月刊地震予報196)2025年12月8日襟裳小円南区のM7.4と東北前弧沖震源列ofAcの震源区区分,12月28日花蓮震源区のM6.8と西南平面化震源帯uBdPhの震源区区分,2026年1月の月刊地震予報
2026年1月17日 発行
1.2025年12月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2025年12月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で34個3.423月分,千島海溝域で5個0.066月分,日本海溝域で20個22.251月分,伊豆・小笠原海溝域で2個0.105月分,南海・琉球海溝域で7個0.860月分であった(2025年12月日本全図月別).
2025年12月の総地震断層面積規模はΣM7.6で,最大地震は2025年12月8日の襟裳小円南区深度39㎞の東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkM7.4psであり,この他のM6.0以上の地震は12月9日と12月12日の同小円区の深度25㎞・深度33㎞・深度16㎞の東北弧沖襟裳南小円区oAcJEsM6.0Ps・M6.5Ps・M6.8psと12月28日の花蓮小円区深度61㎞の西南平面化台湾震源区uBdPhTwのM6.6pb,12月31日襟裳小円南区の深度37㎞の東北弧沖久慈震源区oAcJKjのM6.0Psが加わった.最大地震M7.4psでは震度6強が最大で北海道から関東地方の太平洋岸さらに若狭湾まで震度1以上であった(図635).

図635.襟裳小円南区の東北前弧沖下北震源区ofAcSmkの2025年12月8日深度39㎞M7.4ps・東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsの12月9日深度25㎞M6.0Ps,M6.5Ps深度33km・12月12日深度16㎞M6.8psと花蓮小円区の西南平面化台湾震源区uBdPhTwの12月28日深度61㎞M6.6pbの震度分布(気象庁HPより).
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2025年12月までの日本全域2年間のCMT解は401個で(図636),その総地震断層面積規模ΣM8.9のPlate運動面積規模M8.3に対する面積比は5.504倍である(図636の中図上).日本全域と千島海溝域のBenioff曲線(図636右図上左端Total/4と右端Chishima[A])は2025年7月30日の最大地震M8.8(月刊地震予報191)の巨大な段差に隠され他の段差は見え難いが,琉球南海域(図636右図上左端の右側のRykNnk[D])には,下端の2024年1月1日能登半島M7.5(月刊地震予報173),2024年4月3日の台湾海溝震源帯M7.4(月刊地震予報176),2024年8月8日九州小円区深度36㎞の日向灘M7.0(月刊地震予報180)の3つの段が認められ,それ以降静穏化していたが,2025年1月13日日向灘M6.7(月刊地震予報185)の4つ目の段が認められる.千島海溝域は,2025年に入り完全無CMTを保ってきたが(図636右下地震断層面積移動平均規模areaM図右端A),5月31日に5月最大地震M6.1が起こり(月刊地震予報189),6月22日にも6月最大地震M6.0が続き半年ぶりに活動期入していた(月刊地震予報190).琉球南海域[D]では6月22日に悪石島連発地震が開始され,千島海溝域で7月30日のM8.8最大地震(月刊地震予報191)に続き9月19日M7.8が起こったが歪軸方位に変化がなく,千島海溝域の歪の完全解放に至っていない.静穏化の続いていた日本海溝域[B]では2025年12月8日の最大地震東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkM7.4psに続きその東方の深度の浅い東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsで12月9日M6.0Ps・M6.5Ps・12月12日M6.8psと東北弧沖久慈震源区oAcJKjM12月31日M6.0Psが起こっている.

