月刊地震予報147)宮古島沖M6.5,鳥島沖M6.4,2021年12月の月刊地震予報

1.2021年11月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年11月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で12個0.377月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で4個0.069月分,伊豆・小笠原海溝域で4個1.091月分,南海・琉球海溝域で4個0.544月分であった(2021年11月日本全図月別).総地震断層面積規模はΣM6.7で.M6.0以上の地震は,11月11日琉球海溝域宮古島沖TrPhRk深度115㎞M6.5Toと11月29日伊豆海溝域鳥島沖TrPcI深度90㎞M6.4Toの2個である(図441).

図441.2020年12月から2021年11月までの日本全域年間CMT解
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)の数字とMは,2021年11月のM6.0以上の地震・過去1年間の最大地震(月刊地震予報138).
 地震断層面積変遷(右上下図)については図422説明参照(6921>月刊地震予報144).
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 これらの地震の震度分布を図示した(図442).M6.5の宮古島沖の地震の場合は八重山諸島から琉球列島にかけて震度3に達しており(図442左),鳥島沖の地震では小笠原諸島から伊豆諸島・関東地方・東北地方にかけて震度2までとなっている(図442右図).

図442. 2021年11月のM6.0以上の地震の震度分布.
 左図:2021年11月11日宮古島沖M6.5.
右図:2021年11月29日鳥島沖M6.4.
赤色×:震央,1-3:震度.気象庁HomePageより.
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2.宮古島沖琉球海溝震源帯M6.5To深度115km

 2021年11月11日0時45分,琉球海溝域八重山小円区宮古島沖の琉球海溝軸から7㎞外側の深度115kmでM6.5Torが発生した(図443).この深度は琉球海溝地震帯TrPhの琉球Slab上面から108㎞のSlab下底部に当たる.

図443.2021年11月11日宮古島沖地震帯M6.5Toの琉球海溝域半年間主歪軸方位図.
 左図:震央は北北西向き青色線.北西‐南東向きの曲線はPhilippine海Plateの南華Plateに対する2°(222㎞)間隔のEuler緯線.
中図:海溝距離断面図.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝軸から海溝距離dTr=200kmの海溝軸に沿う島弧側縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年6月から半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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 本地震は,本年8月5日の花蓮沖(月刊地震予報144)と10月24日の台湾の地震(月刊地震予報146)に続き,琉球Slab深部で起こっている.衝突している台湾では逆断層型であったが,今回の宮古島沖と花蓮沖は引張過剰の正断層型である.海溝から同心円状屈曲して沈込むSlab深部は短縮するため圧縮歪が蓄積するはずであるが,引張歪による地震が今回発生したことが注目される.
 琉球海溝域の特異な点は,「台湾の衝突」と逆行する「琉球列島の移動」である.台湾の衝突は,脊梁山脈に鎮座する旧日本領最高峰の新高山(玉山3997m)を隆起させるとともに地殻下底のMoho面を地表に露出させ,草木の根の伸長よりも大きな隆起速度は,植生のない「月世界」と呼ばれる景観を造っている.
 琉球列島がPlate運動に逆行していることは,衛星測距が開始されて間もなく判明した(図444).琉球列島の南東方向への移動は,背弧の沖縄海盆の拡大を支持するとともに,その拡大が琉球列島にも及んでいることを物語っている.ただし,琉球海溝の外側の南大東島は,Plate運動方向の北西方向に移動している.

図444.衛星測距によるPlate運動に逆行する琉球列島(after新妻,2007).
左下角の矢印の長さが年間2cmの移動量.
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 台湾の衝突は脊梁山脈とその東側の海岸山脈の間を通る南華PlateとPhilippine海Plateの境界で起こっている.海岸山脈の南側は台湾小円区,北側は花蓮小円区に属し,Plate境界は花蓮から大きく屈曲して琉球海溝軸に続いている.琉球海溝から台湾までの沈込・衝突境界に沿うCMT解の最大深度は,琉球小円区で256㎞,八重山小円区と花蓮小円区境界で250㎞であるが,海岸山脈沿いは87㎞と浅くなっている(図445右上の縦断面図).

