東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

月刊地震予報89)福島沖の地震の応力場極性と東日本大震災・2017年3月の月刊地震予報

1.2017年2月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2017年2月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で18個0.075月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で14個0.427月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.063月分,南海・琉球海溝域で2個0.004月分であった(2017年2月日本全図月別).
2017年2月の最大地震は2月28日福島県沖M5.7p52kmで,M6以上の地震はなかった.

2.福島沖の地震の応力場極性と東日本大震災

東日本太平洋岸南部の最上小円区南部から鹿島小円北区中央までの福島沖は,太平洋スラブ上面と東日本弧マントルの接触により,2016年11月に最大地震を含むM4.5-7.4の6個,2016年12月にM4.5-5.5の4個,2017年1月にM5.6の1個,2月にM4.5-5.4の3個のCMT解が報告され,活動の活発化が注目される(月刊地震予報86).この地震活動は,太平洋スラブ内で逆断層型地震(図210の橙色+p・赤色#p),東日本弧地殻・マントル内で正断層型地震(図210の青色T・紫色+t・黒色#t)と発震機構型が異なっている.

図210. 福島沖CMT解の発震機構型区分図.
 震央地図(左)・海溝距離断面図(中)・縦断面図(右上)・時系列図(右中)・主応力軸方位図(右下:逆断層型ではP軸[丸印],正断層型ではT軸[三角印]).左図下:発震機構型彩色・発震機構型個数分布.中図下:収録CMT解の発生日時範囲,右中図左端:地震断層面積の対数移動平均(平均期間164.3日)・彩色は発震機構型比比率(赤:逆断層型、青:横擦断層型、黒:正断層型).

全CMT解246個の発震機構型個数は(図210),スラブ内の逆断層型では引張過剰+p(橙色)優勢である.逆断層型の圧縮P主応力軸方位(丸印)は主応力軸方位図(図210の右下図:橙色・赤色)の中央付近のW方位線下のプレート相対運動方向(紫色:Sub)とその逆方向の上下端に分布している.逆断層型発震機構の圧縮P主応力軸(丸印)が下縁に多数であることは,海溝側への傾斜が優勢であり,スラブ上面の摩擦抵抗による剪断応力が働いていることを示している.
島弧地殻・マントルの正断層型発震機構の引張T主応力軸(三角印)は:青色・紫色・黒色)の中央付近のスラブ傾斜(TrDip)域に多数分布し,スラブ上面傾斜側への傾斜優勢であることを示している.
太平洋スラブが東北日本弧地殻によって沈込を停止していると,深発地震面の引張応力によって平面化位置が海溝側に次第に前進する.東日本大震災によって沈込が再開すると平面化位置が後退する.平面化位置の急激な後退によって太平洋スラブの上にある東北日本弧マントルは過剰となり,東北日本弧地殻と太平洋スラブ上面との間の楔となり,上下に引裂く引張力が働くとともに.急激に沈込むスラブ上面とマントル間に沈込相対運動と摩擦力による剪断応力が働く.震災前は逆断層型の引張過剰+p(橙色)が25%に過ぎなかったが,震災後は75%を占めるに到っており,大震災後にスラブ上層の垂直方向の引張応力が急増している.
島弧地殻の正断層型地震が震災後開始されたことは,島弧地殻と太平洋スラブの固着が大震災で外れ,島弧地殻の応力場が逆転して引張応力場になったことと対応している.
 福島沖の最大地震は2016年11月22日5時59分M7.4-t25(-13)kmで,仙台湾に1m以上の津波をもたらした.このCMT解主応力軸方位[P27+71T141+8N233+17]を基準にCMT解の応力場極性を判別すると(特報4月刊地震予報85),正極性111個,逆極性135個ある(図211).

図211. 福島沖CMT解の応力場極性区分図.
 震央地図(左)・海溝距離断面図(中)・縦断面図(右上)・時系列図(右下).中図下:収録CMT解の発生日時範囲・基準地震・基準地震の主応力軸方位・応力場極性区分彩色・応力場極性区分個数分布.右図左端:応力場極性角(90以下が正極性,90以上が逆極性).

