月刊地震予報146)台湾M6.3,東京湾奥部M5.9,歪蓄積周期の呼称変更,2021年11月の月刊地震予報

1.2021年10月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年10月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で8個0.213月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で5個0.614月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.138月分,南海・琉球海溝域で1個0.288月分であった(2021年10月日本全図月別).総地震断層面積規模はΣM6.5で.M6.0以上の地震は,10月24日琉球海溝域台湾深度73㎞M6.3Prの最大地震1個である.10月7日には,電車の脱線事故を起こした震度5強の東京湾奥部深度75㎞M5.9が起こっている(図435).

図435.2020年11月から2021年10月までの日本全域年間CMT解
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)のMと数字は,2021年10月のM5.9以上の地震・過去1年間の最大地震(月刊地震予報138).
 地震断層面積変遷(右上下図)については図422説明参照(6921>月刊地震予報144).
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 これらの地震の震度分布は,M6.3の台湾の地震が八重山諸島に限られているのに対し(図436右),東京湾奥部の地震ではM5.9と小さいにもかかわらず,関東地方から東北地方そして伊豆諸島にも及び,太平洋Slabとの関連を示している(図436左図).

図436. 2021年10月のM5.9以上の地震の震度分布.
 2021年10月7日東京湾奥部丹沢震源帯千葉深度75㎞M5.9(左),10月24日琉球海溝震源帯台湾深度73㎞M6.3Pr(右).
赤色×:震央,1-5:震度.気象庁HomePageより.
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2.台湾M6.3Pr深度73km

 2021年10月24日14時11分,琉球海溝域花蓮小円区の台湾でM6.3Pr深度73kmが発生した(図437).この深度は琉球海溝地震帯のPhilippine海Slab上面から63㎞のSlab深部に当たる.
 本地震は、過去半年間のCMT解19個中最大で,発震機構は圧縮過剰逆断層型で,その圧縮軸方位は(図437右下図のPink〇印),主歪軸方位図の基準としている海溝傾斜方位(中央横線[TrDip])から45°以上ずれているのでPrとなっているが,Plate運動方位線(紫色折線:Sub)に接しており、Philippine海Plateの南華Plateに対する運動方位PH-SCに沿うEuler緯線(図437左図)に平行している.圧縮主歪軸の傾斜は主歪軸方位図中心部に位置し,海溝傾斜と同じ島弧側傾斜で,Plate運動により過剰屈曲したSlab深部の圧縮歪による地震であることを示している.Philippine海Plateの沈込障害となるSlab深部圧縮歪の解放は,琉球海溝域のSlab沈込と随行Mantleの背弧側への流出を促進するであろう.

図437.琉球海溝域半年間主歪軸方位図中の2021年10月24日琉球海溝地震帯M6.3Pr.
 左図:震央は西北西向きPink色線.北西‐南東向きの曲線はPhilippine海Plateの南華Plateに対する2°(222㎞)間隔のEuler緯線.震源は-54°緯線のすぐ下に位置しており,Plate運動速度は年間8.3cmである.図の下にはPlate運動のEuler極と運動速度.
中図:海溝距離断面図.震源は同心円状に屈曲するPhilippine海Slab深部に在る.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝軸から島弧側に海溝距離dTr=200kmの海溝軸沿縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM.震源は花蓮小円区中央付近の+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年10月から半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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3.東京湾奥部M5.9pr

  2021年10月7日22時41分,東京湾奥深度75㎞の丹沢Slab震源帯最南下端に当たる千葉震源域でM5.9prが発生した(図438).

