速報41)プレート相対運動面積を上回る地震活動・日本海溝域・淡路島・三宅島・得撫島・沖縄トラフ・2013年5月の地震予報

1.プレート相対運動面積を上回った2013年4月の地震活動

2013年4月は,日本全域における地震断層面積がプレート相対運動面積の2.09倍あった(日本全図月別).日本海溝では日本全域とほぼ同じ2.08倍であり,千島海溝が4.13倍,琉球南海は1.33倍と2004年以後初めて1を越えた.伊豆小笠原も1.15倍で,全てのプレート境界でプレート相対運動面積を上回った.このように全てのプレート境界でプレート相対運動面積を上回ったのは,CMT機構解が公開されている1994年から初めてのことである.この記録に次ぐのは, 0.5の琉球南海以外が全て1以上であった1999年5月である.
東日本巨大地震以後,日本全域で2倍を越えたのは, 2011年4月・7月,2012年8月・12月の4ヶ月のみであり,2013年4月は極めて地震が活発であったと言える.

2.日本海溝域

2013年4月2日に襟裳スラブ過剰域のスラブ上部で,M6.2に続きM4.5-5.7の逆断層型地震が6個起った(東日本月別),このスラブ上部の地震は海洋プレート屈曲沈み込みによるものであり,その後,日本海溝外でスラブ深部屈曲による押広正断層-t型地震が4月4日(M5.1)・6日(M4.7)に起った.また,4月5日にはウラジオストックのスラブ底の深度593kmでM6.3,4月6日に深度646kmでM5.7の逆断層型地震が起こり,4月5日に八丈島沖の伊豆海溝外でも深度56kmでM4.6の押広正断層-t型地震が起った(日本全域月別).
屈曲スラブの平面化地震(速報38)は,下北沖で4月11日M4.3(引剥逆断層+p型),4月23日M4.3(p型),福島沖で4月14日M5.3(+p型),三陸沖で17日M5.9(+p型)が起こっている.

3.淡路島

2013年4月13日に淡路島の深度15kmでM6.3が起った(日本全図月別).初動震源とCMT震源および中間主応力N軸から算出される断層面(速報33)は,南北走向で直立している(表18).算出地震断層面と圧縮主応力P軸 との交角は73°と高角であり,既存の弱面に沿って無理矢理ずれた地震断層である.

表18:2013年4月13日の淡路島の地震と1995年兵庫県西部地震の発震機構と地震断層

地震 年月日 2013年4月13日 1995年1月17日
規模 M6.3 M7.3
深度 15km 16km
発震機構型 引剥逆断層+p 調整移動nt
主応力(Nm) 方位 傾斜 主応力(Nm) 方位 傾斜
P軸 -4.58E17 262 15 -3.10E19 275 0
T軸 +5.58E17 98 74 +3.07E19 185 12
N軸 -1.00E17 353 4 +0.02E19 6 78
 非双偶力% +8 -1
地震断層面 走向傾斜 N7W89W N10W87E
P軸交角 73 74
  型 崩壊逆断層 崩壊逆断層

1995年1月17日の兵庫県西部地震M7.3も淡路島北の明石海峡で起ったが,地震断層面の走向は南北で直立している(表18).地震断層面と圧縮主応力P軸との交角は74°と高角で交わる今回の地震と類似している.

両地震では,東西方向の圧縮主応力P軸が共通し,南北方向が中間主応力N軸であるのが今回の地震であり,引張主応力T軸なのが1995年の地震である.地震断層面は,走向がいずれも南北で,傾斜は今年が西に89°,1995年が東に87°と直立している.走向は,四国と紀伊半島の間の紀伊水道の方向と一致していることから,地下10数kmには紀伊水道に並行する破断し易い面が存在し,いずれの地震もその面に沿って無理矢理,地震断層面が形成されのであろう.
発震機構が今回は逆断層型で1995年が横ずれ断層型と異なっていたが,東西方向の圧縮主応力P軸方位は共通している.一般的に上下軸が圧縮力の最も少ない引張主応力T軸になるが,今回の地震では東西方向の圧縮力よりも大きな引張力を持つ正非双偶力成分8%の+p型であった.1995年の地震では,南北方向の引張力が上下方向よりも大きかったために,上下方向が中間主応力N軸となり横ずれ断層nt型の地震になった.今回の地震は,南海トラフから沈み込むスラブ下降による上下方向の引張力が非常に大きいことを示している.

4.三宅島西方の地震

2013年4月17日に三宅島西方でM4.6(np型)・M6.2(nt型)の地震が起った (日本全図月別東日本月別・図92).これらの地震はいずれも横ずれ型であるが,圧縮主応力P軸方位は北西方向で,新島・神津島-三宅島-御蔵島の島列に沿っており,フィリピン海プレートとアムールプレートの相対運動方向を向いている.

図92. 2013年4月17日三宅島地震.  2013年4月17日の2個の地震と2000年の三宅島噴火に伴う地震の主応力軸方位。2000年7月30日に震源域が突然南方に移動し、噴火の様相が一変した。

図92. 2013年4月17日三宅島地震.
 2013年4月17日の2個の地震と2000年の三宅島噴火に伴う地震の主応力軸方位。2000年7月30日に震源域が突然南方に移動し、噴火の様相が一変した。