 基準の最大地震の震源は太平洋スラブ上面より13km上に位置するが,正極性の震源は太平洋スラブ上面より上8km以浅にほぼ収まり,逆極性の震源は太平洋スラブ上面より上8km以深に殆どが収まる.正極性地震は,東日本大震災以後の2011年3月16日M5.6-nt25(-25)km以後スラブ上面より上8km以浅で33個起こっているが,それに先立ちスラブ上面より8km上以深でも;
2010年9月1日M4.2T45(+6)km
2010年11月5日M4.9-t48(+9)km
2011年3月14日M4.5-nt40(+1)km
の3個の地震がスラブ内(括弧内は,スラブ上面からの深度)で起こっている.
 逆極性の地震は,東日本大震災以前からスラブ上面より8km上以深で29個起こっている.スラブ上面より8km上以浅の地震も9個あるが東日本大震災以後の2011年3月16日から6月9日に限られている.
 福島沖の地震活動は,東日本大震災前には太平洋スラブで比較静穏な逆極性の活動であったが,大震災前年の2010年9月1日からスラブ内で正極性地震が起こり,東日本大震災に誘発されて2011年3月14日から活発な正極性の活動がスラブ上面を越え,東北日本弧マントルそして地殻下部に到る大規模な活動に到っている.大震災以後の2013年・2015年・2016-2017年と3回の活発期には,発震機構が基準の最大地震と25°以内で一致する地震が起こっている.
福島沖の地震活動は,東日本大震災と密接な関係を有しており,太平洋スラブ沈込と東日本弧マントル・地殻との相互作用を解明するための窓として重要である.今後の活動に注目し更に解析を進めていきたいが,これまでの検討で応力場極性が相互作用の力学的解析に有効であることが示された.

2.2017年3月の月刊地震予報

2017年2月の日本全域CMT個数は18個と先月2017年1月の10個から増加したが,地震断層面積のプレート運動面積に対する比は0.075と先月の0.054と,一割以下が2か月続いている.2か月連続で1割以下を記録したのは,東日本大震災以後は2014年1・2月(速報52)のみである.嵐の前の静けさがどれだけ続くか警戒が必要である.
南海トラフ・琉球海溝・台湾域の地震断層面積比は2017年2月が0.004と2016年12月の0.002から3か月連続して0.01以下を記録している.東日本大震災以後,0.01が2カ月以上続いたのは2012年11月・12月以来の最低記録である(速報36).フィリッピン海プレート沈込域である関東・西南日本・琉球・台湾の地震活動に継続して警戒が必要である.
房総三重会合点の2016年9月23日M6.7pe32kmに関連し,関東域のM6以上の地震に警戒を呼掛けているが(月刊地震予報88),引き続き警戒が必要である.

月刊地震予報88)2017年2月の月刊地震予報

1.2017年1月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2017年1月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.054月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で9個0.337月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.026月分,南海・琉球海溝域で0個であった(2017年1月日本全図月別).
2017年1月の最大地震は1月5日福島県沖M5.6T26kmで,M6以上の地震はなかった.

2.2017年2月の月刊地震予報

2016年12月28日に茨城県側の浜通で起こったM6.3tr11km(月刊地震予報87)の後,M3.2~3.9の初動発震機構解7個が,2016年12月29~31日・2017年1月1日・5日・29日・31日に報告されている.2016年12月28日M6.3を基準にしたこれらの主応力軸オイラー回転角は8.3~61.4°である.53°以上の地震についてはT・N主応力軸入替で35~41°になり,応力場の逆転に到っていない.しかし,年が明けて地震間隔が拡大したことから一連の地震活動は終息に向かったと考えられる.
2010年6月以前の日本全域CMT個数は,10個以下が普通であったが以後増大して東日本大震災に到り,再び10個以下が記録されたのは2015年12月の5個であった.2017年1月の10個は,それ以後の最低記録である.2017年1月の最低個数の中でも,南海トラフ・琉球海溝・台湾域の 0個は,2012年11月以来の最低記録である.2012年11月の0個記録の後に,2013年3月に台湾・4月に台湾・淡路(速報41)・6月に台湾(速報43,)が起こっていることから,フィリッピン海プレート沈込域である関東・西南日本・琉球・台湾の地震活動に警戒が必要である.
房総三重会合点で2016年9月23日にM6.7pe32kmが起こったが,その規模は,関東地方の飯岡2005年4月11日M6.1P52km・千葉2005年7月23日M6.0P75kmの前に起こった三重会合点域最大の2005年1月19日M6.8po31kmに次いでおり(月刊地震予報84,),厳重な警戒が必要である.

