月刊地震予報133)2020年9月12日の北上沖島弧Mantle・太平洋Slab衝突地震M6.2,2020年10月の月刊地震予報

1.2020年9月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2020年9月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で11個0.120月分,千島海溝域で1個0.205月分,日本海溝域で4個0.709月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.007月分,南海・琉球海溝域で5個0.045月分であった(2020年9月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比は2020年7月に1割半に減少し,2020年8月に半.割以下まで減少したが,9月には1割台に回復した.
最大地震は2020年9月12日北上沖島弧Mantle・太平洋Slab衝突地震M6.2Pであった.日本全域のCMT総地震断層面積規模はM6.3で他にM6.0以上の地震はない.

2.2020年9月12日の北上沖島弧Mantle・太平洋Slab衝突地震M6.2

 2020年9月12日11時44分北上の南三陸沖で島弧Mantle・太平洋Slab衝突地震M6.2が深度43(Slab上面からの深度+5)kmが起き,北海道から中部地方まで揺れ,北上で最大震度4が記録された(図380)

図380.2020年9月12日11時44分M6.2の震度分布.
 気象庁HPの震度分布図より,青×が震央.Clickすると拡大します.

発震機構は圧縮過剰の逆断層P型である.圧縮P軸傾斜は太平洋Plateの島弧側へのPlate運動方位(図381右下図中央付近の紫色折線)の逆方位(右下図上端)である.この海溝側への傾斜は,島弧側に傾斜する衝突境界面(図381中図)に摩擦力が働き衝突していることを意味している.同震源域では,2020年4月20日にM6.2pがほぼ同所で起こっており(月刊地震予報128),2020年9月17日9時17分にも北端でM4.5+pが起こっている(図381).

図381.2018年から2020年9月までの北上沖島弧Mantle・太平洋Slab衝突地震CMT解.
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 この北上沖Mantle・Slab衝突震源域(ofAcKtk)には212個のCMT解があり,最大は2015年5月13日M6.8p深度46(+4)kmで(速報68),総地震断層面積規模はM7.4である(図382).今回の規模M6.2以上のCMT解は約20分の1の9個であるが,その総地震断層規模はM7.2と総CMTよりM0.2少ない程度で,全体の活動を代表している.
 CMT解は2011年3月11日東北沖巨大地震後急増し,2014年に静穏化したが,2015年に活発化・2017年に静穏化・2018年に再活発化して現在に至っている,

図382.1994年9月以降の北上沖島弧Mantle・太平洋Slab衝突地震のCMT解.
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 1922年以降の観測地震を含めた地震459個の総地震断層面積規模はM8.0で,最大は1936年11月3日M7.4深度61(+20)km・1978年6月12日M7.4深度40(+4)kmであり,次大が1937年7月27日M7.1深度56(+15)kmである(図383).今回の規模M6.2以上の地震は25個と約20分の1である.

 CMT最大の2015年5月13日M6.8は,本震源域中央付近に位置するが,最大・次大観測地震の1936年11月3日M7.4・1937年7月27日M7.1・1978年6月2日M7.4は南端の金華山沖で起こっている(図384).

図384.M6.8以上の北上沖島弧Mantle・太平洋Slab衝突地震,
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3.2020年10月の月刊地震予報

2011年3月11日の東北沖巨大地震前には,地震学者によって「宮城県沖」と呼ばれている1936年と1978年金華山沖M7.4の地震が今にも再来すると予測されていた.2011年3月9日の最大前震M7.3についての解説では,「宮城県沖地震ではない」とのことであった.
東北沖巨大地震による400年前から蓄積された巨大歪の解放によって北上沖島弧Mantle・太平洋Slab衝突震源域の組換えも予想される.その組換えが隠されていた巨大歪を解明する手掛かりになることから今後の動静を注意深く見守ることにする.
2020年8月は,2020年1月以来7カ月ぶりにM6.0以上の地震がなく,9月も1個に留まり,静穏化が続いている.この静穏化が,嵐の前の静けさなのか否かは分からない.新型Corona禍と豪雨の続く日本列島下で,地震への警戒を怠ることはできない.

