2025年5月10日 発行
1.2025年4月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2025年4月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で6個0.066月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で1個0.010月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で5個で0.173月分であった(2025年4月日本全図月別).
2025年4月の総地震断層面積規模はΣM6.1で,最大地震は2025年4月2日の琉球小円区深度34㎞の琉球海溝震源帯九州TrPhKys震源区M6.0Psで,M6.0以上は最大地震のみであった.
最大地震TrPhKys震源区M6.0Psの震度分布は(図609),最大の震度4が震央付近で九州地方が震度1以上となっているが,中国地方北縁に震度2を震度1が取り囲んでいる.この震度分布は,1500万年前の日本海拡大直前に西南日本南東縁に沿って拡大した海洋底が沈込んだ領域と対応している.

図609.2025年4月2日琉球小円区深度34㎞の琉球海溝震源帯九州TrPhKys震源区M6.0Psの震度分布(気象庁HPによる).
九州地方と中国地方北縁の日本海拡大直前に西南日本南東縁に沿って拡大した海洋底が沈込んだ領域と対応している
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2025年4月までの日本全域2年間のCMT解は383個で,その総地震断層面積規模ΣM8.0のPlate運動面積規模M8.3に対する比は0.553である(図610の中図上).日本全域のBenioff曲線(図619右図上左端Total/4)には2024年1月1日能登半島M7.5(月刊地震予報173),2024年4月3日の台湾海溝震源帯M7.4(月刊地震予報176),2024年8月8日九州小円区深度36㎞の日向灘M7.0(月刊地震予報180)の3つの段が認められ,それ以降静穏化していたが,2024年末に千島海溝域(図610右図A・D)と台湾(月刊地震予報185)に3つ目の段が認められ(図610右図右端F),Total/4(図610右図左端)にも4段目の兆しが出たが頭打ち状態にある.

図610 .2025年4月までの日本全域2年間CMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.震源円の直径は地震断層長である(月刊地震予報173)が,この期間の地震規模は小さいので実際のCMT規模に1.5を加えΔM+1.5とし,8倍拡大.数字とMは,M7.0以上と2025年4月最大のCMT解発生年月日・規模.
右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間開始(下端2023年5月1日)から終了(上端2025年4月30日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36;特報5).
Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積ΣMのPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
地震断層面積移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pdを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
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3.2025年5月の月刊地震予報
伊豆弧北端の丹沢・伊豆衝突による西南日本の土台骨を破損した2024年1月1日能登半島地震M7.5(月刊地震予報173)後の2024年4月の台湾M7.4Psおよび2024年8月の日向灘M7.0psに続き,琉球海溝震源帯九州TrPhKys震源区M6.0Psが2025年4月最大CMTとして登場し,琉球海溝域の歪解放が琉球海溝域で継続しており,更なる活動が心配される.
巨大地震の来襲が心配される千島海溝域は2025年4月もCMTが無く,4ヶ月の無CMTとなっている.4ヶ月の無CMTは,20年前の2000年8月から2006年2月の間に3回あったのみである(月刊地震予報187).この無CMT解は,局部歪の解放によるPlate境界摩擦の広域均質化によって摩擦強度が増大したとも考えられ,巨大地震の前兆とも見られる.2011年3月東北沖平成巨大地震M9.0の1年前と1年半前に日本海溝域で無CMT化していることから,1年から1年半後への警戒が必要である.
2025年4月29日 発行
1.2025年3月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2025年3月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.069月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で2個0.045月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.007月分,南海・琉球海溝域で7個で0.166月分であった(2025年3月日本全図月別).
2025年3月の総地震断層面積規模はΣM6.1で,最大地震は2025年3月9日の琉球小円区深度14㎞の琉球海溝震源帯琉球TrPhRk震源区M5.7psで,M6.0以上の地震は無かった.
2025年3月までの日本全域2年間のCMT解は382個で,その総地震断層面積規模ΣM8.0のPlate運動面積規模M8.3に対する比は0.551である(図609の中図上).日本全域のBenioff曲線(図609右図上左端Total/4)には2024年1月1日能登半島M7.5(月刊地震予報173),2024年4月3日の台湾海溝震源帯M7.4(月刊地震予報176),2024年8月8日九州小円区深度36㎞の日向灘M7.0(月刊地震予報180)の3つの段が認められ,それ以降静穏化していたが,2024年末に千島海溝域(図608右図A・D)と台湾(月刊地震予報185)に3つ目の段が認められ(図609右図右端F),Total/4(図609右図左端)にも4段目の兆しが出たが頭打ち状態にある.

