速報47)2013年11月の地震予報

1.2013年10月の地震活動

 2013年10月のCMT解の地震個数とプレート運動面積に対する総地震断層面積の比は,日本全域で17個1.419月分,千島海溝域で1個0.048月分,日本海溝域で13個6.464月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で3個0.494月分であった(2013年10月日本全図).
 日本全域で1.419月分の地震断層面積は,静穏であった7月・8月の10倍以上に達する.この増大は10月26日M7.1を皮切りに,26日M5.3・28日M5.6・M4.9・29日M4.8と連発した日本海溝域の海溝外地震による(2013年10月東日本).最初の地震M7.1は,2012年12月7日M7.3の日本海溝外地震以後,日本海溝域で約1年ぶりに起ったM7クラスの地震である.10月の地震活動を以下にまとめると;

  1. 9月まで静穏であった日本海溝域では,太平洋プレートの同心円状屈曲に伴う海溝内外の地震とともに,沈み込んだ日本海溝スラブの平面化地震,そしてスラブ下端地震とスラブ全域にわたって活発であった.
    ①スラブ過剰の襟裳小円区の日本海溝内側のスラブ内で,衝突逆断層型の地震10月6日M4.6・10月18日M4.8が起り,日高でスラブ上面衝突地震10月21日M4.6が起った.
    ②太平洋沿岸では,屈曲スラブ平面化地震として,10月11日M4.3 ・10月12日M4.8・10月20日M5.1・10月22日M5.3が起こり,
    ③海溝外では,10月26日から10月29日まで海溝外連発地震M4.8~7.1が5個起った後,
    ④ウラジオストック付近では10月30日,上部マントル下底まで達するスラブ先端付近の深度592kmでM5.1が起った.
  2. 南海トラフ・琉球海溝域では,10月14日八重山沖の海溝外地震M4.8 に続き,台湾で10月31日M6.5が起こった.これらの地震断層面積はプレート運動の半月分に当たり,2013年4月の1.332月分と6月の0.596月分に次ぐ活動である.
  3. 浜通では自動発震機構解の地震数が9月まで増大していたが,10月には2012年6月以来初めて0となった(2013年10月東日本IS).

2.2013年11月の地震予報

 太平洋プレートの日本海溝からの沈み込みは東日本大震災以後再開されたが,2013年10月にも日本海溝スラブ全域にわたる地震活動が見られ,太平洋プレートの沈み込みが2年半以上継続していることが確認された.1994年から2011年3月の東日本大震災まで太平洋プレート沈み込みに伴う地震が起っていなかったことから,今後の動向が注目される.
 10月の日本海溝スラブ全域にわたる地震活動は,日本海溝スラブ全体の沈み込みに起因すると考えられる.スラブは日本列島下のマントル内を沈み込んでいるので,日本列島下のマントルと地殻に影響を及ぼすことが予想される.静穏化した浜通の地震活動は日本列島下の地殻・マントルの状態を反映しており,その動向に注意が必要である.1896年6月明治三陸津波地震から4年後の1900年5月に,宮城県北部地震M7.0が起っている.その再来が心配されるので引き続き警戒が必要である.

速報46)2013年10月の地震予報

1.2013年9月の地震活動

 2013年9月の地震数と総地震面積比は,日本全域で15個0.569月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で8個0.057月分,伊豆・小笠原海溝域で3個3.356月分,南海・琉球海溝域で4個0.015月分であった(2013年9月日本全図).日本全域で0.569月分は,7月の0.136月分・8月の0.144月分の静穏状態から増加に転じている.この増大は,伊豆海溝域の太平洋スラブ内で9月4日に起ったM6.8深度445kmによっている.伊豆マリアナ海溝域では,5月14日,同心円状屈曲したまま上部マントル底に到達している太平洋スラブ内でM7.3深度619kmが起ったが(速報45),今回の伊豆海溝域の地震も同心円状屈曲したままのスラブ内で起っている.
日本海溝域の地震面積比0.057月分は,東日本大震災前の2010年11月0.034月分に次ぐ静穏さである.ただし,地震個数は8個と多く,三陸沖の屈曲スラブの平面化地震,北海道西方沖のスラブ上面の地震と太平洋スラブ沈み込みに関係する地震が起こっている.また,今年に入って活発化している浜通でもCMT震源解地震が起っている(2013年9月東日本).
 浜通では2013年1月から4月まで1-2個であった自動発震機構解の地震数が,5月に7個,6月5個,7月7個,8月7個,9月9個と増大しており,周辺部でも地震活動が活発化している(2013年9月東日本IS).