図438.2019年11月から2021年10月までの2年間の相模Trough域のCMT解の主歪軸方位図中の2021年10月7日東京湾奥深度75㎞M5.9pr.
左図:震央地図.北北西‐南南東方向の曲線はPhilippine海Plateの北米Plateに対する1°毎(111㎞)のEuler緯線でPlate運動PH-NAの方位に沿っている.2021年10月の東京湾奥の地震の主歪方位は東西で,大きく斜交している.
中図:海溝距離断面図.
数字とMはM5.9以上の地震および大正・元禄関東地震の発生年月日と規模.
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 「週間現代」は『M8大地震「今年12月鎌倉」説は本当か』との記事(2021年10月23日号60-63頁)を掲載した.この記事では,本「月刊地震予報」の内容を引用する形で「今年12月までに関東大地震が起きる可能性がある」としている.しかし,引用されたと思われる月刊地震予報130では,2020年6月25日に起こった銚子沖M6.1の震源域で,1923年9月1日の大正関東地震M7.9の41日前と90日前にも地震が起っていたので警戒を呼びかけた.ただし,警戒は昨年2020年9月までで,今年2021年12月としたのは,読み違いであることは執筆記者も認めている.この記事に関する電話取材の際に,昨年起こらなかったのは「慶長地震後に開始した歪蓄積周期末期に起こった大正関東地震の前震を,東北沖平成地震後に開始したばかりの歪蓄積周期開始時の現在にそのまま対応させられない」からであろうと説明したが,聴く耳を持っていなかったようである.また,「今年12月の鎌倉説」についての説明もなかった.
 歪蓄積周期(月刊地震予報122)については,これまで巨大歪を解放した巨大地震の年号を付けて呼んでいたが,現在の歪蓄積周期名は400年後の巨大地震が起こるまで分からず不便なので,巨大歪を解放して新たな歪蓄積を開始させた巨大地震の年号を歪蓄積周期名として使用することにする.これまで東北沖巨大地震と呼んできた 2011年3月11日 M9.0 を過去の巨大地震と比較し易くするため”東北沖平成(巨大)地震”と呼ぶ事にする.そして東北沖平成巨大地震が,慶長歪蓄積周期に蓄積した歪を解放し,平成歪蓄積周期を開始させたと定義することにする.
 平成歪蓄積周期初期に当たる現在の日本列島の歪状態は,慶長歪蓄積周期末期の大正関東地震の時と異なっていることが予想される.1703年の元禄関東地震は1611年に開始した慶長歪蓄積周期初期に起こっているので対応が期待されるが,記録文書が少ないのが残念である.
 丹沢Slab震源帯の千葉震源域ではCMT解(1994年以降)28個が報告されているが,2011年3月11日の東北沖平成地震前の慶長歪蓄積期末には3個しか起こっておらず,2005年7月23日のM6.0Pr深度73㎞が最大地震となっている.平成歪蓄積期が開始して25個と急増したCMT解中で,本地震M5.9は最大である.
 関東地方で起こっている世界に類を見ない地震活動は,房総沖に地球上唯一の沈込Plate三重会合点(図438左図)が存在するからである.この三重会合点では,関東地方の北米Plateと伊豆弧のPhilippine海Plate,そしてそれらに沈込む太平洋Plateが三つ巴になって接している.
 関東地方で最も重要なPlate境界は,三重会合点から西北西に伸びる相模Troughで,丹沢山地と伊豆半島の間の神縄断層を通り駿河Troughに続いている.このPlate境界に沿って東名高速道が通っているが,地質記録によるとこの300万年前以前はplate境界が中央高速道に沿う丹沢山地と関東山地との間にあったことが判明している(新妻,2007).700万年前から関東山地の下に沈込みを開始した丹沢地塊は500万年前から関東山地と衝突.300万年前には関東山地と合体し,今度は南から伊豆半島に沈込まれ激しい衝突を受けている.
 700万年前以前の丹沢地塊は,Philippine海Plateに属していた.伊豆海溝から沈込む太平洋Slab上面深度が約100㎞に達するとMagmaが供給され,海底噴出によって伊豆諸島のような火山島ができる.丹沢地塊もこうしてできた火山島であった.(図439).丹沢地塊を作る火山活動があった事は,その東側に太平洋Slabが上面深度100㎞に達するまで沈込始んだ前弧海底が在ったことを意味している.伊豆海溝までの距離約200㎞.

図439.伊豆海溝域の鹿島小円南区南部から伊豆小円南区の活火山と太平洋Slabの関係.
△印:活火山.主歪軸方位は2020年11月から2021年10月までの1年間のCMT解.
左図:震央地図.2°毎(間隔222㎞)のEuler緯線はPhilippine海Plateに対する太平洋PlateのPlate運動PC-PH.
中図:海溝距離断面図.上縁の海溝距離0㎞が伊豆海溝の位置で,活火山は200㎞付近に集中している.CMT解は同心円状屈曲して伊豆海溝から沈込む太平洋Slab上面から下に分布し,上面深度300㎞付近で平面化してほぼ垂直に沈込むが,CMT解はSlab上面より下に分布している.ただし,深度410㎞と550㎞のMantle相転移面付近で背弧側に羽状に分布する(月刊地震予報131).
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 Magnaが海洋底に達し,噴火口から噴出した大量の噴出物が集積して海面に達すると火山島になる.火山島の地下にはMagmaがゆっくり固結した深成岩が併入し,この深成岩が島弧の厚い地殻を構成している.
 島弧地殻を持たない火山島から伊豆海溝までの前弧海底は,Plate境界から沈込み,関東平野下の丹沢Slab となっている.島弧地殻を持つ火山島は,周囲の海底の沈込に引きずられて少しは沈込むものの,沈込めず衝突する.衝突された側は隆起・削剥されて大量の礫を沈込境界に供給する.中央高速道・東名高速道沿には,火山噴出物を覆う深海泥岩とそれらを覆う膨大な量の礫岩が露出している.その礫岩は首都圏の大型建造物の骨材になっている.また、関東平野には日本海溝から太平洋Slabも沈込んでおり,衝突して丹沢Slab震源帯となっている.
 関東山地に約500万年前から衝突合体した丹沢地塊とともに,丹沢Slabも北米Plateに移行している.今回の地震の震度分布(図436)が,北米Plateの東北地方上部Mantleと太平洋Slabの衝突による前弧沖震源帯と類似している(例えば月刊地震予報141の図410)ことも頷ける.
 2020年6月25日に起こった銚子沖の地震は,相模Troughから沈込む相模Slab上面で起こった(図438中上図).相模Slab上面には大正・元禄関東地震の震源が分布するので,前兆の可能性もあり,警戒を呼び掛けた.その主歪軸方位はPhilippine海Plateの北米Plateに対するPlate運動方位PH-NAに沿い(図438左図),太平洋Plateの北米Plateに対するPlate運動方位PC-NAに沿った今回の地震とは異なっている(図440左図).