図445.琉球Slabと台湾の琉球海溝震源帯TrPh・平面化震源帯PhuBdのCMT解.
左図:震央地図.北西‐南東の曲線は南華Plateに対するPhilippine海PlatePH-SCのEuler緯線.
中図:海溝距離断面図.
右上図:海溝距離dTr=+200㎞で海溝軸に沿う島弧側縦断面図.
右中図:時系列図.右縁の数字は西暦年数.
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 琉球海溝には比較的平坦な西Philippine海盆底が沈込んでSlabとなっているが,台湾には断裂帯で切断された古第三紀の西Philippine海盆拡大軸が沈込み,断層によって幾重にも切断され折重なり,海岸山脈を形成している.琉球海溝のSlab長は傾斜を考慮すると300㎞に達するが,海岸山脈沿い震源の最大深度87㎞は断層によって切断されて付加していることを示している.
 台湾の衝突は琉球Slabを断層で切断し,幾重にも折重なっているが,折重なり度合が次第に減少し,折り重なりのないSlabに連続すると仮定すると,海溝軸は海洋側に屈曲する(新妻,2007).Plate運動に逆行する琉球列島の中で台湾に最も近い与那国島で移動速度が最大であることは(図444),折り重なり度合いが次第に減少していることを支持する.
 沖縄海溝域のCMT解の地震断層を積算するBenioff曲線は,地震断層面積のPlate運動面積に対する比が0.36と小さいが,ほぼ一様に増大している(図446右図右端のTotal).しかし,沖縄海盆震源帯Okw・平面化震源帯PhuBd・琉球海溝震源帯TrPhの主要震源帯では,M7.0以上の地震による明確な段差が認められる(図446右図).各震源帯の段差は同期せず互い違いに起こり,全体として一つの系として歪を各震源帯に循環させながら解放している(月刊地震予報139).
最後の大きな段差は,沖縄海盆震源帯Okw最大の2015年11月14日M7.1(速報74}で,その前の大きな段差は平面化震源帯の2011年11月8日M7.0,その前は琉球海溝震源帯TrPhの2010年2月27日M7.2であり,琉球海溝震源帯から平面化震源帯そして沖縄海盆震源帯へと海溝から背弧側に移行している.
 一つ前の周期は琉球海溝震源帯TrPhの2001年12月18日M7.3の段差から開始し,平面化震源帯PhuBdの2005年10月16日M6.5,そして沖縄海盆震源帯Okwの2007年4月20日M6.7へと移行している(図446右図).

図446.琉球海溝域の沖縄海盆震源帯Okw・平面化震源帯PhuBd・琉球海溝震源帯TrPhのCMT解変遷.
左図:全CMT解震央分布図.北西‐南東の曲線はPhilippine海Plateの南華Plateに対するEuler緯線.
中図:全CMT解震源の海溝距離断面分布.
右図:左から沖縄海盆震源帯Okw・平面化震源帯PhuBd・琉球海溝震源帯TrPh・全TotalのCMT解地震断層面積時系列図.areaMは移動平均地震断層面積規模曲線,Benioffは地震断層面積積算Benioff曲線.
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 現在は,沖縄海盆震源帯Okw最大地震2015年11月14日M7.1に続く琉球海溝震源帯TrPhのM7.0以上の大地震を待つ状態にある.琉球海溝震源帯のPlate境界面は摩擦によって固着しているが,拡大によって容積を増加させた沖縄海盆下のMantle圧の減少が,海洋底と共にPlate運動してきた随行Mantleを引き込んでいる.背弧側に引き込まれる随行Mantleは琉球Slab底を掃引し,引張歪を蓄積させ,今回の宮古島沖M6.5と花蓮沖M6.3のSlab底正断層型地震を起こしたと考えられる.
 琉球Slab上面と島弧地殻との境界面の摩擦力より随行Mantleの掃引による琉球Slab底の引張歪や,沖縄海盆からのMantle押しが上回れば,境界面に沿う剪断歪が解放される大地震が起こる.震源は海底面に近いために巨大津波も伴うであろう.
 琉球海溝域の沈込Plate境界面に関係する最大地震は,以下の3個であり,いずれも台湾で起こっている.
  ・CMT解で,1999年9月21日M7.7の集集地震
  ・観測地震で,1984年11月15日M7.8
  ・歴史被害地震で,1920年6月5日M8.3

3.伊豆海溝域鳥島沖TrPcI深度90㎞M6.4To

 2021年11月29日21時40分,伊豆海溝域鳥島沖の伊豆海溝軸から15㎞海溝外の深度90㎞でM6.4Toが発生した(図447).

