東日本巨大地震の前震・本震・余震の震央を記入した赤色立体地図

新妻地質学研究所へようこそ

2011年3月11日午後2時46分、東日本巨大地震発生。
今、仙台、東北、日本、環太平洋、地球で何が起こっているのか?

プレートテクトニクス一筋で
地球科学を研究してきた仙台在住の著者が考えます。

月刊地震予報83)マリアナスラブと伊豆スラブの地震・三陸沖の地震・2016年9月の月刊地震予報

1.2016年8月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年8月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で20個0.573月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で12個2.112月分,伊豆・小笠原海溝域で4個1.549月分,南海・琉球海溝域で4個0.025月分であった(2016年8月日本全図月別).
2016年8月のM6以上の地震は,2016年8月15日小笠原海台小円区のマリアナスラブ内M6.4P534km,三陸沖の2016年8月20日M6.4P11km・2016年8月21日M6.2p12km,伊豆小円区の伊豆スラブ内の2016年8月26日M6.1np498kmの4個である.

2.マリアナスラブの同心円状屈曲と伊豆スラブの平面化

 小笠原海台小円区のマリアナスラブで2016年8月5日M6.4P534kmが起こった.今回の地震は,2013年5月14日M7.3p619kmによって明らかになった小笠原・マリアナ海溝から沈込むマリアナスラブが同心円状屈曲したまま下部マントル上面に到達していること(2013年日本全図年別速報45速報48)を支持する地震である(図190).

図190.同心円状屈曲のマリアナスラブと平面化する伊豆スラブ. 2016年8月のCMT発震機構主応力軸方位と以前の地震(+).

図190.同心円状屈曲のマリアナスラブと平面化する伊豆スラブ.
2016年8月のCMT発震機構主応力軸方位と以前の地震(+).

これまで,マリアナスラブが同心円状屈曲したまま下部マントル上面に達するとの論拠となっていたのは,1998年2月7日M6.4T552kmと2013年5月14日M7.3p619kmの2つの地震のみであった.今回の震源は1998年2月7日の震源に近接しており,同心円状屈曲の論拠を確かなものとした.2013年5月14日の地震はこれまでの最大地震記録M7.3を保持していたが,その座を2016年7月30日M7.7T233kmに譲った(月刊地震予報82).マリアナスラブは活発な活動をしており,今後更なる同心円屈曲を支持する地震の発生が期待される.
同心円状屈曲したまま下部マントルに到達するマリアナスラブの北側には,平面化して下部マントルにまで沈込む伊豆スラブが接していることが,伊豆スラブ南端の2015年5月30日M8.1t682kmと2015年6月3日M5.6-t695kmによって明らかになった(速報69).平面化した伊豆スラブの傾斜は,下部マントルまで沈込む南端でほぼ垂直に近いが,北に向かって次第に減じている.伊豆小円北区で2016年8月26日M6.1np498kmが起こった.この地震の前に伊豆小円南区で2016年8月22日M5.8+np419kmも起こっているが平面化スラブの傾斜が増大していることが分かる(図190).

3.三陸沖の地震

2016年8月20日M5.4P41km・M6.4P11km・8月21日M6.2p12km・M5.5p11km・M5.3p8km・M5.2p27km・8月22日M5.4P18kmの7個連発地震が,1896年明治三陸地震M8.5・1994年12月三陸はるか沖地震M7.6・1968年十勝沖地震M8.1を起こした明治三陸Mjs震源域と襟裳南方沖sErm震源域で起きた(図191左上図).

図191.三陸沖地震の地震断層面積の対数移動平均曲線.  発震機構解:IS(精査後初動)・CMT(精査後CMT).  右上:2012年1月から2016年8月まで.平均期間=34.1日  右下:1997年10月から(IS)・1994年9月から(CMT)2016年8月まで.平均期間=161.0日.2010年の上の横線は東日本大震災本震の2011年3月11日.  色:赤(逆断層型)・青(横擦断層型)・黒(正断層型)を線形比例配分して彩色.  震源域:平面化(unBend:P軸島弧側傾斜)=Kuj(久慈)・Ktk(北上);内側屈曲衝突(innerBend:P軸海溝側傾斜)=oKuj(久慈沖)・oKks(金華山沖);外側屈曲衝突(outerBend:P軸海溝側傾斜)=sErm(襟裳南方沖)・Mjs(明治三陸);海溝外(offTr)=Eafo(海溝外東余震).

