月刊地震予報198)2026年3月の月刊地震予報:千島巨大地震への歩み

1.2026年2月の地震活動

 気象庁が公開しているCMT解によると,2026年2月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で19個0.112月分,千島海溝域で2個0.017月分,日本海溝域で6個0.135月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で11個0.216月分であった(2026年2月日本全図月別).
 2026年2月の総地震断層面積規模はΣM6.1で,最大地震は2026年2月13日の琉球小円区深度32㎞の西南海溝琉球震源区TrPhRkM5.6ntで,M6.0以上の地震は無かった. 昨2025年にはM6.0以上の地震が17個あったが,12月に6個集中し,無かったのは2月・3月・8月で,今月2026年2月は半年ぶりの無M6.0月である.

 2026年2月までの日本全域2年間のCMT解は396個で(図648),その総地震断層面積規模ΣM8.9のPlate運動面積規模M8.2に対する面積比は5.392倍と大幅に超過している(図648の中図上).日本全域と千島海溝域のBenioff曲線(図648右図上左端Total/4と右端Chishima[A])は2025年7月30日の最大地震M8.8(月刊地震予報191)の巨大な段差に隠され他の段差は見え難いが,琉球南海域(図648右図上左端の右側のRykNnk[D])には,下端の2024年4月3日の台湾海溝震源帯M7.4(月刊地震予報176),2024年8月8日九州小円区深度36㎞の日向灘M7.0(月刊地震予報180)の2つの段が認められ,それ以降静穏化していたが,2025年1月13日日向灘M6.7(月刊地震予報185)の3つ目の段が認められる.千島海溝域は,2025年に入り完全無CMTを保ってきたが(図648右下地震断層面積移動平均規模areaM図右端A),5月31日に5月最大地震M6.1が起こり(月刊地震予報189),6月22日にも6月最大地震M6.0が続き半年ぶりに活動期入していた(月刊地震予報190).琉球南海域[D]では6月22日に悪石島連発地震が開始され(月刊地震予報190),千島海溝域で7月30日のM8.8最大地震(月刊地震予報191)に続き9月19日M7.8が起こったが歪軸方位に変化がなく(月刊地震予報193),千島海溝域の歪の完全解放に至っていない.静穏化の続いていた日本海溝域[B]では2025年12月8日の最大地震東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkM7.4psに続きその東方の深度の浅い東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsで12月9日M6.0Ps・M6.5Ps・12月12日M6.8psと東北弧沖久慈震源区oAcJKjM12月31日M6.0Psが起こっていたが(月刊地震予報196),2026年に入り千島海溝域の択捉沖で1月最大地震が起こり,巨大地震の予想される得撫に近付いている.

図648 .2026年2月までの日本全域2年間CMT解.
  左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.震源円の直径は地震規模Mから算出される地震断層長L km( =100.6M-2.9 )で,面積は地震断層面積Sf km2 ( =101.2M-9.9 )に比例月刊地震予報173).ただし,この期間の地震規模は小さいのでCMT規模にΔM+1.0を加えて4倍拡大した地震断層長を使用.数字とMは,M7.0以上と2026年2月最大のCMT解発生年月日・規模.
 右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間開始(下端2024年3月1日)から終了(上端2026年2月28日)までの730日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36特報5).
 Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
 階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積ΣMのPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.2] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.2の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差を与える.
 地震断層面積移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
 areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pbを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
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2.2026年3月の千島巨大地震への歩み

千島海溝域は,千島和達δ得撫震源区WdtiDCUrの2012年8月14日M7.7pb深度610㎞・千島和達δKamchatka震源区WdtiDCKamcの2013年5月24日M8.3深度632㎞以降,長期静穏期にあったが,2025年初からCMT解の無い数か月の完全静穏期を経て活性化し,千島弧沖Kamchatka震源区oAcCKamcの2025年7月30日Kamchatka地震M8.8psを起こし(月刊地震予報191), 2025年12月8日東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkM7.4ps・東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsの2月9日M6.0Ps・12月12日M6.5Ps・12月28日M6.8psと東北弧沖久慈震源区oAcJKjの12月31日M6.0Ps(月刊地震予報196)・千島弧沖択捉震源区oAcCEtrの2026年1月13日M6.2Ps(月刊地震予報197)を誘発した.これらの地震は,何れも海洋側に凹の海溝軸輪郭の千島海溝北・南端に位置し,余剰Slabの襞と島弧地殻・Mantleとの接触面に沿う剪断逆断層型ps型である(図849右下歪軸傾斜方位図上端の赤丸).