図447.2021年11月29日伊豆海溝域鳥島沖深度90㎞M6.4Toの2019年6月から2021年11月までの半年間の伊豆海溝域のCMT解の主歪軸方位図.
左図:震央地図.西北西‐南東方向の曲線は太平洋PlateのPhilippine海Plateに対する2°毎(222㎞)のEuler緯線でPlate運動PC-PHの方位に沿っている.
中図:海溝距離断面図.数字とMはM6.0以上の地震の発生年月日と規模.
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 発震機構は引張過剰の正断層型Toである.主引張歪方位は東北東でEuler緯線に斜交し,伊豆海溝軸方位に直交する海溝傾斜方位を向いている.
 海溝軸から太平洋底は同心円状屈曲して沈込み太平洋Slabとなる.同心円状屈曲するとSlab表層付近は伸長して引張られるが,深部では圧縮されることから深度90㎞で引張過剰の正断層型の発震機構は,同心円状屈曲による圧縮を上回る引張歪の蓄積を意味する.
 同心円状屈曲した太平洋Slab上面は伊豆弧地殻に固着し,Slabが沈込めない状態にあれば,Slabに行く手を遮られた太平洋底と共にPlate運動してきた随行Mantleが下方に流出する.このMantle下方流がSlab下面を掃引して引張歪を蓄積させる.
 随行Manlteの背弧側への流出は,上部Mantleのα相からβ相へとβ相からγ相への相転移境界深度410㎞と550㎞に沿いSlabを押し上げて翼状Slab(月刊地震予報119月刊地震予報131)を形成している(図448).深度300㎞からほぼ垂直に沈込むSlab上面より背弧側に分布する過去半年間のCMT震源にも翼状Slab震源が認められる(図447).

図448.伊豆海溝域のCMT解.

 海溝軸域の深度50㎞以深の沈込Slab底の地震活動は,随行Mantleの背弧側への流出による掃引に由ることが予想され,伊豆海溝域に特徴的な翼状Slabも随行MantleがSlabを押し上げて形成されると考えられる.CMT解地震断層面積の移動平均規模areaMの時系列比較をすると,海溝軸域Slab深部の地震活動は,翼状Slabβと翼状Slabγとの地震活動が共に大きい時に起こっており,随行Mantleの背弧側流出を支持している.

図449.鹿島小円南区・八丈小円区・伊豆小円北区・南区の海溝軸域深度50㎞以深と翼状Slabβ・翼状SalbγのCMT解.
左図:震央地図.
中図:海溝距離断面図
右図:海溝軸域深度50㎞以深と翼状Slabβ・翼状Salbγの地震断層面積移動平均規模areaM比較.
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 今回の2021年11月29日の鳥島沖M6.4の震源では,翌日の11月30日15時53分にM5.4toが起こっている.この連発地震の震央距離差は6㎞,深度差は62㎞であり,歪軸偏角は2.3°と殆ど一致し,この深度範囲に同一歪場が広がっていることを示している.
 観測地震の最大規模はM6.6であるが,同規模の地震が以下の5個ある.
  ・1970年12月8日深度212㎞
  ・1982年9月6日深度180㎞
  ・2001年4月15日深度0㎞M6.6to
  ・2009年8月13日深度57㎞M6.6P
  ・2015年5月31日深度45㎞M6.6to
今回の連発地震が前震としても本震と予想される規模はM6.6程度が予想される.

4.2021年12月の月刊地震予報

 海溝から背弧側に地震活動が循環する琉球海溝域では,沖縄海盆拡大最大地震2015年11月14日M7.1の次の琉球列島・台湾の巨大地震の準備段階に入っている.巨大地震前には巨大地震と同じ歪軸方位の前震が連発地震として起こることから,連発地震の歪軸方位に注意し,警戒が必要である.
 伊豆海溝域では鳥島沖の海溝軸付近で連発地震が起こっているが,それが前震としても本震はM6.6程度と予想され,津波の発生も心配されるので警戒が必要である.
 2021年11月の琉球海溝域と伊豆海溝域のM6.0以上の地震は,海洋底と共にPlate運動してきた随行Mantleの背弧側流出による掃引歪によると考えられる.随行MantleはSlabに行く手を阻まれ,300㎞程度の琉球Slabや翼状Slabでは,その下端や裂目から背弧側に流出すると考えられる.この流出Mantleは日本全域に及ぶことが予想されるので,検討が必要である.

引用文献

新妻信明(2007)背弧海盆の拡大と衝突によるスラブ重複.「プレートテクトニクス―その新展開と日本列島―」,5.17章,共立出版,126-129.