図440.2021年10月7日東京湾奥深度75㎞M5.9prと,2019年11月から2021年10月までの2年間の三重会合点域のCMT解の主歪軸方位図.
左図:震央地図.北北西‐南南東方向の曲線は太平洋Plateの北米Plateに対する1°毎(111㎞)のEuler緯線でPlate運動PC-NAの方位に沿っている.今回の地震の主歪方位は,Plate運動方位に沿っているが,2020年6月の銚子沖地震は沿っていない.
中図:海溝距離断面図.
数字とMはM5.9以上の地震の発生年月日と規模.
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 今回の地震(M5.9)の主歪軸方位はPH-NA運動方位と異なり(図438),PC-NA運動方位に沿っており(図440左図),丹沢SlabがPhilippine海Plateでなく北米Plateに移行していることを示している.
 銚子沖M6.1は相模Slab上面の深度36㎞で起こったが,相模Slab下面の下に太平洋Slabが沈込んでいる.東北地方の震源は日本海溝から同心円状屈曲して沈込む太平洋Slab上面に沿って集中しているが(図440中上図),銚子沖地震の震源はそれより11㎞以上深いことから,関東地方では太平洋Slab 上面が相模Slabに押し下げられていることが分かる.
 今回の東京湾奥の地震の主圧縮歪軸傾斜が太平洋Slab上面傾斜と逆の海溝側を向いていることは,摩擦のある太平洋Slab上面の剪断歪が解放されたことを意味している.その震源が太平洋Slabの同心円状屈曲上面より17㎞深いことは(図440中上図),丹沢Slabも太平洋Slab 上面を押下げていることを意味している.
 東京湾奥から北方の五霞・下妻・下館に伸びる丹沢Slab震源帯北縁(月刊地震予報66特報7月刊地震予報130)の深度は,関東地方の地殻下底のMoho面よりも深く,通常の太平洋Slab上面より浅いことから,太平洋Slabに接触前の丹沢Slabに対応している(図440中上図).
 2021年2月から東北地方の上部Mantleと太平洋Slab間の地震が多発しているが(図435右上図),今回の地震もそれと一連の地震であろう.今後,歪を解放した太平洋Slabの活動に警戒が必要である.

4.2021年11月の月刊地震予報

 琉球海溝域の台湾でPhilippine海Plateの沈込障害となるSlab深部圧縮歪が解放され,Slab沈込と随行Mantleの背弧側への流出が促進されることが予想され,今後の動向を注意深く見守ることにする.
 首都圏を混乱に陥れた東京湾奥部の地震M5.9は,2021年2月から多発している東北地方の上部Mantleと太平洋Slab間の地震が関東地方に及び,上部Mantleに沈込んでいる丹沢Slabとの衝突によって発生した.これらの地震によって日本海溝から沈込む太平洋Slabの沈込障害が解放され,太平洋Slabの沈込様相が変化することも考えられるので,注意深く見守る必要がある.

引用文献

新妻信明(2007)プレートテクトニクス―その新展開と日本列島―.共立出版,292p.

月刊地震予報145)東海道沖M6.0,得撫島沖M6.6,日本海中部M6.1, 2021年10月の月刊地震予報

1.2021年9月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年9月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で13個0.460月分,千島海溝域で2個0.864月分,日本海溝域で2個0.478月分,伊豆・小笠原海溝域で3個0.536月分,南海・琉球海溝域で6個0.057月分であった(2021年9月日本全図月別).総地震断層面積規模はΣM6.8で.M6.0以上の地震は;
 9月14日伊豆海溝域東海道沖深度385kmのM6.0P WingBk
 9月21日千島海溝域得撫沖深度30kmのM6.6p CsmUr
 9月29日日本海中部深度394kmのM6.1+p VladK
の3個である(図429).