図191.三陸沖地震の地震断層面積の対数移動平均曲線.
 発震機構解:IS(精査後初動)・CMT(精査後CMT).
 右上:2012年1月から2016年8月まで.平均期間=34.1日
 右下:1997年10月から(IS)・1994年9月から(CMT)2016年8月まで.平均期間=161.0日.2010年の上の横線は東日本大震災本震の2011年3月11日.
 色:赤(逆断層型)・青(横擦断層型)・黒(正断層型)を線形比例配分して彩色.
 震源域:平面化(unBend:P軸島弧側傾斜)=Kuj(久慈)・Ktk(北上);内側屈曲衝突(innerBend:P軸海溝側傾斜)=oKuj(久慈沖)・oKks(金華山沖);外側屈曲衝突(outerBend:P軸海溝側傾斜)=sErm(襟裳南方沖)・Mjs(明治三陸);海溝外(offTr)=Eafo(海溝外東余震).

 今回と同様の明治三陸Mjs震源域の連発地震は,2012年5月19日から5月22日にM4.5~6.5の11個連発地震(速報26),2015年2月17日から2月25日にM4.7~6.9の9個連発地震(4010速報65)が起こっている(図191右上図).
 この震源域では日本海溝から沈込んだ太平洋スラブと日本列島側地殻が衝突して地震を起こしている.スラブの島弧地殻に対するプレート相対運動が原動力であるが,プレート境界には摩擦抵抗があるため剪断力が働き,圧縮主応力P軸は海溝側に傾斜する逆断層型発震機構になる.
 三陸沖は襟裳小円南区と最上小円区に含まれ,その地震活動は,日本海溝から沈込む海洋プレートの太平洋スラブ内地震および同心円状屈曲する太平洋スラブと日本列島地殻・マントルとのプレート間地震が日本海溝に並行に起こっている.
 スラブ内地震は,日本海溝外[offTr]の東日本大震災東余震Eafo震源域,同心円状屈曲スラブの平面化地震帯[unBend]の下北Smk震源域・久慈Kuj震源域・北上Ktk震源域に区分される.
プレート間地震は,外側[outerBend]の襟裳南沖sErm震源域・明治三陸Mjs震源域・東日本大震災前震Fore震源域・本震Main震源域,内側[innerBend]の下北沖oSmk震源域・久慈沖oKuj震源域・金華山沖oKks震源域に区分できる(図191中下).
 これらの地震は,気象庁HPにCMT発震機構解および初動IS発震機構解(精査後)として公表されている.CMTは全域を網羅するM4以上の691地震,ISは日本列島沿岸部のM3以上の963地震が公表されている.
  地震面積対数移動平均図[logArea](速報68)で注目されるのは外プレート間地震帯南部のFore・Mainで2015年から地震が起こっていないことである(図191右上).以前にも1998年以前と2006年から2007年末まで起こっていない.
海溝外Eafoの地震活動は外プレート間地震帯南部Fore・Mainと相補的に起こっている.外プレート間地震帯南部最後の2014年11月8日M5.2+pの後,海溝外地震が2015年1月14日M4.5-toを先頭に活発化している.これら地震帯における地震活動における時系列関係は三陸沖の太平洋スラブの力学挙動を知るために重要である.

4.2016年9月の月刊地震予報

熊本地域の地震は,2016年8月に初動発震機構解(速報値)が5個・精査後7個・CMT解2個であり,4月の186個・17個・10個から,5月の33個・8個・0個,6月の10個・4個・1個,7月の7個・11個・1個と7月からの長期化傾向を保持しており,警戒が必要である(2016年4月・5月・6月・7月・8月西南日本月別IS).
2016年8月のマリアナスラブ・伊豆スラブの地震は,同心円状屈曲したまま下部マントル上面に達するマリアナスラブと平面化して下部マントルに突入する伊豆スラブの活動が活発化していることを示している.この活発化は,太平洋スラブ全体の下部マントルへの崩落の鍵を握っていることから,両スラブの間に予想されるスラブの裂け目上に位置する西之島の火山活動の動向(速報48),日本列島全体における応力状態の改編に対応した新たな地震の発生にも注意が必要である.
フィリピン海プレートの沈込域の1994年10以降のプレート運動面積に対する総地震断層面積の比は,熊本地震が起こり0.484から0.506に増大したが,8月までに0.505と減少しており,西南日本から琉球域の巨大地震への警戒が必要である.

