月刊地震予報197)2026年1月13日の千島小円区深度30㎞の千島弧沖択捉震源区oAcCEtrM6.2Ps,襟裳小円北区深度0㎞の東北日本海岸留萌震源区JscJRmの群発地震,2026年2月の月刊地震予報
2026年2月28日 発行
1.2026年1月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2026年1月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で18個0.235月分,千島海溝域で6個0.312月分,日本海溝域で8個0.245月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.412月分,南海・琉球海溝域で3個0.091月分であった(2026年1月日本全図月別).
2026年1月の総地震断層面積規模はΣM6.6で,最大地震は2026年1月13日の千島小円区深度30㎞の千島弧沖択捉震源区oAcCEtrM6.2Psであり,この他にM6.0以上の地震はなかった.ただし,CMT規模M5.8であるが初動規模M6.4のCMT解が2026年1月6日10時18分深度11㎞の西南日本海岸l中国震源区JscPhChgkにあった.
最大地震の最大震度は2で震度1以上の分布は北海道南東岸と三陸沿岸域であった(図640).
2026年1月までの日本全域2年間のCMT解は395個で(図641),その総地震断層面積規模ΣM8.9のPlate運動面積規模M8.3に対する面積比は5.385倍と大幅に超過している(図641の中図上).日本全域と千島海溝域のBenioff曲線(図641右図上左端Total/4と右端Chishima[A])は2025年7月30日の最大地震M8.8(月刊地震予報191)の巨大な段差に隠され他の段差は見え難いが,琉球南海域(図641右図上左端の右側のRykNnk[D])には,下端の2024年4月3日の台湾海溝震源帯M7.4(月刊地震予報176),2024年8月8日九州小円区深度36㎞の日向灘M7.0(月刊地震予報180)の2つの段が認められ,それ以降静穏化していたが,2025年1月13日日向灘M6.7(月刊地震予報185)の3つ目の段が認められる.千島海溝域は,2025年に入り完全無CMTを保ってきたが(図641右下地震断層面積移動平均規模areaM図右端A),5月31日に5月最大地震M6.1が起こり(月刊地震予報189),6月22日にも6月最大地震M6.0が続き半年ぶりに活動期入していた(月刊地震予報190).琉球南海域[D]では6月22日に悪石島連発地震が開始され(月刊地震予報190),千島海溝域で7月30日のM8.8最大地震(月刊地震予報191)に続き9月19日M7.8が起こったが歪軸方位に変化がなく(月刊地震予報193),千島海溝域の歪の完全解放に至っていない.静穏化の続いていた日本海溝域[B]では2025年12月8日の最大地震東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkM7.4psに続きその東方の深度の浅い東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsで12月9日M6.0Ps・M6.5Ps・12月12日M6.8psと東北弧沖久慈震源区oAcJKjM12月31日M6.0Psが起こっていたが(月刊地震予報196),2026年に入り千島海溝域の択捉沖で1月最大地震が起こり,巨大地震の予想される得撫に近付いているので警戒が必要である.

図641 .2026年1月までの日本全域2年間CMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.震源円の直径は地震規模Mから算出される地震断層長L km( =100.6M-2.9 )で,面積は地震断層面積Sf km2 ( =101.2M-9.9 )に比例月刊地震予報173).ただし,この期間の地震規模は小さいのでCMT規模にΔM+1.0を加えて4倍拡大した地震断層長を使用.数字とMは,M7.0以上と2026年1月最大のCMT解発生年月日・規模.
右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間開始(下端2024年2月1日)から終了(上端2026年1月31日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36;特報5).
Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積ΣMのPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差を与える.
地震断層面積移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pbを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
Clickすると拡大します.
2.2026年1月13日の千島小円区深度30㎞の千島弧沖択捉震源区oAcCEtrM6.2Ps
2026年1月13日16時34分千島小円区深度30㎞の千島弧沖択捉震源区oAcCEtrでM6.2Psが発生した.
本震源区の属する千島弧沖震源帯は,太平洋Slab上面と千島弧下部地殻が接し,摩擦抵抗によって固着している間にPlate運動による剪断歪が蓄積し,限界に達すると海溝型地震を起こし,階段状の地震断層面積解放Benioff曲線と成る(図642右図中時系列図左縁).最大の段は1994年10月4日深度28㎞M8.2であり10月9日深度1㎞M6.0まで最大M7.3の余震9個が続く.次大は1958年11月7日M8.1 であり11月15日M6.1まで最大M6.7の余震4個が続く.最大CMT解は1995年12月4日深度10㎞M7.4Psである.