図636 .2025年12月までの日本全域2年間CMT解.
左図:震央地図,中図:海溝距離断面図.震源円の直径は地震断層長である(月刊地震予報173)が,この期間の地震規模は小さいのでCMT規模にΔM+1.0を加えて4倍拡大した地震断層長を使用.数字とMは,M7.0以上と2025年11月最大のCMT解発生年月日・規模.
右図:時系列図は,海洋側から見た海溝域配列に合わせ,右から左にA千島海溝域Chishima,B日本海溝域Japan,C伊豆・小笠原海溝域OgsIz,D南海・琉球海溝域RykNnk,日本全域Total,を配列.縦軸は時系列で,設定期間開始(下端2024年1月1日)から終了(上端2025年12月31日)までの731日間で,右図右端の数字は年数.設定期間の250等分期間2.9day(右下図右下端)毎に地震断層面積を集計・作図(速報36;特報5).
Benioff図(右上図)の横軸はPlate運動面積で,各海溝域枠の横幅はこの期間のPlate運動面積に比例させてあり,左端の日本全域Total/4のみ4分の1に縮小.
階段状のBenioff曲線は,左下隅から右上隅に届くように横幅を合わせ,上縁に総地震断層面積ΣMのPlate運動面積に対する比を示した.下縁の鈎括弧内右の数値[8.3] [7.9] [7.6] [7.5] [7.9]は設定期間のPlate運動面積が1個の地震として解放された場合の規模で,日本全域ではこの間にM8.3の地震1個に相当するPlate運動歪が累積する.上図右下端の(M6.1step)は,等分期間2.9日以内にM6.1以上の地震がTotal/4のBenioff曲線に段差与える.
地震断層面積移動平均規模図areaM(右下図)の横軸は地震断層面積規模で,等分期間「2.9day」に前後期間を加えた8.7日間の地震断層面積を3で除した移動平均地震断層面積を規模に換算した曲線である.右下図下縁の「2,5,8」は移動平均地震断層面積規模「M2 M5 M8」.右下図上縁の数値は総地震断層面積(km2単位)である.
areaM曲線・Benioff曲線の発震機構型による線形比例内分段彩は,座屈逆断層型pbを橙色・剪断逆断層型psを赤色・横擦断層型nを緑色・正断層型tを黒色.
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2.2025年12月8日東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkのM7.4と千島海溝・日本海溝域震源帯・震源区区分
2025年12月8日23時15分襟裳小円南区深度39㎞の東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkでM7.4psが発生した.深夜にも拘わらず発生から2時間後に気象庁のHPに速報発震機構解の公開が確認されている.最大震度は6強で八戸市のNTT鉄塔破損等の被害と最大70㎝の津波が観測された.気象庁は9日未明,巨大地震の発生可能性が平常時より相対的に高まったとして「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表し,すぐ逃げられる態勢の維持など「特別な備え」を1週間要請した.
東北前弧沖下北震源区の本地震は,1943年6月13日M7.1の最大観測地震を上回り.最大歴史地震1763年1月29日M7.9に次ぐ規模である(図637).最大歴史地震の際は,1763年1月21日から3月15日までM7以上の地震が続いた(宇佐美,2003;平田ほか,2025).

図637.東北弧沖下北震源区における1600年以降の地震活動.
震源の丸印の直径は地震規模から算出される地震断層長.
中図の海溝距離断面図における震源深度不明の歴史地震については地表に表示,右図上の深度縦断面図のareaM・Benioff図には深度の判明している観測地震についてのみ集計表示.
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2025年11月最大のM6.7ps(月刊地震予報194)の在った東北弧沖久慈震源区oAcJKjは,2025年12月9日M6.0Ps・M6.5Psと12日M6.8psの在った東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsの南隣に位置し,2025年12月31日にもM6.0Psがあり,連動していると考えられる.
日本列島は,太平洋底が同心円状屈曲して太平洋Slabとなり島弧地殻・Mantleの下に沈込むため,世界最大の地震活動域となっている.地震活動は,同心円状屈曲沈込域で均等に起こっておらず,海溝軸に平行する3つの震源列Seismic Rowとして起こっている(図638).屈曲開始に伴い海洋底が破壊する海溝Tr震源列(図638右上),島弧下部地殻とSlab上面に沿う剪断破壊の島弧沖oAc震源列(図638中),島弧で最強の土台骨の上部MantleとSlab上面に沿う剪断破壊の前弧沖ofAc震源列(図638左下)である.