月刊地震予報132)2020年8月の静穏化,2020年9月の月刊地震予報

1.2020年8月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2020年8月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で7個0.038月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で3個0.146月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.056月分,南海・琉球海溝域で2個0.024月分であった(2020年8月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比は2020年7月に1割半に減少し,2020年8月に0.4割まで減少した.
 最大地震は2020年8月6日茨城沖島弧地殻・太平洋Slab衝突地震M5.6P深度54(Slab深度+31)kmであった.日本全域のCMT総地震断層面積規模はM5.9でM6.0以上の地震はなかった.

2.2020年9月の月刊地震予報

 2020年8月は,2020年1月以来7カ月ぶりにM6.0以上の地震がなかった.これが静穏期の始まりなのか,嵐の前の静けさなのか分からないが,新型Corona禍と豪雨の続く日本列島を襲う地震について警戒を怠ることはできない.

月刊地震予報131)伊豆海溝同心円状屈曲Slab・伊豆弧地殻衝突地震M6.0および伊豆・小笠原・Mariana海溝域の沈込Slab地震,2020年8月の月刊地震予報

1.2020年7月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2020年7月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で19個0.147月分,千島海溝域で4個0.036月分,日本海溝域で5個0.066月分,伊豆・小笠原海溝域で5個0.663月分,南海・琉球海溝域で5個0.061月分であった(2020年7月日本全図月別).日本全域総地震断層面積比は2020年2月・3月の千島海溝域の活動によって1.5・3.1ヶ月分に活発化し,2020年4月に6割,2020年5月に2割と減少した後,2020年6月に4割に増加したが,2020年7月に再び1割半に減少した.
 最大地震は2020年7月30日伊豆Slab・伊豆弧地殻衝突地震M6.0で,M6.0以上の地震は1つである.

2.伊豆海溝同心円状屈曲Slab・伊豆弧地殻衝突地震M6.0および伊豆・小笠原・Mariana海溝域の沈込Slab地震

 2020年7月30日9時35分鳥島沖の伊豆海溝軸付近で同心円状屈曲Slabと伊豆弧地殻との衝突地震M6.0Pe/深度20km(Slab上面深度+10km)が起こり,翌日ほぼ同所で7月31日14時16分M4.7Pe/45(+36)kmが起こっている(図376).
 2020年には4月18日に今年最大の垂直(Vertical)Slab地震M6.8/477(+73)km(月刊地震予報128)が起こり,5月23日には翼β(Wingβ)Slab地震M4.8p/371(+62)km,7月17日に翼γ(Wingγ)Slab地震M5.1+np/536(-135)kmが起こっている.

図376.2020年1-7月の伊豆・小笠原・Mariana海溝域のCMT解歪軸方位.
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)の数字M:発生年月日と規模.
 時系列図(右中図)右縁の数字:2020年の月数.
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 伊豆・小笠原・Mariana 海溝に沈込むSlab形態は多様で(月刊地震予報124),その中で注目されるのは2020年の5月に起こった深度410kmのMantleα>βの相転移面上に翼のように載る翼βと7月に起こった深度550kmのβ>γ相転移面上に載る翼γである(図377,Niitsuma, 2020).
 Plate運動する海洋底下には随行するMantleが連続するが,海溝に沿って同心円状屈曲Slabになった海洋底に行く手を阻まれSlabに沿って下方に運動方向を転じる.随行Mantle運動方向変化の反作用としてSlabを上方に押上げる応力が働く.Slab先端がMantle相転移深度に達していない場合には,Slabを翼状に押上げる.α>β・β>γのMantle相転移は低温程進行し易く,海洋底に近い随行Mantle程,深海水によって冷却されていることと,体積が地球中心からの半径に比例して大きくなるので,行き場を失った随行Mantleの中で海洋底冷却によって低温な地球中心半径の大きいMantleがSlab下面に沿って優先的に下降する.Slab先端が相転移深度に達する前にその下の高圧域まで下降して通過する随行Mantleは相転移する.相転移して高密度になった随行Mantleの上に相転移していないSlabは沈込めず相転移面の上に翼Slabを形成する.