図429.2020年10月から2021年9月までの日本全域年間CMT解
 震央地図(左図)と海溝距離断面図(中図)のMと数字は,2021年9月のM6.0以上の地震と過去1年間の最大地震(6712>月刊地震予報138)の発生年月日と規模.
 地震断層面積変遷(右上下図)については図422説明参照(月刊地震予報144).
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 M6.0以上の地震の震度分布は,9月14日東海道沖のM6.0で震央に近い中部地方が震度1以下なのに関東地方・東北地方が震度3以上と典型的な異常震域となっている(図430左図).9月21日得撫島沖のM6.6では北海道と東北地方の太平洋沿岸で震度1が観測された(図430中図).9月29日日本海中部のM6.1では震央から離れた北海道から関東地方の太平洋沿岸が震度3と異常震域となっている(図430右図).

図430. 2021年9月のM6.0以上のCMT解の震度分布.
 2021年9月14日東海道沖M6.0(左),9月21日得撫島沖M6.6(中),9月29日日本海中部M6.1(右).
赤色×:震央,1-3:震度.気象庁HomePageより.
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2.東海道沖M6.0

 2021年9月14日7時16分東海道沖深度385kmの伊豆SlabでM6.0Pが発生した(図431).この深度は上部Mantle下底の相転移境界深度410kmの直上にある.

図431.2021年9月14日東海道沖M6.0Pの伊豆・小笠原海溝域半年間主歪軸方位図.
 左図:震央は半径50kmの丸印の中心の西北西向きPink色線.震源は海溝距離断面図の+印.同心円状に屈曲する太平洋Slabは小笠原海台小円区.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝距離dTr=0kmの海溝軸に沿う縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM.震源は+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年9月から遡って半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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 深度410kmは上部Mantleのα相(主要鉱物のカンラン石)がβ相に転移する境界である.太平洋底に随行してきたMantleのβ相への相転移に伴い,太平洋Slabが翼状に押し上げられる(図432;月刊地震予報131).押上げられた翼状SlabとVladivostokまで沈込むSlabとの間に裂目があり,地震波は中部地方に伝わらないが,翼の付け根を通過した地震波は太平洋Slabに伝わり日本海溝域の太平洋沿岸を異常震域にする.

図432.伊豆・小笠原・Mariana海溝域のMantle相転移面と太平洋の同心円状屈曲Slab・翼状Slab・鉛直Slab (月刊地震予報131,図377).
2021年9月14日東海道沖M6.0PはWingβSlab(黄緑色)の地震である.
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 今回のM6.0の震央は八丈小円区を挟んだ鹿島小円南区と伊豆小円北区との境界部に位置する(図431左の震央地図の丸印中心のPink色線・右上図の+印).この境界部の海溝軸は南北で,海溝軸に直交する海溝傾斜方位(図431右下の主歪軸方位図の中央横基準線TrDip)は西方位線Wと交わっている.
 今回のM6.0の主圧縮歪軸方位(Pink色丸印)はPlate運動方位(図431右下の主歪軸方位図の紫色線)と一致している.この歪軸方位の左上に接するほぼ同方位の青色△印は2021年6月1日伊豆海溝外深度60kmのM5.0T引張主歪軸方位である.
 6月1日海溝外引張過剰正断層型M5.0Tの3ヶ月半後にそのPlate運動方位のMantle相転移面上で圧縮過剰逆断層型M6.0Pが起ったことは,海洋底沈込に伴う随伴Mantleが深度410kmの相転移面へ影響を及ぼすには3ヶ月半を要したことになる.この間に伊勢湾の相転移深度上の深度355kmでも7月27日M4.9-npが起っている.

3.得撫島沖M6.6

 2021年9月21日5時25分に千島海溝域千島沖震源帯得撫島沖深度30kmのSlab上面付近でM6.6pが起こった(図433).この震源域では2021年7月13日にも深度30kmM6.2prが起っている(月刊地震予報143),これら逆断層型地震の圧縮主歪軸傾斜方位は主歪軸方位図(図433右下)の中央基準横線である海溝軸傾斜方位(TrDip)の島弧側と下端の海洋側との逆方位になっている.