月刊地震予報146)台湾M6.3,東京湾奥部M5.9,歪蓄積周期の呼称変更,2021年11月の月刊地震予報

1.2021年10月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年10月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で8個0.213月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で5個0.614月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.138月分,南海・琉球海溝域で1個0.288月分であった(2021年10月日本全図月別).総地震断層面積規模はΣM6.5で.M6.0以上の地震は,10月24日琉球海溝域台湾深度73㎞M6.3Prの最大地震1個である.10月7日には,電車の脱線事故を起こした震度5強の東京湾奥部深度75㎞M5.9が起こっている(図435).

図435.2020年11月から2021年10月までの日本全域年間CMT解
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)のMと数字は,2021年10月のM5.9以上の地震・過去1年間の最大地震(月刊地震予報138).
 地震断層面積変遷(右上下図)については図422説明参照(6921>月刊地震予報144).
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 これらの地震の震度分布は,M6.3の台湾の地震が八重山諸島に限られているのに対し(図436右),東京湾奥部の地震ではM5.9と小さいにもかかわらず,関東地方から東北地方そして伊豆諸島にも及び,太平洋Slabとの関連を示している(図436左図).

図436. 2021年10月のM5.9以上の地震の震度分布.
 2021年10月7日東京湾奥部丹沢震源帯千葉深度75㎞M5.9(左),10月24日琉球海溝震源帯台湾深度73㎞M6.3Pr(右).
赤色×:震央,1-5:震度.気象庁HomePageより.
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2.台湾M6.3Pr深度73km

 2021年10月24日14時11分,琉球海溝域花蓮小円区の台湾でM6.3Pr深度73kmが発生した(図437).この深度は琉球海溝地震帯のPhilippine海Slab上面から63㎞のSlab深部に当たる.
 本地震は、過去半年間のCMT解19個中最大で,発震機構は圧縮過剰逆断層型で,その圧縮軸方位は(図437右下図のPink〇印),主歪軸方位図の基準としている海溝傾斜方位(中央横線[TrDip])から45°以上ずれているのでPrとなっているが,Plate運動方位線(紫色折線:Sub)に接しており、Philippine海Plateの南華Plateに対する運動方位PH-SCに沿うEuler緯線(図437左図)に平行している.圧縮主歪軸の傾斜は主歪軸方位図中心部に位置し,海溝傾斜と同じ島弧側傾斜で,Plate運動により過剰屈曲したSlab深部の圧縮歪による地震であることを示している.Philippine海Plateの沈込障害となるSlab深部圧縮歪の解放は,琉球海溝域のSlab沈込と随行Mantleの背弧側への流出を促進するであろう.

図437.琉球海溝域半年間主歪軸方位図中の2021年10月24日琉球海溝地震帯M6.3Pr.
 左図:震央は西北西向きPink色線.北西‐南東向きの曲線はPhilippine海Plateの南華Plateに対する2°(222㎞)間隔のEuler緯線.震源は-54°緯線のすぐ下に位置しており,Plate運動速度は年間8.3cmである.図の下にはPlate運動のEuler極と運動速度.
中図:海溝距離断面図.震源は同心円状に屈曲するPhilippine海Slab深部に在る.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝軸から島弧側に海溝距離dTr=200kmの海溝軸沿縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM.震源は花蓮小円区中央付近の+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年10月から半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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3.東京湾奥部M5.9pr

  2021年10月7日22時41分,東京湾奥深度75㎞の丹沢Slab震源帯最南下端に当たる千葉震源域でM5.9prが発生した(図438).

