東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

月刊地震予報104)厳重警戒を要する2018年4月9日島根県西部の地震M6.1・2018年5月の月刊地震予報

1.2018年4月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2018年4月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で18個0.116月分,千島海溝域で4個0.071,日本海溝域で7個0.109月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.007月分,南海・琉球海溝域で6個0.209月分であった(2018年4月日本全図月別).
2018年4月のM6.0以上の地震は,島根県西部の2018年4月9日M6.1であった.

2.2018年4月9日島根県西部の地震M6.1

 2018年4月9日1時32分に島根県西部でM6.1+np深度12kmが起こった(図272).CMT解は4月9日1時32分から5時5分にM4.6-6.1の4個あり,初動解は2018年4月9日1時32分から4月28日3時42分にM3.5-6.1の8個あった.速報解は2018年4月9日1時32分から4月28日3時42分にM3.5-6.1の13個公開されている.

図272.2018年4月の島根県西部の地震の初動解応力場極性偏角Π.
 左:震央地図,右上:海溝距離断面図,右中:縦断面図,右下:応力場極性偏角Πの時系列図.右端の数字は2018年4月の日数.

 2018年4月9日1時32分の最初の地震が最大のM6.1であり,このCMT解を基準とすると,全ての解の震央距離は2km以内に収まる.深度差も2km以内であり,同一震源の活動と言える.
基準発震機構解[P283+4T14+5N157+84]は中間主応力N軸傾斜が垂直に近い84°で圧縮主応力P軸傾斜が4°・引張主応力T軸傾斜が5°と水平に近いので,横擦断層型である.しかし,東西方向のP軸方位と南北方向のT軸方位が北西-南東方向の小円方位の中間なので圧縮横擦断層型npであったり引張横擦断層型ntであったりする.CMT解の非双偶力成分比は基準地震が+5%で他は+1%でやや引張応力過剰である.
応力場極性区分は全て基準地震と同じ基準区分orgに属し,偏角25°以内がCMT解4個中2個,初動解8個中7個,速報解13個中4個と変わりなく,1か月に及ぶ同一震源における地震活動であるが,応力場偏角に変化が認められない.
 震源域内で最も破壊強度の小さいところから破壊が起こり,地震活動が開始される.破壊による歪解消が周囲に及び,破壊強度の大きな箇所に歪が集中して次の破壊を起こす.最大破壊強度の箇所は,周囲の弱破壊強度域の歪が集中することによって破壊するので最大地震が起こる.歪集中に要する時間は破壊強度差が大きいほど長くなることから,最大前震の後の長い地震休止期に地震活動が終了したと誤解し,避難所からの帰宅によって熊本地震(速報79)では被害を大きくした.本震では震源域が破壊して歪が解消されるので,応力場極性が逆転し,次に起こる地震の応力場極性で判定できる.
 今回の地震では1か月たっても応力場極性偏角に変化が認めらないことから,前震が継続中で1か月以内にM7以上の本震が起こる可能性が大きいので,厳重な警戒が必要である.
 

3.2018年5月の月刊地震予報

2018年4月9日に島根県西部M6.1が起こったが,同一震源で4月28日にもM3.6が起こっている.この間に起こった8個の初動発震機構解の応力場に変化が認められないことから,M6.1を起こした歪による応力場は変化しておらず前震の段階に留まっていると考えられる.1か月以内にM7級の本震が起こる可能性が大きいので厳重な警戒が必要である.
同様に応力場極性逆転が認められなかった2018年3月の台湾花蓮の地震(月刊地震予報102)も前震段階に留まっている可能性があるので警戒が必要である.

月刊地震予報103)2018年3月7日得撫島沖の地震M5.9・台湾周辺の地震・2018年4月の月刊地震予報

1.2018年3月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2018年3月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で20個0.139月分,千島海溝域で3個0.157,日本海溝域で7個0.112月分,伊豆・小笠原海溝域で3個0.265月分,南海・琉球海溝域で7個0.077月分であった(2018年3月日本全図月別).
2018年3月にはM6.0以上の地震がなく,最大地震は千島海溝域の得撫(うるっぷ)島沖3月7日M5.9pであった.