2.2013年10月の地震予報

 伊豆・マリアナ海溝域と三陸沖・北海道西方沖の太平洋スラブ地震は,太平洋スラブ沈み込みの活性化を示している.日本列島において阿武隈山地と北上山地はアイソスタシー(重力均衡)に反して隆起しているが,その駆動力として太平洋スラブ沈み込みに伴う日本列島下でのマントル衝突が考えられる.東日本大震災後の2011年4月11日に起った浜通地震M7.1や2008年6月の宮城・岩手県境地震M7.2はこのマントル衝突に関連する活動であろう.活発化している浜通周辺の地震活動が日本列島下のマントル衝突の活発化と関連していれば,1896年6月15日明治三陸津波地震M8.3の4年後に起った1900年5月12日の宮城県北部地震M7.0の再来も予想されるので,警戒が必要である.

速報45)小笠原・マリアナ海溝域太平洋スラブ屈曲断面の改訂・2013年9月の地震予報

1.小笠原・マリアナ海溝域太平洋スラブ屈曲断面の改訂

太平洋スラブは千島海溝から,日本海溝・伊豆海溝・小笠原海溝を経てマリアナ海溝まで連なっている.海溝に沿って28°から89°まで同心円状屈曲し,平面化するとしてこれまで震源断面図を作図してきた(表19).

表19. 太平洋スラブ同心円状屈曲

小円区 屈曲半径 屈曲頂 平面化角
海溝距離
(km) (km) (°)
千島 340 55 46
襟裳 600 40 28
最上 600 40 28
鹿島 500 40 28
八丈 375 40 60
伊豆 375 40 60
小笠原 375 40 89→150
小笠原海台 375 40 89→150
マリアナ 375 40 89→150

2013年5月14日にマリアナ海溝で起ったM7.3深度619kmの地震は最深記録を更新したため,日本全図の表示枠組みに収まらず、枠組みを拡大しなければ表示できなかった(速報42).この最深地震の震央は,従来の深発地震の震央よりも海溝側に位置しており,垂直に垂れ下がるスラブの位置から外れていた(2013年5月日本全図).同様の位置の外れは,1998年2月7日に小笠原海台小円区で起ったM6.4深度552kmの地震についても認めることができる(1998年日本全図).
東日本大震災後,太平洋プレートが日本海溝に沿って同心円状屈曲する際に強度限界を越して破壊し,地震を起こした.これとともに,屈曲したスラブが平面化する際にも破壊し、地震を起こすことが明らかになった(特報1).もし,平面化応力が働かなければ,破壊を伴う平面化は起らないと考えられる.CMT解地震を再検討したところ,前述のマリアナ海溝と小笠原海台の地震は,屈曲スラブが平面化せず同心円状屈曲が90°以上保持されていることが判明した(図104).

図104.小笠原・マリアナ海溝域の震源・震央分布図.  海溝に沿う同心円状屈曲を150°まで拡大すると深度500km以上の震源分布と適合する.

図104.小笠原・マリアナ海溝域の震源・震央分布図.
 海溝に沿う同心円状屈曲を150°まで拡大すると深度500km以上の震源分布と適合する.

そこで,小笠原・小笠原海台・マリアナ小円区の同心円状屈曲角を150°まで拡大した(表19).今後の日本全図の伊豆・小笠原海溝域断面図には拡大した同心円状屈曲を使用する(2013年8月日本全図).
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