図433.2021年9月21日千島海溝域千島沖震源帯得撫島沖M6.6の千島海溝域半年間主歪軸方位図.
 左図:震央は半径50kmの丸印の中心の西北西向きPink色線.震源は海溝距離断面図の+印.同心円状に屈曲・平面化する太平洋Slabは千島小円区.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝距離dTr=0kmの海溝軸に沿う縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM .震源は+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年9月以前の半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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 圧縮主歪軸の島弧側傾斜はSlabのPlate運動に伴う圧縮歪,海洋側傾斜はSlab上面と島弧地殻境界面に沿う剪断歪との判別に使用できる.島弧側傾斜はSlab上面と島弧地殻の固着,海洋側傾斜はSlab上面・島弧地殻境界面の摩擦すべりに対応する.7月13日M6.2が固着で今回の9月21日M6.6が剪断歪で,固着していたSlab上面がすべり始めたのであろう.
これらの歪軸方位は震央地図(図433左図)の半径50km丸印中心の赤線とその左に連続して作図されている赤色線である.この方位は中央基準横線より上の西方位線W付近と下端より上の東方位線E付近にあり,得撫島沖の海溝周辺に西北西のPlate運動方位(紫色折線sub)に斜交する歪場が形成されていることを示している.
 この間の2021年9月3日にほぼ同小円方位の下部Mantle上面直上の深度628kmでM5.9+pが起っている.その引張過剰圧縮歪軸方位はPlate運動方位(図432右下図の紫色折線Subに一致しており,太平洋SlabがPlate運動によって千島海溝から下部Mantle上面に到達したが,下部Mantleに沈込めずに起った地震であろう.

4.日本海中部M6.1+p

 2021年9月29日日本海中部深度394kmの上部Mantle下底面直上でM6.1+pが起った(図434).ほぼ同深度の384kmの日本海中部で2021年7月8日にもM4.6pが起っている.この深度では上述「2」の9月14日東海道沖深度385kmM6.0Pも起っている(図431).同深度の東海道沖震源は日本海溝域から同心円状屈曲・平面化してVladivostokまで沈込むSlabよりも深く,この間に異常震域の原因となる裂目の存在を確認できる(図434左の海溝距離断面図).

図434.2021年9月29日日本海中部M6.1+pの半年間主歪軸方位図.
 左図:震央は半径50kmの丸印の中心の橙色線.同心円状屈曲・平面化する太平洋Slabは襟裳小円区.震源は海溝距離断面図の+印.数字とM:地震発生年月日と規模.
右上図:海溝距離dTr=0kmの海溝軸に沿う縦断面図と移動平均地震断層面積規模曲線areaM .震源は+印.
右中図:時系列図.右端の数字は2021年9月から半年間の月数.左端が移動平均地震断層面積規模曲線areaMと積算地震断層面積曲線Benioff.
右下図:主歪軸方位図.中央横線が基準の海溝傾斜方位TrDip.
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 鹿島小円区の今回の地震M6.1とほぼ同じ小円方位の茨城沖から日本海溝への震源列がある(図434左の震央地図).この震源列の地震は5月29日深度32kmM4.9Pから開始し,8月3日深度31kmM4.7Pから連発地震になり(月刊地震予報144),8月下旬と9月中旬にも起っている.この小円方位では海溝傾斜方位TrDipとPlate運動方位(図434右下の歪軸方位図の中央横線と紫色折線)が交差しており,Plate運動による沈込が海溝傾斜に沿って最も効率よく進行する.圧縮主歪軸傾斜方位は,歪軸方位図の中央横線付近の島弧側と上下両端の海洋側に分離している.海洋側傾斜は沈込Slabと島弧地殻境界部の剪断歪による地震であり,島弧側傾斜は屈曲Slabの平面化に伴うSlab表面の伸張による引張剰逆断層型+pを主体としている.これらの地震の1-2ヶ月後に今回の地震が上部Mantle下底の相転移深度付近で発生している.

5.2021年10月の月刊地震予報

 千島海溝域の得撫島沖の太平洋Slab上面でPlate運動方位と異なるすべりに対応する剪断歪の地震が発生し,Slab下端が下部Mantle上面付近で引き込まれている.千島海溝域では2007年1月13日深度30kmM8.2・2013年5月24日深度609kmM8.3の巨大地震と静穏化を繰返してきたことから,次の巨大地震の襲来が懸念されている(月刊地震予報143).今後,千島海溝域の地震活動を注意深く見守り,巨大地震の前震となる連発地震の発生を注意深く監視する必要がある.
 日本列島全域の上部Mantle下底の地震が活発化している.特に伊豆海溝域の翼状SlabはSlab下面やSlab裂目を通り抜けるMantle流によって保持されており,海溝付近の島弧地殻・Slab上面間の歪蓄積とともにSlabが沈込むMantleに変動が起っていることも考えられ,警戒が必要である.