2.2018年3月7日得撫島沖の地震M5.9

 2018年3月7日13時40分に月間最大地震として得撫(うるっぷ)島沖M5.9p深度30(+6)kmが起こった(図268).スラブ上面からの震源深度が+6kmで千島海溝から沈込むスラブ上部で起こっているが,発震機構解の主応力軸方位[P131+29T319+61N223+3]の圧縮P主応力軸方位131は南東の海溝側を向いており,沈込むスラブ上面と千島弧地殻との剪断応力場で起こった地震である.本地震に先立ち,2018年3月5日4時52分に択捉(えとろふ)島下で圧縮主応力軸方位がスラブ傾斜と並行する屈曲スラブの平面化地震M5.4P109(+28)kmが起こっている.

図268.2018年3月7日の得撫島沖の地震のCMT解主応力軸方位図.
 海溝距離断面図,右下:震央地図.
 数字は得撫島沖地震.

 千島海溝域の地震について本月刊地震予報では,下部マントル上面直上の2012年8月14日11時59分M7.3p654(+89)km(速報30),カムチャツカ半島の2016年1月30日M7.2-np161(-27)km(速報76),得撫(うるっぷ)島の2016年5月31日19時03分M6.1P30(+10)km(月刊地震予報80),択捉(えとろふ)島沖の2018年1月20日14時51分M5.1P30(-22)km(月刊地震予報101)を取り上げている.
 千島海溝域では総地震断層面積M8.7分のCMT解が公表されており,M8.0以上の地震は,新知(しむしる)島東方沖2007年1月13日13時23分M8.2Te30(+17)kmとカムチャツカ半島西方沖2013年5月24日14時44分M8.3P609(+87)kmの2個がM8.5分の総地震断層面積を占め,太平洋プレートの沈込面積の61%を消化している.全CMTでは2016年から総地震断層面積が100%を切り,現在93%になっていることからM8級の地震が警戒されている(図269).

図269.千島海溝域CMT解の主応力軸方位図.
 左:海溝距離断面図・震央地図,右上:縦断面図,右下:時系列図(左端:累積地震断層面積のベニオフ図).
 数字はM8.0以上の地震と下部マントル上面直上の地震.

 本地震から震央距離100km以内の地震を検討すると,歴史地震として本地震からの震央距離79km方位249で百年前の1918年9月8日2時16分M8.2がある.この地震が起こした波高6-12mの津波は,根室で1m,宮城県鮎川で45cm,ホノルルで1m,そしてサンフランシスコにまで達している(宇佐美,2003;Seno & Eguchi,1983).
震央距離100km以内のCMT解には3回の活動期がある(図270).最初がCMT解の1995年4月18日8時28分M7.2p59(+8)kmで震央距離63km方位311,応力場偏角(月刊地震予報87)は14.7と本地震にほぼ一致している.第2期は東日本大震災を挟む2006年3月9日から2012年7月15日までで,M5.6-M6.2のCMT解18個がある.最後の活動は2017年6月23日7時36分M5.2p30(-7)km震央距離43km方位358から始まった,その応力場偏角は13.2と本地震と同じである.次いで海溝外で2017年9月3日M5.7To30(+22)kmが震央距離77km方位158で起こった,その応力場偏角は154.6と圧縮P軸と引張T軸が入替ったPexTの逆応力場であった.

図270.2018年3月7日M5.9からの震央距離100km以内のCMT解主応力軸方位図.
 左:海溝距離断面図・震央地図,右上:縦断面図,右下:時系列図(左端:累積地震断層面積のベニオフ図).
 数字は百年前の最大地震M8.2.

スラブ沈込の障害となるのは,海溝外における同心円状屈曲・海溝内の島弧地殻とマントルとの剪断・屈曲スラフの平面化・下部マントル上面における浮力である.この中で特に警戒されるのは,最後の深度660kmの下部マントル上面を貫く地震が起こることである.千島海溝域から沈込むスラブ下部では,2012年8月14日11時59分M7.3p654(+89)kmが下部マントル上面直上で起こっており(速報30),日本海溝域のウラジオストックでは2009年4月18日12時56分M5.0P671(+122)km・2016年1月2日13時22分M5.7P681(+77)km(速報76),伊豆・小笠原海溝域では2015年5月30日20時23分M8.1t682(-64)km(速報68)・6月3日6時03分M5.6-t695(-51)km(速報69)が下部マントルに突入したスラブ内地震が起こっている.スラブ先端が下部マントル上面を通過すると相転移を起こし,浮力を失い崩落すると予想されていることから,日本海溝域・伊豆小笠原海溝域に続いて千島海溝域でも崩落が開始されると日本列島の地震活動が急激に活発化することが心配される.このような活発化は日本列島の歴史地震の期間はもとより過去1千万年間起こっていない.今後,これまで起こったことのない地震活動の監視が必要である.今回の活動がM8.0級の地震の前兆となるのか,千島スラブが下部マントルに崩落する前兆となるのか,今後の地震活動に警戒が必要である.