図377.深度410km・550km・660kmのMantle相転移面支配下の伊豆・小笠原・Mariana海溝域Slabの沈込様式.
 八丈島を境界に北側の鹿島小円南区では410km相転移面上に載る翼β,南側の伊豆小円区では550km相転移面上に載る翼γ,小笠原小円区では660km相転移面を貫く垂直(Vertical)Slab,小笠原海台小円区とMariana小円区では横臥(Recumbent)Slabになっている.
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 本海溝域ではM7.0以上のCMT解が11個あり,Benioff図(図378右中図左縁)で累積地震断層面積が灰色斜線で示されるPlate運動面積の増大に対応して階段状に増大していることから,Plate運動によって歪が蓄積して限界に達すると地震によって解消されている様子が分かる.対数地震断層面積areaM図(図378右中図左端)ではBenioff図の階段に対応する突出した嶺が認められる.
 最大の地震は,正断層型(黒色)の下部Mantle上面深度660km相転移面を貫く垂直Slab先端地震2015年5月30日M8.1/682km(速報68)である.低温のSlabは下部Mantle上面で相転移できず軽いまま浮かぶが,その浮力以上に沈込めば相転移が連鎖的に進行することが予想される.最大地震の4日後にCMT最深695kmの引張過剰正断層型(紫色)2015年6月3日M5.6が起こり,下部MantleへSlabが引張られ落下していることが示された(速報69).

図378.伊豆・小笠原・Mariana海溝域Slab地震のCMT解歪軸方位.
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)の数字M:M7.0以上の発生年月日と規模.
 時系列図(右中図)右縁の数字:年数.
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 M7.0以上の地震は,震央地図(図378左図)の最大地震を境界として,北側に逆断層型(赤色・Pink色),南側に引張過剰正断層型(青色)のM7.0以上CMTが分布している.唯一の例外は最南端のMariana小円区の逆断層型(赤色)2013年5月14日M7.3である.
 逆断層型の規模はM7.0からM7.3と小さく,翼β・翼γ・横臥Slabの付根部に位置している.付根部に歪が蓄積するが,本海溝域のSlab沈込に付随する歪であり,Slab沈込を主動するものではない.
 正断層型地震の規模はM7.9にも及び大きいが,震源は翼βよりも浅い海溝沿同心円状屈曲部に位置している.厚さのあるSlabが同心円状屈曲すればSlab上面に引張力,下面に圧縮力が働くが,これらの大地震の震源はCMT震源分布域の下縁に位置しており,Slab下面に沿って下方に引張応力が働いていることを示している.
 同心円状屈曲したまま下部Mantle上面に載る横臥Slabに沿う随行Mantleの運動を検討する.横臥Slabの運動が下部Mantle上面に沿って海洋底拡大海嶺まで連続してBelt Conveyer状になっている場合には,海洋底がPlate運動によって距離r移動する間に厚さrの随行Mantleの断面積はr2になる.半径rの同心円状屈曲する横臥Slabの長さは,半径rの円周2πrの半分πrで,断面積は半径rの円の面積πr2の半分の(πr2)/2になる.Plate運動による断面積πr2の随行Mantleが(πr2)/2を通過するには,運動速度を3倍に加速して,平均2倍の速度で通過しなければならない(図379).

図379.半径rの同心円状屈曲したまま下部Mantle上面に載る横臥Slab内の随行Mantle移動幾何学.

 3倍まで加速する随行Mantleが接する横臥Slab上部の下縁には引張歪が蓄積し,正断層型地震によって解放される.横臥Slab上部に巨大正断層型地震が起っていることは,引張歪の蓄積を支持している.一方,横臥Slab下部を通過する随行Manlteは減速するので逆断層型地震が予想されるが,2013年5月14日逆断層型地震M7.3が起こっており,横臥Slabの地震活動が随行Mantleの移動速度の加速・減速に起因していることが分かる.

3.2020年8月の月刊地震予報

 2020年には伊豆・小笠原・Mariana海溝域の沈込Slab地震が活発化している中で7月30日に伊豆海溝軸でM6.0が起こった.この海溝域の太平洋Plate沈込は,関東地方や東北日本そして西南日本の地震活動に直結しているので今後の地震活動を注意深く見守る必要がある.

引用文献

Niitsuma, N.(2020) Push out and Phase Transition of Mantle under the Izu Slab, recorded in CMT solutions of JMA. 2020th Annual Meeting of Japan GeoScience Union and Amer. Geophys. Union, S-MP39-07.