2012年7月23日 発行
1.東日本巨大地震前後の地震活動
気象庁公表のCMT震源機構解を解析したところ,2011年3月11日の東日本巨大地震M9.0(東北地方太平洋沖地震)前の16年半に起こっていた地震は,日本全域に亘って1124震源に達していた.巨大地震後の1年3ヶ月間には既に1180震源が日本海溝域に集中して起こっている.巨大地震によって地震活動が10倍以上活発化したが(図59),初動震源位置とCMT発震機構型(震源震央図解説)の解析によって,巨大地震が地震活動の様相を一変させたことが明らかになった.

図59.東日本巨大地震による地震活動様相の変化.左:巨大地震前,右:巨大地震後.
» 続きはこちら
2012年4月11日 発行
東日本巨大地震から1年が経過したが,この1年間は歴史的にも非常に地震の多い年となった.巨大地震前の16年半について気象庁から公表されているCMT震源数が1107個である.これに対し,巨大地震から2012年3月までのCMT震源数は補充報告を加えると1090個とほぼ同程度になっている.
過去16年半においても地震活動の盛衰が明らかであるが(速報21:図38),2011年か
ら2012年にかけても地震活動の盛衰が見られる.2011年3月に419個の地震が起こった後
,その個数を減少させ,12月には30個と最低を記録した.12月の地震数だけでも1995年
の17個,1996年の31個,1997年の15個の年間地震数と同程度か上回っている.その後,
2012年1月から月間地震個数が増大し,新たな活動を開始している(表6).
表6-1:気象庁からCMT発震機構解として公表された年間震源個数
| 年 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
2002 |
| 震源個数 |
9 |
17 |
31 |
15 |
31 |
41 |
85 |
42 |
57 |
| 2003 |
2004 |
2005 |
2006 |
2007 |
2008 |
2009 |
2010 |
2011 |
2012 |
| 95 |
99 |
78 |
79 |
72 |
76 |
71 |
165 |
1033 |
120 |
表6-2:気象庁からCMT発震機構解として公表された2011〜2012年の月間震源個数
| 年 |
2011 |
2012 |
| 月 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
1 |
2 |
3 |
| 震源個数 |
15 |
30 |
419 |
147 |
96 |
63 |
65 |
58 |
40 |
37 |
33 |
30 |
33 |
37 |
48 |
» 続きはこちら
2011年11月11日 発行
10月の地震活動で注目されるのは,日本海溝の外側で地震が再び活発化したことである.ここでは,東日本巨大地震の40分後に日本海溝付近の太平洋プレートが急激に引き込まれ正断層型余震Eaft M7.5(図32の最上小円断面図右端)が起こっている.その後のCMT解の公表されている海溝外地震(速報18)も3月に8回,4月に7回,5月に7回,6月に10回,7月に3回,8月に7回と継続して正断層型地震を起こし,本震によって急激に沈み込んだ太平洋プレートの引き摺りが続いた.その間に7月10日には引き摺り込まれたプレートが滞り,調整するための横ずれ断層型地震oMyg M7.0(図32の最上小円断面図右)が起こっている(速報13).また,8月25日には太平洋プレートの底で起こり,プレートの切断も心配された(速報15).9月に1回と沈静化したかに見えた海溝外地震の活動も10月に7回,11月に入ってからすでに4回も起こっている(図32).3月からの海溝外地震10回の後に4月7日の宮城県沖M7.1と4月11日浜通M7.0が起こったことから,明治三陸津波地震後に起こった3つ目の宮城県沖地震(速報9)の再来が心配される.

図32 CMT震源図2011年10月.×:初動震源,結線端:CMT震源,赤(黄):逆断層型,黒:正断層型,緑:横ずれ断層型
» 続きはこちら