3.2018年3月の台湾周辺の地震

2018年2月7日0時50分花蓮沖でM6.7-npo10(+4)kmが起こったが(月刊地震予報102),2018年3月に台湾・琉球域でM4.7-M5.6のCMT解6個が公開されている(図271).
2018年3月4日2時35分には花蓮沖地震M6.7から震央距離5km方位343でM4.8Pe14(;8)kmが起こっている.その応力場偏角は25.0と花蓮沖地震の応力場とほぼ同じであり,応力場は保持されていることを示している.この地震の他は震央距離が50km以上であり,台湾中部と南部の地震は花蓮沖地震M6.7による歪解放によるものであろう.

図271.2018年3月の台湾周辺のCMT解主応力軸方位図.
 左:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図(左端:地震断層面積対数0.6日間移動平均曲線)

4.2018年4月の月刊地震予報

2018年3月は花蓮沖地震M6.7と関連する台湾・琉球域の地震とともに,太平洋スラブ沈込に関係する地震が千島海溝域・日本海溝域・伊豆海溝域で活発化している(2018年3月日本全図月別).その中で月間最大地震となった3月7日得撫島沖地震M5.9は沈込むスラブ上面と島弧地殻の剪断応力によって起こったが,それに先立つ3月4日の択捉島下M5.4は屈曲スラブ平面化の地震であった.そして,2018年3月24日4時02分には渡島半島西方沖でM4.9np216(+6)kmが起こっている.
日本海溝域では,沈込スラブ上面以深のスラブ内地震が浦河沖・三陸沖・茨城県沖・伊豆諸島沖で起こっている.これらの地震は太平洋スラブ沈込の活発化を示している.
2018年2月7日の花蓮沖地震を契機としてこれまで静穏期にあった台湾・琉球海溝・南海トラフ域が活発化した.今後M8級の巨大地震に厳重な警戒が必要であるとともに,得撫島沖の地震と太平洋スラブ内地震活動の増大は太平洋スラブの沈込様相の変化を示唆しているとも考えられ,千島海溝域の巨大地震への警戒も必要である.
これらの地震に伴う津波からの避難のために救命胴衣の早急な普及(月刊地震予報97)が望まれる.

引用文献

Seno, T. & Eguchi, T. (1983) Seismotectonics of the western Pacific region. Geodynamics of the western Pacific-Indonesian region, Geodynamics Series, 11, American Geophysical Union, 5-40.
 宇佐美龍夫(2003)最新版日本被害地震総覧.東京大学出版会,605p.

月刊地震予報102)2018年2月台湾花蓮沖地震・朝鮮半島東岸地震・2018年3月の月刊地震予報

1.2018年2月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2018年2月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で30個0.988月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で6個0.251月分,伊豆・小笠原海溝域で4個0.157月分,南海・琉球海溝域で20個2.553月分であった(2018年2月日本全図月別).
2018年2月の最大地震は台湾の花蓮東方沖2月7日M6.7-npoであった.M6.0以上の他の地震は,最大地震と同域で起った2月4日M6.5Po・2月7日M6.1Po・2月8日M6.2の計4個であった.その後,朝鮮半島東岸で2月11日M4.6Prが起こっている.

2.2018年2月台湾花蓮沖地震

 2018年2月4日~ 25日に台湾東岸の花蓮周辺で17個の地震が起こった(図264).最大地震は2018年2月7日0時50分M6.7-npo10kmで, 4棟の高層ビルが傾き,死者・不明17名,負傷者285名が新聞報道された.今回の地震活動の中で2018年2月4日22時56分M6.5・2月7日4時15分M5.9・2月8日0時21分の3個については速報解が公表されている.

図264.2018年2月の台湾花蓮周辺のCMT解主応力軸方位図.
 左:震央地図,右:海溝距離断面図.
 数字は最大地震.

