月刊地震予報92)宮古島沖地震M6.4・三陸沖連発地震・2017年6月の月刊地震予報

1.2017年5月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解を解析した結果,2017年5月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で13個0.205月分,千島海溝域で2個0.070,日本海溝域で3個0.031月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.015月分,南海・琉球海溝域で7個0.484月分であった(2017年5月日本全図月別).
2017年5月の最大地震は5月9日宮古島沖M6.4+nt79kmで,M6以上の地震はこれ1個のみである.
本震に到る前に前震が起これば,本震まで応力場極性を維持する(月刊地震予報87).同一震源域で応力場極性を保持する地震が起こっていれば前震で,本震が起こることが予想され,地震予報の重要な柱となるので,今後,定常的に取り上げる.
2017年5月には,宮古島沖と三陸沖で連発地震が起こっている.

2.2017年5月9日宮古島沖地震M6.4と連発地震

2017年5月9日に2017年最初のM6.0以上の地震M6.4があった.この地震を基準とし,発震機構方位差・応力場極性の判別と震源位置を比較する.震央距離100km以内のCMT解は,2009年2月22日から8個あるが,歴史地震記録はない(図212,表21).

図212.2017年最初のM6.0以上の宮古島沖地震M6.4(+印と100km半径円)が起こった琉球海溝域のCMT解の主応力軸方位.
記入年月日は,琉球海溝域最大地震(八重山沖海溝外1998/5/4M7.7・台湾1999/9/21M7.7),沖縄トラフ最大地震(九州西方2015/11/14M7.1・宮古島北方2007/4/20M6.7)

琉球海溝域の最大CMT解は,八重山小円区海溝外の1998年5月4日M7.7と台湾の1999年9月21日集集地震M7.7である.1999年9月21日集集地震M7.7の後,八重山小円区と花蓮小円区境界の沖縄トラフ西縁に広い震源域が形成されたが,2001年から次第に範囲を狭め,2007年4月20日の沖縄トラフ最大地震M6.7に到った.その後,琉球海溝全域で地震活動が静穏化した中で,2009年2月22日に逆応力場極性PTexNの本震源域最初の地震M5.5が起った.2010年9月24日に基準応力場より引張応力が低下したTexNの地震M4.9が本連発地震域北西端の宮古島で起こった.2011年の東日本大震災後には基準応力場より圧縮力の低下したPexN地震である2012年9月9日M4.3・2013年7月30日M4.4が起こり,2015年1月16日には発震機構方位差は32.2と大きいが基準極性区分orgに入るM4.5が起こった.その後,2015年11月14日に九州西方沖で沖縄トラフ最大記録を更新するM7.1(速報74,)が方位差27.4で起こり,2016年6月4日台湾南部地震M6.4(月刊地震予報77)・2016年4月16日熊本地震M7.3(月刊地震予報79)を経て,本地震に到っている(表21).

表21.2017年5月宮古島沖連発地震と琉球海溝域の震源・発震機構型・発震機構方位差・応力場極性区分.

年月日時分 smallcir小円区 海溝距離km M発震機構型 深度(スラブ上面)km 震央距離(方位)深度差km 「発震機構方位差org 極方位・伏角org 応力場極性区分 極性方位差
2017/5/30(15:20) 八重山 65 M5.3+nt 65(+55) 9(272.2)/-14 22.0 330-16 org 22.0
2017/5/09(10:54) 八重山 61 M6.4+nt 79(+64) 基準 基準 基準 基準 基準
2017/4/30(10:57) 台湾 -123 M5.4Pro 142(+136) 574(236.2)/+63 102.9 328+62 TPexN 125.4
2016/5/30(18:47) 八重山 62 M5.3T 85(+69) 19(60.7)/+6 72.6 152-21 PexN 18.2
2016/4/16(01:25) 九州 269 M7.3+nt 12(-90) 1025(23.9)/-67 42.2 258+43 org 42.2
2016/2/06(04:57) 台湾 60 M6.4+pr 16(-1) 622(255.0)/-63 87.4 69-14 TexN 20.7
2015/1/16(11:24) 八重山 40 M4.5nt 84(+72) 40(94.4)/+5 32.2 120+42 org 32.2
2013/7/30(07:56) 八重山 1 M4.4-te 131(+123) 72(190.7)/+52 72.0 155-12 PexN 24.5
2012/9/09(05:55) 八重山 6 M4.3Te 116(+108) 59(131.0)/+37 79.9 327+24 PexN 10.3
2010/9/24(04:47) 八重山 136 M4.9Pr 52(+17) 89(305.1)/+17 52.9 254+15 TexN 43.1
2009/2/22(22:50) 八重山 32 M5.5Tr 64(+53) 75(84.2)/-15 97.6 177+8 PTexN 149.4
2015/11/14(05:51) 琉球 352 M7.1+nt 17(-151) 762(16.5)/-62 27.4 71-11 org 27.4
2007/4/22(19:28) 八重山 242 M5.5+nt 22(-62) 189(320.9)/-57 51.6 104+3 org 51.6
2007/4/20(11:23) 八重山 243 M6.1+nt 24(-61) 194(318.9)/-55 47.6 27-5 org 47.6
2007/4/20(10:45) 八重山 247 M6.7T 21(-66) 193(322.1)/-58 78.4 357+17 PexN 37.4
1999/9/21(02:47) 台湾 57 M7.7+p 0(-16) 549(265.3)/-79 107.1 94+17 TPexN 153.9
1998/5/04(08:30) 八重山 -123 M7.7-nto 35(+29) 240(202.4)/-44 46.0 57+42 org 46.0