月刊地震予報82)マリアナの地震・朝鮮半島の地震・2016年8月の月刊地震予報

1.2016年7月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年7月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で23個5.613月分,千島海溝域で3個0.052月分,日本海溝域で11個0.199月分,伊豆・小笠原海溝域で2個34.246月分,南海・琉球海溝域で7個0.052月分であった(2016年7月日本全図月別).
2016年7月のM6以上の地震は,2016年7月30日マリアナの太平洋スラブ内M7.7T233kmのみである.
2016年7月の地震活動で注目されるのは,これまで殆ど報告されていなかった対馬海峡を越した朝鮮半島南東沖で起こった2016年7月5日のM4.9-nt深度37kmである.

2.マリアナの地震

 2016年7月30日マリアナ小円区の太平洋スラブ内でM7.7T233kmが起こった.今回の地震は,2013年5月14日M7.3p619kmの最大M記録(2013年日本全図年別)を更新するものであり,太平洋スラブの沈込がこれまで以上に活発化していることを示している.1994年9月1日からのCMT総地震断層面積のプレート運動面積に対する比は,本地震前には0.56と半分程度であったが,1.22倍に増加し,地震活動過剰になった.発震機構は引張過剰正断層型Tでスラブ沈込主導である.日本海溝域でも2016年5月から7月に正断層型3個と圧縮横擦断層型1個の海溝外地震が起こっており(2016年5月・6月・7月東日本月別),日本海溝からマリアナ海溝域まで太平洋プレートのスラブ沈込が優勢であることを示している.

3.朝鮮半島沖の地震

2016年7月5日に朝鮮半島南東沖でM4.9-nt深度37kmの地震が南海小円区北方延長部で起こった.本震源は,対馬海峡を越した南海小円区の海溝距離567kmに位置し,これまでの最遠記録である海溝距離364kmの1997年6月25日中国地方北西海岸付近M6.6-np深度8kmを大幅に更新して表示範囲外になった.南海小円区の海溝距離範囲北側の本地震は,日本全域図の鹿島小円区の海溝距離1108kmに表示される(2016年7月日本全域月別).朝鮮半島域のCMT解は,これまで朝鮮半島東方沖2004年5月29日M5.1+p43km海溝距離1092kmの1個が報告されているのみで(2004年日本全域年別),本地震が2個目になる.
本地震は,これまで地震活動が報告されていない空白域での地震であり,2016年6月の北海道渡島半島南東部内浦湾M5.3pr11km(月刊地震予報81)に続くものである.

4.2016年8月の月刊地震予報

熊本地域の地震は,2016年7月に初動発震機構解(速報値)が7個・精査済11個・CMT解1個であり,4月の186個・17個・10個から,5月の33個・8個と0個,6月の10個・4個・1個への減少傾向が弱まり,活動の長期化を示唆している(2016年4月・5月・6月・7月西南日本月別IS).
2016年7月30日のマリアナの地震M7.7で伊豆・小笠原・マリアナ域の1994年9月以降のCMT総地震断層面積のプレート運動面積比が1.502から1.651に地震活動過剰度を増大させた.しかし,フィリピン海プレートの沈込域の比は熊本地震が起こり0.484から0.506に増大したが約半分の状態が続いており,西南日本から琉球域の巨大地震への警戒が必要である.
2016年6月の渡島半島南東部の地震に続き,7月には地震空白域の地震が朝鮮半島沖で起こった.日本列島が太平洋スラブの下部マントルへの崩落(月刊地震予報68)など新たな地震活動期に入ったことを示唆している.

月刊地震予報81)琉球海溝域の地震・渡島半島南東部の地震・2016年7月の月刊地震予報

1.2016年6月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2016年6月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で21個0.187月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.410月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で14個0.347月分であった(2016年6月日本全図月別).
2016年6月のM6以上の地震は,2016年6月24日与那国島近海のフィリッピン海プレート内M6.2te54kmのみである.
2016年6月の地震活動で注目されるのは,奄美大島沖の海溝外の連発地震と(2016年6月日本全図月別),1923年観測開始以降初の北海道渡島半島南東部地震である(2016年6月東日本IS月別).また,日本海溝外で6月10日M5.1To46km・6月30日M5.2npo43kmが起こっている(2016年6月東日本月別).