図438.2019年11月から2021年10月までの2年間の相模Trough域のCMT解の主歪軸方位図中の2021年10月7日東京湾奥深度75㎞M5.9pr.
左図:震央地図.北北西‐南南東方向の曲線はPhilippine海Plateの北米Plateに対する1°毎(111㎞)のEuler緯線でPlate運動PH-NAの方位に沿っている.2021年10月の東京湾奥の地震の主歪方位は東西で,大きく斜交している.
中図:海溝距離断面図.
数字とMはM5.9以上の地震および大正・元禄関東地震の発生年月日と規模.
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 「週間現代」は『M8大地震「今年12月鎌倉」説は本当か』との記事(2021年10月23日号60-63頁)を掲載した.この記事では,本「月刊地震予報」の内容を引用する形で「今年12月までに関東大地震が起きる可能性がある」としている.しかし,引用されたと思われる月刊地震予報130では,2020年6月25日に起こった銚子沖M6.1の震源域で,1923年9月1日の大正関東地震M7.9の41日前と90日前にも地震が起っていたので警戒を呼びかけた.ただし,警戒は昨年2020年9月までで,今年2021年12月としたのは,読み違いであることは執筆記者も認めている.この記事に関する電話取材の際に,昨年起こらなかったのは「慶長地震後に開始した歪蓄積周期末期に起こった大正関東地震の前震を,東北沖平成地震後に開始したばかりの歪蓄積周期開始時の現在にそのまま対応させられない」からであろうと説明したが,聴く耳を持っていなかったようである.また,「今年12月の鎌倉説」についての説明もなかった.
 歪蓄積周期(月刊地震予報122)については,これまで巨大歪を解放した巨大地震の年号を付けて呼んでいたが,現在の歪蓄積周期名は400年後の巨大地震が起こるまで分からず不便なので,巨大歪を解放して新たな歪蓄積を開始させた巨大地震の年号を歪蓄積周期名として使用することにする.これまで東北沖巨大地震と呼んできた 2011年3月11日 M9.0 を過去の巨大地震と比較し易くするため”東北沖平成(巨大)地震”と呼ぶ事にする.そして東北沖平成巨大地震が,慶長歪蓄積周期に蓄積した歪を解放し,平成歪蓄積周期を開始させたと定義することにする.
 平成歪蓄積周期初期に当たる現在の日本列島の歪状態は,慶長歪蓄積周期末期の大正関東地震の時と異なっていることが予想される.1703年の元禄関東地震は1611年に開始した慶長歪蓄積周期初期に起こっているので対応が期待されるが,記録文書が少ないのが残念である.
 丹沢Slab震源帯の千葉震源域ではCMT解(1994年以降)28個が報告されているが,2011年3月11日の東北沖平成地震前の慶長歪蓄積期末には3個しか起こっておらず,2005年7月23日のM6.0Pr深度73㎞が最大地震となっている.平成歪蓄積期が開始して25個と急増したCMT解中で,本地震M5.9は最大である.
 関東地方で起こっている世界に類を見ない地震活動は,房総沖に地球上唯一の沈込Plate三重会合点(図438左図)が存在するからである.この三重会合点では,関東地方の北米Plateと伊豆弧のPhilippine海Plate,そしてそれらに沈込む太平洋Plateが三つ巴になって接している.
 関東地方で最も重要なPlate境界は,三重会合点から西北西に伸びる相模Troughで,丹沢山地と伊豆半島の間の神縄断層を通り駿河Troughに続いている.このPlate境界に沿って東名高速道が通っているが,地質記録によるとこの300万年前以前はplate境界が中央高速道に沿う丹沢山地と関東山地との間にあったことが判明している(新妻,2007).700万年前から関東山地の下に沈込みを開始した丹沢地塊は500万年前から関東山地と衝突.300万年前には関東山地と合体し,今度は南から伊豆半島に沈込まれ激しい衝突を受けている.
 700万年前以前の丹沢地塊は,Philippine海Plateに属していた.伊豆海溝から沈込む太平洋Slab上面深度が約100㎞に達するとMagmaが供給され,海底噴出によって伊豆諸島のような火山島ができる.丹沢地塊もこうしてできた火山島であった.(図439).丹沢地塊を作る火山活動があった事は,その東側に太平洋Slabが上面深度100㎞に達するまで沈込始んだ前弧海底が在ったことを意味している.伊豆海溝までの距離約200㎞.

図439.伊豆海溝域の鹿島小円南区南部から伊豆小円南区の活火山と太平洋Slabの関係.
△印:活火山.主歪軸方位は2020年11月から2021年10月までの1年間のCMT解.
左図:震央地図.2°毎(間隔222㎞)のEuler緯線はPhilippine海Plateに対する太平洋PlateのPlate運動PC-PH.
中図:海溝距離断面図.上縁の海溝距離0㎞が伊豆海溝の位置で,活火山は200㎞付近に集中している.CMT解は同心円状屈曲して伊豆海溝から沈込む太平洋Slab上面から下に分布し,上面深度300㎞付近で平面化してほぼ垂直に沈込むが,CMT解はSlab上面より下に分布している.ただし,深度410㎞と550㎞のMantle相転移面付近で背弧側に羽状に分布する(月刊地震予報131).
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 Magnaが海洋底に達し,噴火口から噴出した大量の噴出物が集積して海面に達すると火山島になる.火山島の地下にはMagmaがゆっくり固結した深成岩が併入し,この深成岩が島弧の厚い地殻を構成している.
 島弧地殻を持たない火山島から伊豆海溝までの前弧海底は,Plate境界から沈込み,関東平野下の丹沢Slab となっている.島弧地殻を持つ火山島は,周囲の海底の沈込に引きずられて少しは沈込むものの,沈込めず衝突する.衝突された側は隆起・削剥されて大量の礫を沈込境界に供給する.中央高速道・東名高速道沿には,火山噴出物を覆う深海泥岩とそれらを覆う膨大な量の礫岩が露出している.その礫岩は首都圏の大型建造物の骨材になっている.また、関東平野には日本海溝から太平洋Slabも沈込んでおり,衝突して丹沢Slab震源帯となっている.
 関東山地に約500万年前から衝突合体した丹沢地塊とともに,丹沢Slabも北米Plateに移行している.今回の地震の震度分布(図436)が,北米Plateの東北地方上部Mantleと太平洋Slabの衝突による前弧沖震源帯と類似している(例えば月刊地震予報141の図410)ことも頷ける.
 2020年6月25日に起こった銚子沖の地震は,相模Troughから沈込む相模Slab上面で起こった(図438中上図).相模Slab上面には大正・元禄関東地震の震源が分布するので,前兆の可能性もあり,警戒を呼び掛けた.その主歪軸方位はPhilippine海Plateの北米Plateに対するPlate運動方位PH-NAに沿い(図438左図),太平洋Plateの北米Plateに対するPlate運動方位PC-NAに沿った今回の地震とは異なっている(図440左図).

