速報22)2012年1月の地震予報

日本海溝に沿って正断層型海溝外地震を伴って沈み込んだ太平洋プレートがどの様な影響を与えるか注目されるが,2011年12月の地震予報(速報20)で指摘したように,浜通の正断層型地震活動の範囲が拡大して新たな様相を見せている(図39).1月12日には福島沖と岩手沖でM5以上の地震が起こっていることから,明治三陸津波地震の後に起こった3回目の宮城県沖地震の再来が心配されるので,警戒が必要である.

図39.

図39. 2011年12月の初動震源図



図40.

図40. 2011年12月CMT震源図

最上小円区に沈み込む太平洋プレート内で12月13日に正断層型地震(青色13-1:図40)が起こった.青色の正断層型地震は,引張T軸方位が海溝軸方向に平行していることを示し,10月から11月に正断層海溝外地震を伴って沈み込んだ太平洋プレートの裂開に対応する.この裂開によって沈み込みプレート不足による障害が解除されたので,海溝外地震を伴う沈み込みを再開するであろう.

図41.

図41. 八丈・伊豆小円区のCMT震源図

伊豆諸島の鳥島近海で逆断層型海溝外地震を含む地震活動が活発化し,1月1日にはM7.0の逆断層型地震がおこっている.東日本巨大地震前は,正断層型海溝外地震が起こっており,沈み込みプレート引きの状態であったが,12月15・16日に逆断層型海溝外地震が起き,太平洋プレートの押状態に変化したことが示された(図41).最上小円区の日本海溝における東日本巨大地震直後およびそれ以降,そして10月から11月にかけて起った正断層型海溝外地震は,太平洋プレートが日本海溝に沿って引き込まれたことを示していた(速報1819).巨大地震前に引き状態にあった鳥島の沈み込みプレートを,日本海溝に沿う太平洋プレートの引き込みが押し状態に変化させたのであろう.伊豆小円区は小円中心が太平洋側にあり,沈み込みプレートが過剰になり襞ができる.12月27日の逆断層型地震(ピンク色)のP軸方位は海溝軸方向に平行しており(図41),襞が側方に押されている状態を示している.これらの太平洋プレートの沈み込み状態は,沈み込まれているフィリピン海プレートに影響を与えることも予想されるので,フィリピン海プレートが沈み込む西南日本の地震活動にも注意が必要である.