宮古島沖では基準としている2017年5月9日10時54分M6.4の西方9kmで5月30日15時20分M5.3が起こった.この発震機構方位差が22.0°とほぼ一致していることから連発地震であり,震源域の応力は5月9日M6.4によって解放されず,5月30日まで保持していることを示している.

3.2017年5月の三陸沖連発地震

日本海溝域の襟裳小円区の三陸沖で5月20日20時26分M4.8と5月20日23時40分M4.9が起こった.M4.9を基準するとM4.8の発震機構方位差は6.7°と一致している.基準から震央距離100km以内には258個のCMT解がある(図213).

図213.2017年5月三陸沖連発地震域(半径100km)と日本海溝域の全CMT解の2017年5月20日三陸沖M4.9基準の応力場極性区分.
左図:震央図.中図:海溝距離断面図.線は発震機構方位差算出のためのオイラー極方位と回転方位.右上図:縦断面図.右下図:時系列図と応力極性場区分角Π.

最大は1994年12月28日の三陸はるか沖地震M7.6であり,東日本大震災北誘導地震2011年3月11日15時08分M7.4もある.2011年3月11日の東日本大震災本震は南方221kmと離れているが,本基準からの発震機構方位差は14.5とほぼ同じであり,北誘導地震M7.4も12.7と変わらない.1994年12月の三陸はるか沖地震M7.6の方位差も19.0とほぼ一致している.
歴史地震には,1968年5月16日十勝沖M8.1・1896年6月15日明治三陸地震M8.5がある(図214).

図214.2017年5月三陸沖連発地震域(半径100km)の歴史地震.
左図:震央図.右上図:海溝距離断面図.数時は発生年/月/日.右中図:縦断面図.右下図:時系列図と地震断層面積Benioff図.

本基準に対する逆極性応力場地震は,日本海溝全域で大震災前の13.0%から大震災後38.9 %に増加したのに対し,本基準域では全くなかったのが7.2%の微増に留まっている.
本連発地震域では,2012年5月19日から24日にも連発地震が起こっている(速報26).その最大地震は5月20日16時20分M6.5で,本基準から南方54kmで起こった(図215).

図215.日本海溝域襟裳・最上小円区の2012年5月三陸沖連発地震の2017年5月20日三陸沖M4.9基準の応力場極性区分.
左図:震央図,丸印は半径100kmの2017年5月連発地震域.中図:海溝距離断面図.数時は地震発生月/日.右上図:縦断面図.右下図:応力場極性区分時系列図.

本基準との発震機構方位差は19.0と差がない.5月22日までに起こったM4.5-M5.5震源は次第に南下したが,方位差は25.1以内に収まっている.その間,5月21日15時30分に本基準から南方307kmの日本海溝軸部で方位差42.3のM4.6が起こっている.連発地震が停止していた5月24日0時02分に,北西方189kmの下北沖で方位差7.9のM6.1が起こった.その後の5月24日21時35分に南南東73kmで連発地震最後の応力場極性が完全に逆転したPexT地震M4.5が起き,震源域の応力解放が確認された.そして,5月28日1時36分と5月29日10時56分にM4.5とM4.8の逆応力場極性海溝外地震,5月31日14時49分には福島沖の同応力場極性スラブ平面化地震が起きたことは,連発地震が太平洋スラブ沈込停止を解除し,スラブ引張による沈込を再開させたことと対応している(図215,表22).