月刊地震予報87)マリアナの地震,浜通地震と主応力軸入替比較による応力場逆転判定,2017年1月の月刊地震予報

1.2016年12月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年12月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で13個0.270月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で9個1.020月分,伊豆・小笠原海溝域で3個0.730月分,南海・琉球海溝域で1個0.002月分であった(2016年12月日本全図月別).
2016年12月のM6以上の地震は,マリアナの2016年12月14日M6.3+nt8kmと浜通の2016年12月28日M6.3-tr11kmの2個である.

2.マリアナの地震

マリアナで2016年12月14日11時01分M6.3+nt8kmが起こった.震源は,マリアナ小円区北端の小笠原海台小円区との境界に近いマリアナ諸島北端ウラカス島Farallon de Pajaros北方で,海溝距離85kmのマリアナ海溝から沈込むスラブ上面より上の島弧外縁地殻内である(図202)

図202.2016年12月14日マリアナの地震M6.3の主応力軸方位.
左:海溝距離-深度断面図,震央地図(左下),右:縦断面図(上),時系列図(中)地震断層面積ベニオフ図(左端),主応力軸方位図(下),TrDip:海溝傾斜方位,Sub:プレート運動方位.


マリアナ・小笠原海台小円区のCMT解は1996年7月7日以降53個あるが,今回のCMT解と2005年12月26日の西の島付近M5.6t0kmの2個を除き全て下部マントル上面まで同心円状屈曲したまま沈込むスラブ内地震である.
今回のマリアナ島弧外縁地殻内地震の発震機構は引張過剰引張横擦断層+nt型(空色)であり,背弧側でマリアナ海盆が拡大していることと調和的である.この発震機構nt型のCMT解はマリアナ・小笠原海台小円境界に沿う小笠原海台小円区南東縁で多数分布する.この小円区境界は,小笠原・マリアナ海溝軸が小笠原海台の衝突によって最も屈曲する部位に当たり,スラブ傾斜方位とプレート運動方位の差が大きい.従って,スラブ傾斜とプレート運動とのいずれがスラブ内応力を支配しているかを検討するのに適している.引張主応力T軸方位(△)は,海溝傾斜方位(TrDip直線)とプレート運動方位(紫折線)の間に分布するが,前弧側の200km以浅の地震では海溝傾斜方位(TrDip直線)に集中し,背弧側の200km以深の地震ではプレート運動方位(紫折線)に近付き,震源深度によって異なっている.今回の地震のT軸方位は海溝傾斜方位であり,スラブ傾斜が支配する200km以浅と同じ応力場で起こったことを示している.

3.浜通の2016年12月28日M6.3-tr11km地震と主応力軸入替比較による応力場逆転判定

今回2016年12月28日M6.3-tr11kmの起こった浜通では,2011年3月11日東日本大震災本震M9.0の1か月後の2011年4月11日17時16分,M7.0-tr6kmが起こり,地表に活断層が現れた.この地震が浜通で最大であるので,この地震の主応力方位を基準として以後の解析に使用する.
基準地震の発震機構型は「-tr」で,正断層型であるが,引張T軸が小円方位と異なる側方正断層tr型である,非双偶力成分比が-5%より小さい場合負とするが,基準地震の場合には限界値に近い-39%であり,圧縮P主応力が卓越し,引張T主応力と中間N主応力がほぼ等しい引張応力である.
発震機構は互いに直交する3つの主応力の軸方位と強度値で表される.3つの主応力は圧縮P主応力・引張T主応力・中間N主応力からなるが,地下の岩体に働くのは圧縮P応力と引張T応力のみで,中間N主応力はP軸とT軸の載る平面に直交する軸と定義される.主応力値は引張を正,圧縮を負とし,NはPとTの中間の値を持つ.PとNの差とTとNの差が等しい場合,発震機構は双偶力であり,0でない場合は非双偶力が加わったとみなし,CMT解ではその差を非双偶力nonDC成分比として表される(震源震央分布図の解説).
非双偶力成分比が正の場合は,TとNの差がPとNの差より大きく,Tの引張力が優勢でP・Nともに圧縮力であるが,Pの圧縮力が減少してNの圧縮力より小さくなると,圧縮力の大きいN軸がP軸に入替る.負の非双偶力成分比の場合は,Pの圧縮力が優勢でN・Tとも引張力になり,Tの引張力が減少しNの引張力より小さくなるとN軸とT軸が入替る(図203).このように圧縮応力や引張応力の方位が変わらなくとも,その強度の変化に伴い主応力軸が入替るので,応力場の比較には主応力軸の入替も考慮する必要がある.