月刊地震予報144)日本海溝域茨城沖の東北沖震源帯M6.0連続地震,琉球海溝域台湾沖M6.3,2021年9月の月刊地震予報

1.2021年8月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2021年8月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で12個0.234月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で8個0.700月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.059月分,南海・琉球海溝域で3個0.344月分であった(2021年8月日本全図月別).
 8月に起きた地震の最大は,琉球海溝域台湾沖の2021年8月5日M6.3で,日本全域の総地震断層面積規模はΣM6.6.M6.0以上の地震としては次に2021年8月4日茨城沖東北沖震源帯M6.0が続く.M6.0以上の地震の震度分布は,茨城沖M6.0で本州北東部が広く震度1以上を観測したが,これより規模の大きな台湾沖M6.3は八重山諸島に限られている(図421)

図421. 2021年8月のM6.0以上のCMT解の震度分布.
 2021年8月4日東北沖震源帯茨城沖M6.0・2021年8月5日琉球海溝域台湾沖M6.3の震度分布.
赤色×:震央,1-3:震度.気象庁HomePageより.
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2.年間地震動向

 2020年9月から2021年8月までのCMT解による年間地震活動(図422)は,日本海溝域Japanでのみ総地震断層面積がPlate運動面積の2.13年分と大きく超過し,他の海溝域では0.1以下と静穏であった.日本海溝域では,2021年2月までPlate運動面積の蓄積(図422上図JapanのBenioff図左下端から右上に向かう灰色直線)に沿って積算地震断層面積が増大したが,2021年2月13日M7.3(月刊地震予報138)による大きな段差でPlate運動面積を上回り,3月20日M6.9 (月刊地震予報139)と5月1日M6.8(6794>月刊地震予報141).の2つの段差の後の静穏化の中で8月4日M6.0が起った.琉球海溝域RykNnkのBenioff曲線には8月5日M6.3の段差が認められる.

図422.2020年9月から2021年8月までの日本全域年間CMT解の海溝距離断面(左図)と地震断層面積変遷(右図).
 海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時間経過で,開始(下2020年9月1日)から終了(上2021年8月31日)までの設定期間.右図右端の数字は2020年と2021年の月数である.設定期間を150等分した等分期間2.4day(右上図左下端)毎に地震断層面積を集計している.
 Benioff図(上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4では4分の1に縮小している.下縁の鈎括弧内の数値[8.0] [7.6] [7.3] [7.3] [7.6]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震の地震断層面積として解放された場合の規模で,日本全域では毎年M8.0の地震が1個起ることを意味している.上図右下端の(6.2step)は,等分期間2.4日以内にM6.2以上の地震が起ればBenioff曲線に段差が生じることを示している.
 日本海溝域Japanでは累積地震断層面積がPlate運動面積の2.13(右上のBenioff図上縁)倍とBenioff図枠を大幅に超過して重なるので,右隣の千島海溝域Chishimaの枠を右方にずらしてある.
 地震断層移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は断層面積規模で,等分区間「2.4day」に前後区間を加えた約1週間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算(2002>速報36)した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積の規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
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3.日本海溝域茨城沖の東北沖震源帯M6.0連発地震

 2021年8月4日5時33分に日本海溝域茨城県沖海溝距離76km深度18kmの島弧下部地殻・太平洋Slab境界の東北沖震源帯でM6.0Pが起った(図421左,図423).
 2021年8月4日M6.0の震央は,海溝傾斜方位(図423右下の主歪軸方位図中央横線TrDip)とPlate運動方位(図423右下図のSub紫色折線)が一致する鹿島小円北部に位置する.この震源域では,8月3日0時35分から8月4日13時40分の間にM4.7PからM6.0PのCMT解6個が震減距離10km以内で連発した.これに先行して2021年5月29日8時21分M5.3P・9時4分M5.0P・10時2分M5.7Pの連発地震があった.先行した5月29日の連発地震の震央も8月4日M6.0から20km以内に収まっている.
 連発地震の圧縮主歪軸方位は主歪軸方位図(図423右下図)下端に重なり会うPink色丸印である.主歪軸方位図の中央横線が基準の島弧側へのSlab上面傾斜方位で,下端は時計回りに180°回転した海溝側傾斜である.Slab上面傾斜と逆の海溝側傾斜の主圧縮軸方位は,摩擦のあるSlab上面に沿う剪断歪が解放された地震であることを意味する(月刊地震予報107 6648>月刊地震予報136).