図440.2021年10月7日東京湾奥深度75㎞M5.9prと,2019年11月から2021年10月までの2年間の三重会合点域のCMT解の主歪軸方位図.
左図:震央地図.北北西‐南南東方向の曲線は太平洋Plateの北米Plateに対する1°毎(111㎞)のEuler緯線でPlate運動PC-NAの方位に沿っている.今回の地震の主歪方位は,Plate運動方位に沿っているが,2020年6月の銚子沖地震は沿っていない.
中図:海溝距離断面図.
数字とMはM5.9以上の地震の発生年月日と規模.
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 今回の地震(M5.9)の主歪軸方位はPH-NA運動方位と異なり(図438),PC-NA運動方位に沿っており(図440左図),丹沢SlabがPhilippine海Plateでなく北米Plateに移行していることを示している.
 銚子沖M6.1は相模Slab上面の深度36㎞で起こったが,相模Slab下面の下に太平洋Slabが沈込んでいる.東北地方の震源は日本海溝から同心円状屈曲して沈込む太平洋Slab上面に沿って集中しているが(図440中上図),銚子沖地震の震源はそれより11㎞以上深いことから,関東地方では太平洋Slab 上面が相模Slabに押し下げられていることが分かる.
 今回の東京湾奥の地震の主圧縮歪軸傾斜が太平洋Slab上面傾斜と逆の海溝側を向いていることは,摩擦のある太平洋Slab上面の剪断歪が解放されたことを意味している.その震源が太平洋Slabの同心円状屈曲上面より17㎞深いことは(図440中上図),丹沢Slabも太平洋Slab 上面を押下げていることを意味している.
 東京湾奥から北方の五霞・下妻・下館に伸びる丹沢Slab震源帯北縁(月刊地震予報66特報7月刊地震予報130)の深度は,関東地方の地殻下底のMoho面よりも深く,通常の太平洋Slab上面より浅いことから,太平洋Slabに接触前の丹沢Slabに対応している(図440中上図).
 2021年2月から東北地方の上部Mantleと太平洋Slab間の地震が多発しているが(図435右上図),今回の地震もそれと一連の地震であろう.今後,歪を解放した太平洋Slabの活動に警戒が必要である.

4.2021年11月の月刊地震予報

 琉球海溝域の台湾でPhilippine海Plateの沈込障害となるSlab深部圧縮歪が解放され,Slab沈込と随行Mantleの背弧側への流出が促進されることが予想され,今後の動向を注意深く見守ることにする.
 首都圏を混乱に陥れた東京湾奥部の地震M5.9は,2021年2月から多発している東北地方の上部Mantleと太平洋Slab間の地震が関東地方に及び,上部Mantleに沈込んでいる丹沢Slabとの衝突によって発生した.これらの地震によって日本海溝から沈込む太平洋Slabの沈込障害が解放され,太平洋Slabの沈込様相が変化することも考えられるので,注意深く見守る必要がある.

引用文献

新妻信明(2007)プレートテクトニクス―その新展開と日本列島―.共立出版,292p.