2.琉球海溝域における地震活動

 2016年6月24日与那国島近海のフィリッピン海プレート内でM6.2te54kmが起こったが,先月同じ八重山小円区の石垣島北西沖で2016年5月31日M6.2tr230kmの大深度地震が起ったばかりである(月刊地震予報80).また,八重山小円区の北東隣の琉球小円区の奄美大島沖の琉球海溝外で2016年5月27日M5.6to64kmから開始し,6月15日まで正断層型M4.4~5.5深度55~72kmの地震7個が連発した.この震源域でのこれまでのCMT解は2014年7月3日M4.4-to54kmのみである.琉球小円区の琉球海溝外CMT解は,これまで17個あるが,正断層型が16個で引張横擦断層型が1個である.西隣の八重山小円区では16個の琉球海溝外CMT解があるが,引張横擦断層型10個・逆断層型4個・正断層型2個と異なるが,引張応力が主体を占めている(月刊地震予報80:図186).琉球海溝が前進させられるために引張り応力場に置かれているのは,台湾衝突によるフィリピン海プレートの衝上断層繰り返しに起因しており,フィリピン海プレートの沈込と台湾における衝突が進行していることを示している.

3.渡島半島南東部の地震

2016年6月16日14時21分に渡島半島南東部内浦湾でM5.3pr11kmが起こり(2016年6月CMT),同日19時58分にM3.3p11km・6月21日0時1分にM4.2p10kmが起こった(2016年6月IS).この地震で注目されるのは,気象庁が観測を開始した1923年以降この震源域で地震が観測されていなかったことである(図189).

図189.渡島半島南東部の地震.  地殻内地震の初動発震機構解(精査済)の主応力方位図に本地震(20160616-21)を示した.本震源域は,2016年6月16日以前には,1923年の観測以来のみならず歴史記録においても地震空白域の中心であった.  灰色+印:活火山.地殻内地震は活火山を避けて分布しているが,本震源域は駒ヶ岳・横津岳・恵山の活火山が並んでいる.

図189.渡島半島南東部の地震.
 地殻内地震の初動発震機構解(精査済)の主応力方位図に本地震(20160616-21)を示した.本震源域は,2016年6月16日以前には,1923年の観測以来のみならず歴史記録においても地震空白域の中心であった.
灰色+印:活火山.地殻内地震は活火山を避けて分布しているが,本震源域は駒ヶ岳・横津岳・恵山の活火山が並んでいる.

震源域は渡島半島東部の活火山地域内に位置するため地殻内地震は起こらないと考えられてきた.北海道では知床半島や日高山地そして胆振支庁では活火山を避けて地殻内地震が起っていない.東北地方でも下北半島で起こっていない.
日本海溝外の太平洋プレートで2016年5月2日M4.7to43kmに続き6月10日M5.1To46kmと6月30日M5.2npo43kmが起こっていることは太平洋スラブの力学状態の変化を示唆している(2016年5月・6月東日本月別).

4.2016年7月の月刊地震予報

2016年6月の熊本地域の初動発震機構解の速報は10個,精査済は4個でCMT解は1個であり,4月の186個・17個と10個そして5月の33個・8個と0個から減少し終息に向かっている.
フィリピン海プレートの沈込が進行していることを示す琉球海溝域の海溝外地震が起こり,地震断層面積のプレート運動面積に対する比が今年に入って1.092まで増大したが,2010年からでは0.170と歪が殆ど解放されていな状態が続いている.西南日本から琉球域の巨大地震への警戒が必要である.
渡島半島南東部の震源域は,1923年の観測開始以来のみならず歴史記録においても地震空白域の中心にあった.本震源域は千島弧と東北日本弧の接合部の活火山域にある.東北日本弧と伊豆弧の接合部である関東地域の北西縁にも活火山が並び,地殻地震が起こっていないが,今回の地震によって直下型地震が襲うこともあることが示された.日光から浅間にかけての活火山域でも警戒が必要である.
このように全く地震記録の存在しない地域においてM5.4の地震が起こったことは,日本列島が太平洋スラブの下部マントルへの崩落(月刊地震予報68)など新たな地震活動期に入ったことを示唆しているかもしれない.