東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

速報25)2012年4月の地震予報

東日本巨大地震から1年が経過したが,この1年間は歴史的にも非常に地震の多い年となった.巨大地震前の16年半について気象庁から公表されているCMT震源数が1107個である.これに対し,巨大地震から2012年3月までのCMT震源数は補充報告を加えると1090個とほぼ同程度になっている.

過去16年半においても地震活動の盛衰が明らかであるが(速報21図38),2011年か
ら2012年にかけても地震活動の盛衰が見られる.2011年3月に419個の地震が起こった後
,その個数を減少させ,12月には30個と最低を記録した.12月の地震数だけでも1995年
の17個,1996年の31個,1997年の15個の年間地震数と同程度か上回っている.その後,
2012年1月から月間地震個数が増大し,新たな活動を開始している(表6).

表6-1:気象庁からCMT発震機構解として公表された年間震源個数

1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
震源個数 9 17 31 15 31 41 85 42 57
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
95 99 78 79 72 76 71 165 1033 120

表6-2:気象庁からCMT発震機構解として公表された2011〜2012年の月間震源個数

2011 2012
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
震源個数 15 30 419 147 96 63 65 58 40 37 33 30 33 37 48

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速報24)2012年2月の地震予報

Fig.48

図48. 1月28日,29日の丹沢山地の震源,およびフィリピン海プレートと北米プレート境界の地震活動(新妻,2008に基づく). 衝突前に丹沢北方にあった海洋底が籐の木-愛川断層に沿って関東山地の下に沈み込むslabとなって存在し,その下に神縄断層に沿って伊豆半島北方にあった海洋底がslabとなって沈み込んでいる.今回の地震は,現在のフィリピン海プレート境界に当たる伊豆slab上面で起こっている.

年末年始の伊豆小円区の鳥島周辺のSlab内地震(速報23:図46)に関連し,フィリピン海プレート運動の活発化を1月の地震予報(速報22)で述べたが,丹沢山地の下のフィリピン海プレートと北米プレートの境界の神縄断層付近で1月28日と1月29日に逆断層p型のM5.4とM4.7の地震が起こり(図48,図49),伊豆弧と本州弧の衝突が起こった.その翌日の1月30日に日向灘でM4.9の逆断層型地震が起こっている.また,1月30日に三河湾の下に沈み込む太平洋Slab内でも逆断層p型地震M4.5が起こっている(図44).今後とも西南日本の地震活動には警戒を要する.2月6日にはフィリピン海プレート運動の主体を握るフィリピンでM6.8の逆断層型地震が起こり,フィリピン海プレート本体の活動が活発化したので,琉球や台湾の地震活動にも警戒を要する.

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速報23)日本列島に沈み込むSlab内の地震

1.スラブSlab:海溝から沈み込む海洋プレート

海溝から沈み込んだ海洋プレートはSlab(スラブ)と呼ばれているので,本速報においても沈み込む海洋プレートをSlabと表現する.日本列島へ沈み込む太平洋プレートのSlabは,海溝から次第に深度を増し,深発地震が配列する深発地震面として捉えることができる.

本速報の震源分布断面図は,縦軸に深度をとり,それぞれの震央から海溝輪郭小円(速報18:表4)の中心緯度経度までの水平距離を横軸にとっている.この横軸は,海溝軸を基準(0km)としている.Slabの厚さと傾斜が一定であれば,震源分布断面図上の震源は,Slab傾斜に沿う線状に分布する.しかし,Slab傾斜は小円によって異なるので,小円区分毎に震源分布断面図を作成して比較する必要がある.また,同じ小円区分内においてもSlab傾斜が変化するので,震源は幅の広い帯状に分布する.

2.規格小円方位の導入

Fig.42

図42. 規格小円方位 青線:規格小円方位線,×:東日本巨大地震後のslab底地震.Mの色は発震機構(図43)に対応,緑円:海溝輪郭小円,赤線:小円中心を結ぶ小円区分境界線.正距円錐図法.

Slab傾斜の側方変化を知るために震源の位置を三次元的に識別可能にする必要がある.震源の小円区における位置を示すために規格小円方位を導入する.規格小円方位とは,小円中心から見た震源の方位が,小円区分範囲の何処に位置しているかを示す角度である(図42).小円中心と隣接する小円中心を結ぶ大円に挟まれる区間が小円区分範囲である(速報18:図28).

小円区分範囲は小円区分毎に異なっているので方位角をそのまま用いては相対位置を直感的に捉えることは難しい.そこで,震源の小円区分範囲における相対的方位を表すために導入したのが小円規格方位である.小円区分範囲の端から端までを180に規格化し,南端から北端に向かって増大するようにする.小円中心が海溝軸の東側に位置する場合には,海溝軸が島弧側に突入するために沈み込みSlabが過剰となること(速報13:図17a)に対応させて小円規格方位を正とし,南端の0から北端の180とする.小円中心が海溝軸の西側に位置する場合には,海溝軸が島弧側から突出するため沈み込みSlabは不足すること(図17b)に対応させて小円規格方位を負とし,南端の-180から北端の0とする.小円規格方位が±90の場合には,小円区分範囲の中央に位置することを示す.正負交互に繰り返す小円区分の接続部は0と±180になる.

3.Slab内地震の発震機構

Fig.43

図43. 傾斜したslab面に対する主応力軸(圧縮P軸:赤色矢印,引張T軸:黒色矢印,中間N軸:緑色線)と応力場に対応して形成される共役断層と発震機構型.地震とは地下の応力場において形成される断層運動に伴う振動である.複数の地震計で捉えられた振動波形から,断層形成時の主応力軸方向を知ることができる.

気象庁から発表される発震機構は,北を基準に水平面に対する主応力軸方位と傾斜であるが,本解析では,Slab面に対する傾斜補正によって小円方位を基準にSlab面に対する主応力軸方向を算出した.Slab面の傾斜方向は海溝軸方向に直交し,小円中心と震源を結ぶ方位とし,傾斜角は初動震源深度と海溝からの距離の正接tanを用いて算出した.ただし,海溝からの距離が100km以内の場合には傾斜補正を行わなかった.Slab面に対する主応力軸方向から発震機構を判定した(図43).圧縮P軸(赤矢印)と中間N軸(緑線)がSlab面上にあり,引張T軸(黒矢印)がSlab面に直交している場合を逆断層型とする.引張T軸と中間N軸がSlab面上にあり,圧縮P軸がSlab面に直交している場合を正断層型とする.中間N軸がSlab面に直交し,圧縮P軸と引張T軸がSlab面上にある場合を横ずれ型とする.

逆断層型で圧縮P軸方位がSlab傾斜方向の場合をp型とし,傾斜方向に直交する場合はpr型とする.正断層型で引張T軸方位がSlab傾斜方向の場合をt型とし,傾斜方向に直交する場合はtr型とする.横ずれ断層型で圧縮P軸がSlab傾斜方向の場合をnp型とし,引張T軸がSlab傾斜方向の場合をnt型とする.

発震機構型とSlab破断運動との関係は,p型が圧縮,t型が引張,pr型が襞押,tr型が裂開,np型が圧縮移動,nt型が調整移動に対応する.発震機構型は震源記号の色で区別し,p型を赤,tを黒,pr型を紫,tr型を青,np型を黄緑,nt型を緑で示す(図43).

実際の主応力軸方向は,完全に直交または平行していないので,45°を境界としていずれに属するかを判定した.
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