図642.2026年1月までの千島弧沖択捉震源区oAcCEtrの観測地震とCMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右図:縦断面図;右中図:時系列図;右下図:主歪方位図.
震源円の直径は地震規模Mから算出される地震断層長L km( =100.6M-2.9 )で,面積は地震断層面積Sf km2 ( =101.2M-9.9 )に比例.ただし,本震源区の規模が小さい為ΔM+0.5を付し震源円の直径を地震断層長の2倍に拡大.
Clickすると拡大します.
本震源の択捉震源区oAcCEtrやKamchatka震源区oAcCKamcは,千島海溝と日本海溝およびAleutian海溝との接続部に近接し,海溝軸の輪郭が島弧側に凸なため,沈込む太平洋Slabが過剰になり襞を形成するが沈込み障害は少なく.周辺海溝域の太平洋Slab沈込に伴う誘発地震を容易に起こす.本地震は,2025年7月30日のKamchatka沖M8.8(月刊地震予報191)に誘発された2025年11月9日東北弧沖oAcJ震源帯M6.7(月刊地震予報195),2025年12月8日の東北前弧沖ofAcJ震源帯M7.4(月刊地震予報196)に続くものであろう.
本震源域東方の海溝軸の輪郭が海洋側に凸な千島海溝中央域の得撫・新知震源区では,沈込む太平洋Slabが不足するため,海溝外破断やSlabの短冊状切断なしに沈込めずPlate運動歪を蓄積する.
千島海溝域の海溝軸輪郭による太平洋Slabの過不足と地震活動との関係を検討するため,観測地震を検討する.「月刊地震予報」ではこれまで,1952年11月5日の千島弧沖Kamchatka震源区oAcCKamcの規模をSeno.& Eguchi .(1983)に従いM8.2としてきたが,宇佐美(2003)・平田ほか(2025)・USGSにおいてM9.0とされており,新聞報道でもM9.0が使用されているので,M9.0に改訂する.この改訂によって千島海溝域の最大観測地震は1952年11月5日の千島弧沖Kamchatka震源区oAcCKamcのM9.0,次大が2025年7月30日の千島弧沖Kamchatka震源区oAcCKamcのM8.8となり,Benioff曲線に大きな段差を与えている(図643右中図左縁).

図643.2026年1月までの千島海溝域観測地震とCMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右図:縦断面図;右中図:時系列図;右下図:主歪方位図.
震源円の直径は地震規模Mから算出される地震断層長L km( =100.6M-2.9 )で,面積は地震断層面積Sf km2 ( =101.2M-9.9 )に比例.
最大地震1952年11月5日千島弧沖Kamchatka震源区oAcCKamcの規模をSeno & Eguchi (1983)に従いM8.2としてきたが,宇佐美(2003)・平田ほか(2025)に従いM9.0に改訂.
Clickすると拡大します.
3.東北日本海岸留萌震源区JscJRmの群発地震
2026年1月12日9時48分M4.1?から1月29日0時42分M4.2?まで襟裳小円北区の東北日本海岸および東北日本海岸沖留萌震源区Jsc-oJsc JRmの深度0‐1㎞でM3.5からM5.2の速報解18個があった.しかし,その発震機構はM4.2以上の1月12日9時50分M5.0tr・1月13日1時58分M5.2pb・1月17日0時39分M4.2pbの3個のみで,他の15個は不明?であった(図644).
この留萌群発地震に先行した2026年1月6日に西南日本海岸中国震源区JscPhChgkM5.8との関連は不明である.

図644.2026年1月の東北日本海岸留萌震源区JscJRmrの速報解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右図:縦断面図;右中図:時系列図;右下図:主歪方位図.
震源円の直径は地震規模Mから算出される地震断層長L km( =100.6M-2.9 )で,面積は地震断層面積Sf km2 ( =101.2M-9.9 )に比例.ただし,本震源区の規模が小さいのでΔM+3.0を加え地震断層長を64倍拡大.
震央地図の左上から右下方への曲線はAmur AM Plateの北米NAに対するPlate相対運動Euler緯線で,樺太西岸に沿う構造線(黒色)と北海道西岸沖から佐渡に至る日本海底沈込み境界(青線)にほぼ直交しており,地球の裏側の大西洋拡大中央海嶺に対応していることを示唆している.
Clickすると拡大します.
日本海岸沖震源列oJscと日本海岸震源列Jscは,Amur Plateが北米Plateに沈込むPlate境界とされているが,Plate相対運動のEuler緯線が樺太西岸の構造線と北海道から佐渡に至る海底地形境界に直交いることがこのPlate境界説を支持している.このPlate境界は地球の裏側では沈込みが拡大に逆転し,大西洋中央海嶺になっている.Plate相対運動は年間1.6cm程度で,日本海溝域のPC-NAの年間8㎝の5分の1に過ぎないが,両震源列の観測地震の総地震断層面積のPlate運動面積に対する比は0.48と半分程度に留まっている(図645).時系列図のBenioff曲線は,1960年から1993年まではPlate運動とほぼ同傾斜であるが,その前後は静穏化している.能登半島地震M7.6(月刊地震予報173)もこれらの震源列に属するが,現在の静穏期における活動と言える.
留萌震源区は日本海岸・日本海岸沖震源列Jsc・oJscの最北部に位置しているが,南部の出羽震源区JscJDwでは1964年6月16日新潟地震M7.5や能登震源区JscPhNotoでは2024年1月1日能登半島地震M7.6(月刊地震予報173)が連発地震の後に発生していることから警戒が必要である(図645)