図203.非双偶力nonDC成分比と主応力値の関係・主応力値変化による主応力軸入替.

応力場の比較は,基準とする主応力軸方位を回転し,比較する主応力方位に一致させるオイラー極と回転角を算出する方法が用いられる(特報4).主応力軸を入替た基準主応力方位を比較主応力方位に一致させるオイラー回転も算出比較すれば,主応力軸入替について検討できる.
主応力軸入替は6通りできる.その2つは,変化するP・T強度とN強度との相対関係による入替で,N軸がP軸あるいはT軸と直接入替るPN・TNである.
もう一つの直接入替はP軸とT軸の入替PTである.この入替は,岩体に作用する圧縮P応力と引張T応力という逆作用への応力入替なので,応力場の逆転を意味する.このような入替は岩体の破壊・歪の解放・地震断層面の摩擦抵抗の喪失など大地震の際に起こる.
残る2つの入替は,PT逆転応力場において変化するP軸強度・T軸強度とN軸強度との相対関係に対応する2段階入替PTN・TPNである.
水平なP軸とN軸および垂直なT軸の逆断層p型の主応力軸方位を基準orgとすると,PN入替で発震機構型は側方逆断層pr型・TN入替で圧縮横擦断層np型になる.逆極性へのPT入替で正断層t型になり,PTN入替で引張横擦断層nt型・TPN入替で側方正断層tr型になる(特報6,図204).

図204. 6つの主応力軸入替と発震機構型
P:圧縮主応力軸,T:引張主応力軸,N:中間主応力軸,イタリック:発震機構型,org~TPN:主応力軸入替.

これらの主応力軸入替した基準主応力方位を比較主応力方位に一致させるオイラー回転角を6通り算出する.その中で最小のオイラー回転角を与える主応力軸入替を用いて応力場極性を定義する.主応力軸入替が,基準org(黒・紫)・TN(緑)・PN(青)の場合に「正応力場」,PTN(空)・TPN(橙)・PT(赤ピンク)の場合に「逆応力場」と定義する.正極性の場合はオイラー回転角を応力極性回転角とし,逆極性の場合は180から算出オイラー回転角を減じて応力極性回転角とする.90度以下は正極性で,90度以上が逆極性と容易に判別できる.
基準とした2011年4月11日17時16分M7.0-tr6kmの翌日の2011年4月12日6時18分M6.4-np15kmの震央は方位348°北北西方12kmに位置する.この震央位置関係を今後「km12(348)」と震源深度のkmの次に記す.このCMT解の主応力軸方位のオイラー回転角は,無入替orgで88.3°になるが,TN入替で61.0°・PN入替で69.7°・PT入替で92.1°・TPN入替で71.3°,そしてPTN入替で最小の45.0°になる.最小のPTNは逆極性であるので,応力極性回転角は135.0°になる(図205).この逆極性は,基準地震M7.0後この地震M6.4までに応力場逆転を含む本破壊が終了していたことを示している.この二つの地震の間には,M4.5~5.9のCMT解4個あり,先の2つはTN入替で25.2・23.6°であるが,後の2つは入替なしで回転角が37.4・25.7°と基準地震M7.0と同じ応力場極性を保持したままのM4.5~5.9の小規模な破壊の末に応力場逆転によるM6.4が起こったのであろう.これらの浜通地震は深度0~15kmの上部地殻で起こっている.

図205.浜通震源域上部地殻の浜通地震のCMT解の応力極性回転図.
左:震央地図,右:海溝距離-深度断面図(上),縦断面図(中),応力極性回転角(下),+:基準主応力方位地震(2011年4月11日M7.0).