図423. 茨城県沖の日本海溝域東北沖震源帯M6.0連発地震
2020年9月から2021年8月までの年間日本海溝域CMT解の主歪軸方位.
数字とM:M6.8以上のCMT解と2021年8月4日M6.0の震源.
時系列図(右中図)右縁の数字は2020年と2021年の月数.
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 今回の連発地震最大の2021年8月4日M6.0の主歪軸方位を基準とした歪軸方位偏角は15°以内て,ほぼ一定に保たれている.同一小円方位には,連発地震後の8月27日M5.1P海溝距離143kmが島弧Mantle・Slab境界面の前弧沖震源帯,8月22日M5.3Pe海溝距離16kmの島弧上部地殻・Slab境界面の日本海溝地震帯でも起っており,その主圧縮軸方位は主歪軸方位図の下端と上端の海溝側傾斜で,偏角は12°と25°と近接し,同一剪断歪場における地震であることを示している.
 大地震の前には前震が繰り返し,連発地震となる.前震の主歪軸方位は本震で主歪が解放されるまで主歪方位を保つことが東北沖平成巨大地震M9.0(速報29)・熊本地震M7.3(速報79)・鳥取県西部地震M6.1(月刊地震予報)で知られている.今回の連発地震の主歪方位が5月から8月まで一定に保たれていることと,両隣の島弧沖震源帯から日本海溝震源帯までの広い範囲のSlab上面で保たれていることは,広大な剪断歪場が形成されていることを物語り,大地震の発生が心配される.
 今回の2021年8月4日M6.0の震源域は2011年3月11日東北沖平成巨大地震の茨城沖誘導地震M7.9の東方で,1677年11月4日の延宝地震M8.0の北方に位置する(図424).1611年12月2日慶長地震M8.1によって慶長歪蓄積周期の歪が解放され,新たに開始した平成歪蓄積周期最初の大地震が延宝地震である(月刊地震予報122).現在は,2011年3月11日東北沖平成巨大地震によって平成歪蓄積周期の歪が解放され,新たな歪蓄積周期を開始した.最初の巨大地震が何時何処で起るかは,地震予報における最大の課題であるが,その有力候補として延宝地震(1677年)に対応する地震が挙げられる.

図424.1600年以降のM6.5以上の日本海溝域歴史被害地震・震度観測地震・CMT解.
2021年8月4日M6.0(桃色×印)を図397(6712>月刊地震予報138)に加筆.
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 日本海溝域の平面化地震帯・東北沖地震帯・日本海溝地震帯のM6.5以上のCMT解・震度観測地震の総地震断層面積は,1952年M8.2までPlate運動面積蓄積直線(図425右図左下のBenioff図左下端から右上へ伸びる灰色直線)に沿って増大していたが,1994年まで静穏化し,2003年M8.0と2011年平成M9.0が大きな段差を形成している.海溝距離断面図(図425中図)では襟裳小円区(上図)にのみ海溝距離150km以上の太平洋Slab中軸部に震源が分布し,鹿島小円区(下図)には海溝外地震が分布せず,日本海溝域の南北による地域差が認められる.

図425.1922年1月から2021年8月までのCMT解・震度観測地震による,平面化地震帯・東北沖震源帯・日本海溝震源帯のM6.5以上の地震および2021年8月4日M6.0震源から震央距離20km以内の地震.
震央地図(左図)の数字とM:M8.0以上の地震の発生年と規模.
2021年8月4日M6.0から震央距離20km以内の地震を震央地図(左図)にPink色数字とMで示すとともに時系列図(右下図)の右縁に移動平均地震断層規模areaM・Benioff図.下端のPink色太線は縦断面位置を示す.
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 2021年8月4日M6.0の地震から震央距離20km以内の地震について,2年間に地震が起らない(この場合地震断層面積移動平均規模曲線が基線まで低下する)のは1930年~1935年・1967年~1972年・1995年~2004年の3回ある(図425右下図右端のareaM図).後の2回の空白期間は,平面化・東北沖・日本海溝の震源帯でもM6.5以上の地震のない空白期と重なるが,最初の空白期間には海溝外の日本海溝震源帯で1933年昭和三陸地震M8.1が起っている.
 今回の連発地震は,2016年以降,平面化・東北沖・日本海溝の震源帯でM6.5以上の地震が起っていない空白期が続く中で起った.このような連発地震域と各地震帯との対応は過去100年間に見当たらず,日本海溝域の地域性とともに平成歪蓄積周期末期と新たな歪蓄積周期開始期との相違とも考えられるが,今後の動向が注目される.

4.琉球海溝域台湾沖M6.3

 琉球海溝域の八重山・花蓮小円区境界の台湾沖において,2021年8月5日6時50分,M6.3T深度55kmが起った.これは琉球海溝震源帯Slab内の地震である (図421右図,図426).
 

 2021年の琉球海溝域では,2021年3月27日M6.2が八重山小円区の平面化震源帯Slab内で起っており(月刊地震予報139),Benioff曲線の段差となっている(図426の右中図の時系列図左端).
 2021年8月5日M6.3Tの引張主歪軸方位(図426右下の主歪軸方位図の青色三角印)は方位図の基準の中央横線上に位置し,Plate運動方位(図426右下の方位図のSub紫色折線)とは異なる.一方,2021年3月27日M6.2npの圧縮主歪軸方位(図426右下の方位図の黄緑色丸印)は,対照的にPlate運動方位の紫色折線上に位置する.
 琉球海溝域地震のCMT解に震度観測地震と歴史被害地震も加え,1922年以降100年間2472個の地震について,古い震源図上に新しい震源を加えた震央地図と海溝距離断面図(図427左図・中図)を作成した.発震機構の判明している1994年以降の彩色されたCMT解が,発震機構不明の以前の震源(灰色丸印)をほぼ覆っていることから,1994年前後で震源分布に大きな変動がなかったことが分かる.