表22.2017年5月三陸沖連発地震と日本海溝域の震源・発震機構型・発震機構方位差・応力場極性区分

年月日時分 small小円区 海溝距離km M発震機構型 深度(スラブ上面)km 震央距離(方位)/深度差km 発震機構方位差org 極方位・伏角org 応力場極性区分 極性方位差
2017/5/20(23:40) 襟裳 65 M4.9P 14(+2) 基準 基準 基準 基準 基準
2017/5/20(20:26) 襟裳 65 M4.8P 16(+5) 1(165.6)/+2 6.7 190+13 org 6.7
2012/5/31(14:49) 最上 184 M4.6p 48(+3) 332(213.8)/+34 13.7 269+49 org 13.7
2012/5/29(10:56) 最上 -34 M4.8to 46(+40) 126(133.4)/+32 65.5 17-13 PexT 154.9
2012/5/28(1:36) 最上 -46 M4.5-to 46(+40) 186(147.7)/+32 67.0 8-15 PexT 152.9
2012/5/24(21:35) 襟裳 44 M4.5T 36(+27) 73(169.4)/+22 73.6 342-3 PexT 132.0
2012/5/24(0:02) 襟裳 223 M6.1p 60(+8) 189(321.3)/+46 7.9 270+82 org 7.9
2012/5/22(16:18) 襟裳 57 M5.0P 32(+22) 45(177.7)/+18 13.2 339+20 org 13.2
2012/5/21(19:39) 襟裳 43 M4.5P 37(+28) 75(169.5)/+23 25.1 292-32 org 25.1
2012/5/21(19:17) 襟裳 43 M5.1+p 32(+23) 74(169.2)+18 14.4 24+67 org 14.4
2012/5/21(15:30) 最上 13 M4.6-te 48(+40) 307(181.0)/+34 42.3 43+1 org 42.3
2012/5/21(9:46) 襟裳 39 M5.1+p 34(+25) 65(163.0)/+20 15.2 200+27 org 15.2
2012/5/21(7:20) 襟裳 36 M5.2P 20(+12) 48(150.6)/+6 9.8 314-19 org 9.8
2012/5/20(17:20) 襟裳 53 M5.5p 28(+18) 46(173.2)/+14 9.2 223+7 org 9.2
2012/5/20(16:20) 襟裳 52 M6.5P 7(-3) 54(173.2)/-7 19.0 23+44 org 19.0
2012/5/20(4:05) 襟裳 48 M6.0p 33(+23) 38(162.2)/+19 7.2 282-9 org 7.2
2012/5/19(9:08) 襟裳 47 M4.8p 21(+12) 49(165.7)+7 14.7 1+58 prg 14.7
2012/5/19(6:32) 襟裳 54 M4.7p 25(+15) 48(174.6)/+11 11.4 99+52 org 11.4
2012/5/19(6:23) 襟裳 52 M5.2P 27(+17) 43(170.7)/+17 6.6 248+5 prg 6.6
2011/3/11(15:08) 襟裳 127 M7.4P 32(+10) 68(252.9)/+18 12.7 353+24 org 12.7
2011/3/11(14:46) 最上 99 M9.0p 24(+3) 235(340.0)/+3 33.2 274+55 org 33.2
1994/12/28(21:19) 襟裳 60 M7.6P 0(-11) 48(20.4)/-14 19.0 349+25 org 19.0
1989/11/02(3:25) 襟裳 103 M7.1? 0(-18) 45(246.2)/-14
1968/6/12(22:42) 襟裳 93 M7.2? 0(-16) 76(207.8)/-14
1968/5/16(9:49) 襟裳 117 M8.1? 7(-13) 91(341.5)/-7
1960/3/23(9:23) 襟裳 43 M6.7? 0(-9) 69(167.6)/-14
1960/3/21(2:07) 襟裳 71 M7.2? 0(-12) 23(204.5)/-14
1960/3/20(22:36) 襟裳 75 M5.6? 20(+7) 25(213.4)/+6
1928/5/27(18:50) 襟裳 114 M7.0? 27(+7) 48(275.2)/+13
1896/6/15(19:32) 襟裳 19 M8.5? 70(146.0)

4.2017年6月の月刊地震予報

2017年5月の日本全域CMT個数は13個と先月2017年4月の15個から減少し,地震断層面積のプレート運動面積に対する比は0.205と先月の0.077より増加し,4カ月続いた1割以下を脱し,1995年・1997年・2003年・2004年に続く記録となった.ただし,2割であるので,嵐の前の静けさは続いており警戒が必要である.
琉球海溝域の1994年9月からのフィリピン海プレート運動面積はM8.7に相当するが,これまでに起こった総地震断層面積はその40%のM8.4分のみである.2002年以前は62%起こっていたが,2003年以降は半減して29%しか起こっていない.この地震活動の増減と対照的なのは日本海溝域で2002年以前の56%から2010年迄でも107%に倍増している.
沖縄トラフ拡大最大の地震が2015年11月14日に起こり(速報74),2017年4月30日には台湾におけるプレート沈込方向が逆転した東向きスラブ深部地震M5.4が起こっている(月刊地震予報91).台湾の衝突・琉球海溝における沈込・沖縄トラフ拡大と関連した地震活動をしていた宮古島沖で連発地震が起き,これまでの静穏を破る巨大地震の前震であることも考えられるので,警戒が必要である.
日本海溝域最大の巨大地震発生域の三陸沖で連発地震が起こったが,大震災前から同じ応力場を保持し,明治三陸地震および三陸はるか沖地震そして東日本大震災北誘発地震の震源を含む本連発域でどのような地震活動を進展させるか警戒が必要である.
千島海溝域では,2016年10月の1個0.155以降,4か月間0.003以下であったが,2017年3月に4個0.022と活動を再開し警戒を呼び掛けていた.2017年4月には3個0.054と面積比が増大しているので警戒が必要である.2017年5月には2個と減少したが比は0.070と増加している.
房総三重会合点の2016年9月23日M6.7pe32kmに関連し,関東域のM6以上の地震に警戒を呼掛けているが(月刊地震予報88),西南日本と東北日本の巨大地震頻発域で連発地震が起こっていることから,引き続き警戒が必要である.