海プレートの沈込が進行していることを示す琉球海溝域の海溝外地震が起こり,地震断層面積のプレート運動面積に対する比が今年に入って1.092まで増大したが,2010年からでは0.170と歪が殆ど解放されていな状態が続いている.西南日本から琉球域の巨大地震への警戒が必要である.
渡島半島南東部の震源域は,1923年の観測開始以来のみならず歴史記録においても地震空白域の中心にあった.本震源域は千島弧と東北日本弧の接合部の活火山域にある.東北日本弧と伊豆弧の接合部である関東地域の北西縁にも活火山が並び,地殻地震が起こっていないが,今回の地震によって直下型地震が襲うこともあることが示された.日光から浅間にかけての活火山域でも警戒が必要である.
このように全く地震記録の存在しない地域においてM5.4の地震が起こったことは,日本列島が太平洋スラブの下部マントルへの崩落(月刊地震予報68)など新たな地震活動期に入ったことを示唆しているかもしれない.

月刊地震予報80)琉球海溝域の大深度地震・千島海溝の地震・2016年6月の月刊地震予報

1.2016年5月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年5月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で27個0.278月分,千島海溝域で4個0.339月分,日本海溝域で5個0.125月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.084月分,南海・琉球海溝域で14個0.372月分であった(2016年5月日本全図月別).
2016年5月の最大地震は2016年5月31日石垣島沖のフィリッピン海プレート内M6.2tr230kmである.M6以上の地震は2016年5月31日千島海溝の太平洋プレートでM6.1P30kmが起こっている.

2.琉球海溝域の大深度地震

 2016年5月31日M6.2tr230kmが石垣島北西沖で起った.この地震のCMT深度は257kmで,2014年12月11日M6.1-t250km(CMT深度267km)の最深記録(速報63)に次ぐ琉球海溝域第2位の深度記録になる(図186).最深地震の発震機構が異なるのは海溝傾斜補正を海溝距離100km以上から150km以上に変更したためである(特報6).
 本地震は,琉球海溝からフィリピン海プレートがそのまま沈込む琉球弧と衝突による断層で重複する台湾の境界部で起こったもので,台湾の衝突過程と沖縄トラフ・別府-島原地溝帯の拡大過程と直結しており,これらの過程の活発化を示している.

図186.琉球海溝域第2位の深度を記録した2016年5月31日石垣島北西沖の地震M6.2tr230km. 琉球海溝域の1994年9月以降のCMT発震機構解.衝突境界の台湾に最も近い本震源域で2014年12月11日M6.1-t250kmが琉球海溝域最大深度を記録している.

図186.琉球海溝域第2位の深度を記録した2016年5月31日石垣島北西沖の地震M6.2tr230km.
琉球海溝域の1994年9月以降のCMT発震機構解.衝突境界の台湾に最も近い本震源域で2014年12月11日M6.1-t250kmが琉球海溝域最大深度を記録している.

3.千島海溝の地震

2016年5月31日19時03分に得撫島東方千島海溝の太平洋スラブ上面でM6.1P30kmが起こった.この地震の震源から100km範囲内の地震活動を検討した(図187).本検討範囲ではCMT震源解が2006年11月から報告されている.
千島海溝域最大の地震はカムチャツカ半島西方沖太平洋スラブ最深部で起こった2013年5月24日M8.3P609kmである.本検討範囲の最大地震は2007年1月13日M8.2Te30kmであり,千島海溝域全体では第2位の地震になる.本検討範囲最大の地震とそれに伴う引張過剰正断層型地震の後に,逆断層型地震が2009年1月から続いている.今回の地震もこの逆断層型後続地震であろう.

図187. 2016年5月31日千島海溝域のM6.1P30kmの震源域における地震活動.  2016年5月31日の震源から100kmの範囲の1994年9月以降のCMT発震機構解.この範囲は,気象庁の観測範囲の北東縁に位置するため,2006年11月からしかCMT発震機構解が報告されていない.本検討範囲では千島海溝沿いで最大の2007年1月13日M8.2T30kmが起こっている.正断層型のこの最大地震後,2009年1月から逆断層型地震が起こっている.本地震もこの逆断層型地震であろう.+印は,千島海溝全域の最大地震2013年5月24日M8.3P609km.

図187. 2016年5月31日千島海溝域のM6.1P30kmの震源域における地震活動.
 2016年5月31日の震源から100kmの範囲の1994年9月以降のCMT発震機構解.この範囲は,気象庁の観測範囲の北東縁に位置するため,2006年11月からしかCMT発震機構解が報告されていない.本検討範囲では千島海溝沿いで最大の2007年1月13日M8.2T30kmが起こっている.正断層型のこの最大地震後,2009年1月から逆断層型地震が起こっている.本地震もこの逆断層型地震であろう.+印は,千島海溝全域の最大地震2013年5月24日M8.3P609km.

4.2016年6月の月刊地震予報

図188.低調な琉球海溝・南海トラフ域の地震活動. 日本全域の2005年以降のCMT発震機構解の地震断層面積とプレート相対運動面積を比較するベニオフ図(上)と対数移動平均図(下).日本全域では,これまで蓄積してきたプレート運動の歪を地震として解放し,地震断層面積のプレート相対運動面積に対する比は2.87と大きい.しかし,琉球海溝・南海トラフ域(RykNnk:赤色塗)の比は0.35と歪を解放していないことから,巨大地震による解放が警戒される.

図188.低調な琉球海溝・南海トラフ域の地震活動.
日本全域の2005年以降のCMT発震機構解の地震断層面積とプレート相対運動面積を比較するベニオフ図(上)と対数移動平均図(下).日本全域では,これまで蓄積してきたプレート運動の歪を地震として解放し,地震断層面積のプレート相対運動面積に対する比は2.87と大きい.しかし,琉球海溝・南海トラフ域(RykNnk:赤色塗)の比は0.35と歪を解放していないことから,巨大地震による解放が警戒される.

2005年からの地震断層面積のプレート運動面積に対する比は,日本全域で2.847と約3倍になっている.これは東日本大震災M9.0の日本海溝域が12.667倍と大きいことが効いているが,千島海溝域も1.688,伊豆・Mariana海溝域も1.934と1.5倍以上であるのに対し,琉球海溝・南海トラフ域では0.347と約3分の1である.この事実は琉球海溝・南海トラフ域にプレート運動の歪が蓄積しており,巨大地震による解放が近付いていることを示している(図188).
石垣島北西沖の第2位深度記録地震,土佐湾の地震・丹沢の下に沈込む相模スラブ内地震(西日本IS月別),金華山沖地震(東日本IS月別)の活発化などは,日本列島に働く応力状態が変化していることを示しており,東南海地震・南海地震の再来が警戒される(速報79).
今後の発震機構解の変化を注意深く解析し,プレート運動の歪が何処に集中しているかを今後も解析していくつもりだが.いまだ特定に到っていないので,日本全域において厳重な警戒が必要である.