 琉球海溝は,八重山諸島沖で八重山小円に沿って時計回りに曲がり,台湾東方沖で花蓮小円に沿って急激に反時計回りに屈曲し,台湾海岸山脈の西縁に接続している.花蓮はこの接続部に位置している.
 最大地震からの震央距離は2018年2月4日の最初の地震から2月8日までは17km以内に収まり,震源深度も14km以浅である.しかし,2月19日以降の地震の震央距離は50km以上で,深度も48km以深と,最大地震と異なる活動である(表29).
海洋底が海溝軸に沿って同心円状屈曲して沈込む際には,沈込方向の引張応力が表面に,圧縮応力が深部に働く.海溝軸の屈曲では,海溝軸に並行する圧縮あるいは引張の応力が予想される.海洋底が台湾との衝突で付加したのが海岸山脈であり,その西縁のプレート境界に沿う沈込は停止しており,花蓮周辺は圧縮応力場にあると考えられている.最大地震の発震機構解(P169+34T57+28N298+43)の圧縮主応力P軸方位169は海洋底沈込の圧縮応力,引張主応力T時方位57は海溝軸屈曲による引張応力に対応しているであろう.
2月8日までの地震の発震機構型は,最大地震と同じ圧縮横擦断層np型が3個,逆断層p型が10個,斜方正断層tr型が1個である(表29:「型」列末尾の「o」は海溝外,「e」は海溝距離が25km以内であり,「P」は非偶力成分比が-5%以下,「T」は+5%以上を表す).
非偶力成分比は引張応力強度と圧縮応力強度の比率を表し,負の場合は圧縮応力過剰,正の場合は引張応力過剰である.今回の地震の非偶力成分比は-19~+3%と圧縮過剰であり,最大地震はほぼ中間の-8%であり,花蓮が圧縮応力場にあることを支持している.
震源域の大きさや位置によって圧縮応力が増大しても,引張応力増大が追従しないと,応力場枠組みが同じでもT軸がN軸にTexN入替り逆断層P型に変換する(月刊地震予報87).従って,2月8日までの地震活動は同じ応力場枠組みを保持し,T軸方位の引張応力強度比率の変化によるT軸とN軸との入替で説明できる.
最大地震の発震機構を基準に主応力偏角と主応力軸入替を考慮した応力場極性角を算出すると,2月4日の最初の地震から2月8日の一連の活動では最大地震と同じ応力場極性を保持しているが,2月19日以降の地震では応力場極性角が90°以上と逆極性であり,異なった地震活動と言える(図265,表29).

図265.2018年2月の台湾花蓮周辺のCMT解応力場極性図.
 左:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図.
 Stress Polarity Π:応力場極性(右下図左端).
 基準は2018年2月7日花蓮最大地震M6.7.

表29.2018年2月花蓮周辺の地震.

発生 規模 震央 深度 距離 方位 主応力 応力軸 応力場 非偶力
M 北緯° 東経° km km °

°
入替

°


%
2018 2 25 1 59 4.9 nte 23.628 125.392 80 381 97 68 PexT 143 +3
2018 2 22 8 10 5.2 po 23.403 121.503 43 78 193 94 PTexN 128 -1
2018 2 19 23 47 4.7 +nt 24.562 121.620 55 53 354 98 TPexN 138 +14
2018 2 8 9 54 5.1 Po 23.942 121.615 6 17 201 65 TexN 46 -6
2018 2 8 0 21 6.2 po 24.047 121.763 4 10 117 91 TexN 27 -4
2018 2 7 22 6 5.1 Po 24.092 121.770 4 9 87 49 org 49 -6
2018 2 7 20 13 5.2 po 23.957 121.708 14 15 167 50 org 50 +1
2018 2 7 12 36 5.1 Po 24.050 121.718 0 6 134 68 TexN 37 -19
2018 2 7 11 18 5.2 Po 24.035 121.720 0 7 143 72 TexN 36 -14
2018 2 7 5 56 4.8 tro 24.062 121.690 2 3 154 20 org 20 +2
2018 2 7 4 15 6.1 Po 23.987 121.723 0 12 157 64 TexN 40 -10
2018 2 7 3 0 5.9 npo 24.083 121.700 1 2 99 56 PexN 50 +2
2018 2 7 0 50 6.7 -npo 24.087 121.677 10 0 0 0 基準 0 -8
2018 2 6 0 58 5.2 po 24.093 121.728 0 5 82 29 org 29 -0
2018 2 4 23 13 5.9 Pe 24.158 121.723 0 9 31 56 TexN 36 -11
2018 2 4 22 56 6.5 Po 24.117 121.703 10 4 39 63 TexN 29 -16
2018 2 4 22 12 5.4 -npe 24.147 121.702 10 7 20 29 org 29 -5

最大地震を基準にした2018年2月までの台湾域全CMT解の応力場極性では(図266),TexN基準応力場(青色)が海岸山脈北部の花蓮から琉球海溝に沿って並んでいる.同様の並びは北東方向の逆極性PTexN(緑色)の列が沖縄トラフ南西端部に認められる.これらの列の深度はいずれも浅く,同心円状屈曲して沈み込むスラブ深部ではTPexN(橙色)PexT(赤色)の逆極性CMTが散在している.