浜通地震の最初のCMT解は,東日本大震災本震後の2011年3月15日16時03分M4.9-t0km26(212)org32.4-14%である.
初動発震機構解では最初に2003年2月20日3時25分M3.5tr11km15(290)TN41.3があり,次に東日本大震災本震後の2011年3月12日10時12分M4.8t11km10(37)TN50.0である(図206).

図206.浜通震源域上部地殻の浜通地震の初動発震機構解の応力極性回転図.
左:震央地図,右:海溝距離-深度断面図(上),縦断面図(中),応力極性回転角(下),+:基準主応力方位地震(2011年4月11日M7.0).

基準地震M7.0から震央距離50km以内を「浜通震源域」と呼び検討すると,上部地殻内(UC)の浜通地震の下には下部地殻から上部マントルの島弧モホ(LC)・太平洋スラブ上面からスラブ深度20kmまでのスラブ上面(TS)・スラブ深度20~40kmのスラブ中部(MS)・スラブ深度40~60kmのスラブ下部(LS)にCMT解38個・初動発震機構解222個がある(図207).

図207.浜通震源域の初動発震機構解の応力極性回転図.
左:震央地図,右:海溝距離-深度断面図(上),縦断面図(中),応力極性回転角(下),+:基準主応力方位地震(2011年4月11日M7.0).

浜通震源域のスラブ上面深度別応力場極性算出入替軸個数・発震機構型個数は

期間 応力場極性算出入替軸個数 発震機構型個数
      上部地殻(UC)
CMT 2011/3/15~2016/12/28 org18/19tn16pn1|ptn1tpn0pt0/0 -t9/13#t14/5T11/3
IS     2003/2/20~2016/12/31 org144/314tn280pn30|ptn28tpn7pt0/0 np30p15/2t432/316nt9
      島弧モホ(LC) -40~0km
CMT 2011/3/16~2016/9/7 org0/1tn4pn1|ptn0tpn0pt0/0 #t1/0T4/0
IS     2011/3/20~2013/8/12 org0/5tn7pn1|ptn1tpn0pt0/0 np1p1/1t9/2
      スラブ上面(TS) 0~20km
CMT 2005/10/22~2015/5/15 org0/3tn2pn0|ptn185pn0pt0/1 P1/0#p3/2+p9-t2/0#t2/0T4/0
IS     1998/1/22~2016/7/19 org0/4tn9pn2|ptn55tpn4pt44/2 np5p65/5t37/2nt6
      スラブ中部(MS) 20~40km
CMT 2010/8/3~2013/3/21 org0/1tn0pn0|ptn1tpn0pt3/0 P1/0#p0/0+p3/0
IS     1998/6/8~2016/9/15 org0/3tn7pn0|ptn5tpn9pt19/2 np6p27/6t1/3nt1
      スラブ下部(LS) 40~60km
CMT 1998/4/9~2012/8/26 org0/1tn2pn0|ptn0tpn0pt0/0 #t1/0T2/0
IS     1998/4/9~2016/12/31 org1/16tn22pn0|ptn1tpn2pt1/0 np1p1/0t30/6nt5

