月刊地震予報104)厳重警戒を要する2018年4月9日島根県西部の地震M6.1・2018年5月の月刊地震予報

1.2018年4月の地震活動

気象庁が公開しているCMT解によると,2018年4月の地震個数と総地震断層面積のプレート運動面積に対する比(速報36)は,日本全域で18個0.116月分,千島海溝域で4個0.071,日本海溝域で7個0.109月分,伊豆・小笠原海溝域で1個0.007月分,南海・琉球海溝域で6個0.209月分であった(2018年4月日本全図月別).
2018年4月のM6.0以上の地震は,島根県西部の2018年4月9日M6.1であった.

2.2018年4月9日島根県西部の地震M6.1

 2018年4月9日1時32分に島根県西部でM6.1+np深度12kmが起こった(図272).CMT解は4月9日1時32分から5時5分にM4.6-6.1の4個あり,初動解は2018年4月9日1時32分から4月28日3時42分にM3.5-6.1の8個あった.速報解は2018年4月9日1時32分から4月28日3時42分にM3.5-6.1の13個公開されている.

図272.2018年4月の島根県西部の地震の初動解応力場極性偏角Π.
 左:震央地図,右上:海溝距離断面図,右中:縦断面図,右下:応力場極性偏角Πの時系列図.右端の数字は2018年4月の日数.

 2018年4月9日1時32分の最初の地震が最大のM6.1であり,このCMT解を基準とすると,全ての解の震央距離は2km以内に収まる.深度差も2km以内であり,同一震源の活動と言える.
基準発震機構解[P283+4T14+5N157+84]は中間主応力N軸傾斜が垂直に近い84°で圧縮主応力P軸傾斜が4°・引張主応力T軸傾斜が5°と水平に近いので,横擦断層型である.しかし,東西方向のP軸方位と南北方向のT軸方位が北西-南東方向の小円方位の中間なので圧縮横擦断層型npであったり引張横擦断層型ntであったりする.CMT解の非双偶力成分比は基準地震が+5%で他は+1%でやや引張応力過剰である.
応力場極性区分は全て基準地震と同じ基準区分orgに属し,偏角25°以内がCMT解4個中2個,初動解8個中7個,速報解13個中4個と変わりなく,1か月に及ぶ同一震源における地震活動であるが,応力場偏角に変化が認められない.
 震源域内で最も破壊強度の小さいところから破壊が起こり,地震活動が開始される.破壊による歪解消が周囲に及び,破壊強度の大きな箇所に歪が集中して次の破壊を起こす.最大破壊強度の箇所は,周囲の弱破壊強度域の歪が集中することによって破壊するので最大地震が起こる.歪集中に要する時間は破壊強度差が大きいほど長くなることから,最大前震の後の長い地震休止期に地震活動が終了したと誤解し,避難所からの帰宅によって熊本地震(速報79)では被害を大きくした.本震では震源域が破壊して歪が解消されるので,応力場極性が逆転し,次に起こる地震の応力場極性で判定できる.
 今回の地震では1か月たっても応力場極性偏角に変化が認めらないことから,前震が継続中で1か月以内にM7以上の本震が起こる可能性が大きいので,厳重な警戒が必要である.
 

3.2018年5月の月刊地震予報

2018年4月9日に島根県西部M6.1が起こったが,同一震源で4月28日にもM3.6が起こっている.この間に起こった8個の初動発震機構解の応力場に変化が認められないことから,M6.1を起こした歪による応力場は変化しておらず前震の段階に留まっていると考えられる.1か月以内にM7級の本震が起こる可能性が大きいので厳重な警戒が必要である.
同様に応力場極性逆転が認められなかった2018年3月の台湾花蓮の地震(月刊地震予報102)も前震段階に留まっている可能性があるので警戒が必要である.