図645.2026年1月までの日本海岸沖震源列oJscと日本海岸震源列JscのCMT解と観測地震.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右図:縦断面図;右中図:時系列図;右下図:主歪方位図.
震源円の直径は地震規模Mから算出される地震断層長L km( =100.6M-2.9 )で,面積は地震断層面積Sf km2 ( =101.2M-9.9 )に比例.ただし,本震源列の規模が小さいのでΔM+0.5を加え地震断層長を2倍拡大.
震央地図の左上から右下方への曲線はAmur AM Plateの北米NAに対するPlate相対運動Euler緯線で,樺太西岸に沿う構造線(黒色)と北海道西岸沖から佐渡に至る日本海底沈込み境界(青線)にほぼ直交しており,地球の裏側の大西洋拡大中央海嶺に対応していることを示唆している.
Clickすると拡大します.
4.2026年2月の月刊地震予報
千島海溝域では1994年9月開始CMT解のBenioff曲線(図646)には,開始時・2007年・2013年の3つの段が認められ,その頂点はPlate運動累積面積直線に沿っており,その後長期間,静穏期が継続していたことから静穏期開けに大きな地震の来襲が予測されていた(月刊地震予報166.この予測されていた地震は,2025年7月30日Kamchatka沖M8.8oAcCKamcPsとして起こった(図643).

図646.2026年1月までの千島海溝域CMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図,右図:縦断面図;右中図:時系列図;右下図:主歪方位図.
震源円の直径は地震規模Mから算出される地震断層長L km( =100.6M-2.9 )で,面積は地震断層面積Sf km2 ( =101.2M-9.9 )に比例.
Clickすると拡大します.
2025年7月30日千島弧沖Kamchatka震源区oAcCKamcM8.8Psと2025年12月8日東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkM7.4ps・東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsの2月9日M6.0Ps・12月12日M6.5Ps・12月28日M6.8psと東北弧沖久慈震源区oAcJKjの12月31日M6.0Ps(月刊地震予報196)は何れも千島海溝南北端の海洋に凹の輪郭部に位置し,最初のKamchatka震源区M8.8による北端の歪解放に南端の地震活動が誘発されたのであろう.多くの震源区に跨る活動は余剰Slabの襞(図464a)を反映していると考えられる.
千島海溝中央の海洋側に凸の海溝軸輪郭から沈込む得撫Ur・新知Sms・松輪Mtw震源区では,沈込Slab面積が不足する為に裂けるか海溝外の海洋底を破断しなければ沈込めない(図647).沈込Slab面積不足による海溝外地震は,2009年1月16日千島海溝松輪震源区TrCMtw M7.4Pbとして起こったが,2011年3月11日東北弧沖平成oAcJHs巨大地震M9.0の発生によって中断して現在に至っており,数年から10年以内のM9級巨大地震に警戒が必要である.
2026年1月12日から開始された東北日本海岸JscJ・東北日本海岸沖oJscJ震源列の留萌震源区 JRmの群発地震(図644)は,2025年7月以降の千島海溝域の地震活動や先行した2026年1月6日の中国震源区M5.8と関連しているのか不明であるが,両震源列のM7級の被害地震に群発地震が先行していることから警戒が必要である.
引用文献
平田 直・森田裕一・岩崎貴哉・古村孝志・石山達也・佐藤比呂志・小原一成・西山昭仁・佐竹健治(2025編)地震の大辞典.朝倉書店(東京),558p.
宇佐美龍夫(2003)日本被害地震総覧.東京大学出版会(東京),605p.