図609 .2025年3月までの日本全域2年間CMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.震源円の直径は地震断層長である(月刊地震予報173)が,この期間の地震規模は小さいので実際のCMT規模に1.5を加えΔM+1.5とし,8倍拡大.数字とMは,M7.0以上と2025年3月最大のCMT解発生年月日・規模.
右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間開始(下端2023年4月1日)から終了(上端2025年3月31日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36;特報5).
Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積ΣMのPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
地震断層面積移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pdを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
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3.2025年4月の月刊地震予報
伊豆弧北端の丹沢・伊豆衝突による西南日本の土台骨を破損した2024年1月1日能登半島地震M7.5(月刊地震予報173)後の2024年4月の台湾M7.4Psおよび2024年8月の日向灘M7.0psに続き,琉球海溝震源帯琉球TrPhRk震源区M5.7psが2025年3月最大CMTとして登場し,琉球海溝域の歪解放が琉球海溝域で継続しており,更なる活動が心配される.
巨大地震の来襲が心配される千島海溝域は2025年に入りCMTが全く無いが,今後の活動再開に警戒が必要である.この無CMT解は,局部歪の解放によるPlate境界摩擦の広域均質化による摩擦強度が増大したとも考えられ,巨大地震の前兆かもしれない.2011年3月東北沖平成巨大地震M9.0の1年前と1年半前に日本海溝域で無CMT化していることから,1年から1年半後への警戒が必要である.
千島海溝域で3ヶ月以上無CMT期間とその間に発生した主CMT震源区・規模・発震機構/深度は;
2020年3月25日TrCKamcM7.5Pb/53km
2016年12月-2017年2月 3ヶ月
2013年5月24日WdtiCdKamcM8.3Pb/632
2012年8月14日WdtiCdUrM7.7pb/610
2009年1月16日TrCMrwM7.4Pb/30
2007年11月-2008年1月 3ヶ月
2007年1月13日TrCMtwM7.8Te/10
2006年11月15日oAcCMtwM7.7Pb/10
2005年10月-2006年2月 4ヶ月
2004年5月-2004年8月 4ヶ月
2002年11月17日WdtiCbgEtrM7.2Pb/469
2000年8月-2000年11月 4ヶ月
2000年1月28日oAcCNmrM6.8Ps/43
1997年11月-1998年12月 13ヶ月
1997年3月-1997年9月 7ヶ月
1996年6月-1997年1月 8ヶ月
1995年12月4日oAcCEtrM7.4Ps/10
1995年5月-1995年11月 7ヶ月
1995年4月18日oAcCUrM7.2ps/15
1994年11月-1995年3月 5ヶ月
3ヶ月以上の無CMTは,今年2025年・2016年・2007年と約10年毎に繰り返しているが,2007年以前は無CMT期が頻繁にあり,2007年以後と様相を異にしている.2007年以降では,2007年と2016年の間に600㎞以深の下部Mantle直上Slab内CMTの発生が注目される.
2025年3月9日 発行
1.2025年2月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2025年2月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.048月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.092月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.167月分,南海・琉球海溝域で1個で0.027月分であった(2025年2月日本全図月別).
2025年2月の総地震断層面積規模はΣM6.0で,最大地震は2025年2月26日の鹿島小円南区深度401㎞の和達伊豆β鹿島WdtiPcBK震源区M5.7npで,M6.0以上の地震は無かった.
2025年2月までの日本全域2年間のCMT解は383個で,その総地震断層面積規模ΣM8.0のPlate運動面積規模M8.3に対する比は0.554である(図608の中図上).日本全域のBenioff曲線(図608右図上左端Total/4)には2024年1月1日能登半島M7.5(月刊地震予報173),2024年4月3日の台湾海溝震源帯M7.4(月刊地震予報176),2024年8月8日九州小円区深度36㎞の日向灘M7.0(月刊地震予報180)の3つの段が認められ,それ以降静穏化していたが,2024年末に千島海溝域(図608右図A・D)と台湾(月刊地震予報185)に3つ目の段が認められ(図608右図右端F),Total/4(図608右図左端)にも4段目の兆しが出たが頭打ち状態にある.

図608 .2025年2月までの日本全域2年間CMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.震源円の直径は地震断層長である(月刊地震予報173)が,この期間の地震規模は小さいので実際のCMT規模に1.5を加えΔM+1.5とし,8倍拡大.数字とMは,M7.0以上CMT解発生年月日・規模.
右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間開始(下端2023年3月1日)から終了(上端2025年2月28日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36;特報5).
Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積ΣMのPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
地震断層面積移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pdを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
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3.2025年2月の月刊地震予報
伊豆弧北端の丹沢・伊豆衝突による西南日本の土台骨を破損した2024年1月1日能登半島地震M7.5(月刊地震予報173)後の2024年4月の台湾M7.4Psおよび2024年8月の日向灘M7.0psは,琉球海溝域の歪解放が西南海溝TrPh震源帯で継続していることを示しており,更なる活動が心配される.日本海溝域ではM3₋4のCMTおよびIM解が多数発生あるが,大地震の前兆であるか分からない.
巨大地震の来襲が心配される千島海溝域は2025年に入りCMTが無く静穏化しているが,今後の活動再開に警戒が必要である.