図649 .2026年2月までの千島海溝域CMT解震源分布.
下縁凡例:海溝域名,発震機構型による彩色とCMT解個数,初・終・最大CMT解
震源円の直径(中図下凡例)は,CMT解規模Mから算出される地震断層長L km( =10^(0.6M-2.9))で,その震源円面積は地震断層面積Sf km^2 (=10^(1.2M-9.9))に比例(月刊地震予報173).震源円内の直線が主歪軸方位.
 左図:震央地図(正距円筒図法で縮尺は中図・右図と合致).青色曲線が海溝軸.枠外が緯度・軽度.数字とMは,CMT解発生年月日・規模.
中図横軸:海溝距離(百㎞目盛).
中上図:地震断層面積移動規模曲線areaM・地震断層面積積算曲線Benioff,
中下図:海溝距離・地球中心距離(百㎞目盛)断面図.数字とMは, CMT解発生年月日・規模.
右図横軸:海溝軸縦断面図,海洋側から見た海溝軸輪郭に沿う距離(百㎞目盛),右から左にKamchatka小円区・千島小円区・襟裳小円北区・南区を配列.
右最上図:地震断層面積移動規模曲線areaM・地震断層面積積算曲線Benioff.
右上図:縦軸が深度(百㎞)の深度断面図.
右中図:時系列図で縦軸:下端が設定期間開始(1994年9月1日)で上端が終了(2026年2月28日).右縁の数値は年数.2010年上の横線は2011年3月11日東北弧沖平成oAcJHs巨大地震M9.0発生時刻.
右中図左端左:時系列地震断層面積移動規模曲線areaM(上縁の「2 5 8」はM2 M5 M8).地震断層面積規模は,等分期間「46.0day」に前後期間を加えた138.0日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線.
右中図左端右:地震断層面積積算曲線Benioff(左下端から右上への斜線はPlate運動面積積算直線,上縁の数値「1.458」は,総地震断層面積ΣM9.0がPlate運動積算面積M8.9の1.458倍であり「F」はBenioff曲線上端を図右端に合致させていることを示す.
areaM曲線とBenioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pbを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
右中時系列図右下縁の「9.8km」は右図横解像度,「/3.2km」は縦断面図縦解像度.「/46.0 day」は時系列図の集計・作図間隔で設定期間の250等分期間の46.0日(速報36特報5).「/M7.5」は,等分期間46.0日以内にM7.5以上の地震がBenioff曲線に段差を与える.
右下図:主歪軸傾斜方位図(中央横線TrDipは基準の海溝軸傾斜方位で上下端がその逆方位,中央付近の紫色折線SubはPlate相対運動方位,「N E S W」は北東南西方位).
右下図下縁:「Axis」は主歪軸,丸印は座屈逆断層型pb・剪断逆断層型ps・圧縮横擦型npの主圧縮歪軸方位,三角印は正断層型t・引張横擦型ntの主引張歪軸方位.
右下図左の「ΣM9.0」は総地震断層面積規模,「/M8.9」は設定期間中のPlate運動面積がM8.9の地震断層面積に相当,「maxM8.8」は最大CMTがM8.8,「n=1135」は総CMT数が1135個.
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千島海溝中央域の海洋側に凸の海溝軸輪郭から沈込む得撫Ur・新知Sms・松輪Mtw震源区では,沈込Slab面積不足の為にSlabは裂けなければ沈込めない.裂け目が海溝軸に達していない不完全裂開の場合には海溝外の海洋底破断を伴う(月刊地震予報197,図647).2009年1月16日千島海溝松輪震源区TrCMtw のM7.4Pbがこの海溝外地震である(図649).これに先行したSlab沈込みは,2006年11月15日oAcCMtwのM7.7Pb・2007年1月13日TrCMtwのM7.8Teであろう. 2006年から2009年にこれらを進行させた歪増大は,本格的破壊に至る前に2011年3月11日東北弧沖平成oAcJHs巨大地震M9.0(図849右中時系列図2010年上の横線)発生で中絶すると共に,沈込みSlab先端が下部Mantle上面に突入し,600㎞以深の2012年8月14日M7.7pb深度610㎞・2013年5月24日M8.3深度632㎞を誘発した後,2025年までの長期静穏期へ移行した.
長期静穏期後,2025年7月30日oAcCKamcM8.8から開始された千島海溝北東・南西両端のSlab過剰域における千島弧沖震源帯oAcCの活動は2026年2月13日深度10㎞のoAcCEtrM5.4+ps以後途絶えている.この活動によってSlab過剰域の歪は解放されたが,Slab不足域の千島海溝中央域の歪は蓄積されたままである.この歪が千島海溝域西方の千島弧地殻・MantleとAmur PlateとのPlate境界である間宮海峡に沿う東北日本海岸・東北日本海岸沖震源列の留萌震源区 JscJRm・oJscJRmで解放されたのが2026年1月12日M4.1から開始した速報解群発地震であろう(月刊地震予報197).この群発地震も2026年2月27日M4.1を最後に20個で終了している.
今後は,沈込Slab面積不足によって固着し,静穏を保ってきた千島海溝中央域の太平洋Plate・北米Plate境界における歪増加に伴って発生する地震活動を,東北弧沖平成巨大地震M9.0に至る地震活動と比較しながら注意深く見守ることにする.