月刊地震予報186)2025年3月の月刊地震予報
2025年3月9日 発行
1.2025年2月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2025年2月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で10個0.048月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で7個0.092月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.167月分,南海・琉球海溝域で1個で0.027月分であった(2025年2月日本全図月別).
2025年2月の総地震断層面積規模はΣM6.0で,最大地震は2025年2月26日の鹿島小円南区深度401㎞の和達伊豆β鹿島WdtiPcBK震源区M5.7npで,M6.0以上の地震は無かった.
2025年2月までの日本全域2年間のCMT解は383個で,その総地震断層面積規模ΣM8.0のPlate運動面積規模M8.3に対する比は0.554である(図608の中図上).日本全域のBenioff曲線(図608右図上左端Total/4)には2024年1月1日能登半島M7.5(月刊地震予報173),2024年4月3日の台湾海溝震源帯M7.4(月刊地震予報176),2024年8月8日九州小円区深度36㎞の日向灘M7.0(月刊地震予報180)の3つの段が認められ,それ以降静穏化していたが,2024年末に千島海溝域(図608右図A・D)と台湾(月刊地震予報185)に3つ目の段が認められ(図608右図右端F),Total/4(図608右図左端)にも4段目の兆しが出たが頭打ち状態にある.

図608 .2025年2月までの日本全域2年間CMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.震源円の直径は地震断層長である(月刊地震予報173)が,この期間の地震規模は小さいので実際のCMT規模に1.5を加えΔM+1.5とし,8倍拡大.数字とMは,M7.0以上CMT解発生年月日・規模.
右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間開始(下端2023年3月1日)から終了(上端2025年2月28日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36;特報5).
Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積ΣMのPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
地震断層面積移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pdを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
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3.2025年2月の月刊地震予報
伊豆弧北端の丹沢・伊豆衝突による西南日本の土台骨を破損した2024年1月1日能登半島地震M7.5(月刊地震予報173)後の2024年4月の台湾M7.4Psおよび2024年8月の日向灘M7.0psは,琉球海溝域の歪解放が西南海溝TrPh震源帯で継続していることを示しており,更なる活動が心配される.日本海溝域ではM3₋4のCMTおよびIM解が多数発生あるが,大地震の前兆であるか分からない.
巨大地震の来襲が心配される千島海溝域は2025年に入りCMTが無く静穏化しているが,今後の活動再開に警戒が必要である.