月刊地震予報145)東海道沖M6.0,得撫島沖M6.6,日本海中部M6.1, 2021年10月の月刊地震予報

1.2021年9月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年9月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で13個0.460月分,千島海溝域で2個0.864月分,日本海溝域で2個0.478月分,伊豆・小笠原海溝域で3個0.536月分,南海・琉球海溝域で6個0.057月分であった(2021年9月日本全図月別).総地震断層面積規模はΣM6.8で.M6.0以上の地震は;
 9月14日伊豆海溝域東海道沖深度385kmのM6.0P WingBk
 9月21日千島海溝域得撫沖深度30kmのM6.6p CsmUr
 9月29日日本海中部深度394kmのM6.1+p VladK
の3個である(図429).

図429.2020年10月から2021年9月までの日本全域年間CMT解
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)のMと数字は,2021年9月のM6.0以上の地震と過去1年間の最大地震(6712>月刊地震予報138)の発生年月日と規模.
 地震断層面積変遷(右上下図)については図422説明参照(月刊地震予報144).
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 M6.0以上の地震の震度分布は,9月14日東海道沖のM6.0で震央に近い中部地方が震度1以下なのに関東地方・東北地方が震度3以上と典型的な異常震域となっている(図430左図).9月21日得撫島沖のM6.6では北海道と東北地方の太平洋沿岸で震度1が観測された(図430中図).9月29日日本海中部のM6.1では震央から離れた北海道から関東地方の太平洋沿岸が震度3と異常震域となっている(図430右図).

図430. 2021年9月のM6.0以上のCMT解の震度分布.
 2021年9月14日東海道沖M6.0(左),9月21日得撫島沖M6.6(中),9月29日日本海中部M6.1(右).
赤色×:震央,1-3:震度.気象庁HomePageより.
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2.東海道沖M6.0

 2021年9月14日7時16分東海道沖深度385kmの伊豆SlabでM6.0Pが発生した(図431).この深度は上部Mantle下底の相転移境界深度410kmの直上にある.

図431.2021年9月14日東海道沖M6.0Pの伊豆・小笠原海溝域半年間主歪軸方位図.
 左図:震央は半径50kmの丸印の中心の西北西向きPink色線.震源は海溝距離断面図の+印.同心円状に屈曲する太平洋Slabは小笠原海台小円区.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝距離dTr=0kmの海溝軸に沿う縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM.震源は+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年9月から遡って半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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 深度410kmは上部Mantleのα相(主要鉱物のカンラン石)がβ相に転移する境界である.太平洋底に随行してきたMantleのβ相への相転移に伴い,太平洋Slabが翼状に押し上げられる(図432;月刊地震予報131).押上げられた翼状SlabとVladivostokまで沈込むSlabとの間に裂目があり,地震波は中部地方に伝わらないが,翼の付け根を通過した地震波は太平洋Slabに伝わり日本海溝域の太平洋沿岸を異常震域にする.

図432.伊豆・小笠原・Mariana海溝域のMantle相転移面と太平洋の同心円状屈曲Slab・翼状Slab・鉛直Slab (月刊地震予報131,図377).
2021年9月14日東海道沖M6.0PはWingβSlab(黄緑色)の地震である.
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 今回のM6.0の震央は八丈小円区を挟んだ鹿島小円南区と伊豆小円北区との境界部に位置する(図431左の震央地図の丸印中心のPink色線・右上図の+印).この境界部の海溝軸は南北で,海溝軸に直交する海溝傾斜方位(図431右下の主歪軸方位図の中央横基準線TrDip)は西方位線Wと交わっている.
 今回のM6.0の主圧縮歪軸方位(Pink色丸印)はPlate運動方位(図431右下の主歪軸方位図の紫色線)と一致している.この歪軸方位の左上に接するほぼ同方位の青色△印は2021年6月1日伊豆海溝外深度60kmのM5.0T引張主歪軸方位である.
 6月1日海溝外引張過剰正断層型M5.0Tの3ヶ月半後にそのPlate運動方位のMantle相転移面上で圧縮過剰逆断層型M6.0Pが起ったことは,海洋底沈込に伴う随伴Mantleが深度410kmの相転移面へ影響を及ぼすには3ヶ月半を要したことになる.この間に伊勢湾の相転移深度上の深度355kmでも7月27日M4.9-npが起っている.

3.得撫島沖M6.6

 2021年9月21日5時25分に千島海溝域千島沖震源帯得撫島沖深度30kmのSlab上面付近でM6.6pが起こった(図433).この震源域では2021年7月13日にも深度30kmM6.2prが起っている(月刊地震予報143),これら逆断層型地震の圧縮主歪軸傾斜方位は主歪軸方位図(図433右下)の中央基準横線である海溝軸傾斜方位(TrDip)の島弧側と下端の海洋側との逆方位になっている.