 累積地震断層面積のBenioff曲線は,Plate運動面積の3分の1程度でほぼ一定に増大している(図427右中時系列図左端)ことが判明している(月刊地震予報139).
 時系列図の震源分布は一様でなく空白域があり,地震活動が断続的に変動している.しかし,最北端の九州小円区では空白域はなく地震活動が継続している.九州小円区は南海Troughと琉球海溝の接続部に当り,Philippine海Plateの沈込軸が島弧側に凸に屈曲している,島弧側へ屈曲した沈込境界に沿った沈込SlabはTable Clothのように過剰なSlab面積によって形成される襞(図332:月刊地震予報117)と関係していよう.
 琉球海溝域のCMT解の総地震断層面積は,Plate運動面積の4分の1ではあるが,ほぼ一様に増大している.CMT解についても一様に増大しているが,琉球海溝・琉球平面化・沖縄海盆の震源帯の各Benioff曲線には同期しない段差が認められ,Plate運動による歪が琉球海溝から平面化そして沖縄海盆の震源帯順に移行伝播していることが分かる(月刊地震予報139の図409).
CMT解に震度観測地震・歴史被害地震を加えた100年間(図428)についても検討する(図428).

各震源帯の上位3位の地震(鈎括弧内の数字は順位)を新しい順に示すと;
 琉球海溝震源帯(図428右下)
[1] 1984年11月15日M7.8花蓮小円区,
[3] 1978年7月30日M7.4八重山小円区,
{2} 1972年1月25日M7.5八重山小円区,
{3}1947年9月27日M7.4八重山小円区.
琉球平面化震源帯(図428左下)
[3] 2011年11月8日M7.0tr琉球小円区,
[1] 1959年4月27日M7.7八重山小円区,
[2] 1958年3月11日M7.2八重山小円区,
[3] 1926年6月29日M7.0琉球小円区.
琉球島弧震源帯(図428右上)
[3] 2016年4月16日M7.3+nt九州小円区熊本地震
[1] 1999年9月21日M7.7 +p台湾小円区集集地震,
[3] 1951年11月25日M7.3台湾小円区
[2] 1922年9月2日M7.4八重山小円区.
 沖縄海盆震源帯(図428左上)
[2] 2015年11月14日M7.1+nt琉球小円区,
[1] 1938年6月10日M7.2八重山小円区,
[3]1922年9月15日M7.0花蓮小円区.
である.
 琉球海溝震源帯(図428右下)の総地震断層面積のPlate運動面積に対する比は0.21で,琉球海溝域全体の0.34(図427)の3分2を占め,Benioff曲線はほぼ一様に増大するが,2}・{3}・{1}の大地震を含む1960年から1985年まで傾斜が大きく,活発化している.
 琉球平面化震源帯(図428左下)の総地震断層面積の比は0.04で,1958・1959年{1}・{2}による大きな段差によって特徴付けられる.この段差は琉球海溝震源帯(図428右下)の活発化に先行している.両震源帯の活発化の前に空白域が広がるが,この広がりも琉球平面化震源帯が先行している.
 沈込Slabと島弧地殻・Mantleが衝突している琉球島弧震源帯(図428右上)の総地震断層面積の比は0.07で,Benioff曲線は1952年まではほぼ一様に増加したが1999年の集集地震M7.7[1]まで静穏化し,1960年から1985年まで活発化した琉球海溝震源帯(図428右下)・琉球平面化震源帯(図428左下)とは対照的である.
 背弧海盆が拡大している沖縄海盆震源帯(図428左上)の総地震断層面積の比は0.02と最小で空白域の拡大が最も大きいが,大局的に琉球島弧震源帯(図428右上)と類似している.2000年以降は九州小円区から花蓮小円区まで活動が活発で2015年M7.1[2]が起っており,2016年M7.3熊本地震{3}の起った琉球島弧震源帯{図428右上}と類似している.

4.2021年9月の月刊地震予報

 M6.5以上の地震は起っていないが,2021年2月から活発化した日本海溝域茨城沖の延宝地震震源付近で連発地震が継続し,巨大地震の前震の可能性もあることから警戒が必要である.
 静穏化中の琉球海溝でもM6.3が起り,Philippine海Plate沈込に新たな動きが開始されることも考えられるので警戒が必要である.