三宅島付近では,2000年6月28日から7月27日まで三宅島北西方の神津島・新島との間でM4.8-6.5の地震-np型が11個,np型が3個,+np型が4個,T型が8個,t型が2個,-t型が3個起こった後,7月30日に三宅島南西方でM5.9-6.5のnp型地震が3個起こり,8月2日から9月11日までに三宅島北西方の震源域に戻ってM5.2-6.1の地震T型が4個・np型が1個・nt型が1個起っている(図92).
東京都のHPによると,2000年6月27日に三宅島西方海底に版状岩脈が貫入,7月始から山頂直下で微小地震が起こり,4日に有感地震が起こり7月8日に山頂直下が空洞化した.7月14-15日に1983年噴火の残存マグマが白色火山灰として噴出,8月10・13・14日新期マグマの白色火山灰噴出.8月18日水蒸気爆発による14kmの噴煙の最大噴火,8月29日土石流.雄山山頂部には「新八丁平カルデラ」が形成された.
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速報40)2013年4月の地震予報

2013年4月の地震予報

日本全域の地震断層面積のプレート相対運動面積に対する比が2013年3月には0.17であり,プレート相対運動面積の5分1以下しか地震が起らなかった.これまで活動的であった東日本も0.17と静穏化した(日本全図月別).しかし,2012年9月から奇数月は0.5以下であるが,偶数月は1以上という状況が続いているので,これからも警戒を怠らないことが必要である.

速報39)フィリピン海プレート表層の地震・千島海溝域の地震・磐越地域の地震・2013年3月の地震予報

1.2013年2月の地震活動

2013年2月の日本全域のプレート相対運動面積に対する地震断層面積の比は0.53で,プレート相対運動の半分である.しかし,東日本では2.29と2倍以上であり,引き続き活発な活動を続けている(日本全図月別). 2012年12月7日日本海溝付近で起こった地震M7.3の震源近くでは,2013年1月まで地震活動が活発だったが(速報38),2月は14日にM4.4の-t型地震が深度38kmで起こったのみである.今月になって盛んに起こっているのは,東日本沿岸に沿う屈曲スラブ平面化過程およびスラブ上面衝突の逆断層型地震である(図90).

図90.2013年2月東日本域の圧縮主応力軸方位分布. 日本海溝域に押広正断層-t型地震1個と岩手県から福島県沿岸に沿って一直線状に屈曲スラブ平面化過程とスラブ衝突過程の逆断層型地震が起こっている.

図90.2013年2月東日本域の圧縮主応力軸方位分布.
日本海溝域に押広正断層-t型地震1個と岩手県から福島県沿岸に沿って一直線状に屈曲スラブ平面化過程とスラブ衝突過程の逆断層型地震が起こっている.

これらの逆断層型地震は,圧縮主応力P軸方位によって区別できる.海溝から沈み込む際に屈曲して伸びたスラブ上面が平面に戻るためには,上面に並行に縮まなければならない.このため,屈曲スラブ平面化地震はP軸方位がスラブ上面に並行である.一方,スラブ上面が陸側プレートと衝突する場合には,スラブが陸側に進む力と陸側プレートを押し上げる力が合成されて,スラブ上面に斜交する.
地震活動を定量的に比較できるように今後,日本全域図 の4つの断面域の地震個数とともに,カギ括弧内にプレート相対運動面積に対する地震断層面積の比(速報36)を示すことにする.また,その算出に用いた日数(days)も示す.
既に掲載されている図についても,順次,地震断層面積比と地震個数を表示する新様式に改訂していく.

2.フィリピン海プレート表層の地震

2013年2月18日八丈島南西方沖で,M4.8の横ずれ断層移動調整nt型地震が深度24kmのフィリピン海プレート表層で起こった.それと前後して,伊豆海溝では2月3日から4日にかけて逆断層p・P型の連発地震M5.1-5.4が深度23-52kmで起こり,2月21日に同域の海溝外でM5.3の逆断層P型地震が起こっている(日本全図月別).
フィリピン海プレートPHは西方の南華プレートSCに沈み込み,東方の太平洋プレートPCに沈み込まれている.これらのプレート相対運動はオイラー極の回りの回転で算出できる.PHに対するSCの相対運動のオイラー極SCEPHは千島のパラムシル島付近の北緯50.3°東経155.1°に位置し,回転角速度は百万年に1.28°である.PHに対するPCのオイラー極PCEPHはアユ海盆付近の北緯1.2°東経134.2°に位置し,回転角速度は百万年に1.00°である(図91).

図91.フィリピン海プレートPH東西縁で進行している太平洋プレートPCの沈み込みと南華プレートSCへの沈み込み速度が等しくなる等速大円と2013年2月18日の横ずれ断層型地震M4.8の震央.  SCEPH:フィリピン海プレートPHに対する南華プレートSCの相対運動オイラー極. PCEPH:フィリピン海プレートPHに対する太平洋プレートPHの相対運動オイラー極. EAENA:北米プレートNAに対する欧亜プレートEAの相対運動オイラー極.

図91.フィリピン海プレートPH東西縁で進行している太平洋プレートPCの沈み込みと南華プレートSCへの沈み込み速度が等しくなる等速大円と2013年2月18日の横ずれ断層型地震M4.8の震央.
 SCEPH:フィリピン海プレートPHに対する南華プレートSCの相対運動オイラー極.PCEPH:フィリピン海プレートPHに対する太平洋プレートPHの相対運動オイラー極.EAENA:北米プレートNAに対する欧亜プレートEAの相対運動オイラー極.

相対運動速度は,オイラー極までの離角の正弦(sin)に回転角速度を乗じて算出でき,オイラー極から離れると大きくなる.この相対運動速度を2つのオイラー極を結ぶ大円上で算出すると,等しくなる点が北緯29.4°東経143.5°に存在する.この点でオイラー極を結ぶ大円に直交する大円上ではPHに対するSCおよびPCの相対運動速度が等しくなるので,これを等速大円と呼ぶことにする(図91).等速大円よりも北東側ではPCの沈み込み速度がPHの沈み込み速度より大きく,南西側ではPHの沈み込み速度がPCの沈み込み速度より大きい.
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