速報27)2012年7月の地震予報,三つ目の宮城県沖地震

 2012年6月末で,本年発生した地震個数は218に達した[日本全図(CMT)2012年].気象庁は6月10日から「自動発震機構解リスト」のメンテナンスを開始し,6月9日までの12個の震源資料を公開した状態で停止している[東日本(IS)2012年6月].同時にCMT発震機構解の公表も2週間停止し,震源資料公開の全面停止を心配したが,6月下旬に再開した.6月のCMT震源個数は25個で,日本海溝域は18個と72%を占め,東日本巨大地震の影響を保持している[東日本(CMT)2012年6月].
 6月中の地震は,沈み込みスラブ不足による最上小円区中軸の正断層tr型海溝外地震M4.8が7日,スラブ過剰による襟裳・最上小円区境界北側のスラブ内の逆断層p型地震M5.3・M5.2が22日に起っている.これらの地震は,東日本巨大地震による強大なスラブ引きが顕著に表われた結果と考えられ,引き続き三つ目の宮城県沖地震の再来が心配される(速報26).
 宮城県沖地震の震源域では,8日M4.9・10日M4.5・15日M4.6・18日M6.2・30日M4.8が起こっているが,今後,M7以上の地震も起こる可能性は十分にある.
 明治三陸津波地震M81/4(1896年6月15日)の後,三つ目の宮城県沖地震M7.2は約2年後の1898年4月23日に発生した.この宮城県沖地震は,北海道南部から近畿まで有感であった.岩手県釜石で家屋土蔵に小破損と山崩れ,花巻で家屋半潰・土蔵半潰・土地に亀裂と噴砂,一関で土蔵破損崩壊,遠野で石碑・石灯籠過半倒潰,宮城県石巻で土蔵壁亀裂.金華山で家屋の屋根・屋壁・煙突に被害,亘理で小被害,福島県郡山・桑折で小被害,青森県八戸で小被害があり,宮城県鮎川で全振幅20cmの小津波があった(宇佐美,2003).このような被害に対応できるように,充分な備えが必要である.

また,2012年6月には,千島海溝スラブ内で正断層裂開tr型地震およびフィリピン海プレートに関係する台湾東方・九州と関東地方の利根川沿でも地震活動があった.いずれも東日本巨大地震後も続く強い日本海溝スラブ引きと関係していると考えられる.

引用文献

宇佐美龍夫(2003)日本被害地震総覧.東京大学出版会,605p.