ここで、CMT:CMT解,IS:初動解.orgの「/」の左側が回転角25°以下,ptの「/」の右側が回転角155°以上.発震機構型のTと+pは非双偶力成分比+5%以上の正断層型と逆断層型,-tとPは非双偶力成分比-5%以下の正断層型と逆断層型,#tと#pは±5%以下の正断層型と逆断層型.tとpの「/」の左側が海溝傾斜方位の直方の個数,右側が側方の個数である.
応力場は,スラブ上面深度によって極性を変え,
      上部地殻(UC)無入替(org)優勢,
      島弧モホ(LC)がTN入替優勢の正極性,
      スラブ上面(TS)がPTN入替優勢の逆極性,
      スラブ中部(MS)がPT入替優勢の逆極性,
      スラブ下部(LS)がTN入替優勢の正極性(図207)と異なっている.
発震機構型も異なり,
      上部地殻(UC)で圧縮過剰正断層-t型,
      島弧モホ(LC)で引張過剰正断層T型,
      スラブ上面(TS)で引張過剰逆断層+p型,
      スラブ中部(MS)で引張過剰逆断層+p型,
      スラブ下部(LS)で引張過剰正断層T型が優勢である(図208).
スラブでは非双偶力成分が正の引張過剰であり,スラブが引張られていることを反映し,スラブ上面に接している島弧モホもスラブに引き摺られ引張過剰になっている.スラブ上面の引張過剰逆断層+p型の地震は,スラブ表面が海溝に沿って同心円状屈曲して伸長し,スラブが深発地震面に平面化する際に短縮されて起こる(特報1).
島弧地殻上部では圧縮過剰になっており,その過剰な圧縮は垂直方向に働き,島弧地殻を突き上げ,正断層型優勢になっている.突き上げによる正断層型のため,CMT解で側方正断層-tr型が13,直方正断層-t型が9「-t9/13」とT軸方位に変化が大きい.この下からの突き上げは,直下の島弧モホのスラブ上面に沿う引張優勢と異なり,その間に力学的断絶が存在する.島弧モホの震源は浜通震源域東縁に分布し,浜通地震の上部地殻の下にはスラブの上の楔型マントルがある.東日本大震災本震によるスラブの50m沈込(速報28)が楔型マントル突き上げをもたらしたのであろう.
最初の上部地殻の浜通地震2003年2月20日3時25分M3.5tr11kmは,気仙沼のスラブ平面化地震(特報1)2003年5月26日18時24分M7.1P72kmの3か月前であり,4か月後には十勝沖で2003年9月26日4時50分M8.0p45kmが起こっている(図208).

図208.M7以上の日本海溝域CMT解と浜通震源域CMT解の主応力方位図.
左:震央地図,数字はM7以上のCMT解の年月日,円の範囲が浜通震源域,中:海溝距離-深度断面図,右:縦断面(上),時系列図,左端は浜通震源域の地震断層面積ベニオフ図.