図638.千島海溝域・日本海溝域の太平洋底の同心円状屈曲沈込みに伴う海溝Tr震源列・島弧沖oAc震源列・前弧沖ofAc震源列の震源区区分.
右上] 千島海溝TrC震源帯:釧路Ksr・根室Nmr・択捉Etr・得撫Ur・新知Sms・松輪Mtw・温祢古丹Onk震源区.
右下] 日本海溝TrJ震源帯:久慈Kj・昭和Shw・延宝Em震源区.
震源丸印の直径は無調整ΔM=+0.0の地震断層長.
中上]10 千島弧沖oAcC震源帯:根室Nmr・択捉Etr・得撫Ur・新知Sms・松輪Mtw・温祢古丹Onk・Kamchatka Kamc震源区.
中下] 東北弧沖oAcJ震源帯:茨城Ibg・勿来Nks・平成Hs・久慈Kj・襟裳南Es・十勝Tk震源区.
震源丸印の直径は無調整ΔM=+0.0の地震断層長.
左上] 千島前弧沖ofAcC震源帯:釧路Ksr・根室Nmr・択捉Etr・得撫Ur・温祢古丹Onk震源区.西南平面化
震源丸印の直径は,地震の規模が小さいので規模にΔM=+1.5を加えて地震断層長を8倍拡大.
左下] 東北前弧沖ofAcJ震源帯:勿来Nks・阿武隈Abk・金華山Kks・大船渡Ofu・久慈Kj・下北Smk・浦河Ukw震源区.
震源丸印の直径は,地震の規模が小さいので規模にΔM=+0.5を加えて地震断層長を2倍拡大.
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3.2025年12月28日の西南平面化台湾震源区uBdPhのM6.7と西南平面化震源帯の震源区区分
2025年12月28日0時05分に花蓮小円区深度61㎞の西南平面化台湾震源区uBdPhTwでM6.7pbがあった(図639).
台湾海溝域では海溝側のI]西南海溝震源帯TrPhからII]西南平面化震源帯uBdPhそしてIII]西南裂開震源帯RifPhへと地震活動が背弧側に移行することが判明しているが(月刊地震予報159),これまでI]海溝域の地震活動が主体であったが,本地震によってII]への移行が明確になった.

図639.2025年までの琉球海溝域の平面化震源帯uBdPh観測地震と震源区区分.
西南平面化uBdPh震源帯:台湾Tw・琉球Rk・九州Kys震源区.
震源丸印の直径は,地震の規模が小さいので規模にΔM=+1.0を加え地震断層長を4倍拡大.
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4.2026年1月の月刊地震予報
長期に渡る静穏期と下部Mantle上面付近の2012年8月14日M7.7深度610㎞(速報30)・2013年5月24日M8.3深度632㎞に基づき,2011年3月11日東北弧沖平成巨大地震M9.0と下部Mantle上面の地震活動(月刊地震予報173,新妻,2024)を参考に,千島海溝域の巨大地震の来襲を予報してきたが(月刊地震予報166・月刊地震予報175・月刊地震予報180・月刊地震予報182・月刊地震予報184・ 月刊地震予報188),千島海溝の東端で2025年7月30日にKamchatka半島沖M8.8が起こった(月刊地震予報191).
千島海溝の西端に位置する東北弧沖oAcJ震源帯で2025年11月4日から開始され2025年12月の東北前弧沖ofAcJ震源帯にまで及んでいる活動は,太平洋底が千島海溝の東端の北米Plateの下に沈込んだ2025年7月30日Kamchatka半島沖M8.8による誘導地震と考えられる.千島海溝の東西端境界の様に島弧側に凸の海溝軸輪郭から沈込むSlabは過剰になり襞を成しながら自由に沈込めるが,千島海溝中央の様に海洋側に凸の海溝軸輪郭から沈込むSlabは面積が不足する為に裂けるか海溝外の海洋底を破断しなければ沈込めない.千島海溝中央部の得撫島域は,集積していた歪を解放しようとしたが,2011年3月11日東北弧沖平成oAcJHs巨大地震M9.0の発生によって中断して現在に至っており,数年から10年以内にM9級の超巨大地震が予想されるので警戒が必要である.
琉球海溝域の歪解放が海溝期から平面化期に移行したため2016年4月熊本地震M7.3(/4578>速報79)のあった沖縄海盆期へと移行するので警戒が必要である.
引用文献
平田 直・森田裕一・岩崎貴哉・古村孝志・石山達也・佐藤比呂志・小原一成・西山昭仁・佐竹健治(2025編)地震の大辞典.朝倉書店(東京),558p.
新妻信明(2024)2011年3月11日の東北弧沖平成巨大地震M9.0と太平洋Slabの下部Mantleへの沈込および千島海溝域の巨大地震(日本地質学会山形年会,131,T7-O-8)
宇佐美龍夫(2003)日本被害地震総覧.東京大学出版会(東京),605p.