図433.2021年9月21日千島海溝域千島沖震源帯得撫島沖M6.6の千島海溝域半年間主歪軸方位図.
 左図:震央は半径50kmの丸印の中心の西北西向きPink色線.震源は海溝距離断面図の+印.同心円状に屈曲・平面化する太平洋Slabは千島小円区.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝距離dTr=0kmの海溝軸に沿う縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM .震源は+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年9月以前の半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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 圧縮主歪軸の島弧側傾斜はSlabのPlate運動に伴う圧縮歪,海洋側傾斜はSlab上面と島弧地殻境界面に沿う剪断歪との判別に使用できる.島弧側傾斜はSlab上面と島弧地殻の固着,海洋側傾斜はSlab上面・島弧地殻境界面の摩擦すべりに対応する.7月13日M6.2が固着で今回の9月21日M6.6が剪断歪で,固着していたSlab上面がすべり始めたのであろう.
これらの歪軸方位は震央地図(図433左図)の半径50km丸印中心の赤線とその左に連続して作図されている赤色線である.この方位は中央基準横線より上の西方位線W付近と下端より上の東方位線E付近にあり,得撫島沖の海溝周辺に西北西のPlate運動方位(紫色折線sub)に斜交する歪場が形成されていることを示している.
 この間の2021年9月3日にほぼ同小円方位の下部Mantle上面直上の深度628kmでM5.9+pが起っている.その引張過剰圧縮歪軸方位はPlate運動方位(図432右下図の紫色折線Subに一致しており,太平洋SlabがPlate運動によって千島海溝から下部Mantle上面に到達したが,下部Mantleに沈込めずに起った地震であろう.

4.日本海中部M6.1+p

 2021年9月29日日本海中部深度394kmの上部Mantle下底面直上でM6.1+pが起った(図434).ほぼ同深度の384kmの日本海中部で2021年7月8日にもM4.6pが起っている.この深度では上述「2」の9月14日東海道沖深度385kmM6.0Pも起っている(図431).同深度の東海道沖震源は日本海溝域から同心円状屈曲・平面化してVladivostokまで沈込むSlabよりも深く,この間に異常震域の原因となる裂目の存在を確認できる(図434左の海溝距離断面図).

図434.2021年9月29日日本海中部M6.1+pの半年間主歪軸方位図.
 左図:震央は半径50kmの丸印の中心の橙色線.同心円状屈曲・平面化する太平洋Slabは襟裳小円区.震源は海溝距離断面図の+印.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝距離dTr=0kmの海溝軸に沿う縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM .震源は+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年9月から半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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 鹿島小円区の今回の地震M6.1とほぼ同じ小円方位の茨城沖から日本海溝への震源列がある(図434左の震央地図).この震源列の地震は5月29日深度32kmM4.9Pから開始し,8月3日深度31kmM4.7Pから連発地震になり(月刊地震予報144),8月下旬と9月中旬にも起っている.この小円方位では海溝傾斜方位TrDipとPlate運動方位(図434右下の歪軸方位図の中央横線と紫色折線)が交差しており,Plate運動による沈込が海溝傾斜に沿って最も効率よく進行する.圧縮主歪軸傾斜方位は,歪軸方位図の中央横線付近の島弧側と上下両端の海洋側に分離している.海洋側傾斜は沈込Slabと島弧地殻境界部の剪断歪による地震であり,島弧側傾斜は屈曲Slabの平面化に伴うSlab表面の伸張による引張剰逆断層型+pを主体としている.これらの地震の1-2ヶ月後に今回の地震が上部Mantle下底の相転移深度付近で発生している.

5.2021年10月の月刊地震予報

 千島海溝域の得撫島沖の太平洋Slab上面でPlate運動方位と異なるすべりに対応する剪断歪の地震が発生し,Slab下端が下部Mantle上面付近で引き込まれている.千島海溝域では2007年1月13日深度30kmM8.2・2013年5月24日深度609kmM8.3の巨大地震と静穏化を繰返してきたことから,次の巨大地震の襲来が懸念されている(月刊地震予報143).今後,千島海溝域の地震活動を注意深く見守り,巨大地震の前震となる連発地震の発生を注意深く監視する必要がある.
 日本列島全域の上部Mantle下底の地震が活発化している.特に伊豆海溝域の翼状SlabはSlab下面やSlab裂目を通り抜けるMantle流によって保持されており,海溝付近の島弧地殻・Slab上面間の歪蓄積とともにSlabが沈込むMantleに変動が起っていることも考えられ,警戒が必要である.