図266.台湾域の2018年2月までの全CMT解応力場極性図.
 左:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図.
 Stress Polarity Π:応力場極性(右下図左端).
 基準は2018年2月7日花蓮最大地震M6.7.

琉球海溝域の応力場極性でも,花蓮と沖縄トラフ南西部の列が明瞭であるが.それよりも顕著なのが九州東縁日向灘の南南西方向の列である(図267).これらの列は長期間に渡ってほぼ同一応力場による地震が発生していることを示しており,応力場構成や相互作用を知るための重要な手掛かりになることが期待される.

図267.琉球海溝域の2018年2月までの全CMT解応力場極性図
 左:震央地図,中:海溝距離断面図,右上:縦断面図,右下:時系列図.
 Stress Polarity Π:応力場極性(右下図左端).
 基準は2018年2月7日花蓮最大地震M6.7.
 数字は基準とした2018年2月7日花蓮最大地震M6.7と2018年2月11日朝鮮半島東岸地震M4.6.

3.2018年2月11日朝鮮半島東海岸M4.6

 朝鮮半島東岸の浦項で2018年2月11日M4.6Pr4kmが起こった(図267).朝鮮半島は地震が殆ど起こらない地域であったが,沖縄トラフ拡大の最大地震2015年11月14日M7.1の翌年2016年7月5日M4.9-nt37kmが起こり注目を集めた(月刊地震予報82).その後,2016年9月12日M5.8-nt36km(月刊地震予報84)・2017年11月15日M5.6p11km(月刊地震予報99)が起こった.今回は更に深度を減じて深度4kmになっている(表30).朝鮮半島の地震活動は上部マントルから下部地殻の深度で開始されたが,次第に上昇し,上部地殻そして今回は地表付近に達した(表30).

表30.朝鮮半島東岸地震.

発生 規模 震央 深度 距離 方位 主応力 応力軸 応力場 非偶力
M 北緯° 東経° km km °

°
入替

°


%
2018 2 11 5 3 4.6 Pr 36.098 129.457 4 0 基準 88 TPexN 137 -9
2017 11 15 14 29 5.6 p 36.195 129.393 11 12 332 97 PTexN 142 +2
2016 9 12 20 32 5.8 -nt 35.797 129.272 36 37 206 102 TPexN 124 -7
2016 9 12 19 44 5.3 nt 35.820 129.262 40 36 209 102 PTexN 120 -1
2016 7 5 20 33 4.9 -nt 35.613 129.873 37 66 145 95 PexT 143 -6
2004 5 29 19 14 5.1 +p 36.723 130.158 43 93 41 107 TPexN 147 +8

今回地震の起こった浦項は,4億年前から海水面下に没することのなかった朝鮮半島が,唯一,1500万年前の日本海拡大時に海水面下になった地域である.日本海拡大時には,台湾でも大変動が起き,中央山脈の形成が開始されている.2018年2月7日の台湾花蓮沖地震直後の2018年2月11日に浦項で地震が起こったことは,日本海拡大時に活動した断層系が現在の地震活動とも関係していることを示している.日本海を含めた日本列島全域における応力場変動が日本海拡大時の断層系にも地震活動を誘発していることは,地震予報のための貴重な情報となる.

4.2018年3月の月刊地震予報

2018年2月の日本全域CMT解個数は30個,プレート運動面積に対する地震断層面積の比は0.988に急増した.2016年12月から2018年1月までの14カ月間は,総地震断層面積がプレート運動面積の半分以下と静穏であった.この静穏記録は.1997年1月から16カ月の最長記録に次ぎ,2003年3月からと2005年12月からの10ヶ月を抜き,第2位である.
1997年の最長静穏期を終了させたのは,琉球海溝域最大CMT解1998年5月4日八重山沖M7.7-ntoである.そして1999年9月21日に台湾域最大CMT解となった集集地震M7.7+pが起こっていたので警戒を呼び掛けていたが(月刊地震予報101),2018年2月7日に花蓮沖地震M6.7が起こった.1997年の静穏期後に比較し,地震規模はまだ小さいので,台湾・琉球海溝・南海トラフ域におけるM8級の巨大地震に厳重な警戒が必要である.特に,津波避難のための救命胴衣(月刊地震予報97)を早急に準備することが望まれる.