そしてスラブ下部で2005年1月1日5時13分M5.0T89km起きた後,
東日本大震災未遂に当たる一連の地震が,
      本震域の金華山はるか沖で2005年8月16日11時46分M7.2p42km,
      海溝外の東誘発地震域で2005年11月15日6時38分M7.2to45km,
      南誘発地震域の茨城県沖で2008年5月8日1時45分M7.0p51km,
      宮城岩手県境で2008年6月14日8時43分M7.2p8km,
      北誘発地震域北東の十勝沖で2008年9月11日9時20分M7.1p31kmが起こったが,
その間,浜通震源域のスラブ上部で2005年10月22日22時12分M5.6+p52kmが起こっている.
浜通震源域のスラブ中部2010年 8月3日7時30分M4.6+p82km・スラブ上部2010年9月30日21時47分M4.8p51km・2011年 1月1日8時01分M4.7P49kmの後,
      東日本大震災前震2011年3月9日11時45分M7.3p8km・
      東日本大震災本震2011年3月11日14時46分M9.0p24km・
      北誘発地震2011年3月11日15時08分M7.4P32km・
      南誘発地震2011年3月11日15時15分M7.6p43km・
      東誘発地震2011年3月11日15時25分M7.5-to34km(特報1,特報4,2929速報42)に続き,
浜通地震の最初の初動発震機構解2011年3月12日10時12分M4.8t11kmの後,
      スラブ上部で2011年3月14日8時41分M4.6t49km・
      2011年3月14日15時52分M5.2pr52kmが起こり,
      最初のCMT解2011年3月15日16時03分M4.9-t0kmが起こった.
11個の上部地殻CMT解およびスラブ下部と上部のCMT解2個の後,
      スラブ上部2011年4月7日11時40分M4.9T51kmの半日後,
      平面化地震である一つ目の宮城県沖地震4月7日23時32分M7.2+p66kmが起こり,
スラブ上部・中部の地震を挟み4日後に,
      基準地震2011年4月11日17時16分M7.0-tr6km に到り,
      応力場逆転地震2011年4月12日14時07分M6.4-np15kmが起こる.
そして,17個の上部地殻CMT解の後,
      島弧モホ2011年6月4日1時00分M5.5T30kmと2個の上部地殻CMT解,
そしてスラブ上部2011年7月8日3時35分M5.6+p55kmの2日半後に
      日本海溝付近の二つ目の宮城県沖地震2011年7月10日9時57分M7.3+nt34kmが起こり,
      2個の上部地殻地震が続き,4個のスラブ地震と9個の上部地殻地震があった.
2012年には2個の上部地殻地震と5個のスラブ地震の後,
      上部地殻2012年10月17日9時43分M4.5-tr7kmと
      スラブ上部2012年10月24日16時05分M4.5-t51kmに続き,
      海溝域で2012年12月7日17時18分M7.3Te49kmが起こり(速報35速報38),
      2個のスラブ地震が続いた.
2013年には4個の上部地殻地震と4個のスラブ地震の後,
      上部地殻2013年9月9日9時04分M4.4T10km,
      スラブ上部2013年9月30日22時37分M4.4t49km・
      2013年10月11日17時22分M4.3T52kmに続き,
      海溝外で2013年10月26日2時10分M7.1-to56kmが起こり(速報47),
      スラブ上部2013年12月25日7時41分M4.2+p49km,
      上部地殻2013年12月31日10時03分M5.4Tr7kmが続いた.
2014年には上部地殻地震1個とスラブ地震1個の後,
      スラブ上部2014年6月16日5時14分M5.8+p52km・
      上部地殻2014年7月10日17時58分M4.8t5kmの1日半後,
      福島はるか沖2014年7月12日4時22分M7.0T33kmが起こり(速報58),
      上部地殻2014年7月16日17時24分M4.6Tr13kmが続いた.
2015年にはスラブ上部2015年5月15日12時30分M5.0+p51kmと上部地殻2015年 11月20日8時15分M4.3t10kmに留まった.
これらの経過は,浜通震源域の上部地殻の地震とスラブの地震が密接に関係していることと,スラブの地震が日本海溝域のM7以上の大地震と密接な関係にあることを示している(図208).
今回の浜通地震2016年 12月28日21時38分M6.3-tr11kmも非双偶力成分が-24%と楔型マントルからの突き上げによって起こっており,主応力軸回転はorg29.9°と基準地震2011年4月11日17時16分M7.0-tr6km と同一応力場で起こっている.今回の規模M6.3は基準地震の1日後の2011年4月12日14時07分M6.4-np15kmに次ぐ.2つ目のM6以上の浜通地震である.応力場逆転を伴う本破壊を起こした基準地震M7.0で歪が解放されたとすると,5年間でM6.3の歪が蓄積したことになる.同心円状屈曲スラブの平面化が楔型マントルを通して島弧地殻に歪を蓄積していれば,平面化地震活動の活発化が今回の浜通地震に結び付く.2016年の浜通震源域スラブのCMT解は7月27日の1個のみであるが,東北東に隣接する福島県沖震源域では2016年11月22日5時59分M7.4-t25km(月刊地震予報86)を含む19個のCMT解が公表されている.この活発なスラブ地震活動が今回の浜通地震を起こしたと考えられる(図209).

図209.浜通震源域と福島県沖震源域のCMT解についての応力極性回転図.
左:震央地図.中:海溝距離-深度断面図,上2つが福島県沖震源域,下が浜通震源域,右:縦断面図(上)と時系列図・応力極性回転角.+:基準主応力方位地震(2011年4月11日M7.0).

今回の地震後,初動発震機構解6個・速報解9個公表されているが,応力場極性は逆転していないことから,前震とも考えられるので更に大きな地震に警戒が必要である.ただし,浜通震源域では基準地震M7.0で応力場逆転を含む本破壊を起こしていることから,M7.0の歪は蓄積できず,大きくともM6.5程度と予想される.

4.2017年1月の月刊地震予報

熊本地域の地震は,2016年11月に速報解が1個・初動解が3個と鎮静化している.2016年10月21日鳥取県中部M6.6震源域の地震も,2016年12月に初動解が2個と鎮静化している.
フィリピン海プレートの沈込域のCMT解は1個・0.002月分と2012年11月の0個以来の最低を記録した.2012年11月の4カ月後の2013年3月から6月には台湾を始め西南日本の地震が続いたことから嵐の前の静けさと考え,警戒が必要である.
大正関東地震M8.2や東南海地震M8.2と関連する福島県沖地震域の南西に接する浜通地震域でもM6.3の地震が起ったが,本震に到ったどうか分らないので警戒が必要である.2016年12月にM6以上の地震のあった浜通とマリアナに挟まれている関東地方の地震に厳重な警戒が必要である.